源氏物語 第31帖 真木柱(6)
北の方を諭す髭黒
髭黒は、父宮のことを軽く言うつもりはないとなだめ、六条院のまばゆい所に出入りするのは人目につくので、玉鬘をこちらに移したいのだと説明する。源氏の耳に悪い噂が入っては申し訳ないので、仲よくしてほしい、宮のもとに移っても忘れはしないと言う。北の方は、自分のつらさよりも、父宮が嘆いているのが気の毒だと答え、紫の上も、継母として自分たちを顧みないと父宮が恨んでいるが、自分はどうとも思わないと言う。髭黒は、紫の上は関係ないことで、こんなことが知られたら困ると言い、一日中北の方のもとで語らう。

- 1「「「宮宮みやののの御御おん事事ことをををかろくかろくかろくはははいかゞいかゞいかが聞聞きこゆるゆるゆる。。。おそろしうおそろしうおそろしゅう人人ひときゝきゝききかたはかたはかたわににになななのたまひのたまひのたまいなしなしなしそそそ」」」とととこしらへこしらへこしらえててて「「「かのかのかの通通かよひひい侍侍はべるるる所所ところのののいといといとまばゆきまばゆきまばゆき玉玉たまののの臺臺うてなにににうひうひしううひうひしうういういしゅうきすくきすくきすくなるなるなるさまさまさまにてにてにて出出いででで入入いるるる程程ほどももも、、、かたかたかたかたかたかたににに人人ひとめめめだつだつだつらむらむらんとととかたはらいたけれかたはらいたけれかたわらいたければばば心心こころやすくやすくやすくうつろはしうつろはしうつろわしてててむむんととと思思おもひひい侍侍はべるるるなりなりなり。。。
- 2おほきおほきおおきおとゞおとゞおとどのののさるさるさる世世よにににたぐひたぐひたぐいなきなきなき御御おんおぼえおぼえおぼえをををばばば更更さらにににももも聞聞きこえええずずず、、、心心こころはづかしうはづかしうはずかしゅういたりいたりいたり深深ふこうううおはすおはすおわすめるめるめる御御おんあたりあたりあたりににににくげにくげにくげなるなるなる事事こと漏漏もりりり聞聞きこえええばばばいといといとなむなむなんいとほしういとほしういとおしゅうかたじけなかるかたじけなかるかたじけなかるべきべきべき。。。なだらかなだらかなだらかにてにてにて御御おん中中なかよくよくよくてててものしものしものし給給たまへへえ宮宮みやににに渡渡わたりりり給給たまへへえりりりともともとも忘忘わするゝるゝるることことことははは侍侍はべらららじじじ。。。とてもとてもとてもかうかうこうてててももも今今いまさらさらさらににに志志こころざしののの隔隔へだたるたるたることことことはははあるあるあるまじけれまじけれまじけれどどど、、、世世よのののきこえきこえきこえ人人ひと笑笑わらへへえににに、、、まろまろまろがががためためためにににもももかるがるしうかるがるしうかるがるしゅうなむなむなん侍侍はべるるるべきべきべきををを年年とし頃頃ごろののの契契ちぎりたがへたがへたがえずずずかたみにかたみにかたみにうしろうしろうしろ見見みむむんとととおぼせおぼせおぼせ」」」とととこしらへこしらへこしらえ聞聞きこえええ給給たまへへえばばば
- 3「「「人人ひとののの御御おんつらさつらさつらさはははともかくもともかくもともかくも知知しりりり聞聞きこえええずずず、、、世世よののの人人ひとにににももも似似にぬぬぬ身身みのののうきうきうきをををなむなむなん宮宮みやにににもももおぼしおぼしおぼし歎歎なげきききててて今今いまさらさらさらににに人人ひと笑笑わらへへえなるなるなることことことととと御心御心みこころををを亂亂みだりりり給給たまふふうなれなれなればばば、、、いとほしういとほしういとおしゅういかでいかでいかでかかか見見みえええ奉奉たてまつらららむむんとととなむなむなん思思おもふふう。。。大殿大殿おおとのののの北北きたののの方方かたととと聞聞きこゆるゆるゆるもももことことこと人人ひとにににやはやはやは物物ものししし給給たまふふう。。。かれかれかれはははあらあらあらぬぬぬさまさまさまにてにてにておひおひおい出出いででで給給たまへへえるるる人人ひとののの、、、末末すえののの世世よにににかくかくかく人人ひとののの親親おやだちだちだちもてないもてないもてない給給たまふふうつらさつらさつらさをををなむなむなんおもほしおもほしおもおしのたまふのたまふのたまうなれなれなれどどど、、、こゝこゝここにににはははともかくもともかくもともかくも思思おもははわずずずややや。。。もてないもてないもてない給給たまははわむむんさまさまさまををを見見みるるるばかりばかりばかり」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、
