源氏物語 第31帖 真木柱(12)
髭黒、子らに会えず
北の方が実家に帰ったと聞いた髭黒は、式部卿宮の軽々しい振る舞いを恨み、玉鬘に事情を話して、宮邸へ出かける。立派に装った髭黒を、人々は似合わない夫婦ではないと見るが、玉鬘は見向きもしない。髭黒は、まず自邸に寄って木工の君から様子を聞き、姫君が残した真木柱の歌を見て、涙をこらえきれない。宮邸に着くと、式部卿宮は会おうとせず、今さら心を入れ替えるはずもないと諫める。髭黒は、せめて姫君に会わせてほしいと頼むが許されず、十歳の男君と八歳の次男だけを連れて帰る。子どもたちを自邸に残し、玉鬘の美しさに慰められる。

- 1大將大將だいしょうののの君君きみ、、、かくかくかく渡渡わたりりり給給たまひひいにににけるけるけるををを聞聞ききききててて、、、怪怪あやしうしうしゅう若々若々わかわかしきしきしきなからひなからひなからいのののやうやうようにににふすべふすべふすべ顏顏がおにてにてにてものしものしものし給給たまひひいけるけるけるかなかなかな、、、さうじみさうじみそうじみはははしかしかしかひきゝりひきゝりひききりにににきはきはしききはきはしききわきわしき心心こころもももなきなきなきものものものををを宮宮みやのののかくかくかくかるがるしうかるがるしうかるがるしゅうおはするおはするおわするととと思思おもひひいててて、、、君君きみだちだちだちもももありありあり人人ひとめめめもももいとほしきいとほしきいとおしきににに思思おもひひい亂亂みだれれれててて、、、かんかんかんののの君君きみににに、、、「「「かくかくかく怪怪あやしきしきしきことことことなむなむなん侍侍はべるるるなるなるなる。。。なかなかなかなかなかなか心心こころやすくやすくやすくははは思思おもひひい給給たまへへえなせなせなせととと、、、さてさてさて片片かたすみすみすみにににかくろへかくろへかくろえてててもももありありありぬぬぬべきべきべき人人ひとののの心心こころ安安やすさささををを、、、おだしうおだしうおだしゅう思思おもひひい給給たまへへえつるつるつるににに、、、俄俄にわかにににかのかのかの宮宮みやののの物物ものししし給給たまふふうならならならむむん人人ひとののの聞聞きききき見見みるるる事事こともももなさけなきなさけなきなさけなきををを打打うちちちほのめきほのめきほのめきててて參參まいりりりきききなむなむなん」」」とてとてとて出出いででで給給たまふふう。。。
- 2よきよきよきうへうへうえののの御御おんぞぞぞ、、、柳柳やなぎののの下襲下襲したがさね、、、靑靑あおにびにびにびののの綺綺きののの指貫指貫さしぬき着着き給給たまひひいててて引引ひきききつくろひつくろひつくろい給給たまへへえるるるいといといとものものしものものしものものし。。。などなどなどかかかははは似似にげなからげなからげなからむむんととと人々人々びとははは見見み奉奉たてまつるるるををを、、、かんかんかんののの君君きみはははかゝるかゝるかかる事事ことどもどもどもををを聞聞きききき給給たまふふうにににつけつけつけてててももも、、、身身みののの心心こころづきなうづきなうずきのうおぼしおぼしおぼし知知しらららるれるれるればばば見見みもももやりやりやり給給たまははわずずず。。。
