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源氏物語 第22帖 玉鬘(18)

末摘花の返歌

登場人物:光源氏・紫の上・末摘花

女君たちの返事が届く中、二条東院の末摘花は、礼儀正しく使いに禄を与えるが、それは袖口のすすけた山吹の袿であった。末摘花の手紙は、黄ばんだ厚い陸奥紙に、「から衣」を詠み込んだ古風な歌であった。源氏は苦笑し、古風な歌詠みは「から衣」「袂ぬるる」から離れられないと語り、末摘花の父常陸宮の歌学書の話をする。紫の上は、その本を姫君のために残しておけばよかったと言うが、源氏は、女が一つのことに凝るのはよくないと答える。源氏は、返事をするよう紫の上に勧められて、末摘花に返歌する。

六条院の春の町で、源氏が黄ばんだ陸奥紙の手紙を手にして苦笑し、紫の上が何事かといぶかしげに見ている場面(AI生成)
六条院の春の町で、源氏が黄ばんだ陸奥紙の手紙を手にして苦笑し、紫の上が何事かといぶかしげに見ている場面
  1. 1御おん御おんおん使つかひ使つかひつかいののの祿ろく祿ろくろくこゝろごゝろこゝろごゝろこころごころなるなるなるににに末摘花すゑつむはな末摘花すゑつむはなすえつむはな東ひんがし東ひんがしひんがしののの院ゐん院ゐんいんにににおはすれおはすれおわすればばば今いま今いまいま少すこ少すこすこしししさしさしさしはなれはなれはなれえんえんえんなるなるなるべきべきべきををを麗うるは麗うるはうるわしくしくしくものしものしものし給たま給たまたまふふう人ひと人ひとひとにてにてにて、、、あるあるあるべきべきべきことことことはははたがへたがへたがえ給たま給たまたまははわずずず。。。山吹やまぶき山吹やまぶきやまぶきののの袿うちき袿うちきうちきののの袖そで袖そでそで口ぐち口ぐちぐちいたくいたくいたくすゝけすゝけすすけたるたるたるをををうつほうつほうつほにてにてにてうちうちうちかけかけかけ給たま給たまたまへへえりりり。。。
  2. 2御おん御おんおん文ふみ文ふみふみにににはははいといといとかうばしきかうばしきこうばしきみちのくにがみみちのくにがみみちのくにがみののの少すこ少すこすこしししとしへとしへとしへ厚あつ厚あつあつきききががが黄き黄ききばみばみばみたるたるたるににに「「「いでいでいでやややたまへたまへたまえるるるはははなかなかなかなかなかなかにににこそこそこそ。。。きてきてきて見み見みみれれればばばうらみうらみうらみられられられけりけりけりからからから衣ころも衣ころもころもかへしかへしかえしやりやりやりてててむむん袖そで袖そでそでをををぬらしぬらしぬらしててて」」」。。。御おん御おんおん手て手ててのののすぢすぢすじことことことにににあふよりあふよりあうよりにににたりたりたり。。。
  3. 3いといといといたくいたくいたくほゝゑみほゝゑみほほえみ給たま給たまたまひひいてててとみとみとみにににもももうちうちうちおきおきおき給たま給たまたまははわねねねばばば、、、うへうへうえ何事なにごと何事なにごとなにごとならならならむむんととと見み見みみおこせおこせおこせ給たま給たまたまへへえりりり。。。御おん御おんおん使つかひ使つかひつかいにににかづけかづけかずけたるたるたるものものものをををいといといとわびしくわびしくわびしく傍かたは傍かたはかたわいたしいたしいたしとととおぼしおぼしおぼしてててみけしきみけしきみけしきあしけれあしけれあしければばばすべりすべりすべりまかでまかでまかでぬぬぬ。。。いみじくいみじくいみじくおのおのおのおのおのおのはははさゝめきさゝめきささめき笑わら笑わらわらひひいけりけりけり。。。
  4. 4かやうかやうかようにににわりなうわりなうわりのうふるめかしうふるめかしうふるめかしゅう傍かたは傍かたはかたわいたきいたきいたき所ところ所ところところのののつきつきつき給たま給たまたまへへえるるるさかしらさかしらさかしらにににもてもてもて煩わづら煩わづらわずらひひいぬぬぬべくべくべくおぼすおぼすおぼす。。。恥はづ恥はづはずかしきかしきかしきまみまみまみなりなりなり。。。
  5. 5「「「古代こたい古代こたいこたいののの歌うた歌うたうたよみよみよみははは、、、からからから衣ころも衣ころもころも、、、袂たもと袂たもとたもとぬるゝぬるゝぬるるかごとかごとかごとこそこそこそはははなれなれなれねねねななな。。。まろまろまろもももそのそのそのつらつらつらぞぞぞかしかしかし。。。更さら更さらさらにににひとひとひとすぢすぢすじにににまつはれまつはれまつわれててて今いま今いまいまめきめきめきたるたるたることことことののの葉は葉ははにににゆるぎゆるぎゆるぎ給たま給たまたまははわぬぬぬこそこそこそねたきねたきねたきことことことはははあれあれあれ。。。
  6. 6人ひと人ひとひとのののなかなかなかなるなるなることことことををををりふしをりふしおりふしおまへおまへおまえなどなどなどのののわざとわざとわざとあるあるある歌うた歌うたうたよみよみよみのののなかなかなかにてにてにてはははまとゐまとゐまといはなれはなれはなれぬぬぬみみみぞぞぞかしかしかし。。。昔むかし昔むかしむかしのののけさうけさうけそうのののをかしきをかしきおかしきいどみいどみいどみにににはははあだあだあだ人びと人びとびとととといふいふいういついついつもじもじもじをををやすめやすめやすめどころどころどころにににうちうちうちおきおきおきててて言こと言ことことののの葉は葉ははのののつゞきつゞきつづきたよりたよりたよりあるあるある心地ここち心地ここちここちすすすべかべかべかめりめりめり」」」などなどなど笑わら笑わらわらひひい給たま給たまたまふふう。。。
