源氏物語 第22帖 玉鬘(17)
年の暮れの衣配り
年の暮れ、源氏は玉鬘の正月の支度を、高貴な方々と同じように整える。献上された織物を前に、源氏は紫の上と相談しながら、六条院の女君たちに贈る正月の晴れ着を選ぶ。紫の上は、着る人の容貌に合わせて選ぶようにと言い、源氏が選ぶ衣装から、まだ見ぬ玉鬘や明石の君の姿を推し量る。紫の上には紅梅の小袿、明石の姫君には桜の細長、花散里には浅縹、玉鬘には山吹、末摘花には柳、明石の君には梅の折枝の白い小袿、空蝉の尼君には青鈍の織物が贈られ、皆に元日に着るようにと手紙を添える。

- 1年年としのののににに御御おんしつらひしつらひしつらいのののことことこと人々人々びとのののそうぞくそうぞくそうぞくなどなどなどやんごとなきやんごとなきやんごとなき御御おんつらつらつらにににおぼしおぼしおぼしおきておきておきてたりたりたり。。。かゝりかゝりかかりともともとも田舍田舍いなかびたるびたるびたることことことやややととと山山やまがつがつがつのののかたかたかたにににあなづりあなづりあなずり推推おしししはかりはかりはかり聞聞きこえええ給給たまひひいててて、、、てうじてうじちょうじたるたるたる裳裳も奉奉たてまつりりり給給たまふふうついでついでついでににに、、、
- 2織織おり物物ものどもどもどものののわれわれわれもももわれわれわれもももととと手手てををを盡盡つくしししててておりおりおりつゝつゝつつもてもてもて參參まいれれれるるる細細ほそ長長なが小袿小袿こうちきのののいろいろいろいろいろいろさまざまさまざまさまざまなるなるなるををを御覽御覽ごらんずるずるずるににに、、、「「「いといといと多多おおかりかりかりけるけるけるものものものどもどもどもかなかなかな。。。かたがたかたがたかたがたににに恨恨うらみみみなくなくなくこそこそこそものすものすものすべかりべかりべかりけれけれけれ」」」とととうへうへうえににに聞聞きこえええ給給たまへへえばばば、、、御匣殿御匣殿みくしげどのににに仕仕つこううう奉奉まつれれれるるるもももこなたこなたこなたにににせせせさせさせさせ給給たまへへえるるるももも皆皆みなとうでとうでとうでさせさせさせ給給たまへへえりりり。。。
- 3かゝるかゝるかかるすぢすぢすじはたはたはたいといといとすぐれすぐれすぐれててて世世よににになきなきなき色色いろあひあひあいにほひにほひにおいををを染染そめめめつけつけつけ給給たまへへえばばば、、、ありがたしありがたしありがたしととと思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまふふう。。。こゝかしここゝかしこここかしこのののうちどのうちどのうちどのよりよりより參參まいれれれるるる物物ものどもどもども御覽御覽ごらんじじじくらべくらべくらべててて濃濃こききき赤赤あかきききなどなどなどさまざまさまざまさまざまをををえらえらえらせせせ給給たまひひいつゝつゝつつみそびつみそびつみそびつころもばこころもばこころもばこどもどもどもににに入入いれれれさせさせさせ給給たまひひいててておとなびおとなびおとなびたるたるたる上﨟上﨟じょうろうどもどもども侍侍さぶらひひいてててこれこれこれははは彼彼かはははととと取取とりりりぐしぐしぐしつゝつゝつつ入入いるるる。。。
- 4うへうへうえももも見見み給給たまひひいててて、、、「「「いづれいづれいずれおとりおとりおとりまさるまさるまさるけぢめけぢめけじめももも見見みえええぬぬぬものものものどもどもどもなななめるめるめるををを、、、着着き給給たまははわむむん人人ひとののの御御おんかたちかたちかたちににに思思おもひひいよそへよそへよそえつゝつゝつつ奉奉たてまつれれれ給給たまへへえかしかしかし。。。着着きたるたるたるものものものゝゝの人人ひとのののさまさまさまににに似似にぬぬぬはははひがひがしくひがひがしくひがひがしくもももありありありかしかしかし」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、
- 5おとゞおとゞおとどうちうちうち笑笑わらひひいててて、、、「「「つれなくつれなくつれなくててて人人ひとのののかたちかたちかたちおしおしおしはからはからはからむむんののの御心御心みこころなななめりめりめりななな。。。さてさてさていづれいづれいずれをををとととかかかおぼすおぼすおぼす」」」ととと聞聞きこえええ給給たまへへえばばば、、、「「「それそれそれももも鏡鏡かがみにてにてにてはははいかでいかでいかでかかか」」」とととさすがさすがさすがににに耻耻はじらひらひらいててておはすおはすおわす。。。
