源氏物語 第32帖 梅枝(10)
源氏の訓戒
内大臣は、源氏の姫君の入内準備の評判を聞くにつけても、雲居雁のことが気がかりで寂しい。雲居雁は美しく成長したが、物思いに沈んでいる。夕霧の態度が相変わらず穏やかなので、内大臣は、自分から折れるのも物笑いだし、夕霧が熱心だった時に許していればよかったと、人知れず悔やむ。夕霧は、内大臣が少し折れてきたと聞くが、つれなかった仕打ちを恨んで、平静を装っている。浅緑の袍をあざけった乳母たちに、中納言に昇進してから見返そうと思っている。源氏は、夕霧が独り身でいるのを案じ、右大臣や中務宮からの縁談を勧めるが、夕霧は黙っている。源氏は、自分も若い頃に好色の評判を負ったことを語り、身分の低いうちは慎むように、妻とした人に欠点があっても、親の意向に従い、人柄を思いやって添い遂げよと、穏やかに訓戒する。

- 1內內うちのののおとゞおとゞおとどはははこのこのこの御御おんいそぎいそぎいそぎををを人人ひとののの上上うえにてにてにて聞聞きききき給給たまふふうもももいみじういみじういみじゅう心心こころもとなくもとなくもとなくさうざうしさうざうしそうぞうしとととおぼすおぼすおぼす。。。姫君姫君ひめぎみののの御御おん有樣有樣ありさま盛盛さかりにににとゝのひとゝのひととのいてててあたらしうあたらしうあたらしゅう美美うつくしげくしげくしげなりなりなり。。。つれづれつれづれつれずれとととうちうちうちしめりしめりしめり給給たまへへえるるる程程ほどいみじきいみじきいみじき御御おん歎歎なげきききぐさぐさぐさなるなるなるににに、、、かのかのかの人人ひとののの御御おん氣色氣色けしきはたはたはた同同おなじじじやうやうようににになだらかなだらかなだらかなれなれなればばば、、、心心こころ弱弱よわくくく進進すすみみみよらよらよらむむんももも人人ひと笑笑わらははわれれれににに人人ひとのののねんごろねんごろねんごろなりなりなりしししきざみきざみきざみににに靡靡なびきききなななましかましかましかばばばなどなどなど人人ひとしれしれしれずずずおぼしおぼしおぼし歎歎なげきききててて、、、一一ひと方方かたににに罪罪つみをををもももえええおほせおほせおおせ給給たまははわずずず。。。
- 2かくかくかく少少すこしししたはみたはみたわみ給給たまへへえるるる御御おん氣色氣色けしきををを宰相宰相さいしょうののの君君きみははは聞聞きききき給給たまへへえどどど、、、暫暫しばしししつらかりつらかりつらかりししし御心御心みこころををを憂憂うしししととと思思おもへへえばばばつれなくつれなくつれなくもてなしもてなしもてなししづめしづめしずめててて、、、さすがにさすがにさすがに外外ほかざまざまざまののの心心こころはははつかふつかふつかうべくべくべくもももおぼえおぼえおぼえずずず。。。心心こころづからづからずから戯戯たわぶれぶれぶれにくきにくきにくき折折おり多多おおかれかれかれどどど聞聞きこえええごちごちごちししし御御おんめのとめのとめのとどもどもどもににに、、、なうごんなうごんのうごんにににのぼりのぼりのぼりててて見見みえええむむんののの御心御心みこころ深深ふかかるかるかるべしべしべし。。。
- 3おとゞおとゞおとどはははあやしくあやしくあやしく浮浮うきききたるたるたるさまさまさまかなかなかなととと覺覺おぼししし惱惱なやみみみててて「「「かのかのかのわたりわたりわたりののの事事こと思思おもひひい絕絕たえええにににたらたらたらばばば、、、右右みぎのののおとゞおとゞおとど、、、中中なか務務つかさののの宮宮みやなどなどなどののの氣色氣色けしきばみばみばみいはいはいわせせせ給給たまふふうめるめるめるをををいづくいづくいずくももも思思おもひひい定定さだめめめられられられよよよ」」」とととのたまへのたまへのたまえどどど物物ものももも聞聞きこえええ給給たまははわずずず、、、畏畏かしこまりまりまりたるたるたるさまさまさまにてにてにて侍侍さぶらひひい給給たまふふう。。。
