源氏物語 第29帖 行幸(8)
源氏と内大臣の対面
久しぶりに対面した源氏と内大臣は、昔のことを思い出し、離れていると張り合う気持ちも起こるが、向かい合えばしみじみとした思い出が次々によみがえり、隔てなく語り合ううちに日が暮れる。内大臣が、呼ばれもしないのに参上を控えていたと詫びると、源氏は、お咎めを受けるべきはこちらだとほのめかす。内大臣は夕霧の件かと恐縮する。源氏は、昔は公私の隔てなく羽を並べるように朝廷を支えようと思っていたのに、今は会うことも稀で恨めしいと言う。内大臣は、昔のようには馴れ親しめなくなったのは、年をとって気がゆるんだせいだと詫びる。その機会に、源氏は玉鬘のことをほのめかす。

- 1おとゞおとゞおとどははは珍珍めずらしきしきしき御御おん對面對面たいめんににに昔昔むかしののの事事こと覺覺おぼししし出出いでででられられられててて、、、よそよそよそよそよそよそにてにてにてこそこそこそはかなきはかなきはかなき事事ことにににつけつけつけててていどましきいどましきいどましき御心御心みこころももも添添そふふうべかべかべかめれめれめれ。。。さしさしさし向向むかひひい聞聞きこえええ給給たまひひいてててはははかたみにかたみにかたみにいといといと哀哀あわれなるなるなる事事ことののの數々數々かずかず覺覺おぼししし出出いでででつゝつゝつつ、、、例例れいのののへだてへだてへだてなくなくなく昔昔むかし今今いまののの事事ことどもどもども年年とし頃頃ごろののの御御おん物語物語ものがたりににに日日ひ暮暮くれれれ行行ゆくくく。。。御御おんかはらけかはらけかわらけなどなどなど進進すすめめめ參參まいりりり給給たまふふう。。。
- 2「「「侍侍さぶらははわでででははは惡惡あしかりしかりしかりぬぬぬべかりべかりべかりけるけるけるををを召召めしししなきなきなきににに憚憚はばかりりりててて、、、承承うけたまわりりり過過すぐしぐしぐしてててましかましかましかばばば御御おんかうじかうじこうじややや添添そははわましましまし」」」ととと申申もうししし給給たまふふうににに「「「勘當勘當かんどうはははこなたこなたこなたざまざまざまににになむなむなんかうしかうしこうしととと思思おもふふう事事こと多多おおくくく侍侍はべるるる」」」などなどなど氣色氣色けしきばみばみばみ給給たまふふうににに、、、このこのこの事事ことにににやややととと覺覺おぼせせせばばば煩煩わずらはしうはしうわしゅうててて畏畏かしこまりまりまりたるたるたるさまさまさまにてにてにて物物ものししし給給たまふふう。。。
- 3「「「昔昔むかしよりよりよりおほやけおほやけおおやけ私私わたくしののの事事ことにににつけつけつけててて心心こころののの隔隔へだてててなくなくなく大大だい小小しょうののの事事こと聞聞きこえええ承承うけたまはりはりわり羽羽は根根ねををを雙雙ならぶるぶるぶるやうやうようにてにてにて、、、おほやけおほやけおおやけののの御御おん後後うしろ見見みをををももも仕仕つかうまつらうまつらうまつらむむんとととなむなむなん思思おもううう給給たまへへえしししををを、、、末末すえののの世世よとととなりなりなりてててそのそのそのかみかみかみ思思おもひひい給給たまへへえしししほいほいほいなきなきなきやうやうようなるなるなる事事ことうちうちうちまじりまじりまじり侍侍はべれれれどどど內々內々うちうちののの私私わたくしごとごとごとにににこそこそこそははは大方大方おおかたののの志志こころざしははは更更さらににに移移うつろふろふろう事事ことなくなくなくなむなむなん何何なにととともももなくなくなくててて積積つもりりり侍侍はべるるる。。。
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現代語訳
大臣(内大臣)は、珍しいご対面に昔のことが思い出されて、離れていればこそ、ちょっとしたことにつけても張り合うお気持ちも加わるのだろう。向かい合って申し上げなさっては、互いにたいそうしみじみとしたことの数々を思い出しながら、いつものように隔てなく、昔や今のことなど、長年のお話をするうちに日が暮れていく。御杯などを勧め申し上げなさる。
内大臣が「参上しないでは具合が悪かったのに、お召しがないので遠慮して、お越しを承りながら過ごしてしまったら、お叱りが加わったことでしょう」と申し上げなさると、源氏は「お咎めは、こちらのほうにこそ、申し訳ないと思うことが多くございます」などと意味ありげにおっしゃるので、内大臣は、このこと(夕霧と雲居雁の件)だろうかとお思いになると、わずらわしくて、恐縮した様子でいらっしゃる。
源氏は「昔から、公私のことにつけて、心の隔てなく、大小のことを申し上げたりお聞きしたりして、羽を並べるようにして、朝廷のご後見をもお勤めしようと存じておりましたが、末の世になって、その昔に思っておりましたのとは違うようなことも混じりましたけれど、それは内々の私事であって、大体の気持ちは少しも変わることなく、何ということもなく年月が積もりました。
年齢を重ねるにつれて、昔のことが恋しく思われますのに、お目にかかることもたいそう稀でばかりございますので、物事には限度があって、ご威勢の盛んなお振る舞いとは存じながら、親しい間柄では、そのご威勢をも控えなさって、お訪ねくださってもよいだろうにと、恨めしく思う折々がございます」と申し上げなさると、
内大臣は「昔は本当に、お顔なじみで、妙に失礼なほど馴れ親しんで、心に隔てることもなくご覧いただきましたが、朝廷にお仕えした時には、羽を並べる仲間の数にお入れいただいて、うれしいお心遣いをいただきました。ふつつかな身で、このような位にまで至りまして、朝廷にお仕えしていることにつけても、存じ上げないわけではございませんが、年をとりますと、本当に自然と気がゆるむことばかり多くなっておりました」などと恐縮して申し上げなさる。その機会に、源氏は玉鬘のことをほのめかしなさったのであった。
意訳
久しぶりに対面した源氏と内大臣は、昔のことを思い出して、隔てなく語り合う。源氏は、昔のように親しく行き来したいのに、会うことも稀で恨めしいと言う。
内大臣は、年をとって気がゆるんだせいだと詫びる。その機会に、源氏は玉鬘のことをほのめかす。
語釈・文法注
文法
- 反実仮想の「ましかば…まし」(承り過ぐしてましかば御かうじや添はまし)
- 「お越しを承りながら過ごしてしまったら、お叱りが加わったでしょう」。
- 係り結び「こそ…め」(とぶらひ物し給はめ)
- 「こそ」に応じて已然形「め」で結ぶ。「お訪ねくださってもよいだろうに」。
解説
源氏と内大臣は、若い頃は親友であり、恋のライバルでもあった。離れていると張り合うが、会えば昔の親しさがよみがえる二人の関係が、巧みに描かれている。
源氏が「勘當はこなたざまに」と言うのは、玉鬘を内大臣に知らせずに引き取っていたことを指すが、内大臣は夕霧と雲居雁の件だと思い込む。二人の思惑のすれ違いが、場面に緊張感を与えている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、512–515頁(コマ261–262)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日