源氏物語 第28帖 野分(9)
大宮と内大臣
夕霧が祖母の大宮のもとに参上すると、大宮は静かに勤行をしている。三条宮には、六条院の華やかさに比べようもないが、尼君たちの墨染めの姿がかえって趣深い。内大臣も参上し、大宮は、孫娘の雲居雁に久しく会えないことを嘆いて泣く。内大臣は、雲居雁は物思いに沈んで衰えていると言い、女の子は持つものではないと、なおも心解けない様子で言う。そして、ひどく手に負えない娘(近江の君)を引き取って困っていると笑う。大宮が、娘という名がありながら、そんなことがあるものかと言うと、内大臣は、それが見苦しいので、ぜひお目にかけたいと申し上げる。

- 1をばをばをば宮宮みやののの御御おん許許もとににに參參まいりりり給給たまへへえれれればばば、、、のどやかのどやかのどやかににに御御おんおこなひおこなひおこないししし給給たまふふう。。。よろしきよろしきよろしき若若わか人人うどなどなどなどはははこゝこゝここにににももも侍侍さぶらへへえどどど、、、もてなしもてなしもてなしけはひけはひけわいさうぞくさうぞくそうぞくどもどもどもゝゝも盛盛さかりなるなるなるあたりあたりあたりにににははは似似にるるるべくべくべくもももあらあらあらずずず。。。かたちかたちかたちよきよきよき尼尼あま君君ぎみだちだちだちののの墨墨すみ染染ぞめにににやつれやつれやつれたるたるたるぞぞぞなかなかなかなかなかなかかゝるかゝるかかる所所ところにににつけつけつけてててはははさるさるさるかたかたかたにてにてにて哀哀あわれなりなりなり。。。
- 2內內うちのののおとゞおとゞおとどももも參參まいりりり給給たまへへえるるるにににおほとなぶらおほとなぶらおおとなぶらなどなどなどまゐりまゐりまいりてててのどやかのどやかのどやかににに御御おん物物もの語語がたり聞聞きこえええ給給たまふふう。。。「「「姫君姫君ひめぎみををを久久ひさしくしくしく見見み奉奉たてまつらららぬぬぬがががあさましきあさましきあさましきことことこと」」」とてとてとてたゞたゞただ泣泣なきききににに泣泣なききき給給たまふふう。。。「「「今今いまこのこのこのごろごろごろののの程程ほどににに參參まいらららせせせむむん。。。心心こころづからづからずから物物もの思思おもはしげはしげわしげにてにてにて口口くち惜惜おしくしくしく衰衰おとろへへえてててなむなむなん侍侍はべるるるめるめるめる。。。をんなごをんなごおんなごこそこそこそよくよくよくいはいはいわゞゞばもちもちもち侍侍はべるるるまじきまじきまじきものものものなりなりなりけれけれけれ。。。とととあるあるあるにににつけつけつけてててももも心心こころのみのみのみなむなむなん盡盡つくささされれれ侍侍はべりりりけるけるける」」」などなどなど猶猶なお心心こころ解解とけけけずずず思思おもひひいおきおきおきたるたるたる氣色氣色けしきにてにてにてのたまへのたまへのたまえばばば、、、心心こころ憂憂うくくくてててせちせちせちにににももも聞聞きこえええ給給たまははわずずず。。。
- 3そのそのそのついでついでついでにににももも「「「いといといとなるなるなるむすめむすめむすめまうけまうけもうけ侍侍はべりりりててて、、、もてもてもて煩煩わずらひひい侍侍はべりりりぬぬぬ」」」とととうれへうれへうれえ聞聞きこえええ給給たまひひいててて笑笑わらひひい給給たまふふう。。。宮宮みや「「「いでいでいであなあなあなあやしあやしあやし、、、むすめむすめむすめととといふいふいう名名なはははしししててて、、、さがなかるさがなかるさがなかるやうやうようやややあるあるある」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば「「「それそれそれなむなむなん見見み苦苦ぐるしきしきしきことことことににになむなむなん侍侍はべるるる。。。いかでいかでいかで御覽御覽ごらんぜぜぜさせさせさせむむん」」」ととと聞聞きこえええ給給たまふふうとととややや。。。
現代語訳
夕霧が祖母の大宮のもとに参上なさると、大宮は静かにお勤めをしていらっしゃる。まずまずの若い女房などは、ここにもお仕えしているけれど、振る舞いや様子、装束なども、盛んな六条院のあたりとは比べようもない。容貌のよい尼君たちが墨染めの衣に身をやつしているのが、かえってこのような所にふさわしく、それなりにしみじみとした趣がある。
内大臣も参上なさったので、大殿油などを灯して、のんびりとお話し申し上げなさる。大宮は「姫君(雲居雁)に久しくお会いしないのが、情けないこと」と言って、ただひたすらお泣きになる。内大臣は「そのうちに、近いうちに参らせましょう。自分から物思いに沈んだ様子で、残念なほど衰えているようでございます。女の子というものは、はっきり申せば、持つべきものではございませんでした。何かにつけても、心ばかりが尽くされることでございます」などと、やはり心が解けず、根に持っている様子でおっしゃるので、大宮はつらくて、強くもお願い申し上げなさらない。
そのついでにも、内大臣は「たいそう不出来な娘を引き取りまして、持て余しております」と嘆いて申し上げなさって、お笑いになる。大宮が「いや、まあ妙なこと。娘という名がついていて、ひどいということがありましょうか」とおっしゃると、「それが見苦しいことでございます。何とかしてお目にかけたいものです」と申し上げなさったとか。
意訳
夕霧は祖母の大宮を訪ねる。そこへ内大臣も参上し、大宮は孫娘の雲居雁に会えないことを嘆いて泣くが、内大臣はなおも心解けない様子である。
内大臣は、手に負えない娘(近江の君)を引き取って困っていると笑い、大宮にお目にかけたいと言う。
語釈・文法注
- ふでうなるむすめ
- 「ふでう」は「不調」で、出来の悪いこと。常夏・篝火の巻で内大臣が引き取った近江の君を指す。
文法
- 伝聞の「とや」(聞え給ふとや)
- 「…と申し上げなさったとか」。語り手が伝聞の形で巻を結ぶ。
- 反語の「やうやある」(さがなかるやうやある)
- 「ひどいということがあろうか、いや、ない」。
解説
野分の巻は、六条院の華やかさとは対照的な、三条宮の静かな場面で結ばれる。大宮は孫娘の雲居雁に会えず、内大臣は夕霧と雲居雁の仲を許さないままである。
内大臣が近江の君のことを笑いながら話すのは、続く行幸の巻で、玉鬘が実は内大臣の娘であることが明かされる伏線ともなっている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、504–505頁(コマ257)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日