源氏物語 第22帖 玉鬘(15)
六条院入りと源氏との対面
九月、姫君の移転の準備が進められ、女童や女房が集められる。姫君はいったん右近の五条の家に移り、十月に六条院に入る。源氏は花散里に、昔愛した人の娘を引き取ったので、夕霧と同じように世話をしてほしいと頼み、花散里は快く引き受ける。その夜、源氏は姫君のもとを訪れ、灯火を近づけて顔を見る。源氏は親らしく、長年行方を案じていたと涙を流し、姫君の控えめな返事の声が夕顔によく似ているのに心ひかれる。

- 1かくかくかくいふいふいうははは九月九月ながつきのののことことことなりなりなりけりけりけり。。。わたりわたりわたり給給たまははわむむんことことことすがすがしくすがすがしくすがすがしくもももいかでいかでいかでかかかはははあらあらあらむむん。。。よろしきよろしきよろしきわらはわらはわらわ若若わか人人うどなどなどなどもとめもとめもとめさすさすさす。。。筑紫筑紫つくしにてにてにてはははくちくちくち惜惜くちおしからしからしからぬぬぬ人々人々びとももも京京きょうよりよりよりちりぼひちりぼひちりぼい來來きたるたるたるなどなどなどをををたよりたよりたよりにににつけつけつけててて呼呼よびびび集集あつめめめなどなどなどしししててて侍侍さぶらははわせせせしししももも、、、俄俄にわかににに惑惑まどひひい出出いででで給給たまひひいしししさわぎさわぎさわぎににに、、、みなみなみなおくらかしおくらかしおくらかしてててけれけれければばばまたまたまた人人ひともももなしなしなし。。。
- 2京京きょうはははおのづからおのづからおのずから廣廣ひろききき所所ところなれなれなればばばいちめいちめいちめなどなどなどやうやうようのののものものものいといといとよくよくよくもとめもとめもとめつゝつゝつつゐゐいてててくくく。。。そのそのその人人ひとののの御御おん子子こなどなどなどゝゝとははは知知しらせらせらせざりざりざりけりけりけり。。。
- 3右近右近うこんががが里里さとののの五條五條ごじょうにににまづまづまず忍忍しのびびびててて渡渡わたししし奉奉たてまつりりりててて人々人々びとえりえりえりとゝのへとゝのへととのえさうぞくさうぞくそうぞくとゝのへとゝのへととのえなどなどなどしししてててかみなづきかみなづきかみなずきにににぞぞぞ渡渡わたりりり給給たまふふう。。。
- 4おとゞおとゞおとどひんがしひんがしひんがしののの御御おんかたかたかたににに聞聞きこえええ奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。「「「あはれあはれあわれととと思思おもひひいししし人人ひとののの物物ものうんじうんじうんじしししてててはかなきはかなきはかなき山里山里やまざとににに隱隱かくれれれ居居いにににけるけるけるををを、、、をさなきをさなきおさなき人人ひとのののありありありしししががが年年とし比比ごろももも人人ひと知知しれれれずずず尋尋たずねねね侍侍はべりりりしかしかしかどもどもどもえええ聞聞きききき出出いでででゞゞでなむなむなん女女おんなににになるなるなるまでまでまで過過すぎぎぎにににけるけるけるををを、、、おぼえおぼえおぼえぬぬぬかたかたかたよりよりよりなむなむなん聞聞ききききつけつけつけたるたるたる時時ときにににだにだにだにとてとてとてうつろはしうつろはしうつろわし侍侍はべるるるなりなりなり。。。
- 5母母ははもももなくなくなくなりなりなりにににけりけりけり。。。中將中將ちゅうじょうををを聞聞きこえええつけつけつけたるたるたるににに惡惡あしくしくしくやはやはやはあるあるある。。。同同おなじじじごとごとごとうしろみうしろみうしろみ給給たまへへえ。。。山山やまがつがつがつめきめきめきててておひおひおい出出いでででたれたれたればばばひなびひなびひなびたるたるたることことこと多多おおからからからむむん。。。さるべくさるべくさるべくことことことににに觸觸ふれれれててて敎敎おしへへへ給給たまへへえ」」」ととといといといとこまやかこまやかこまやかににに聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