- 4「「「かやうかやうかようののの事事ことはははかしこきかしこきかしこき御御おん敎敎おしえにににだにだにだに隨隨したがふふうべくべくべくももも覺覺おぼえええざりざりざりしかしかしかばばばことことことまぜまぜまぜまうけれまうけれもうけれどもどもども、、、今今いま思思おもひひいあはするあはするあわするにににはははかのかのかの御御おん敎敎おしえこそこそこそ長長ながきききためしためしためしにににはははありありありけれけれけれ。。。つれづれつれづれつれずれとととものすれものすれものすればばば思思おもふふう心心こころあるあるあるにににやややととと世世よののの人人ひとももも推推おししし量量はかるるるらむらむらんををを、、、宿宿すく世世せのののひくひくひく方方かたにてにてにてなほなほしきなほなほしきなおなおしき事事ことにににありありありありありありてててなびくなびくなびく、、、いといといとしりびしりびしりびににに人人ひとわろきわろきわろきことことことぞぞぞややや。。。
- 5いみじういみじういみじゅう思思おもひひいのぼれのぼれのぼれどどど心心こころにににしもしもしもかなはかなはかなわずずず、、、限限かぎりあるあるあるものものものからからからすきずきしきすきずきしきすきずきしき心心こころつかはつかはつかわるるるななな。。。いはけなくいはけなくいわけなくよりよりより宮宮みやののの內內うちよりよりより生生おひひい出出いでででゝゝて身身みををを心心こころにににももも任任まかせせせずずず所所ところせくせくせく、、、聊聊いささかののの事事ことのののあやまりあやまりあやまりもももあらあらあらばばばかろがろしきかろがろしきかろがろしきそしりそしりそしりをををややや負負おははわむむんとととつゝみつゝみつつみしししだにだにだに、、、猶猶なおすきずきしきすきずきしきすきずきしきとがとがとがををを負負おひひいててて世世よにににはしたなめはしたなめはしたなめられられられききき。。。位位くらいあさくあさくあさく何何なにとととなきなきなき身身みののの程程ほど、、、うちとけうちとけうちとけ心心こころのののまゝまゝままなるなるなるふるまひふるまひふるまいなどなどなどものせものせものせらるらるらるななな。。。
- 6心心こころおのづからおのづからおのずからおごりおごりおごりぬれぬれぬればばば、、、思思おもひひいしづむしづむしずむべきべきべきくさはひくさはひくさわいなきなきなき時時とき女女おんなのののことことことにてにてにてなむなむなん、、、賢賢かしこききき人人ひとむかしむかしむかしももも亂亂みだるゝるゝるるためしためしためしありありありけるけるける。。。さるさるさるまじきまじきまじき事事ことににに心心こころをををつけつけつけててて人人ひとののの名名なをををもももたてたてたてみづからみづからみずからももも恨恨うらみをををおふおふおうなむなむなんつひつひついのののほだしほだしほだしとととなりなりなりけるけるける。。。とりとりとりあやまりあやまりあやまりつゝつゝつつ見見みむむん人人ひとのののわがわがわが心心こころにににかなはかなはかなわずずず忍忍しのばばばむむん事事こと難難かたきききふしふしふしありありありともともとも猶猶なお思思おもひひいかへさかへさかえさむむん心心こころをををならひならひならいててて、、、もしはもしはもしは親親おやののの心心こころににに讓讓ゆずりりり、、、もしはもしはもしは親親おやなくなくなくててて世世よののの中中なかかたほかたほかたおにににありありありともともとも、、、人人ひとがらがらがら心心こころ苦苦ぐるしくしくしくなどなどなどあらあらあらむむん人人ひとをををばばば、、、それそれそれををを片片かたかどかどかどににによせよせよせてててももも見見み給給たまへへえ。。。わがわがわがためためため人人ひとのののためためため遂遂ついににによかるよかるよかるべきべきべき心心こころぞぞぞ深深ふこうううあるあるあるべきべきべき」」」などなどなどのどやかのどやかのどやかにににつれづれつれづれつれずれなるなるなる折折おりはははかゝるかゝるかかる心心こころづかひづかひずかいをををのみのみのみ敎敎おしへへへ給給たまふふう。。。かやうかやうかようなるなるなる御御おんいさめいさめいさめにににつきつきつきててて、、、たはぶれたはぶれたわぶれにてにてにてもももほかほかほかざまざまざまののの心心こころををを思思おもひひいかゝるかゝるかかるははは哀哀あわれににに人人ひとやりやりやりならならならずずず覺覺おぼえええ給給たまふふう。。。
現代語訳