- 6紅梅紅梅こうばいのののいといといと紋紋もん浮浮うきききたるたるたるえびえびえび染染ぞめののの御御おんこうちきこうちきこうちき、、、今今いまやうやうよう色色いろのののいといといとすぐれすぐれすぐれたるたるたるとととはははこのこのこの御料御料りょう。。。櫻櫻さくらのののほそながほそながほそながにににつやゝかつやゝかつややかなるなるなるかいかいかい練練ねりとりとりとり添添そへへえてててははは姫君姫君ひめぎみののの御料御料りょうなりなりなり。。。
- 7あさはなだあさはなだあさはなだのののかいふかいふかいふののの織織おり物物もの織織おりりりざまざまざまなまめきなまめきなまめきたれたれたれどどど匂匂におひやかひやかいやかならならならぬぬぬにににいといといと濃濃こきききかいかいかい練練ねり具具ぐしししててて夏夏なつののの御御おんかたかたかたににに、、、曇曇くもりりりなくなくなく赤赤あかきききににに山吹山吹やまぶきののの花花はなのののほそながほそながほそながはははかのかのかの西西にしののの對對たいににに奉奉たてまつれれれ給給たまふふうををを、、、うへうへうえははは見見みぬぬぬやうやうようにてにてにておぼしおぼしおぼしあはすあはすあわす。。。
- 8內內うちのののおとゞおとゞおとどのののはなやかはなやかはなやかにににあなあなあな淸淸きよげげげとととははは見見みえええながらながらながらなまめかしうなまめかしうなまめかしゅう見見みえええたるたるたるかたかたかたのののまじらまじらまじらぬぬぬににに似似にたるたるたるなななめりめりめりとととげにげにげに推推おししし量量はからららるゝるゝるるををを、、、色色いろにににははは出出いだししし給給たまははわぬぬぬどどど、、、殿殿との見見みやりやりやり給給たまへへえるるるにににたゞたゞただならならならずずず。。。
- 9「「「いでいでいでこのこのこのかたちかたちかたちのののよそへよそへよそえははは人人ひとはらだちはらだちはらだちぬぬぬべきべきべきことことことなりなりなり。。。よしよしよしとてとてとてももも物物ものののの色色いろはははかぎりかぎりかぎりありありあり、、、人人ひとのののかたちかたちかたちはははおくれおくれおくれたるたるたるももも又又また猶猶なおそこひそこひそこいあるあるあるものものものををを」」」とてとてとてかのかのかの末摘花末摘花すえつむはなののの御料御料りょうににに柳柳やなぎののの織織おり物物もののののよしよしよしあるあるあるからくさからくさからくさをををみだれみだれみだれ織織おれれれるるるもももいといといとなまめきなまめきなまめきたれたれたればばば人人ひと知知しれれれずずずほゝゑまほゝゑまほほえまれれれ給給たまふふう。。。
- 10梅梅うめののの折折おり枝枝えだ蝶蝶ちょう鳥鳥とり飛飛とびびびちがひちがひちがいからめいからめいからめいたるたるたる白白しろききき小袿小袿こうちきににに濃濃こきききがががつやゝかつやゝかつややかなるなるなる重重かさねねねててて明石明石あかしののの御御おん方方かたににに。。。思思おもひやりひやりいやりけだかきけだかきけだかきをををうへうへうえははは目目めざましざましざましととと見見み給給たまふふう。。。
- 11うつせみうつせみうつせみののの尼君尼君あまぎみにににあをにびあをにびあおにびののの織織おり物物ものいといといと心心こころばせばせばせあるあるあるををを見見みつけつけつけ給給たまひひいててて御料御料りょうにににあるあるあるくちなしくちなしくちなしののの御御おんぞぞぞゆるしゆるしゆるし色色いろなるなるなる添添そへへえ給給たまひひいててて同同おなじじじ日日ひ着着き給給たまふふうべきべきべき御御おんせうそこせうそこしょうそこ聞聞きこえええめぐらしめぐらしめぐらし給給たまふふう。。。げにげにげに似似にげげげついついついたるたるたるどもどもども見見みむむんののの御心御心みこころなりなりなりけりけりけり。。。皆皆みな御御おんかへりかへりかえりどもどもどもたゞたゞただならならならずずず。。。
現代語訳
年の暮れに、姫君のお部屋の設えのことや、女房たちの装束などを、高貴な方々と同列にお決めになった。こうしていても、田舎びたこともあろうかと、山里育ちの方面に見くびって推し量り申し上げなさって、仕立てた装束を差し上げなさるついでに、
