源氏物語 第29帖 行幸(7)
内大臣、三条宮に参上する
大宮は、内大臣はこれまで名乗り出る人を拒まず引き取ってきたのに、どうして源氏のもとにいたのかと驚く。源氏は、詳しいことは内大臣も自然に知るだろうが、夕霧にもまだ知らせていないので、口外しないでほしいと口止めする。源氏が三条宮に来たと聞いた内大臣は、子息たちや酒肴を届けさせる。大宮から、源氏が会って話したいことがあるようだと手紙が来ると、内大臣は、夕霧と雲居雁の件ではないかと思い、源氏に頼まれたら許さざるをえないだろうと考えながら、装いを整えて参上する。大勢の子息を連れた内大臣は堂々として立派だが、くつろいだ直衣姿の源氏は、さらに比べようもなく美しい。人々は酒を酌み交わし、二人の栄華を語り合う。

- 1宮宮みや「「「いかにいかにいかにいかにいかにいかに侍侍はべりりりけるけるける事事ことにににかかか。。。かしこかしこかしこにににははは樣々樣々さまざまににに斯斯かかるかるかる名名なのりのりのりするするする人人ひとををを厭厭いとふふう事事ことなくなくなく拾拾ひろひひい集集あつめめめらるゝらるゝらるるににに、、、いかなるいかなるいかなる心心こころにてにてにて斯斯かくくく引引ひきききたがへたがへたがえ喞喞かこちちち聞聞きこえええらるらるらるらむらむらん。。。このこのこの年年とし頃頃ごろ承承うけたまわりりりてててなりなりなりぬるぬるぬるにににややや」」」ととと聞聞きこえええ給給たまへへえばばば、、、
- 2「「「さるさるさるやうやうよう侍侍はべるるる事事ことなりなりなり。。。委委くわしきしきしきさまさまさまはははかのかのかのおとゞおとゞおとどもももおのづからおのづからおのずから尋尋たずねねね聞聞きききき給給たまひひいてててむむん。。。くだくだしきくだくだしきくだくだしきなほなほなお人人びとののの中中なからひらひらいににに似似にたるたるたる事事ことににに侍侍はべれれればばば明明あかさささむむんにににつけつけつけてててもももらうがはしうらうがはしうろうがわしゅう人人ひと言言いひひい傳傳つたへへえ侍侍はべらららむむんををを、、、中將中將ちゅうじょうののの朝臣朝臣あそんにににだにだにだにまだまだまだ辨辨わきまへへえ知知しらせらせらせ侍侍はべらららずずず、、、人人ひとにににももも漏漏もらさささせせせ給給たまふふうまじまじまじ」」」ととと御御おん口口くちかためかためかため聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
- 3內內うちのののおほいおほいおおい殿殿どのにににももも斯斯かくくく三條三條さんじょうののの宮宮みやにににおほきおほきおおきおとゞおとゞおとど渡渡わたりりりおはしましおはしましおわしましたるたるたる由由よし聞聞きききき給給たまひひいててて、、、「「「いかにいかにいかに寂寂さびしげしげしげにてにてにていつくしきいつくしきいつくしき御御おんさまさまさまををを、、、待待まちちちゅ受受うけけけ聞聞きこえええ給給たまふふうらむらむらん。。。ごぜんごぜんごぜんなどなどなどももももてもてもてはやしはやしはやし、、、おましおましおまし引引ひききき繕繕つくろふふう人人ひともももはかばかしうはかばかしうはかばかしゅうあらあらあらじじじかしかしかし。。。中將中將ちゅうじょうははは御御おん供供ともにににこそこそこそ物物ものせせせられられられつつつらめらめらめ」」」などなどなど驚驚おどろききき給給たまひひいててて、、、
- 4「「「御御おん子子こどもどもどもののの君達君達きんだち睦睦むつましうしうしゅうさるべきさるべきさるべきまうちまうちもうちぎみぎみぎみ達達たち奉奉たてまつれれれ給給たまふふう。。。御御おん菓菓くだものものもの御御おんみきみきみきなどなどなどさりさりさりぬぬぬべくべくべくまゐらまゐらまいらせよせよせよ。。。自自みずからららももも參參まいるるるべきべきべきををを、、、却却かえりてりてりて物物もの騷騷さわがしきしきしきやうやうようならならならむむん」」」などなどなどののの給給たまふふう程程ほどににに大宮大宮おおみやののの御御おん文文ふみありありあり。。。
- 5「「「六條六條ろくじょうのののおとゞおとゞおとどののの訪訪とぶらひらひらいににに渡渡わたりりり給給たまへへえるるるををを物物もの寂寂さびしげしげしげににに侍侍はべれれればばば人人ひと目目めいとほしういとほしういとおしゅうももも辱辱かたじけのうううもももあるあるあるををを、、、ことごとしうことごとしうことごとしゅう斯斯こううう聞聞きこえええたるたるたるやうやうようにににはははあらあらあらででで渡渡わたりりり給給たまひひいなむなむなんややや。。。對面對面たいめんににに聞聞きこえええままま欲欲ほしげしげしげなるなるなる事事こともももあああなりなりなり」」」ととと聞聞きこえええ給給たまへへえりりり。。。
