源氏物語 第31帖 真木柱(16)
髭黒、玉鬘を自邸に迎える
帝が玉鬘を訪れたと聞いた髭黒は、気が気でなく、内大臣などとうまく計らって、玉鬘の退出の許しを得る。帝は、こうなっては二度と出仕させない人もいるだろうと、たいそう残念がる。帝は、聞いていた以上に美しい玉鬘をいっそう惜しく思い、深い心を込めて約束を交わす。手車が寄せられ、髭黒がそばで騒ぎ立てるまで、帝は玉鬘のそばを離れず、「九重に」の歌を詠み、玉鬘も「かばかりは」と返す。髭黒は、そのまま玉鬘を自邸に連れ帰る。内大臣は急なことを残念に思いながらも許し、源氏はたいそう意外で不本意に思う。玉鬘は思いがけない成り行きを嘆き、帝の訪問を恨む髭黒を疎ましく思う。兵部卿宮からも便りは途絶え、髭黒は思いがかなった喜びで、玉鬘の世話に明け暮れる。

- 1大將大將だいしょうはははかくかくかく渡渡わたらららせせせ給給たまへへえるるるををを聞聞きききき給給たまひひいててていとゞいとゞいとどしづしづしず心心こころなけれなけれなければばば急急いそぎぎぎ惑惑まどはしはしわしたまふたまふたまう。。。みづからみづからみずからももも似似にげなきげなきげなきともともとも出出いででで來來きぬぬぬべきべきべき身身みなりなりなりけりけりけりととと心心こころうきうきうきににに、、、のどめのどめのどめ給給たまははわずずずまかでまかでまかでさせさせさせ給給たまふふうべきべきべきさまさまさま、、、つきづきしきつきづきしきつきずきしきことつけことつけことつけどもどもども作作つくりりり出出いでででゝゝて、、、父父ちちおとゞおとゞおとどなどなどなど賢賢かしこくくくたばかりたばかりたばかり給給たまひひいてててなむなむなん御御おん暇暇いとま許許ゆるささされれれたまひたまひたまいけるけるける。。。
- 2「「「さらばさらばさらばものものものごりごりごりしししてててまたまたまたいだしいだしいだしたてたてたてぬぬぬ人人ひともももぞぞぞあるあるある。。。いといといとこそこそこそからけれからけれからけれ。。。人人ひとよりよりより先先さきににに進進すすみみみにににししし志志こころざしののの、、、人人ひとににに後後おくれれれててて氣色氣色けしきとりとりとりしたがふしたがふしたがうよよよ。。。昔昔むかしのののなにがしなにがしなにがしがががためしためしためしももも、、、引引ひききき出出いでででつつつべきべきべき心地心地ここちなむなむなんするするする」」」とてとてとて誠誠まことにににいといといと口口くち惜惜おしししとととおぼしめしおぼしめしおぼしめしたりたりたり。。。聞聞きこしめしゝしめしゝしめししにににもももこよなきこよなきこよなきちかちかちかまさりまさりまさりををを、、、始始はじめよりよりよりさるさるさる御心御心みこころなからなからなからむむんにてにてにてだにだにだにももも御覽御覽ごらんじじじ過過すぐすぐすぐすまじきまじきまじきををを、、、まいてまいてまいていといといとねたうねたうねとう飽飽あかかかずずずおぼさおぼさおぼさるるる。。。
- 3されどされどされどひたぶるひたぶるひたぶるににに淺淺あさききき方方かたににに思思おもひひい疎疎うとまままれれれしししとてとてとていみじういみじういみじゅう心心こころ深深ふかきききさまさまさまにににのたまひのたまひのたまい契契ちぎりりりてててなつけなつけなつけ給給たまふふうもももかたじけなうかたじけなうかたじけのう、、、われわれわれはははわれわれわれととと思思おもふふうものものものをををとととおぼすおぼすおぼす。。。御御おん手手て車車ぐるまよせよせよせてててこなたこなたこなた彼方彼方かなたのののかしづきかしづきかしずき人人びとどもどもども心心こころもとながりもとながりもとながり、、、大將大將だいしょうもももいといといと物物ものむつかしうむつかしうむつかしゅう立立たちちちそひそひそい騷騷さわぎぎぎ給給たまふふうまでまでまでえええおはしましおはしましおわしまし離離はなれれれずずず、、、かうかうこういといといときびしききびしききびしき近近ちかきききまもりまもりまもりこそこそこそむつかしけれむつかしけれむつかしけれとととにくまにくまにくませせせ給給たまふふう。。。