- 6「「「げにげにげにかゝるかゝるかかる人人ひとのののおはしおはしおわしけるけるけるををを知知しりりり聞聞きこえええざりざりざりけるけるけるよよよ。。。姫君姫君ひめぎみののの一一ひと所所ところものしものしものし給給たまふふうがががさうざうしきさうざうしきそうぞうしきににに、、、善善よきききことことことかなかなかな」」」とととおいらかおいらかおいらかにににのたまふのたまふのたまう。。。「「「かのかのかの親親おやなりなりなりししし人人ひとははは心心こころなむなむなんありがたきありがたきありがたきまでまでまでよかりよかりよかりししし。。。御心御心みこころもももうしろうしろうしろ安安やすくくく思思おもひひい聞聞きこゆれゆれゆればばば」」」などなどなどのたまふのたまふのたまう。。。「「「つきづきしくつきづきしくつきずきしくうしろうしろうしろ見見みむむん人人ひとなどなどなどももも事事ことおほからおほからおおからでででつれづれつれづれつれずれににに侍侍はべるるるををを嬉嬉うれしかるしかるしかるべきべきべきことことことににになむなむなん」」」とととのたまふのたまふのたまう。。。
- 7殿殿とののののうちうちうちののの人人ひとははは、、、御御おんむすめむすめむすめとととももも知知しらららででで、、、「「「何何なに人人びとをををまたまたまた尋尋たずねねね出出いででで給給たまへへえるるるならならならむむん。。。むつかしきむつかしきむつかしきふるふるふるものものものあつかひあつかひあつかいかなかなかな」」」ととといひいひいいけりけりけり。。。御御おん車車くるま三三みつつつばかりばかりばかりしししててて人人ひとのののすがたすがたすがたどもどもどもなどなどなど右近右近うこんあれあれあればばば田舍田舍いなかびびびずずずしししたりたりたり。。。殿殿とのよりよりよりぞぞぞ綾綾あや何何なにくれくれくれととと奉奉たてまつりりり給給たまへへえるるる。。。
- 8そのそのその夜夜よやがてやがてやがておとゞおとゞおとどののの君君きみ渡渡わたりりり給給たまへへえりりり。。。昔昔むかし光源氏光源氏ひかるげんじなどなどなどいふいふいう名名なははは聞聞きききき渡渡わたりりり奉奉たてまつりりりしかしかしかどどど年年とし比比ごろのののうひうひしさうひうひしさういういしさにににさしもさしもさしも思思おもひひい聞聞きこえええざりざりざりけるけるけるををを、、、ほのかほのかほのかなるなるなるおほとなぶらおほとなぶらおおとなぶらにににみみみ几帳几帳きちょうのののほころびほころびほころびよりよりよりはつかはつかはつかににに見見み奉奉たてまつるるる。。。いとゞいとゞいとど恐恐おそろしくしくしくさへさへさへぞぞぞ覺覺おぼゆるゆるゆるややや。。。
- 9渡渡わたりりり給給たまふふうかたかたかたののの戶戶とををを右近右近うこんかいかいかいはなてはなてはなてばばば、、、「「「このこのこの戶戶と口口ぐちににに入入いるるるべきべきべき人人ひとははは心心こころことことことにににこそこそこそ」」」とととうちうちうち笑笑わらひひい給給たまひひいてててひさしひさしひさしなるなるなるおましおましおましにににつゐつゐつい居居い給給たまひひいててて、、、「「「火火ひこそこそこそいといといとけさうびけさうびけそうびたるたるたる心地心地ここちすれすれすれ。。。親親おやののの顏顏かおはははゆかしきゆかしきゆかしきものものものとととこそこそこそ聞聞きけけけ。。。さささもももおぼさおぼさおぼさぬぬぬかかか」」」とてとてとて几帳几帳きちょう少少すこししし押押おししし遣遣やりりり給給たまふふう。。。