- 3宮宮みやにににうらみうらみうらみ聞聞きこえええむむんとてとてとてまうでまうでもうで給給たまふふうまゝまゝままににに、、、まづまづまず殿殿とのにににおはしおはしおわしたれたれたればばばもくもくもくののの君君きみなどなどなど出出いででできききてててありありありしししさまさまさま語語かたりりりきこゆきこゆきこゆ。。。姫君姫君ひめぎみののの御御おん有樣有樣ありさま聞聞きききき給給たまひひいててて、、、をゝしくをゝしくおおしく念念ねんじじじ給給たまへへえどどどほろほろほろほろほろほろとととこぼるゝこぼるゝこぼるる御御おん氣色氣色けしきいといといと哀哀あわれなりなりなり。。。「「「さてもさてもさても世世よののの人人ひとににに似似にずずず怪怪あやしきしきしき事事ことどもどもどもををを見見みすぐすすぐすすぐすこゝらこゝらここら年年とし頃頃ごろののの志志こころざしををを見見みしりしりしり給給たまははわずずずもももありありありけるけるけるかなかなかな。。。いといといと思思おもひひいののの儘儘ままならならならむむん人人ひとははは今今いままでまでまでももも立立たちちちとまるとまるとまるべくべくべくやはやはやはあるあるある。。。よしよしよしかのかのかのさうじみさうじみそうじみはははとてもとてもとてもかくてもかくてもかくてもいたづらいたづらいたずら人人びとととと見見みえええ給給たまへへえばばば同同おなじじじとととなりなりなり。。。をさなきをさなきおさなき人々人々びともももいかやういかやういかようにににもてなしもてなしもてなし給給たまははわむむんとととすすすらむらむらん」」」ととと打打うちちち歎歎なげきききつゝつゝつつかのかのかのまきまきまき柱柱ばしらををを見見み給給たまふふうににに、、、御御おん手手てもももをさなけれをさなけれおさなけれどどど心心こころばへばへばえののの哀哀あわれににに戀戀こいしきしきしきまゝまゝままににに、、、道道みちすがらすがらすがら淚淚なみだおしおしおしのごひのごひのごいつゝつゝつつまうでまうでもうで給給たまへへえれれればばば對面對面たいめんししし給給たまふふうべくべくべくもももあらあらあらずずず。。。
- 4「「「何何なにかかかたゞたゞただ時時ときにににうつるうつるうつる心心こころののの今今いま始始はじめてめてめて變變かわりりり給給たまふふうにににもももあらあらあらずずず、、、年年とし頃頃ごろ思思おもひひいうかれうかれうかれ給給たまふふうさまさまさま聞聞きききき渡渡わたりりりてててももも久久ひさしくしくしくなりなりなりぬるぬるぬるををを、、、いづくいづくいずくををを又又また思思おもひひい直直なおるるるべきべきべき折折おりとととかかかまたまたまたむむん。。。いとゞいとゞいとどひがひがしきひがひがしきひがひがしきさまさまさまをををのみのみのみこそこそこそ見見みえええはてはてはて給給たまははわめめめ」」」ととと諫諫いさめめめ申申もうししし給給たまふふうことわりことわりことわりなりなりなり。。。「「「いといといと若々若々わかわかしきしきしき心地心地ここちもももししし侍侍はべるるるかなかなかな。。。思思おもほしほしおし捨捨すつつつまじきまじきまじき人々人々びとももも侍侍はべれれればばばととと、、、のどかのどかのどかににに思思おもひひい侍侍はべりりりけるけるける心心こころののの怠怠おこたりをををかへすがへすかへすがへすかえすがえす聞聞きこえええてててもももやるやるやる方方かたなしなしなし。。。今今いまははは唯唯ただなだらかなだらかなだらかににに御覽御覽ごらんじじじ許許ゆるしししててて罪罪つみさりさりさり所所どころなうなうのう世世よ人人ひとにににもももことわらことわらことわらせせせてててこそこそこそ、、、かやうかやうかようにににももももてないもてないもてない給給たまははわめめめ」」」などなどなど聞聞きこえええ煩煩わずらひひいててておはすおはすおわす。。。
