源氏物語 第29帖 行幸(9)
玉鬘の素性が明かされる
玉鬘のことを聞いた内大臣は、たいそう珍しいことだと泣き、昔から行方を案じていたことを、いつか源氏に漏らしたことがあったと言う。そして、雨夜の品定めの夜に語り合った思い出がよみがえり、二人は泣いたり笑ったりして打ち解ける。夜が更けて、源氏も酔い泣きをし、大宮は、亡き娘の葵の上を思い出して、さめざめと泣く。しかし源氏は、夕霧の件は口に出さず、内大臣も、源氏が何も言わないので、自分から言い出すこともできず、心が晴れない。

- 1おとゞおとゞおとど「「「いといといと哀哀あわれににに珍珍めずらからからかなるなるなる事事ことにににももも侍侍はべりりりけるけるけるかなかなかな」」」とととまづまづまずうちうちうち泣泣なききき給給たまひひいててて、、、「「「そのそのそのかみかみかみよりよりよりいかにいかにいかになりなりなりにににけむけむけんととと尋尋たずねねね思思おもひひい給給たまへへえしししさまさまさまははは何何なにののの序序ついでにににかかか侍侍はべりりりけむけむけん、、、愁愁うれえににに堪堪たへへえずずず漏漏もらししし聞聞きこししし召召めさささせせせししし心地心地ここちなむなむなんししし侍侍はべるるる。。。
- 2今今いま少少すこししし人人ひと數數かずにににもももなりなりなり侍侍はべるるるににに付付つけけけてててははは、、、はかばかしからはかばかしからはかばかしからぬぬぬものものものどもどもどもののの方々方々かたがたにににつけつけつけてててさまよひさまよひさまよい侍侍はべるるるをををかたくなしくかたくなしくかたくなしく見見み苦苦ぐるしししととと見見み侍侍はべるるるにににつけつけつけてててももも、、、又又またさるさるさるさまさまさまにてにてにて數々數々かずかずににに連連つらねねねてててははは哀哀あわれににに思思おもひひい給給たまへへえらるゝらるゝらるる折折おりににに添添そへへえてててももも、、、まづまづまずなむなむなんととと思思おもひひい給給たまへへえ出出いでででらるゝらるゝらるる」」」とととのたまふのたまふのたまう序序ついでににに、、、かのかのかのいにしへいにしへいにしえののの雨雨あまののの物語物語ものがたりににに色々色々いろいろなりなりなりししし御御おん睦睦むつ言言ごとののの定定さだめめめををを覺覺おぼししし出出いでででゝゝて泣泣なきききみみみ笑笑わらひひいみみみ皆皆みなうちうちうち亂亂みだれれれ給給たまひひいぬぬぬ。。。
- 3夜夜よいたういたういとう更更ふけけけててて、、、おのおのおのおのおのおのあがれあがれあがれ給給たまふふう。。。「「「斯斯かくくく參參まいりりり來來き合合あひひいててて更更さらににに久久ひさしくしくしくなりなりなりぬるぬるぬる世世よのののふるふるふる事事こと思思おもひひい給給たまへへえ出出いでででられられられててて戀戀こいしきしきしき事事ことののの忍忍しのびびび難難がたきききににに立立たちちち出出いでででむむん心地心地ここちもももししし侍侍はべらららずずず」」」とてとてとて、、、をさをさをさをさおさおさ心心こころ弱弱よわくくくおはしまさおはしまさおわしまさぬぬぬ六條六條ろくじょう殿殿どのもももゑひゑひえいなきなきなきにににややや打打うちちちしほたれしほたれしおたれ給給たまふふう。。。
- 4宮宮みやはたはたはた况况まいていていて姫君姫君ひめぎみののの御御おん事事ことををを覺覺おぼししし出出いづるづるずるににに、、、在在ありりりしししににに優優まさるるる御御おん有樣有樣ありさまいきほひいきほひいきおいををを見見み奉奉たてまつりりり給給たまふふうににに飽飽あかかかずずず悲悲かなしくしくしくとゞめとゞめとどめ難難がたくくくしほしほしほしほしおしおととと泣泣なききき給給たまふふう。。。あまあまあまごろもごろもごろもはははげにげにげに心心こころことことことなりなりなりけりけりけり。。。
