源氏物語 第26帖 常夏(6)
雲居雁の昼寝
あれこれ思いめぐらした内大臣は、ふいに雲居雁の部屋を訪れる。雲居雁は薄物の単衣を着て、扇を持ったまま腕を枕に昼寝をしていて、そのかわいらしさに親の目にも美しく見える。内大臣は扇を鳴らして起こし、うたた寝をたしなめて、女は常に身を慎むべきだが、堅苦しすぎるのもよくないと説く。源氏が明石の姫君を穏やかに育てていると聞いて、雲居雁も宮仕えに出したかったと言い、言い寄る人になびくなと戒める。雲居雁は、昔の騒ぎを思い出して恥ずかしく思い、大宮のもとにも行けずにいる。

- 1とかくとかくとかくおぼしおぼしおぼしめぐらすめぐらすめぐらすまゝまゝままにににゆくりゆくりゆくりもももなくなくなくかろらかかろらかかろらかにににはひはひはい渡渡わたりりり給給たまへへえりりり。。。少將少將しょうしょうももも御御おん供供ともににに參參まいりりり給給たまふふう。。。姫君姫君ひめぎみははは晝晝ひる寢寢ねししし給給たまへへえるるる程程ほどなりなりなり。。。
- 2うすものうすものうすものゝゝのひとへひとへひとえををを着着き給給たまひひいててて臥臥ふししし給給たまへへえるるるさまさまさまあつかはしくあつかはしくあつかわしくははは見見みえええずずずいといといとらうたげらうたげろうたげにににさゝやかさゝやかささやかなりなりなりすきすきすき給給たまへへえるるる肌肌はだつきつきつきもももいといといと美美うつくしくしくし。。。をかしげをかしげおかしげなるなるなる手手てつきつきつきしししててて扇扇おうぎをををももも給給たまへへえりりりけるけるけるながらながらながらかひなかひなかいなををを枕枕まくらにてにてにてうちうちうちやらやらやられれれたるたるたるみぐしみぐしみぐしのののいといといと長長ながくくくこちたくこちたくこちたくはははあらあらあらねねねどどど、、、いといといとをかしきをかしきおかしきすゑすゑすえつきつきつきなりなりなり
- 3人々人々びとももも物物ものののの後後うしろににによりよりよりふしふしふしつゝつゝつつ打打うちちち休休やすみみみたれたれたればばばふとふとふともももおどろいおどろいおどろい給給たまははわずずず。。。扇扇おうぎをををならしならしならし給給たまへへえれれればばば何何なに心心ごころもももなくなくなく見見み上上あげげげ給給たまへへえるるるまみまみまみらうたげらうたげろうたげにてにてにて、、、つらつきつらつきつらつきののの赤赤あかめめめるるるももも親親おやののの御御おん目目めにににはははいといといと美美うつくしうしうしゅう見見みゆゆゆ。。。
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現代語訳
内大臣は、あれこれと思いめぐらすままに、だしぬけに気軽に雲居雁の部屋においでになった。少将もお供に参上なさる。姫君は昼寝をしていらっしゃるところである。
薄物の単衣を着て横になっていらっしゃる様子は、暑苦しくは見えず、たいそうかわいらしく小柄である。透けて見える肌つきもたいそう美しい。かわいらしい手つきで扇を持っていらっしゃったまま、腕を枕にして、投げ出されている御髪は、それほど長くふさふさとはしていないけれど、たいそう美しい裾の様子である。
女房たちも物の陰に寄りかかって休んでいるので、すぐにはお目覚めにならない。扇を鳴らしなさると、無心に見上げなさる目元がかわいらしくて、頬の赤くなっているのも、親のお目にはたいそう美しく見える。
「うたた寝はお諫め申し上げていますのに、どうしてこんなに無防備な様子でお休みになっていたのですか。女房たちも近くにお仕えしないで、けしからぬことだ。女は、身を常に気をつけて守っているのがよいのです。気を許して投げやりな様子にふるまうのは、品のないことです。
そうかといって、ひどく賢ぶって身を固めて、不動の陀羅尼を読み、印を結んで座っているのも憎らしい。身近な人にも、あまりよそよそしく隔てがましいのなど、上品なようでも、人にかわいげがなく、心が美しくないことです。
太政大臣が、后がねの姫君(明石の姫君)をしつけていらっしゃるという教えは、万事に通じさせて穏やかにして、才気走った癖もつけまい、ぼんやりして物事がわからないこともさせまいと、ゆったりとお決めになっているそうだ。
なるほど、それももっともなことだけれど、人として、心にもすることにも、特に好む方面はそれぞれあるものだから、成長なさったら、それなりの様子があるだろう。この君が成人して、宮仕えにお出しになる時の様子こそ、たいそう見たいものだ」などとおっしゃって、
「思うようにお世話申し上げようと思っていた筋(入内)は、違ってしまったお身の上だけれど、何とかして人の物笑いにならないようにして差し上げようと、人のさまざまな身の上を聞くたびに思い乱れております。試しにと熱心に言い寄るような人の願い事に、しばらくもなびきなさいますな。考えていることがあるのです」などと、たいそうかわいいと思いながら申し上げなさる。
昔は何事も深く思い知らずに、かえって、差し迫ってつらかったあの騒ぎにも、平気で父にお会いしていたことよと、今になって思い出すにつけても、胸がふさがって、たいそう恥ずかしい。
大宮からも、いつも会えないことをお恨み申し上げなさるけれど、父がこのようにおっしゃるのが気がねで、おいでになってお会いすることもおできにならない。
意訳
内大臣は、ふいに雲居雁の部屋を訪れ、昼寝をしている娘のかわいらしさに見とれる。内大臣は、うたた寝をたしなめ、女は常に身を慎むべきだが、堅苦しすぎるのもよくないと説く。
内大臣は、源氏が明石の姫君を穏やかに育てていることを意識しながら、言い寄る人になびくなと雲居雁を戒める。雲居雁は、昔の騒ぎを思い出して恥ずかしく思い、大宮のもとにも行けずにいる。
語釈・文法注
- 不動の陀羅尼
- 不動明王の真言。印を結んで唱えると、魔を退けるとされた。内大臣は、身を守ることばかりに固くなるのもよくないと、たとえに引く。
文法
- 禁止の「な…そ」(なしばし靡き給ひそ)
- 「しばらくもなびきなさいますな」。
- 伝聞の「なれ」(おきて給ふなれ)
- 「お決めになっているそうだ」。
解説
昼寝をする雲居雁の描写は、源氏物語の中でも愛らしい場面の一つである。内大臣の娘への愛情と、源氏の娘たちへの対抗意識とが、娘をたしなめる言葉の中に入りまじっている。
内大臣の女子教育論は、源氏の教育方針を意識したものである。極端を避け、ほどよく育てるべきだという考えは、蛍の巻での源氏の言葉と響き合っている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、484–487頁(コマ247–248)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日