源氏物語 第29帖 行幸(13)
腰結の儀
内大臣は、娘のことを聞いてから待ちきれず、早々に参上する。儀式は格別に盛大で、内大臣は源氏の心遣いに感謝しつつも、普通とは違う事情を複雑に思う。亥の刻に内大臣は御簾の内に招き入れられ、灯火を少し明るくした中で、腰結の役を務める。娘の顔を見たくてたまらないが、今夜は控えて、涙をこらえきれない。源氏は、今夜は昔のことには触れず、世間並みの作法でと言う。内大臣は「恨めしや」の歌で、今まで隠していたことを恨み、玉鬘が恥じらって答えられないので、源氏が代わって「寄る辺なみ」の歌を返す。

- 1內內うちのののおとゞおとゞおとどはははさしもさしもさしも急急いそがががれれれ給給たまふふうまじきまじきまじき御心御心みこころなれなれなれどどど、、、珍珍めずらからからかににに聞聞きききき給給たまひひいししし後後のちはははいつしかいつしかいつしかととと御心御心みこころににに懸懸かかりかりかりたれたれたればばば疾疾とくくく參參まいりりり給給たまへへえりりり儀式儀式ぎしきなどなどなどあべいあべいあべい限限かぎりににに又又また過過すぎぎぎててて珍珍めずらしきしきしきさまさまさまににに志志こころざしなさなさなさせせせ給給たまへへえりりり。。。げにげにげにわざとわざとわざと御心御心みこころとゞめとゞめとどめ給給たまひひいけるけるける事事ことととと見見み給給たまふふうももも辱辱かたじけなきききものものものからからからやうやうよう變變かわりりりててて覺覺おぼさささるるる。。。
- 2亥亥いののの時時ときにににぞぞぞ內內うちににに入入いれれれ奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。例例れいののの御御おん設設もうけけけをををばばばさるさるさるものものものにてにてにて、、、內內うちのののおましおましおましいといといとににになくなくなくしつらはしつらはしつらわせせせ給給たまひひいててて御御おん肴肴さかな參參まいらららせせせ給給たまふふう。。。御御おんとなぶらとなぶらとなぶら例例れいのののかゝるかゝるかかる所所ところよりよりよりははは少少すこししし光光ひかり見見みせせせてててをかしきをかしきおかしき程程ほどにににもてなしもてなしもてなし聞聞きこえええ給給たまへへえりりり。。。いみじういみじういみじゅうゆかしうゆかしうゆかしゅう思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまへへえどどど今夜今夜こよいはははいといといとゆくりかゆくりかゆくりかなるなるなるべけれべけれべければばば、、、引引ひききき結結むすびびび給給たまふふう程程ほどえええ忍忍しのびびび給給たまははわぬぬぬ氣色氣色けしきなりなりなり。。。
- 3あるじあるじあるじのののおとゞおとゞおとど「「「今夜今夜こよいははは古古いにしへへえざまざまざまのののことことことはははかけかけかけ侍侍はべらららねねねばばば、、、何何なにのののあやめあやめあやめももも分分わかかかせせせ給給たまふふうまじくまじくまじくなむなむなん。。。心心こころ知知しらららぬぬぬ人人ひと目目めををを飾飾かざりりりててて猶猶なお世世よののの常常つねののの作法作法さほうににに」」」ととと聞聞きこえええ給給たまふふう。。。「「「げにげにげに更更さらににに聞聞きこえええさせさせさせ遣遣やるるるべきべきべき方方かた侍侍はべらららずずずなむなむなん」」」。。。御御おんかはらけかはらけかわらけ參參まいるるる程程ほどににに「「「限限かぎりりり畏畏かしこまりまりまりをををばばば、、、世世よにににためしためしためし無無なききき事事ことととと聞聞きこえええさせさせさせながらながらながら、、、今今いままでまでまで斯斯かくくく忍忍しのびびび籠籠こめめめさせさせさせ給給たまひひいけるけるける恨恨うらみもももいかゞいかゞいかが添添そへへえ侍侍はべらららざらざらざらむむん」」」ととと聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