- 5斯斯かかるかるかる序序ついでなれなれなれどどど中將中將ちゅうじょうののの御御おん事事ことをををばばばうちうちうち出出いででで給給たまははわずずずなりなりなりぬぬぬ。。。一一ひとふしふしうし用意用意よういなしなしなしととと覺覺おぼしししおきおきおきてててけれけれければばば口口くち入入いれれれむむん事事ことももも人人ひとわろくわろくわろく覺覺おぼしししとゞめとゞめとどめ、、、かのかのかのおとゞおとゞおとどはたはたはた人人ひとののの御御おん氣色氣色けしきなきなきなきにににさしさしさし過過すぐしぐしぐし難難がたくくくてててさすがにさすがにさすがに結結むすぼゝれぼゝれぼおれたるたるたる心地心地ここちししし給給たまひひいけりけりけり。。。
現代語訳
大臣(内大臣)は「たいそうしみじみと、珍しいことでございましたね」と、まずお泣きになって、「その昔から、どうなってしまったのだろうと捜し求めておりましたことは、何の折でございましたか、悲しみに堪えきれず、お漏らし申し上げた気がいたします。
今、少し人並みの身分になりましたにつけても、取るに足りない子どもたちが、あちこちにさまよっておりますのを、体裁が悪く見苦しいと見ておりますにつけても、またそのような者たちを数々並べて、しみじみと思われる時につけても、まずあの子のことを思い出しておりました」とおっしゃるついでに、あの昔の雨夜の品定めの折に、いろいろと語り合った打ち明け話の論評を思い出しなさって、泣いたり笑ったり、皆うち解けなさった。
夜がたいそう更けて、それぞれお別れになる。源氏は「このように参り合わせて、ますます久しくなった昔のことが思い出されて、恋しいことが忍びがたいので、立ち去る気持ちもいたしません」と言って、めったに気弱くいらっしゃらない六条殿も、酔い泣きであろうか、涙をお流しになる。
大宮は、まして亡き姫君(葵の上)のことを思い出しなさると、昔にまさるご様子やご威勢を拝見なさるにつけても、どこまでも悲しく、とどめがたく、しおしおとお泣きになる。尼衣は、本当に格別に涙もろいものであった。
このような機会であったけれど、源氏は中将(夕霧)のことは口にお出しにならずに終わった。内大臣が一つ思いやりのない仕打ちをしたとお思いになっていたので、口出しするのも体裁が悪いと思いとどまり、あの大臣もまた、源氏のご意向がないのに、出過ぎたこともできなくて、さすがに心が晴れない気持ちでいらっしゃった。
意訳
玉鬘のことを聞いた内大臣は泣き、雨夜の品定めを思い出して、二人は泣いたり笑ったりして打ち解ける。大宮も、亡き葵の上を思い出して泣く。
しかし源氏は夕霧の件を口に出さず、内大臣も自分から言い出せず、心が晴れない。
語釈・文法注
- 雨夜の物語
- 帚木の巻の「雨夜の品定め」。若き日の源氏と頭中将(今の内大臣)たちが、五月雨の夜に女性の品定めをした。その折、頭中将は、行方知れずになった常夏の女(夕顔)と、その娘のことを語っていた。
文法
- 「み…み」(泣きみ笑ひみ)
- 接尾語「み」を重ねて、動作の反復・交替を表す。「泣いたり笑ったり」。
- 「はた」(宮はた况いて)
- 「また」「一方で」。大宮もまた、の意。
解説
内大臣が玉鬘のことを聞いて思い出すのは、雨夜の品定めである。あの夜に内大臣(当時の頭中将)が語った夕顔とその娘の話が、長い年月を経て、ここで結びつく。物語の構成の巧みさが際立つ場面である。
夕霧と雲居雁の件は、ここでも解決しない。源氏も内大臣も、互いに相手が言い出すのを待って、自分からは折れようとしない。二人の意地の張り合いは、夕霧と雲居雁の仲をさらに遅らせることになる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、514–515頁(コマ262)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日