源氏物語 第29帖 行幸(5)
源氏、大宮を見舞う
源氏は、忍びやかに振る舞っても行幸に劣らない威厳で三条宮を訪れる。大宮は、この世のものとも思えない源氏の姿を見て、病の苦しさも忘れる気持ちになり、脇息にもたれて起き上がる。源氏は、大宮の病がそれほど重くないことを喜び、自分も年をとって出仕もせず籠もりがちだと語る。大宮は、今年になって心細くなっていたが、今日は少し命が延びた気がすると言い、夕霧が心を尽くして看病してくれるので、この世に引き留められていると泣く。

- 1今今いまははは况况ましてしてして忍忍しのびやかびやかびやかににに振振ふる舞舞まひひい給給たまへへえどどどみゆきみゆきみゆきににに劣劣おとらららずずずよそほしくよそほしくよそおしくいよいよいよいよいよいよ光光ひかりをををのみのみのみ添添そへへえ給給たまふふう。。。御御おんかたちかたちかたちなどなどなどのののこのこのこの世世よににに見見みえええぬぬぬ心地心地ここちしししててて珍珍めずらしうしうしゅう見見み奉奉たてまつりりり給給たまふふうにににははは、、、いといといと御御おん心地心地ここちののの惱惱なやましさしさしさももも取取とりりり捨捨すてててらるゝらるゝらるる心心ここちちちしししててて起起おききき居居い給給たまへへえりりり。。。御御おんけうけうきょうにににかかりかかりかかりててて弱弱よわげげげなれなれなれどどど物物ものなどなどなどいといといと能能よくくく聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
- 2「「「けしうけしうけしゅうはははおはしまさゞりおはしまさゞりおわしまさざりけるけるけるをををなにがしなにがしなにがしののの朝臣朝臣あそんののの心心こころ惑惑まどはしはしわしててておどろおどろしうおどろおどろしうおどろおどろしゅう歎歎なげききき聞聞きこえええさすさすさすめれめれめればばば、、、いかやういかやういかようににに物物ものさせさせさせ給給たまふふうにににかかかとととなむなむなん覺束覺束おぼつかながりながりながり聞聞きこえええさせさせさせつるつるつる。。。內內うちなどなどなどにににもももことことことなるなるなる序序ついでなきなきなき限限かぎりははは參參まいらららずずず、、、おほやけおほやけおおやけににに仕仕つかふるふるうる人人ひとともともともなくなくなくててて籠籠こもりりり侍侍はべれれればばば萬萬よろずうひうひしううひうひしうういういしゅう世世よだけくだけくだけくなりなりなりにににててて侍侍はべるるる。。。齡齡よわいなどなどなどこれこれこれよりよりより增增まさるるる人人ひと、、、腰腰こし堪堪たへへえぬぬぬまでまでまでかゞまりかゞまりかがまりありくありくありくためしためしためし昔昔むかしももも今今いまももも侍侍はべるるるめれめれめれどどど、、、あやしくあやしくあやしくおれおれしきおれおれしきおれおれしき本性本性ほんじょうににに添添そふふう物物もの憂憂うさささににになむなむなん侍侍はべるるるべきべきべき」」」などなどなど聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
- 3「「「年年としののの積積つもりりりののの惱惱なやみみみととと思思おもううう給給たまへへえつゝつゝつつ月月つき頃頃ごろににになりなりなりぬるぬるぬるををを今今こ年年としとととなりなりなりてててははは賴賴たのみみみ少少すくなきききやうやうようににに覺覺おぼえええ侍侍はべれれればばば、、、今今いま一一ひと度度たびだにだにだにかくかくかく見見み奉奉たてまつりりり聞聞きこえええさするさするさすることことこともももなくなくなくてててやややととと心心こころ細細ぼそくくく思思おもううう給給たまへへえつるつるつるををを、、、今日今日きょうこそこそこそ又又また少少すこししし延延のびびびぬるぬるぬる心地心地ここちししし侍侍はべれれれ。。。