- 4「「「九九ここの重重えにににかすみかすみかすみへだてへだてへだてばばば梅梅うめののの花花はなたゞたゞただかばかりかばかりかばかりももも匂匂におひひいこじこじこじとととややや」」」。。。異異ことなるなるなる事事ことなきなきなきことことことなれなれなれどもどもども御御おんありさまありさまありさまけはひけはひけわいををを見見み奉奉たてまつるるる程程ほどはははをかしくをかしくおかしくもももやややありありありけむけむけん。。。「「「野野のをををなつかしみなつかしみなつかしみあかいあかいあかいつつつべきべきべき夜夜よををを惜惜おしむむむべかべかべかめるめるめる人人ひとももも、、、身身みをををつみつみつみててて心心こころ苦苦ぐるしうしうしゅうなむなむなん。。。いかでいかでいかでかかか聞聞きこゆゆゆべきべきべき」」」とととおぼしおぼしおぼしなやむなやむなやむももも、、、かたじけなしかたじけなしかたじけなしととと見見み奉奉たてまつるるる。。。「「「かばかりかばかりかばかりははは風風かぜにににもももつてつてつてよよよ花花はなのののえええににに立立たちちちならぶならぶならぶべきべきべき匂匂におひひいなくなくなくともともとも」」」。。。さすがにさすがにさすがにかけかけかけはなれはなれはなれぬぬぬけはひけはひけわいををを哀哀あわれとととおぼしおぼしおぼしつゝつゝつつ顧顧かえりみみみがちがちがちにてにてにて渡渡わたらららせせせ給給たまひひいぬぬぬ。。。
- 5やがてやがてやがて今夜今夜こよいかのかのかの殿殿とのにににとととおぼしおぼしおぼしまうけまうけもうけたるたるたるををを、、、かねてかねてかねてははは許許ゆるささされれれあるあるあるまじきまじきまじきににによりよりより漏漏もらししし聞聞きこえええ給給たまははわででで、、、「「「俄俄にわかにににいといといとみだりみだりみだり風風かぜののの惱惱なやましきましきましきををを心心こころ安安やすききき所所ところにににうちうちうち休休やすみみみ侍侍はべらららむむんほどほどほど、、、よそよそよそよそよそよそにににででではははいといといと覺束覺束おぼつかなくなくなく侍侍はべらららむむんををを」」」とととおいらかおいらかおいらかににに申申もうしししないないない給給たまひひいてててやがてやがてやがて渡渡わたししし奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。
- 6父父ちちおとゞおとゞおとど俄俄にわかなるなるなるををを儀式儀式ぎしきなきなきなきやうやうようにににやややとととおぼせおぼせおぼせどどど、、、强强あながちにちにちにさばかりさばかりさばかりののの事事ことをををいひいひいい妨妨さまたげげげむむんももも人人ひとののの心心こころおくおくおくべしべしべしとととおぼせおぼせおぼせばばば、、、「「「ともかくもともかくもともかくももとよりもとよりもとよりしだいしだいしだいならならならぬぬぬ人人ひとののの御御おん事事ことなれなれなればばば」」」とととぞぞぞ聞聞きこえええ給給たまひひいけるけるける。。。六條六條ろくじょう殿殿どのぞぞぞいといといとゆくりなくゆくりなくゆくりなくほほほ意意いなしなしなしとととおぼせおぼせおぼせどどどなどなどなどかかかさささはははあらあらあらむむん。。。女女おんなももも鹽鹽しおやくやくやく煙煙けぶりののの靡靡なびきききけるけるける方方かたをををあさましあさましあさましとととおぼせおぼせおぼせどどど、、、盜盜ぬすみみみもてもてもていきいきいきたらたらたらましましましとととおぼしおぼしおぼしなずらへなずらへなずらえててて、、、いといといとうれしくうれしくうれしく心心ここちちちおちいおちいおちいぬぬぬ
- 7かのかのかの入入いりりりゐゐいさせさせさせ給給たまへへえりりりしししことことことをををいみじういみじういみじゅうゑんじゑんじえんじ聞聞きこえええさせさせさせ給給たまふふうももも心心こころづきなくづきなくずきなく、、、なほなほしきなほなほしきなおなおしき心地心地ここちしししててて世世よにににははは心心こころとけとけとけぬぬぬ御御おんもてなしもてなしもてなしいよいよいよいよいよいよ氣色氣色けしきあしあしあし。。。かのかのかの宮宮みやにににもももさささこそこそこそたけうたけうたきょうのたまひのたまひのたまいしかしかしか、、、いみじういみじういみじゅうおぼしおぼしおぼし侘侘わぶれぶれぶれどどど絕絕たえええててておとづれおとづれおとずれずずず、、、思思おもふふう事事ことかなひかなひかないぬるぬるぬる御御おんかしづきかしづきかしずきににに明明あけ暮暮くれいとなみいとなみいとなみててて過過すぐしぐしぐし給給たまふふう。。。
現代語訳
大将は、帝がこのようにお渡りになったことをお聞きになって、ますます気が気でないので、退出を急いでおせかしになる。玉鬘自身も、似つかわしくないことも起こりかねない身だったのだと情けなく思うので、ゆっくりなさらずに退出なさるような、もっともらしい口実などを作り出して、父大臣(内大臣)などがうまく取り計らいなさって、お暇をお許しいただいたのであった。