- 6何事何事なにごとにににかかかはははあらあらあらむむん、、、このこのこの姫君姫君ひめぎみののの御御おん事事こと中將中將ちゅうじょうののの愁愁うれえにににやややととと覺覺おぼしししまはすまはすまわすににに、、、宮宮みやもももかうかうこう御御おん世世よ殘殘のこりりり少少すくなげなげなげにてにてにてこのこのこの事事こととととせちせちせちにににののの給給たまひひい、、、おとゞおとゞおとどももも憎憎にくからからからぬぬぬ樣樣さまににに一一ひと言言ことうちうちうち出出いででで恨恨うらみみみ給給たまははわむむんににに、、、とかくとかくとかく申申もうししし返返かえさふさふさう事事こともももえええあらあらあらじじじかしかしかし、、、つれなくつれなくつれなくててて思思おもははわれれれぬぬぬををを見見みるるるにににははは安安やすからからからずずず、、、さるべきさるべきさるべき序序ついででであらあらあらばばば人人ひとののの御御おん言言ことににに靡靡なびききき顏顏がおにてにてにて許許ゆるしししてててむむんととと覺覺おぼすすす。。。
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- 8君達君達きんだちいといといと夥多夥多あまた引引ひききき連連つれれれててて參參まいりりり給給たまふふうさまさまさまものものしうものものしうものものしゅう賴賴たのもしげもしげもしげなりなりなり。。。たけだちたけだちたけだちそゞろかそゞろかそぞろかにににものしものしものし給給たまふふうににに太太ふとさささももも合合あひひいててていといといとしうしうしゅうににに面面おももちもちもち步步あゆまひまひまいなどなどなど、、、大臣大臣おとどととと言言いははわむむんににに足足たらひらひらい給給たまへへえりりり。。。えびえびえび染染ぞめののの御御おん指貫指貫さしぬき櫻櫻さくらののの下襲下襲したがさねいといといと長長なごううう尻尻しり引引ひきききててて、、、ゆるゆるゆるゆるゆるゆるととと殊殊こと更更さらびたるびたるびたる御御おんもてなしもてなしもてなしあなあなあなきらきらしきらきらしきらきらしととと見見みえええ給給たまへへえるるるににに、、、
- 9六條六條ろくじょう殿殿どのははは櫻櫻さくらののの唐唐からのののきききののの御御おん直衣直衣のうし今今いま樣樣よう色色いろののの御御おんぞぞぞ引引ひききき重重かさねねねてててしどけなきしどけなきしどけなきおほきみおほきみおおきみ姿姿すがたいよいよいよいよいよいよ譬譬たとへへえむむんものものものなしなしなし。。。光光ひかりこそこそこそ優優まさりりり給給たまへへえ。。。斯斯こうううしたゝかしたゝかしたたかににに引引ひききき繕繕つくろひひい給給たまへへえるるる御御おん有樣有樣ありさまににになずらひなずらひなずらいてててももも見見みえええ給給たまははわざりざりざりけりけりけり。。。
- 10君達君達きんだち次々次々つぎつぎににに、、、いといといとものものもの淸淸きよげげげなるなるなる御御おん中中なからひらひらいにてにてにてつどひつどひつどい給給たまへへえりりり。。。藤藤とう大納言大納言だいなごん春宮春宮とうぐう大夫大夫だいぶなどなどなど今今いまははは聞聞きこゆるゆるゆる御御おん子子こどもどもどもゝゝも皆皆みななりなりなり出出いでででつゝつゝつつものしものしものし給給たまふふう。。。おのづからおのづからおのずからわざとわざとわざともももなきなきなきににに覺覺おぼえええ高高たかくくくやんごとなきやんごとなきやんごとなき殿上人殿上人てんじょうびと藏人藏人くろうど頭頭とう五位五位ごいののの藏人藏人くろうど近衛近衛このえののの中中ちゅう少將少將しょうしょう辨官辨官べんかんなどなどなど、、、人人ひとがらがらがら華華はなやかやかやかににに有有あるるるべかしきべかしきべかしき十十じゅう餘餘よ人人にん集集つどひひい給給たまへへえれれればばば、、、いかめしういかめしういかめしゅう、、、次々次々つぎつぎのののたゞたゞただびとびとびとももも多多おおくくくてててかはらけかはらけかわらけあまたあまたあまた度度たび流流ながれれれ皆皆みなゑひゑひえいににになりなりなりててておのおのおのおのおのおの斯斯こうううさいはひさいはひさいわいびとびとびとににに勝勝すぐれれれ給給たまへへえるるる御御おん有樣有樣ありさまををを、、、物語物語ものがたりにににしししたりたりたり。。。
現代語訳
大宮は「どのような事情だったのでしょう。あちら(内大臣)では、いろいろとこのように名乗り出る人を嫌うこともなく拾い集めていらっしゃるのに、どういうつもりで、このように筋違いに、あなたに親子だと申し出たのでしょう。ここ何年かのうちに、あなたの娘だと聞いてそうなったのでしょうか」と申し上げなさると、
