源氏物語 第29帖 行幸(10)
内大臣の思い
内大臣は、腰結の役を務めるために、約束の日には必ず参上すると源氏と約束し、二人は上機嫌で三条宮を出る。供の人々は、何かの譲り事でもあるのかと見当違いの推測をする。内大臣は、すぐにも娘を引き取りたい気持ちになるが、急に親ぶるのも具合が悪いと思う。源氏が玉鬘を女君の一人にせず、世間体をはばかって明かしたのだろうと推察して残念に思うが、源氏のもとで育てられたのは疵にはならない。宮仕えに出れば、娘の弘徽殿の女御がどう思うかも気がかりだが、源氏の決めたことに逆らうべきではないと考える。

- 1「「「今夜今夜こよいももも御御おん供供ともににに侍侍さぶらふふうべきべきべきをををうちつけうちつけうちつけににに騷騷さわがしくがしくがしくもももやややとてとてとてなむなむなん。。。今日今日きょうののの畏畏かしこまりまりまりははは殊殊こと更更さらににになむなむなん參參まいるるるべくべくべく侍侍はべるるる」」」ととと申申もうししし給給たまへへえばばば、、、「「「さらばさらばさらばこのこのこの御御おん惱惱なやみみみももも宜宜よろしうしうしゅう見見みえええ給給たまふふうををを、、、必必かならずずず聞聞きこえええししし日日ひ違違たがへへえさせさせさせ給給たまははわずずず渡渡わたりりり給給たまふふうべきべきべき」」」よしよしよし聞聞きこえええ契契ちぎりりり給給たまふふう。。。御御おん氣色氣色けしきどもどもどもようようようててておのおのおのおのおのおの出出いででで給給たまふふう。。。響響ひびきいといといといかめしいかめしいかめし。。。
- 2きみきみきみ達達たちののの御御おん供供ともののの人々人々びとももも何事何事なにごとありありありつるつるつるならならならむむん、、、珍珍めずらしきしきしき御御おん對面對面たいめんにににいといといと御御おん氣色氣色けしきよげよげよげなりなりなりつるつるつるははは、、、又又またいかなるいかなるいかなる御御おん讓讓ゆずりりりあるあるあるべきべきべきにににかかかなどなどなどひがひがひが心得心得こころえをををしししつゝつゝつつ、、、斯斯かかるかるかる筋筋すじとととははは思思おもひひい寄寄よらららざりざりざりけりけりけり。。。
- 3おとゞおとゞおとどうちつけうちつけうちつけにににいといといと訝訝いぶかしうかしうかしゅう心心こころもともともと無無のううう覺覺おぼえええ給給たまへへえどどど、、、ふとふとふとしかしかしかうけうけうけとりとりとり親親おやがらがらがらむむんもももびんなからびんなからびんなからむむん、、、尋尋たずねねね得得え給給たまへへえらららむむん始始はじめををを思思おもふふうににに、、、定定さだめてめてめて心心こころ淸淸きよううう見見み放放はなちちち給給たまははわじじじ、、、やんごとなきやんごとなきやんごとなき方々方々かたがたををを憚憚はばかりりりてててうけばりうけばりうけばりてててそのそのそのきはきはきわにににはははもてなさもてなさもてなさずずず、、、さすがにさすがにさすがに煩煩わずらはしうはしうわしゅう物物ものののの聞聞きこえええををを思思おもひひいててて斯斯かくくく明明あかししし給給たまふふうなななめりめりめりととと覺覺おぼすすすははは口口くち惜惜おしけれしけれしけれどどど、、、
- 4それそれそれををを疵疵きずとととすすすべきべきべき事事ことかかかははは、、、殊殊こと更更さらにににもももかのかのかの御御おんあたりあたりあたりにににふればゝふればゝふればわせせせむむんににになどなどなどかかか覺覺おぼえええののの劣劣おとらららむむん、、、宮仕宮仕みやずかへへえざまざまざまにににももも赴赴おもむききき給給たまへへえらららばばば女御女御にようごなどなどなどののの覺覺おぼさささむむんことことこともももあぢきなしあぢきなしあじきなしとととおぼせおぼせおぼせどどど、、、ともかくもともかくもともかくも思思おもひひい寄寄よりりりのたまはのたまはのたまわむむん掟掟おきてををを違違たがふふうべきべきべき事事ことかかかはははととと萬萬よろずににに覺覺おぼしししけりけりけり。。。
現代語訳
内大臣が「今夜もお供をすべきですが、急に騒がしくなってもと思いまして。今日のお礼は、改めて参上いたしましょう」と申し上げなさると、源氏は「それでは、大宮のご病気もよくおなりになったようですから、必ず申し上げた日を違えずにおいでください」ということを約束申し上げなさる。お二人ともご機嫌よくて、それぞれお出になる。そのざわめきは、たいそういかめしい。
君達のお供の人々も、何事があったのだろう、珍しいご対面に、たいそうご機嫌がよさそうだったのは、またどのようなお譲りがあるのだろうかなどと、見当違いの推測をしながら、このような筋のこととは思いもよらなかった。
大臣は、急なことで、たいそう不審に、待ち遠しくお思いになるけれど、すぐにそのように引き取って親らしく振る舞うのも具合が悪いだろう、探し出して引き取りなさった初めの事情を思うと、きっと手をつけずにお見放しにはならないだろう、高貴な方々に遠慮して、表立ってその妻の一人としては扱わず、さすがにわずらわしく、世間の評判を思って、このように打ち明けなさるのだろうとお思いになるのは残念だけれど、
それを疵とすべきことだろうか、ことさらにあの方のおそばに身を寄せていたとしても、どうして評判が劣ることがあろうか、宮仕えのほうに出られるのなら、女御(弘徽殿の女御)などがどうお思いになるかもおもしろくないとお思いになるけれど、ともかくも源氏がお考えになっておっしゃる方針に背くべきことだろうかと、あれこれとお考えになった。
意訳
内大臣は、約束の日には必ず参上すると源氏と約束し、二人は上機嫌で三条宮を出る。
内大臣は、源氏が玉鬘を女君の一人にせず、世間体をはばかって明かしたのだろうと推察して残念に思うが、源氏の決めたことに逆らうべきではないと考える。
語釈・文法注
文法
- 反語の「かは」(疵とすべき事かは)
- 「疵とすべきことだろうか、いや、そうではない」。
- 推量の「なめり」(斯く明し給ふなめり)
- 「なるめり」の撥音便無表記。「このように打ち明けなさるのだろう」。
解説
内大臣は、源氏が玉鬘をすでに自分の女君にしているのではないかと疑う。この推察は外れているが、源氏の玉鬘への思いを知る読者には、内大臣の勘の鋭さが感じられる。
内大臣が気にかける弘徽殿の女御は、内大臣の娘で冷泉帝の女御である。玉鬘が尚侍として入内すれば、姉妹で帝の寵愛を競うことにもなりかねない。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、514–517頁(コマ262–263)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日