- 5姫君姫君ひめぎみをををだにだにだに見見み奉奉たてまつらららむむんととと聞聞きこえええ給給たまへへえれれれどどど出出いだししし奉奉たてまつるるるべくべくべくもももあらあらあらずずず。。。男男おとこ君達君達きんだち十十とおなるなるなるははは殿上殿上てんじょうししし給給たまふふういといといとうつくしうつくしうつくし。。。人人ひとにににほめほめほめられられられててて、、、かたちかたちかたちなどなどなど用意用意よういあらあらあらねねねどどどいといといとらうらうしうらうらうしうろうろうしゅう物物ものののの心心こころやうやうやうやうようようしりしりしり給給たまへへえりりり。。。次次つぎののの君君きみははは八八やつつつばかりばかりばかりにてにてにていといといとらうたげらうたげろうたげににに姫君姫君ひめぎみにににももも覺覺おぼえええたれたれたればばばかきかきかきなでなでなでつゝつゝつつ、、、「「「あごあごあごをををこそこそこそははは戀戀こいしきしきしき御御おんかたみかたみかたみにににももも見見みるるるべかべかべかめれめれめれ」」」などなどなどうちうちうち泣泣なきききててて語語かたらひらひらい給給たまふふう宮宮みやにににももも御御おん氣色氣色けしき給給たまはらはらわらせせせ給給たまへへえどどど、、、「「「風風かぜおこりおこりおこりてててためらひためらひためらい侍侍はべるるる程程ほどにてにてにて」」」とととあれあれあればばばはしたなくはしたなくはしたなくててて出出いででで給給たまひひいぬぬぬこのこのこの君達君達きんだちをををばばば車車くるまににに乘乘のせせせてててかたらひかたらひかたらいおはすおはすおわす。。。
- 6六條六條ろくじょう殿殿どのにににはははえええゐゐいててておはせおはせおわせねねねばばば、、、殿殿とのにににとゝめとゝめととめててて「「「猶猶なおこゝこゝここにににあれあれあれ、、、來來きててて見見みむむんにににももも心心こころ安安やすかるかるかるべくべくべく」」」とととののの給給たまふふう。。。うちうちうちながめながめながめててていといといと心心こころ細細ぼそげげげににに見見み送送おくりりりたるたるたるさまさまさまなどなどなどもももいといといと哀哀あわれなるなるなるににに、、、物物もの思思おもひひい加加くわはりはりわりぬるぬるぬる心地心地ここちすれすれすれどどど、、、女君女君おんなぎみののの御御おんさまさまさまののの見見みるるるかひかひかいありありありてててめでたきめでたきめでたきににに、、、ひがひがしきひがひがしきひがひがしき御御おん樣樣さまををを思思おもひひい比比くらぶるぶるぶるにににもももこよなくこよなくこよなくててて萬萬よろずををを慰慰なぐさめめめ給給たまふふう。。。
現代語訳
大将の君は、北の方がこのようにお移りになったことを聞いて、妙に若々しい夫婦仲のように、嫉妬した顔をしていらっしゃったことよ、正身(北の方)は、そのようにきっぱりと思い切るような、はっきりした心もないのに、宮がこのように軽々しくていらっしゃるのだと思って、子どもたちもいるし、人目も気の毒なので思い乱れて、尚侍の君(玉鬘)に、「このように妙なことがあったそうです。かえって気楽だとは思いますが、そのまま片隅に隠れて過ごしていてもよい人の気楽さを、穏やかに思っておりましたのに、急にあの宮がなさったのでしょう。人が見聞きするのも情けないので、ちょっと顔を出して参りましょう」と言ってお出かけになる。
立派な袍に、柳襲の下襲、青鈍色の綺の指貫を着て、身なりを整えていらっしゃるのは、たいそう堂々としている。どうして似合わないことがあろうかと人々は拝見するが、尚侍の君は、このようなことをお聞きになるにつけても、わが身がいやに思い知られるので、見向きもなさらない。