内大臣は、この源氏の姫君のご準備を、他人事としてお聞きになるにつけても、たいそう気がかりで寂しいとお思いになる。姫君(雲居雁)のご様子は、盛りに整って、惜しいほど美しい。所在なく沈み込んでいらっしゃる様子が、たいそうお嘆きの種であるのに、あの人(夕霧)のご様子も相変わらず穏やかなので、気弱く自分から近寄るのも物笑いだし、あの人が熱心だった時に、なびいていればよかったなどと、人知れずお嘆きになって、一方的に罪を負わせることもおできにならない。
このように少し折れていらっしゃるご様子を、宰相の君(夕霧)はお聞きになるけれど、しばらくつらかったお心を恨めしく思うので、平静を装って振る舞い、心を静めて、さすがにほかの方に心を移すこともできそうにない。自分の心から、冗談めかしても辛抱しにくい時が多いけれど、浅緑の袍をあざけった御乳母たちに、中納言に昇進してから見返してやろうというお心が深いのだろう。
大臣(源氏)は、妙に身の定まらない様子だとお悩みになって、「あの方面のことを思い切ってしまったのなら、右大臣や中務宮などが、意向をほのめかして言わせていらっしゃるようだから、どこなりとも決めなさい」とおっしゃるけれど、夕霧は何も申し上げなさらず、かしこまった様子でお控えになっている。
源氏は「このようなことは、恐れ多い父院のご教訓にさえ従う気にはなれなかったので、口を出すのも気が進まないが、今思い合わせると、あのご教訓こそ長く守るべき手本であった。いつまでも独りでいると、何か思う心があるのかと世の人も推し量るだろうに、宿世の引く方として、平凡な縁にずるずるとなびくのは、たいそう締まりがなく、体裁の悪いことだよ。
どんなに高望みをしても、思いどおりにはならないし、限りのある身なのだから、色好みの心を使うな。私は幼い頃から宮中で育って、身を心にも任せず窮屈に、少しの過ちでもあれば軽々しい非難を負うだろうと慎んでいたのでさえ、やはり好色の罪を負って、世にはしたない目に遭わされた。位も低く、何ということもない身の程で、気を許して心のままに振る舞うようなことはしなさるな。
心が自然と驕ってしまうと、心を静める手立てのない時に、女のことで、賢い人も昔から身を誤る例があった。あってはならないことに心を寄せて、人の名をも立て、自分も恨みを負うのが、最後の束縛となるのだ。誤って妻とした人が、自分の心にかなわず、我慢しにくい点があっても、やはり思い直す心を身につけて、親の意向に譲ったり、また親がなくて暮らし向きが不十分であっても、人柄がいじらしいような人ならば、それを一つの取り柄と思って、添い遂げなさい。自分のためにも人のためにも、最後にはよい結果となるような心こそ、深くあるべきだ」などと、のどかで所在ない時には、このような心がまえばかりをお教えになる。このようなご訓戒に従って、冗談にもほかの方に心を寄せることは、雲居雁に気の毒で、自分の心からできないと、夕霧は思っていらっしゃる。
意訳
内大臣は、雲居雁のことで悔やむが、自分から折れることもできない。夕霧も、つらかった仕打ちを恨んで、平静を装っている。
源氏は、夕霧に縁談を勧め、自分の若い頃の経験を語って、身を慎み、妻とした人と添い遂げるよう訓戒する。
語釈・文法注
- あさみどり
- 浅緑(六位の袍の色)。少女の巻で、雲居雁の乳母が、六位の夕霧を「浅緑」とあざけったことを指す。
文法
- 反実仮想の「ましかば」(靡きなましかば)
- 「なびいていたならば」。後に「よかったのに」などが省略されている。
- 禁止の「な」(すきずきしき心つかはるな)
- 「色好みの心を使うな」。
解説
源氏の訓戒は、自らの若き日の過ちを踏まえたものである。「猶すきずきしきとがを負ひて世にはしたなめられき」という言葉には、須磨流謫のつらい経験が込められている。
源氏が説く「人がら心苦しくなどあらむ人をば、それを片かどによせても見給へ」という教えは、後に夕霧が落葉の宮に心を移すことを思うと、皮肉に響く。夕霧の誠実さは、ここでは雲居雁への一途な思いとして描かれている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、566–567頁(コマ288)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日