  7. 7「「「よろづよろづよろずののの草さう草さうそう子し子しし歌うた歌うたうたまくらまくらまくらよくよくよくあないあないあないしりしりしり見み見みみつくしつくしつくしてててそのそのそのうちうちうちののの詞ことば詞ことばことばををを取と取ととりりり出い出いいづるづるずるににに、、、よみよみよみつぎつぎつぎたるたるたるすぢすぢすじこそこそこそはははつようつようつようははは變かは變かはかわらららざるざるざるべけれべけれべけれ。。。
  8. 8常陸ひたち常陸ひたちひたちのののみこみこみこののの書か書かかききき置お置おおききき給たま給たまたまへへえりりりけるけるけるかうやかうやこうや紙がみ紙がみがみののの草さう草さうそう子し子ししをををこそこそこそ見み見みみよよよとてとてとておこせおこせおこせ給たま給たまたまへへえりりりしししががが、、、和歌わか和歌わかわかのののいといといと所ところ所ところところせうせうしょう病やまひ病やまひやまいさるさるさるべきべきべき所ところ所ところところおほかりおほかりおおかりしかしかしかばばば、、、もとよりもとよりもとよりおくれおくれおくれたるたるたる方かた方かたかたのののいとゞいとゞいとどなかなかなかなかなかなか動うご動うごうごきききすすすべくべくべくももも見み見みみえええざりざりざりしかしかしかばばば、、、むづかしくむづかしくむずかしくてててかへしかへしかへしてててききき。。。能よ能よよくくくあないあないあないしりしりしり給たま給たまたまへへえるるる人ひと人ひとひとののの口くち口くちくちつきつきつきにてにてにてはははめめめなれなれなれてててこそこそこそあれあれあれ」」」とてとてとてをかしくをかしくおかしくおぼいおぼいおぼいたるたるたるさまさまさまぞぞぞいとほしきいとほしきいとおしきややや。。。
  9. 9うへうへうえいといといとまめやかまめやかまめやかにてにてにて、、、「「「などなどなどてててかへしかへしかへし給たま給たまたまひひいけむけむけん。。。書か書かかきききとゞめとゞめとどめててて姫君ひめぎみ姫君ひめぎみひめぎみにににももも見み見みみせせせ奉たてまつ奉たてまつたてまつりりり給たま給たまたまふふうべかりべかりべかりけるけるけるものものものををを。。。こゝこゝここにににももも物もの物ものもののののなかなかなかなりなりなりしししももも蟲むし蟲むしむし皆みな皆みなみなそこなひそこなひそこないてててけれけれければばば見み見みみぬぬぬ人ひと人ひとひとはははたたた心こころ心こころこころことことことにににこそこそこそはははとほかりとほかりとおかりけれけれけれ」」」とととのたまふのたまふのたまう。。。
  10. 10「「「姫君ひめぎみ姫君ひめぎみひめぎみののの御おん御おんおん學問がくもん學問がくもんがくもんにににいといといとようようようなからなからなからむむん。。。すべてすべてすべて女をんな女をんなおんなはははたてたてたてゝゝて好この好このこのめめめるるることことこと設まう設まうもうけけけてててしみしみしみぬるぬるぬるはははさまさまさまよからよからよからぬぬぬことことことなりなりなり何事なにごと何事なにごとなにごともももいといといとつきなからつきなからつきなからむむんはははくちくちくち惜くちを惜くちをくちおしからしからしからむむん。。。たゞたゞただ心こころ心こころこころのののすぢすぢすじをををたゞよはしからたゞよはしからただよわしからずずずもてもてもてしづめしづめしずめおきおきおきてててなだらかなだらかなだらかならならならむむんのみのみのみなむなむなんめやすかるめやすかるめやすかるべかりべかりべかりけるけるける」」」などなどなどのたまひのたまひのたまいててて
  11. 11御おん御おんおん返事かへりごと返事かへりごとかえりごとはははおぼしおぼしおぼしもももかけかけかけねねねばばば「「「返かへ返かへかえしししやりやりやりてててむむん」」」とととあああめるめるめるににに、、、「「「これこれこれよりよりより押お押おおししし返かへ返かへかえししし給たま給たまたまははわざらざらざらむむんはははひがひがしからひがひがしからひがひがしからむむん」」」とととそゝのかしそゝのかしそそのかし聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまふふう。。。なさけなさけなさけ捨す捨すすてててぬぬぬ御心みこころ御心みこころみこころにてにてにて書か書かかききき給たま給たまたまふふう。。。いといといと心こころ心こころこころやすやすやすげげげなりなりなり。。。「「「かへさかへさかえさむむんととといふいふいうにににつけつけつけてててもももかたしきかたしきかたしきののの夜よ夜よよののの衣ころも衣ころもころもををを思おも思おもおもひひいこそこそこそやれやれやれ。。。ことわりことわりことわりややや」」」とととぞぞぞあああめるめるめる。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