織物師たちが我も我もと技を尽くして織っては持って参った細長や小袿の、色とりどりさまざまなのをご覧になって、「たいそう多かった品々だな。方々に恨みのないように配るべきだ」と上に申し上げなさるので、御匣殿でお作り申し上げたものも、こちらでおさせになったものも、皆取り出させなさった。
このような方面は、上がまたたいそうすぐれていて、世にないほどの色合いや艶を染め出しなさるので、源氏はめったにない方だとお思い申し上げなさる。あちこちの打殿から参った品々をお見比べになって、濃い紫や赤など、さまざまなものをお選びになっては、御衣櫃や衣箱などに入れさせなさって、年配の上﨟女房たちがお仕えして、これはあれはと取り揃えて入れる。
上もご覧になって、「どれも優劣の区別もつかない品々のようですが、お召しになる方のご容貌に思い合わせながらお贈りになってくださいな。着たものが、その人の様子に似合わないのは、見苦しいものですから」とおっしゃるので、
大臣はお笑いになって、「さりげなく、人の容貌を推し量ろうというお心のようだね。それでは、あなたはどれをと思われるか」と申し上げなさると、「それも、鏡で見ただけでは、どうして」と、さすがに恥じらっていらっしゃる。
紅梅の、たいそう紋が浮き出た葡萄染の御小袿と、今様色のたいそうすぐれたものとは、この方(紫の上)のお料。桜の細長に、つややかな掻練を取り添えたのは、姫君(明石の姫君)のお料である。
浅縹の海賦の織物で、織り方は優美だけれど華やかではないものに、たいそう濃い掻練を添えて夏の御方(花散里)に、曇りなく赤い袿に山吹の花の色の細長は、あの西の対(玉鬘)にお贈りになるのを、上は見ないふりをして、思い合わせていらっしゃる。
内大臣が、華やかで、ああきれいだとは見えながら、優美に見える方面が交じっていないのに似ているのだろうと、なるほど推し量られるのを、顔色にはお出しにならないけれど、殿が目をおやりになると、ただならぬご様子である。
「いや、この容貌の思い合わせは、人が腹を立てそうなことだ。よいといっても物の色には限りがあり、人の容貌は劣っていても、やはり奥深いところがあるものを」と言って、あの末摘花のお料に、柳の織物で、由緒ある唐草を乱れ織りにしたのも、たいそう優美なので、人知れずほほえまれなさる。
梅の折枝に蝶や鳥が飛び交い、唐風の白い小袿に、濃い紫のつややかなのを重ねて、明石の御方に。その思いやりの気高さを、上は目障りだとご覧になる。
空蝉の尼君には、青鈍の織物のたいそう趣のあるものをお見つけになって、ご自分のお料にある梔子色の御衣で、聴し色のものを添えなさって、同じ日に着ていらっしゃるようにとのお手紙を、方々に申し上げなさる。本当に、似合っているかどうかを見ようというお心なのであった。皆のお返事も並々ではない。
意訳
年の暮れ、源氏は献上された織物を前に、紫の上と相談しながら、六条院の女君たちに贈る正月の晴れ着を選ぶ。紫の上は、着る人の容貌に合わせて選ぶようにと言い、源氏が選ぶ衣装から、まだ見ぬ玉鬘や明石の君の姿を推し量る。
紫の上には紅梅、明石の姫君には桜、花散里には浅縹、玉鬘には山吹、末摘花には柳、明石の君には梅の折枝の白い小袿、空蝉には青鈍の織物が贈られ、皆に元日に着るようにと手紙を添える。
語釈・文法注
- 衣配り
- 年の暮れに、正月の晴れ着を贈ること。源氏は、それぞれの女君の人柄や容貌に合った色の衣装を選んだ。
文法
- 推量の「べし」(ものすべかりけれ)
- 「配るべきだった」。当然の意。
- 「なめり」(似たるなめり)
- 「似ているのだろう」。断定「なり」の連体形「なる」に推定「めり」がついた「なるめり」の撥音便無表記。
解説
衣配りの場面は、六条院の女君たちの人柄を、衣装の色によって鮮やかに描き分けている。紫の上の紅梅、玉鬘の山吹、明石の君の白など、それぞれの色が人物の個性を象徴している。
紫の上は、源氏が選ぶ衣装から、まだ会ったことのない玉鬘や明石の君の姿を推し量る。特に明石の君への気高い衣装に、紫の上は穏やかでない思いを抱く。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、438–439頁(コマ223)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日