- 4今今いまははは惜惜おしみみみとむとむとむべきべきべき程程ほどにににももも侍侍はべらららずずず、、、さべきさべきさべき人々人々びとにににももも立立たちちち後後おくれれれ世世よののの末末すえににに殘殘のこりりりとまれとまれとまれるるる類類たぐひひいををを、、、人人ひとののの上上うえにてにてにていといといと心心こころづきなしづきなしずきなしととと見見み侍侍はべりりりしかしかしかばばば、、、出出いででで立立たちちち急急いそぎぎぎをををなむなむなん思思おもひひい催催もよおささされれれ侍侍はべるるるににに、、、このこのこの中將中將ちゅうじょうのののいといといと哀哀あわれにににあやしきあやしきあやしきまでまでまで思思おもひひい扱扱あつかひひい心心こころををを騷騷さわがいがいがい給給たまふふうををを見見み侍侍はべるるるににになむなむなんさまざまさまざまさまざまにににかけかけかけとゞめとゞめとどめられられられててて今今いままでまでまで長長ながびきびきびき侍侍はべりりり」」」ととと唯唯ただ泣泣なきききににに泣泣なきききててて御御おん聲聲こえのののわなゝくわなゝくわななくもももをこがましけれをこがましけれおこがましけれどどどさるさるさる事事ことどもどもどもなれなれなればばばいといといと哀哀あわれなりなりなり。。。
現代語訳
今はなおさら忍びやかに振る舞っていらっしゃるけれど、行幸に劣らず威厳があって、ますます光り輝くばかりでいらっしゃる。大宮は、源氏のご容貌などがこの世のものとも思えない気持ちがして、珍しく拝見なさると、ご病気の苦しさも取り除かれるような気持ちがして、起き上がって座っていらっしゃる。脇息に寄りかかって弱々しいけれど、お話などはたいそうよく申し上げなさる。
源氏は「それほどお悪くはいらっしゃらなかったのに、某の朝臣(夕霧)が心を乱して、大げさにお嘆き申し上げているようなので、どのようにしていらっしゃるのかと、気がかりに思っておりました。宮中などにも、特別な用事のない限りは参上せず、朝廷に仕える人でもないようにして籠もっておりますので、何事にも不慣れで、気後れするようになってしまいました。年齢などがこれより上の人で、腰が立たないほどかがまって出歩く例は、昔も今もあるようですが、妙にぼんやりした生まれつきに加わる物憂さのせいでございましょう」などと申し上げなさる。
大宮は「年をとったための病と存じながら、何か月にもなりましたが、今年になってからは、頼りないように思われますので、もう一度だけでも、このようにお目にかかってお話し申し上げることもなく終わるのかと、心細く存じておりましたが、今日こそまた少し命が延びた気持ちがいたします。
今は惜しんで生きながらえるべき年齢でもございません。しかるべき人々にも先立たれて、末の世に生き残っている者を、他人の身の上として、たいそう感心しないと見ておりましたので、旅立ちの支度を急ぐ気持ちになっておりましたが、この中将がたいそうしみじみと、不思議なほど気を配って心配してくださるのを見ておりますと、あれこれと引き留められて、今まで生き長らえております」と、ただひたすらお泣きになって、お声が震えるのも愚かしいけれど、もっともなことなので、たいそうしみじみとしている。
意訳
源氏が三条宮を訪れると、病の大宮は、源氏の姿を見て苦しさも忘れ、起き上がる。源氏は、自分も年をとって籠もりがちだと語る。
大宮は、今日は少し命が延びた気がすると言い、夕霧が心を尽くして看病してくれるので、この世に引き留められていると泣く。
語釈・文法注
- けう息
- 脇息(きょうそく)。座った時にひじをかけて、もたれかかる台。
文法
- 係り結び「こそ…侍れ」(今日こそ又少し延びぬる心地し侍れ)
- 「こそ」に応じて已然形「侍れ」で結ぶ。「今日こそ、また少し命が延びた気がいたします」。
- 「だに」(今一度だに)
- 最小限の願望。「せめてもう一度だけでも」。
解説
源氏の訪問は、大宮にとって何よりの慰めとなる。娘の葵の上を亡くした大宮にとって、源氏は今も婿であり、その美しさは病を忘れさせるほどである。
大宮は、夕霧の献身的な看病に支えられて生きていると語る。夕霧の誠実な人柄は、ここでも描かれている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、508–511頁(コマ259–260)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日