大将は、宮に恨み言を申し上げようとして参上なさる途中で、まず自分の邸にいらっしゃると、木工の君などが出て来て、その時の様子をお話し申し上げる。姫君のご様子をお聞きになって、男らしくこらえていらっしゃるけれど、ぽろぽろとこぼれる涙のご様子が、たいそう哀れである。「それにしても、世の人とは違う妙なことどもを我慢して過ごしてきた長年の気持ちを、分かってくださらなかったことよ。たいそう思いのままに振る舞う人なら、今までも留まっていられたろうか。まあよい、あの正身は、どちらにしても役に立たない人とお見えになるので、同じことだ。幼い子どもたちを、どのように扱いなさるつもりだろう」と嘆きながら、あの真木柱の歌をご覧になると、筆跡も幼いけれど、心ばえが哀れで恋しいままに、道中涙をぬぐいながら宮邸に参上なさると、北の方はお会いになるはずもない。
宮は「どうして、ただ時勢に移る心が、今初めて変わりなさったわけでもない。長年浮ついていらっしゃる様子を聞き続けて久しくなったのに、いつまた思い直す時を待てというのか。ますますひねくれた有様ばかりをお見せになるだろう」と、お諫め申し上げなさるのも、もっともである。大将は「たいそう若々しい気持ちもいたしますね。お見捨てになるはずのない子どもたちもおりますからと、のんびり構えておりました心の怠慢を、繰り返しお詫び申し上げても、どうしようもありません。今はただ、穏やかにお許しくださって、罪を逃れようもないほどに世間の人にも納得させてから、このようにもなさるのがよいでしょう」などと、困りながら申し上げていらっしゃる。
せめて姫君だけでも拝見したいと申し上げなさるけれど、出してくださるはずもない。男君たちのうち十歳の子は、殿上童をしていらっしゃって、たいそうかわいらしい。人にほめられて、容貌などはそれほどでもないが、たいそう利発で、物事の分別もだんだんついていらっしゃる。次の君は八歳ほどで、たいそうかわいらしく、姫君にも似ているので、撫でながら、「お前こそを恋しい姫君の形見として見ることになるのだろう」などと泣いてお話しなさる。宮にもご意向をお伺いなさるけれど、「風邪を引いて休んでおりますところで」とあるので、きまり悪くてお出になった。この君達を車に乗せて、話しながらいらっしゃる。
六条殿(玉鬘のいる六条院)には連れていらっしゃることができないので、自分の邸に残して、「やはりここにいなさい。来て会うにも気楽だから」とおっしゃる。子どもたちがぼんやりと、たいそう心細そうに見送っている様子なども、たいそう哀れなので、物思いが加わった気持ちがするけれど、女君(玉鬘)のご様子が見がいがあってすばらしいので、ひねくれた北の方のご様子と思い比べるにつけても、比べものにならないほどで、何もかも慰められなさる。
意訳
北の方が実家に帰ったと聞いた髭黒は、式部卿宮邸へ出かけるが、途中で姫君の真木柱の歌を見て涙をこらえきれない。式部卿宮は会おうとせず、姫君にも会わせてもらえない。
髭黒は男の子二人だけを連れて帰り、自邸に残す。玉鬘の美しさに、髭黒は何もかも慰められる。
語釈・文法注
文法
- 反語の「やは」(今までも立ちとまるべくやはある)
- 「今までも留まっていられたろうか、いや、いられなかった」。
- 「をだに」(姫君をだに見奉らむ)
- 最小限の願望。「せめて姫君だけでも拝見したい」。
解説
髭黒は、真木柱の歌を見て涙を流す。北の方への愛情は失せても、娘への愛情は深い。しかし式部卿宮は姫君に会わせず、髭黒は男の子だけを連れて帰る。
男の子たちを自邸に残し、心細そうに見送られながらも、玉鬘の美しさにすべてを慰められる髭黒の姿は、身勝手でもあり、また哀れでもある。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、544–547頁(コマ277–278)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日