源氏物語 第30帖 藤袴(7)
髭黒の大将
髭黒の大将は、同じ右近衛府の次官である柏木を呼んでは親しく語らい、内大臣にも求婚の意を伝えていた。内大臣は、髭黒は人柄もよく、将来は朝廷の後見となる人なので、悪くはないと思うが、源氏が宮仕えを決めた以上、口出しはできないと任せている。髭黒は東宮の女御の兄で、帝の信任も厚い。年は三十二、三で、北の方は紫の上の異母姉、式部卿宮の長女である。北の方は三、四歳年上で、特に欠点があるわけではないが、髭黒は心を寄せず、離縁したいと思っている。そのため源氏は、髭黒は玉鬘にふさわしくないと思っている。髭黒は、玉鬘が宮仕えに気が進まないらしいと聞き、実父の内大臣さえ反対しなければと、弁の君にせがむ。

- 1大將大將だいしょうはははこのこのこの中將中將ちゅうじょうははは同同おなじじじ右右みぎのののすけすけすけなれなれなればばば常常つねににによびよびよびとりとりとりつゝつゝつつねんごろねんごろねんごろにににかたらひかたらひかたらい、、、おとゞおとゞおとどにににももも申申もうさささせせせ給給たまひひいけりけりけり。。。人人ひとがらがらがらもももいといといとよくよくよくおほやけおほやけおおやけののの御御おん後後うしろ見見みとととなるなるなるべかべかべかめるめるめるまたまたまたかたかたかたなるなるなるををを、、、などなどなどかかかはははあらあらあらむむんとととおぼしおぼしおぼしながらながらながら、、、かのかのかのおとゞおとゞおとどのののかくかくかくししし給給たまへへえるるることことことをををいかゞいかゞいかがははは聞聞きこえええかへすかへすかえすべからべからべからむむん、、、さるさるさるやうやうようあるあるあることことことにににこそこそこそととと、、、心得心得こころえ給給たまへへえるるるすぢすぢすじさへさへさへあれあれあればばばまかせまかせまかせ聞聞きこえええ給給たまへへえりりり。。。
- 2このこのこの大將大將だいしょうははは春宮春宮とうぐうののの女御女御にようごののの御御おんはらからはらからはらからにににぞぞぞおはしおはしおわしけるけるける。。。おとゞおとゞおとどたちたちたちををを置置おききき奉奉たてまつりりりてててさしさしさしつぎつぎつぎののの御御おんおぼえおぼえおぼえ、、、いといといとやんごとなきやんごとなきやんごとなき君君きみなりなりなり。。。年年とし卅卅さんじゅう二二に三三さんののの程程ほどにににものしものしものし給給たまふふう。。。北北きたののの方方かたははは紫紫むらさきののの上上うえののの御御おん姉姉あねぞぞぞかしかしかし。。。式部卿式部卿しきぶきょうののの宮宮みやののの御御おんおほいおほいおおいきみきみきみよよよ。。。年年としのののほどほどほど三三みつつつ四四よつつつかかかこのかみこのかみこのかみははは、、、ことことことなるなるなるかたはかたはかたわにににもももあらあらあらぬぬぬををを、、、人人ひと柄柄がらやややいかゞいかゞいかがおはしましおはしましおわしましけむけむけん、、、おうなおうなおうなとととつけつけつけててて心心こころにににももも入入いれれれずずずいかでいかでいかで背背そむきききなむなむなんととと思思おもへへえりりり。。。
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現代語訳
大将(髭黒)は、この中将(柏木)が同じ右近衛府の次官なので、いつも呼び寄せては熱心に語らい、大臣(内大臣)にも申し上げさせなさった。内大臣は、髭黒は人柄もたいそうよく、朝廷のご後見となりそうな、またとない方なので、どうして不都合なことがあろうかとお思いになりながら、あの大臣(源氏)がこのようにお決めになったことを、どうしてお断り申し上げられようか、何かわけのあることなのだろうと、心得ていらっしゃる筋さえあるので、源氏にお任せ申し上げていらっしゃった。
この大将は、東宮の女御(承香殿の女御)のご兄弟でいらっしゃった。大臣たちを別にすれば、それに次ぐご信望で、たいそう高貴な君である。年は三十二、三歳ほどでいらっしゃる。北の方は、紫の上の御姉君であるよ。式部卿宮のご長女であるよ。年は三つ四つ年上なのは、特に欠点というほどでもないのに、人柄がどうでいらっしゃったのだろうか、大将は「おばあさん」と呼んで心にもかけず、何とかして別れたいと思っている。
そのことによって、六条の大臣(源氏)は、大将とのご縁は、似つかわしくなく気の毒だろうとお思いになっているようだ。大将は、色好みで乱れたところのない人柄ながら、たいそう心を尽くして奔走なさった。あの大臣(内大臣)も、まったく無縁だとはお思いになっていないようだ。女君は宮仕えを気が進まないようにお思いになっているらしいと、内々の様子も、しかるべき詳しい手づるがあるので漏れ聞いて、ただ大殿(源氏)のご意向が違っているだけのことなのだろう、実の親のお心にさえ背かなければと、この弁の君のもとにもせがみなさる。
意訳
髭黒の大将は、柏木を通じて内大臣に求婚の意を伝える。髭黒は、東宮の女御の兄で、北の方は紫の上の異母姉だが、髭黒は北の方を疎んじて離縁したいと思っている。
源氏は髭黒を玉鬘にふさわしくないと思っているが、髭黒は、実父の内大臣さえ反対しなければと、熱心に求婚を続ける。
語釈・文法注
文法
- 推量の「ざなり」(もてはなれてもおぼしたらざなり)
- 「ざるなり」の撥音便無表記。伝聞推定。「まったく無縁だとはお思いになっていないようだ」。
- 「だに」(まことの親の御心だに違はずば)
- 「実の親のお心にさえ背かなければ」。
解説
髭黒の大将は、行幸の巻で玉鬘に「色黑く髭がちに見えていと心づきなし」と見られた人物である。東宮の女御の兄という立場で、将来の外戚として大きな権勢を持つことが予想される。
髭黒の北の方は紫の上の異母姉で、物の怪に悩まされている。髭黒が北の方を疎んじて玉鬘を求める姿は、次の真木柱の巻で、北の方の悲劇として描かれることになる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、530–531頁(コマ270)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日