源氏は「そうなるわけのあることです。詳しい事情は、あの大臣も自然と尋ねてお聞きになるでしょう。ごたごたした、身分の低い人の間柄に似たことでございますので、明らかにするにつけても、乱雑に人が言い伝えるでしょうから、中将の朝臣にさえ、まだ事情を知らせておりません。人にも漏らしなさいませんように」と、お口止めを申し上げなさる。
内大臣のほうでも、このように三条宮に太政大臣がお渡りになったことをお聞きになって、「どんなに寂しげな様子で、威厳のある源氏をお待ち受け申し上げなさっているだろう。前駆の者などをもてなし、御座所を整える人も、しっかりした者はいないだろう。中将はお供をして来ているだろう」などと驚きなさって、
子息の君達や、親しくしているしかるべき大夫たちを差し向けなさる。「お菓子やお酒など、しかるべく差し上げよ。自分も参上すべきだが、かえって騒がしいようになるだろう」などとおっしゃるうちに、大宮のお手紙が来た。
「六条の大臣がお見舞いにおいでになったのに、何となく寂しげでございますので、人目にも気の毒で恐れ多くもありますから、大げさにこう申し上げたようにではなく、おいでくださいませんか。お会いして申し上げたいことがあるようです」と申し上げなさった。
何事であろうか、この姫君(雲居雁)のことで、中将の嘆きのことだろうかと考えをめぐらすと、大宮もこのように余命少ない様子で、このことをと強くおっしゃり、大臣も憎からぬ様子で一言言い出して恨みなさるとしたら、あれこれとお断り申し上げることもできないだろう、夕霧が平気な顔で思いを寄せないのを見ると心穏やかではない、しかるべき機会があれば、人のお言葉になびいた顔をして許してしまおうとお思いになる。
二人がお心を合わせておっしゃることだろうと思い当たりなさると、いっそう断りようがないだろうが、また、どうしてそうする必要があろうかと、ためらわれるのは、たいそうけしからぬ、ひねくれたお心であるよ。けれども、大宮がこのようにおっしゃり、大臣もお会いしようとお待ちになっているのだろうか、どちらにも恐れ多い。参上して、ご様子に従おうなどとお決めになって、御装束を格別に整えて、前駆なども大げさでない様子でお渡りになる。
君達を大勢引き連れて参上なさる様子は、堂々として頼もしげである。背丈がすらりと高くていらっしゃるのに、太り具合もつりあって、たいそう貫禄があって、顔つきや歩き方など、大臣と言うにふさわしくいらっしゃる。葡萄染の御指貫に、桜襲の下襲をたいそう長く裾を引いて、ゆったりとことさらに重々しい振る舞いは、ああきらびやかだとお見えになるが、
六条殿(源氏)は、桜の唐の綺の御直衣に、今様色の御衣を重ねて、くつろいだ皇子らしい姿が、いよいよたとえようもない。光り輝くことこそまさっていらっしゃる。このようにしっかりと身なりを整えていらっしゃる内大臣のご様子に、比べてもお見えにならないほどであった。
君達が次々に、たいそう清らかなご兄弟の間柄で集まっていらっしゃる。藤大納言や春宮大夫など、今はそう申し上げるご子息たちも、皆出世していらっしゃる。自然と、わざわざ呼んだわけでもないのに、評判が高く高貴な殿上人や蔵人頭、五位の蔵人、近衛の中将や少将、弁官など、人柄が華やかで立派な十数人が集まっていらっしゃるので、いかめしく、それ以下の普通の人々も多くて、杯が何度も巡り、皆酔ってしまって、それぞれ、このように幸運な人として勝れていらっしゃる二人のご様子を話の種にした。
意訳
源氏は大宮に口止めをする。源氏が三条宮に来たと聞いた内大臣は、大宮の手紙を受けて、夕霧と雲居雁の件かと思いながら参上する。
大勢の子息を連れた内大臣は堂々として立派だが、くつろいだ直衣姿の源氏は、さらに比べようもなく美しい。人々は酒を酌み交わし、二人の栄華を語り合う。
語釈・文法注
- しう德
- 宿徳(しゅうとく)。年功を積んで徳が備わり、貫禄があること。
文法
- 伝聞推定の「あなり」(聞えま欲しげなる事もあなり)
- 「あるなり」の撥音便無表記。「申し上げたいことがあるようです」。
- 「てむ」(許してむ)
- 強意の「つ」の未然形+意志の「む」。「許してしまおう」。
解説
内大臣は、大宮の手紙を受けて、夕霧と雲居雁の件だと思い込む。源氏に頼まれたら許してもよいと思いつつ、すぐには折れたくない内大臣の「あやにく心」は、ユーモラスに描かれている。
堂々と装った内大臣と、くつろいだ姿の源氏の対比は、二人の器量の差を示している。どれほど整えても、源氏の自然な美しさにはかなわない。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、512–513頁(コマ261)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日