- 4いといといとようようようののの給給たまふふうををを、、、例例れいののの御心御心みこころたがひたがひたがいにににややや苦苦くるしきしきしきことことことももも出出いでででこここむむん。。。「「「大殿大殿おおとのののの北北きたののの方方かたのののしりしりしり給給たまふふう事事ことにににももも侍侍はべらららずずず。。。いつきいつきいつきむすめむすめむすめのののやうやうようにてにてにて物物ものししし給給たまへへえばばばかくかくかく思思おもひひいおとさおとさおとされれれたるたるたる人人ひとののの上上うえまでまでまではははしりしりしり給給たまひひいなむなむなんややや。。。人人ひとののの御御おんおやおやおやげなくげなくげなくこそこそこそ物物ものししし給給たまふふうべかべかべかめれめれめれかゝるかゝるかかる事事ことののの聞聞きこえええあらあらあらばばばいといといと苦苦くるしかべきしかべきしかべき」」」などなどなど、、、日日ひ一一ひと日日ひ入入いりりり居居いててて語語かたらひらひらい申申もうししし給給たまふふう。。。
現代語訳
大将は「宮のことを、どうして軽く申し上げましょう。恐ろしく、人聞きの悪いようにおっしゃいますな」となだめて、「あの通っております所(六条院)の、たいそうまばゆい玉の御殿に、不慣れで無骨な様子で出入りするのも、あちこちで人目につくだろうと気が引けるので、気楽にこちらに移してしまおうと思うのです。
太政大臣の、あのように世に比類ないご信望は今さら申し上げるまでもなく、こちらが気後れするほど思慮深くいらっしゃるようなお方のあたりに、憎らしいことが漏れ聞こえたら、たいそう申し訳なく恐れ多いことでしょう。穏やかに、仲よくしていてください。宮のもとにお移りになっても、忘れることはありません。どちらにしても、今さら気持ちが隔たることはないでしょうが、世間の聞こえも物笑いになって、私のためにも軽々しいことになるでしょうから、長年の約束を違えず、互いに世話をし合おうとお思いください」となだめ申し上げなさると、
北の方は「あなたのつれなさは、何とも存じません。世の人とは違う私の身のつらさを、父宮もお嘆きになって、今さら物笑いになることだとお心を乱していらっしゃるそうなので、お気の毒で、どうしてお目にかかれましょうと思います。大殿の北の方(紫の上)と申し上げる方も、他人でいらっしゃいましょうか。あの方は、思いがけない様子で育った人で、末になって、このように人の親らしく振る舞っていらっしゃるつらさを、父宮はお思いになっておっしゃるそうですが、私はどうとも思いません。あなたがどう扱いなさるかを見ているだけです」とおっしゃるので、
たいそうもっともなことをおっしゃるけれど、いつものお心の乱れで、困ったことも起こるだろう。大将は「大殿の北の方がご存じのことでもありません。秘蔵の娘のようにして大切にされていらっしゃるので、このように見下された人のことまでは、ご存じでしょうか。宮は人の親らしくもないようでいらっしゃいますね。このようなことが聞こえたら、たいそう困ったことになるでしょう」などと、一日中入り込んで、語らい申し上げなさる。
意訳
髭黒は、六条院に出入りするのは人目につくので、玉鬘をこちらに移したいと説明し、仲よくしてほしいと北の方をなだめる。
北の方は、父宮が紫の上を恨んでいるが、自分はどうとも思わないと静かに答え、髭黒は一日中北の方のもとで語らう。
語釈・文法注
文法
- 禁止の「な…そ」(人きゝかたはになのたまひなしそ)
- 「人聞きの悪いようにおっしゃいますな」。
- 反語の「やは」(こと人にやは物し給ふ)
- 「他人でいらっしゃいましょうか、いや、そうではない」。紫の上は北の方の異母妹である。
解説
北の方と紫の上は、ともに式部卿宮の娘で、異母姉妹である。紫の上は幼い頃に源氏に引き取られたため、式部卿宮家とは疎遠になっていた。式部卿宮は、紫の上が玉鬘の後見をしていることを恨んでいる。
正気の時の北の方は、穏やかで分別のある女性である。「もてない給はむさまを見るばかり」という静かな言葉には、夫への深い失望が込められている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、536–539頁(コマ273–274)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日