源氏物語 第22帖 玉鬘(16)
紫の上との語らいと夕霧の訪問
源氏は、姫君が思いのほか立派だったことを喜び、紫の上に、兵部卿宮などすき者たちの心を乱させてみたいと話す。紫の上は、妙な親だとたしなめる。源氏は手習いに、姫君を玉鬘に見立てた歌を書きつけ、夕顔を深く思っていたことがうかがえる。夕霧も姉として姫君を訪れて挨拶する。姫君の暮らしは一変し、三条は大弐を見下すようになり、豊後介は六条院の家司となって、晴れがましく思う。

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- 3「「「あやしあやしあやしののの人人ひとののの親親おやややや。。。まづまづまず人人ひとののの心心こころ勵勵はげまさささむむんことことことをををおぼすおぼすおぼすよよよ。。。けしからけしからけしからずずず」」」とととのたまふのたまふのたまう。。。「「「誠誠まことににに君君きみをををこそこそこそ今今いまののの心心こころならならならましかましかましかばばばさやうさやうさようにににもてもてもてなしなしなしててて見見みつつつべかりべかりべかりけれけれけれ。。。いといといとむしんむしんむしんににに志志こころざしなしなしなしてててしししわざわざわざぞぞぞかしかしかし」」」とてとてとて笑笑わらひひい給給たまふふうにににおもておもておもて赤赤あかみみみててておはするおはするおわする、、、いといといと若若わかくくくをかしげをかしげおかしげなりなりなり
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現代語訳
姫君が見苦しくなくていらっしゃるのをうれしくお思いになって、上(紫の上)にもお話し申し上げなさる。「あのような山里の者の中で年を過ごしたので、どんなにみっともないだろうと見くびっていたが、かえってこちらが気後れするほどに見える。
このような人がいると何とかして人に知らせて、兵部卿宮などが、この籬の内を好ましく思っていらっしゃる心を乱させてみたいものだ。すき者たちが、たいそうまじめくさってばかりこのあたりに見えるのも、このような種がないからだ。たいそう大切に扱ってみたいものだ。やはり平静でいられない人の様子を見集めよう」とおっしゃるので、
「妙な親ですこと。まず人の心をそそろうとお考えになるなんて。けしからぬことです」とおっしゃる。「本当に、あなたをこそ、今の心だったら、そのようにして見るべきだった。まったく無分別に、自分の妻にしてしまったものだよ」と言ってお笑いになると、上が顔を赤らめていらっしゃるのは、たいそう若々しく美しい。
硯を引き寄せなさって、手習いに、「恋い慕い続けているこの身は昔のままだけれど、玉鬘のようなあの人の娘は、どのような筋をたどって、私のもとに尋ねて来たのだろう」。「ああ」と、そのまま独り言をおっしゃるので、なるほど、深く思っていらっしゃった人の名残なのだろうと、上はご覧になる。
中将の君(夕霧)にも、「このような人を探し出したのを、心づかいして親しくお見舞いしなさい」とおっしゃったので、こちらに参上なさって、「人数にも入らない者ですが、このような弟がおりますと、まずお呼び寄せくださるべきでございました。お移りのときにも、参上してお仕えしませんでしたことよ」と、たいそうまじめに申し上げなさるので、そばで聞いていて気の毒なほどに、事情を知っている人は思う。
心の限りを尽くした筑紫の住まいであったけれど、あきれるほど田舎びていたのも、比べようもないほどに思い比べられることよ。お部屋の設えをはじめとして、今風で気品があって、親や兄弟として親しくお付き合い申し上げなさる。
源氏のご様子や容貌をはじめとして、目もまばゆいほどに思われるので、今こそ三条も、大弐を見下すようになった。まして監の勢いや様子を思い出すのも、縁起でもないことこの上ない。
豊後介の心ばえを、めったにないものと姫君もおわかりになり、右近もそう思って言う。いいかげんにしていては事も怠りがちになるだろうと、こちらの家司たちを定めて、しかるべきことなどを源氏はお指図になる。
豊後介も家司になった。長年田舎びて沈んでいた気持ちが、急にすっかり変わって、どうにかして仮にも出入りして見ることのできる手づるもないと思っていた大殿の中を、朝夕に出入りし慣れて、人を従えて事を執り行う身になったのは、たいそうな名誉だと思った。大臣の君のお心配りが細やかで、めったにないほどでいらっしゃることは、まことにもったいない。
意訳
源氏は、姫君が思いのほか立派だったことを喜び、紫の上に、すき者たちの心を乱させてみたいと話す。紫の上は、妙な親だとたしなめる。源氏は手習いに、姫君を玉鬘に見立てた歌を書きつけ、夕顔への深い思いがうかがえる。
夕霧も姉として姫君を訪れて挨拶する。姫君の暮らしは一変し、三条は大弐を見下すようになり、豊後介は六条院の家司となって、晴れがましく思う。
語釈・文法注
- 玉かづら
- 玉鬘。玉を緒に通した髪飾り。「筋」「絶ゆ」などの枕詞にもなる。この歌から、姫君は「玉鬘」と呼ばれる。
文法
- 願望の「しがな」(心みだりにしがな)
- 「心を乱させたいものだ」。
- 反実仮想の「ましかば…べかりけれ」(今の心ならましかば…見つべかりけれ)
- 「今の心だったら、そのようにして見るべきだった」。
和歌
戀ひわたる身はそれなれど玉かづらいかなるすぢを尋ね來つらむ
- 詠者
- 光源氏
- 状況
- 手習いに書きつけた歌。恋い慕い続けているこの身は昔のままだけれど、玉鬘のようなあの人の娘は、どのような筋をたどって、私のもとに尋ねて来たのだろう。
修辞
- 縁語
- 「玉かづら」と「すぢ」は縁語。髪飾りの玉鬘の筋に、親子の血筋・縁をかける。
解説
源氏が姫君を、すき者たちの心を乱す「くさはひ」にしようとする構想は、玉鬘十帖の物語の筋を予告している。姫君をめぐって、多くの求婚者たちが登場することになる。
夕霧は、姫君を本当の姉と信じて、まじめに挨拶する。事情を知る女房たちが「かたはらいたき」と思うのは、姉弟でない二人の関係が、やがて複雑な展開を見せることを予感させる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、436–439頁(コマ222–223)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日