帝は「それでは、懲りて二度と出仕させない人もいるだろう。たいそうつらいことだ。人より先に思いを寄せた私の志が、人に後れて、相手の顔色をうかがって従うとは。昔の某の例も、引き合いに出したい気持ちがする」と言って、本当にたいそう残念だとお思いになっている。お聞きになっていたのよりも、こよなく近くで見まさりがするので、初めからそのようなお心がなかったとしても、見過ごしになれないだろうに、まして、たいそう妬ましく、飽き足りなくお思いになる。
けれども、ひたすら浅い心だと疎まれまいとして、たいそう心深い様子でお約束なさって、親しみを示しなさるのも恐れ多く、玉鬘は、私は私と思っているのにとお思いになる。御手車を寄せて、こちらとあちらの世話役の人々が待ちきれずにいて、大将もたいそうわずらわしそうに付き添って騒ぎなさるまで、帝はお離れになることができず、このようにたいそう厳しい近くの護衛こそわずらわしいと、お憎みになる。
「九重にかすみへだてば梅の花たゞかばかりも匂ひこじとや(宮中に霞が隔てたならば、梅の花は、これほどの香りさえも、もう匂ってこないというのか)」。特に変わったこともない歌だけれど、帝のご様子を拝見する時には、趣深くも思われたのだろうか。帝は「野をなつかしみ一夜明かしてしまいそうな夜を、惜しむらしい人もいるので、身につまされて心苦しい。どうしてお便りを差し上げられようか」とお悩みになるのも、恐れ多いと拝見する。玉鬘は「かばかりは風にもつてよ花のえに立ちならぶべき匂ひなくとも(せめてこれほどのお便りは、風にことづけてください。花の枝に並ぶほどの香りは、私にはないとしても)」。さすがに離れきらない様子を、帝はしみじみとお思いになりながら、振り返りがちにお帰りになった。
大将は、そのまま今夜あちらの邸にとお考えになって準備していたのを、前もってはお許しがないだろうから、源氏には漏らし申し上げなさらずに、「急にたいそうひどく風邪をひいて気分が悪いので、気楽な所で休みましょうと思いますが、離れ離れでは、たいそう気がかりでございますので」と、穏やかに申し上げて、そのまま玉鬘をお移し申し上げなさる。
父大臣は、急なことで儀式もないようではとお思いになるけれど、無理にそれほどのことを言って妨げるのも、相手の気持ちを損ねるだろうとお思いになるので、「どうなるにしても、もともと私の思いどおりにならない人のことだから」と申し上げなさった。六条殿(源氏)は、たいそう思いがけず、不本意だとお思いになるけれど、どうしようもない。女君も、塩焼く煙のように、思いがけない方になびいてしまったことをあきれたこととお思いになるけれど、大将は、盗み出していったようなものだと思いなぞらえて、たいそううれしく、心が落ち着いた。
大将が、帝がお入りになっていたことを、ひどく恨み申し上げなさるのも、玉鬘は不快で、品のない気持ちがして、夫婦の間では打ち解けないお振る舞いで、ますます機嫌が悪い。あの兵部卿宮も、あれほど強気におっしゃっていたけれど、たいそう思い悩みなさるが、まったく便りも途絶えてしまい、大将は、思いがかなった喜びで、玉鬘のお世話に明け暮れ精を出して過ごしていらっしゃる。
意訳
帝が玉鬘を訪れたと聞いた髭黒は、急いで退出させる。帝は名残を惜しんで歌を詠み、玉鬘も歌を返す。
髭黒は、そのまま玉鬘を自邸に連れ帰る。源氏は不本意に思い、玉鬘も髭黒を疎ましく思うが、髭黒は思いがかなった喜びで、玉鬘の世話に明け暮れる。
語釈・文法注
文法
- 危惧の「もぞ」(いだしたてぬ人もぞある)
- 「二度と出仕させない人もいるだろう、困ったことだ」。
- 反実仮想の「まし」(盜みもていきたらまし)
- 「盗み出していったようなものだ」。そうではないが、そう思いなぞらえる。
解説
髭黒は、帝の訪問に危機感を抱き、源氏にも知らせずに玉鬘を自邸に連れ帰る。「盜みもていきたらまし」という表現は、伊勢物語の芥川の段を思わせ、髭黒の無骨な情熱を際立たせている。
源氏は「いとゆくりなくほ意なし」と思うが、どうすることもできない。玉鬘は、源氏の手を離れ、髭黒の妻として新しい生活を始める。六条院の物語の一つの区切りである。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、550–551頁(コマ280)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日