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源氏物語 第26帖 常夏(7)

近江の君の処遇

登場人物:内大臣(頭中将)・弘徽殿の女御・近江の君

内大臣は、北の対に住まわせている近江の君の扱いに困る。世間の非難を恐れて送り返すのも軽々しく、閉じこめておけば大切にするつもりかと噂される。内大臣は、弘徽殿の女御のもとで宮仕えさせて、行儀を学ばせようと考え、女御に、年配の女房に遠慮なく教えさせてほしい、若い女房たちの笑い者にはしないでほしいと頼む。女御は、柏木が期待しすぎただけで、それほどひどくはないでしょうと穏やかに答える。女御は、細やかな美しさはないが上品で、咲きかけた梅の花のような風情がある。

内大臣邸の弘徽殿の女御の部屋で、内大臣が苦笑しながら近江の君のことを頼み、上品な女御が穏やかにほほえんで聞いている場面(AI生成)
内大臣邸の弘徽殿の女御の部屋で、内大臣が苦笑しながら近江の君のことを頼み、上品な女御が穏やかにほほえんで聞いている場面
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引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

大臣は、この北の対の新しい姫君(近江の君)をどうしよう、出過ぎたことをして迎え取ってきて、人がこのように非難するからといって送り返すのも、たいそう軽々しく、正気でないようだ。こうして閉じこめておいたので、本当に大切にするつもりがあるのかと人が言いなしているらしいのも悔しい。

女御の御方などに交じらせて、そういう愚か者として扱ってしまおう、人がたいそうみっともないものとけなしているらしい容貌は、それほど言うほどでもあるまいなどとお思いになって、

女御の君に、「あの人を参上させましょう。見苦しいようなことなどは、年配の女房などに遠慮なく教えさせなさって、ご覧ください。若い女房たちの話の種にして笑わせなさいますな。まったく軽々しいようですから」と、笑いながら申し上げなさる。

女御は、「どうしてそれほど格別にひどいことがございましょう。中将などが、たいそうこの上なく思っておりましたらしい前評判に及ばないというだけのことでございましょう。このようにおっしゃって騒ぎなさるのを、きまり悪くお思いになるにつけても、一方では気後れしているのでしょうか」と、たいそう気恥ずかしそうに申し上げなさる。

この女御のご様子は、細やかな美しさはなくて、たいそう上品で澄んでいるうえに、親しみやすい感じが加わって、美しい梅の花の咲きかけた朝ぼらけのように思われて、言い残したことが多そうにほほえんでいらっしゃるのが、人とは違っていると、大臣はお見申し上げなさる。「中将が、そうは言っても、心が若くて思慮が浅いからだ」などと申し上げなさるのも、気の毒な近江の君の評判であるよ。

意訳

内大臣は、近江の君の扱いに困り、送り返すのも閉じこめておくのも世間体が悪いと悩む。弘徽殿の女御のもとで宮仕えさせて、行儀を学ばせようと考え、女御に頼む。

女御は、柏木が期待しすぎただけで、それほどひどくはないでしょうと穏やかに答える。女御は、咲きかけた梅の花のような上品な風情がある。

語釈・文法注

北の對の今君
近江の君。内大臣が夢語りをきっかけに引き取った娘。近江国で育ったので、近江の君と呼ばれる。早口で品がなく、内大臣の悩みの種となる。

文法

推量の「てむ」(あないてむ)
「扱ってしまおう」。強い意志。
反語の「やは」(さいふばかりにやはある)
「それほど言うほどでもあろうか、いや、ない」。

解説

近江の君は、源氏物語の中でも珍しい滑稽な人物である。内大臣が玉鬘の代わりに引き取ったのが、品のない近江の君であったことは、源氏との張り合いにおける内大臣の痛手となる。

弘徽殿の女御の穏やかな人柄は、近江の君の騒々しさと対照的である。女御を「梅の花の開けさしたる朝ぼらけ」にたとえる描写は、その上品な美しさを印象づける。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、486–487頁(コマ248)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日