方々がお使いへの禄をそれぞれに出す中で、末摘花は二条東院にいらっしゃるので、もう少し控えめにしてもよいはずなのに、きちんとしていらっしゃる方なので、すべきことは怠りなさらない。山吹の袿の、袖口がひどくすすけたのを、下に何も重ねずに、使いの肩にお掛けになった。

お手紙には、たいそう香をたきしめた陸奥紙の、少し古びて厚いのが黄ばんだものに、「さて、いただいたのは、かえって。着てみると、恨めしく思われることです。この唐衣はお返ししてしまいましょう、涙で袖を濡らして」。ご筆跡の筋は、格別に古風に寄っている。

源氏はたいそうひどくほほえみなさって、すぐにはお手紙をお置きにならないので、上が何事だろうとこちらをご覧になった。使いの肩に掛けた品を、たいそう情けなく、みっともないとお思いになって、ご機嫌が悪いので、使いはそっと退出した。女房たちは皆、ひどくひそひそと笑った。

このようにどうしようもなく古風で、みっともないところがおありになる、そのさしでがましさに、手を焼きそうにお思いになる。こちらが気恥ずかしくなるようなお目元である。

「昔風の歌詠みは、『唐衣』『袂濡るる』という恨み言の文句から離れないものですね。私もその仲間ですよ。まったく一つの筋に凝り固まって、今風の言葉になびきなさらないのが、憎らしいことだ。

人の集まる中で、折々の御前などでのあらたまった歌会では、『まとゐ』という三文字は欠かせないものですよ。昔の懸想の面白い詠み比べには、『あだ人』という五文字を、休めどころの第三句に置いて、言葉の続きが手頃になる気がするようです」などとお笑いになる。