- 4「「「恨恨うらめしめしめしややや沖沖おきつつつ玉玉たま藻藻もをををかづくかづくかずくまでまでまで磯磯いそ隱隱がくれれれけるけるける蜑蜑あまののの心心こころよよよ」」」とてとてとて猶猶なお包包つつみみみあへあへあえずずずしほたれしほたれしおたれ給給たまふふう。。。姫君姫君ひめぎみはははいといといと耻耻はずかしきかしきかしき御御おん有樣有樣ありさまどもどもどものののさしさしさしつどひつどひつどいつゝましさつゝましさつつましさにににえええ聞聞きこえええ給給たまははわねねねばばば、、、殿殿との「「「寄寄よるるる邊邊べなみなみなみかゝるかゝるかかる渚渚なぎさににに打打うちちち寄寄よせせせててて海海あ士士まももも尋尋たずねねねぬぬぬ藻藻も屑屑くずとととぞぞぞ見見みししし。。。いといといとわりなきわりなきわりなき御御おんうちつけうちつけうちつけごとごとごとににになむなむなん」」」ととと聞聞きこえええ給給たまへへえばばば、、、「「「いといといとことわりことわりことわりににになむなむなん」」」ととと聞聞きこえええやるやるやる方方かたなくなくなくててて出出いででで給給たまひひいぬぬぬ。。。
現代語訳
内大臣は、それほど急ぎなさるはずもないご性格だけれど、珍しいことをお聞きになってからは、早くと心にかかっていたので、早々に参上なさった。儀式などは、しかるべき程度をさらに越えて、珍しいほどに心をこめて行わせなさった。本当に格別にお心をとめなさったことだとご覧になるにつけても、恐れ多いものの、普通とは違う事情を妙にお思いになる。
亥の刻に、内大臣を御簾の内にお入れ申し上げなさる。いつもの儀式の準備はもちろんのこと、御簾の内の御座所をまたとないほど整えさせなさって、御酒肴を差し上げなさる。御灯火は、普通このような所よりは少し明るくして、趣ある程度におもてなし申し上げなさった。内大臣は、娘の顔をたいそう見たいとお思いになるけれど、今夜はあまりに急なことだろうから、腰紐を結びなさる時、涙をこらえきれないご様子である。
主人の大臣(源氏)は「今夜は、昔の事情には触れずにおきますので、何の分別もおつけにならないでしょう。事情を知らない人の目をつくろって、やはり世間並みの作法で」と申し上げなさる。内大臣は「本当に、まったく申し上げようもございません」。御杯を差し上げる時に、「限りないご恩は、世に例のないことと申し上げながらも、今までこのように隠していらっしゃった恨みも、どうして加えずにいられましょう」と申し上げなさる。
「恨めしや沖つ玉藻をかづくまで磯隱れける蜑の心よ(恨めしいことよ。沖の玉藻〈裳〉を身にまとう〈裳着〉まで、磯に隠れていた海人〈尼〉のような、隠していた心が)」と言って、やはりこらえきれず涙をお流しになる。姫君は、たいそう気後れするようなご立派な方々が集まっているので、恥ずかしさにお返事を申し上げなさらないので、殿(源氏)が「寄る邊なみかゝる渚に打ち寄せて海士も尋ねぬ藻屑とぞ見し(寄る辺がなくて、このような渚に打ち寄せられて、海人も探さない藻屑のようだと見ておりました)。たいそう無理な、急なお言葉で」と申し上げなさると、内大臣は「本当にもっともなことで」と、ほかに申し上げようもなくて、お出になった。
意訳
裳着の儀は盛大に行われ、内大臣は御簾の内に招き入れられて、腰結の役を務める。内大臣は、娘の顔を見たくてたまらないが、涙をこらえきれない。
内大臣は、今まで隠していたことを歌で恨み、玉鬘に代わって源氏が歌を返す。
語釈・文法注
文法
- 詠嘆の「よ」(磯隱れける蜑の心よ)
- 「…の心よ」。恨めしい気持ちをこめた詠嘆。
- 「とぞ見し」(藻屑とぞ見し)
- 係り結び。「ぞ」に応じて連体形「し」で結ぶ。「藻屑のようだと見ておりました」。
解説
内大臣の歌の「玉藻」は「裳」、「かづく」は「被く(身にまとう)」、「蜑」は「海人」と「尼」(大宮)を掛ける。娘の裳着の日まで隠されていたことへの恨みを、巧みに詠んでいる。
源氏の返歌は、玉鬘が九州から流れ着いた頼りない身の上であったことを詠み、自分が引き取ったのは当然のことだったと弁明している。父娘の初めての対面は、源氏の仲立ちのもとで、儀式の形を借りて静かに行われる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、518–519頁(コマ264)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日