「あらゆる草子や歌枕をよく知り尽くして、その中の言葉を取り出すにしても、詠み継いできた筋は、それほど変わらないものでしょう。

常陸の親王(末摘花の父)が書き残しなさった紙屋紙の草子を、読めとおっしゃって送ってくださったが、和歌の髄脳がたいそうぎっしりと書かれていて、歌の病として避けるべき所が多かったので、もともと苦手な方面の私には、かえってますます身動きもとれなくなりそうに見えたので、面倒になって返してしまいました。よく知っていらっしゃる人の詠みぶりとしては、ありきたりですね」と言って、面白がっていらっしゃる様子は、気の毒なことよ。

上はたいそう真剣に、「どうしてお返しになったのでしょう。書き写しておいて、姫君にもお見せ申し上げなさるべきでしたのに。こちらにも、物の中にあったものも、虫が皆食ってしまったので、見たことのない人は、またいっそう疎いのです」とおっしゃる。

「姫君の御学問には、たいして役に立たないでしょう。すべて女は、特に好むことを決めて、それに凝るのは見苦しいことです。何事もまったく不得手なのは残念でしょう。ただ心の筋をふらふらさせず、落ち着かせて、穏やかであることだけが、好ましいはずです」などとおっしゃって、

お返事はお考えにもならないので、上が「『返しやりてむ』とあるのに、こちらからお返事をなさらないのは、ひねくれたことでしょう」とお勧め申し上げなさる。情けを捨てないお心なので、お書きになる。たいそう気楽な様子である。「返そうとおっしゃるにつけても、独り寝の夜の衣を裏返して寝る、あなたの寂しさを思いやることです。もっともなことですね」とあるようだ。

意訳

末摘花は、礼儀正しく使いに禄を与えるが、それは袖口のすすけた山吹の袿であった。末摘花の手紙は、黄ばんだ陸奥紙に、「から衣」を詠み込んだ古風な歌であった。源氏は苦笑し、古風な歌詠みは決まり文句から離れられないと語り、常陸宮の歌学書の話をする。

紫の上は、その本を姫君のために残しておけばよかったと言うが、源氏は、女が一つのことに凝るのはよくないと答える。紫の上に勧められて、源氏は末摘花に返歌する。

語釈・文法注

まとゐはなれぬみもじ
「まとゐ」(円居、集まり)という三文字。宴席の歌によく詠み込まれた言葉。
和歌の髓腦
和歌の奥義を記した書物。歌の作り方や、歌の病(避けるべき表現上の欠点)などを説く。藤原浜成の『歌経標式』などが知られる。

文法

強意の「こそ…あれ」(ねたきことはあれ)
「憎らしいことだ」。係り結び。
婉曲の「む」(つきなからむは)
「不得手なようなのは」。

和歌

きて見ればうらみられけりから衣かへしやりてむ袖をぬらして

詠者
末摘花
状況
源氏から贈られた衣への返歌。着てみると、恨めしく思われることです。この唐衣はお返ししてしまいましょう、涙で袖を濡らして。

修辞

掛詞
「きて」に「着て」と「来て」、「うらみ」に「裏見」と「恨み」をかける。

かへさむといふにつけてもかたしきの夜の衣を思ひこそやれ

詠者
光源氏
状況
末摘花への返歌。返そうとおっしゃるにつけても、独り寝の夜の衣を裏返して寝る、あなたの寂しさを思いやることです。

修辞

本歌取り
「いとせめて恋しき時はむばたまの夜の衣を返してぞ着る」(古今集・小野小町)をふまえる。夜の衣を裏返して寝ると、恋しい人を夢に見るという俗信による。

解説

末摘花の古風な歌と、すすけた袿を禄にする姿は、末摘花の巻以来の滑稽な人物像を受け継いでいる。しかし源氏は、そうした末摘花を見捨てず、返歌を送る。

源氏が語る女性の教養論は、何事にも偏らず、心を穏やかに保つことを理想とする。玉鬘の巻は、玉鬘の物語の始まりと、六条院の正月を迎える準備を描いて閉じられ、次の初音の巻へと続く。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、438–441頁(コマ223–224)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日