- 10わりなくわりなくわりなく耻耻はずかしけれしけれしければばばそばみそばみそばみててておはするおはするおわするやうだいやうだいようだいなどなどなど、、、いといといとめやすくめやすくめやすく見見みゆれゆれゆればばば、、、嬉嬉うれしくしくしくててて、、、「「「今今いま少少すこししし光光ひかり見見みせせせむむんややや。。。あまりあまりあまり心心こころにくしにくしにくし」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、右近右近うこんかゝげかゝげかかげててて少少すこしししよすよすよす。。。「「「おもなおもなおもなののの人人ひとややや」」」ととと少少すこししし笑笑わらひひい給給たまふふう。。。げにげにげにとととおぼゆるおぼゆるおぼゆる御御おんまみまみまみののの耻耻はずかしげさしげさしげさなりなりなり。。。
- 11いさゝかいさゝかいささかもももことことこと人人ひととととへだてへだてへだてあるあるあるさまさまさまにににももものたまひのたまひのたまいなさなさなさずずず。。。いみじくいみじくいみじく親親おやめきめきめきててて「「「年年とし比比ごろ御御おんゆくへゆくへゆくえももも知知しらららででで心心こころにににかけかけかけぬぬぬひまひまひまなくなくなく歎歎なげききき侍侍はべるるるををを、、、かうかうこうててて見見み奉奉たてまつるるるにににつけつけつけてててももも夢夢ゆめののの心心ここちちちしししててて過過すぎぎぎにににしししかたかたかたののの事事ことどもどもども取取とりりり添添そへへえ忍忍しのびびびがたきがたきがたきににに、、、えええなむなむなん聞聞きこえええられられられざりざりざりけるけるける」」」とてとてとて御御おん目目めおしおしおしのごひのごひのごい給給たまふふう。。。誠誠まことににに悲悲かなしうしうしゅうおぼしおぼしおぼし出出いでででらるらるらる。。。
- 12御御おん年年としのののほどほどほどかぞへかぞへかぞへ給給たまひひいててて「「「親親おや子子こののの中中なかのののかくかくかく年年とし經經へたるたるたるたぐひたぐひたぐいあらあらあらじじじものものものををを契契ちぎりつらくつらくつらくもももありありありけるけるけるかなかなかな。。。今今いまはははものものものうひうひしくうひうひしくういういしく若若わかびびび給給たまふふうべきべきべき御御おん程程ほどにににもももあらあらあらじじじををを年年とし比比ごろののの御御おん物語物語ものがたりなどなどなどももも聞聞きこえええまほしきまほしきまほしきににに、、、などなどなどかかか覺束覺束おぼつかなくなくなくははは」」」ととと恨恨うらみみみ給給たまふふうににに
- 13聞聞きこえええむむんことことこともももなくなくなく耻耻はずかしけれしけれしければばば、、、「「「立立たたたたずずずしづみしづみしずみそめそめそめ侍侍はべりりりにににけるけるける後後のち何事何事なにごともももあるあるあるかかかなきなきなきかかかににになむなむなん」」」とととほのかほのかほのかににに聞聞きこえええ給給たまふふう聲聲こえぞぞぞ昔昔むかし人人びとにににいといといとよくよくよくおぼえおぼえおぼえててて若若わかびびびたりたりたりけるけるける。。。ほゝゑみほゝゑみほほえみててて、、、「「「しづみしづみしずみ給給たまへへえりりりけるけるけるをををあはれあはれあわれとととももも今今いまはははまたまたまた誰誰たれかかかははは」」」とてとてとて心心こころばへばへばえいふかひなくいふかひなくいうかいなくはははあらあらあらぬぬぬ御御おんいらへいらへいらえとととおぼすおぼすおぼす。。。右近右近うこんにににあるあるあるべきべきべき事事ことのたまはせのたまはせのたまわせてててわたりわたりわたり給給たまひひいぬぬぬ。。。
現代語訳
こうしたことがあったのは九月のことであった。お移りになることが、どうしてすらすらと運ぼうか。しかるべき女童や若い女房などを探させる。筑紫では、見劣りしない人々も、都から流れてきた者などを手づるにして呼び集めたりしてお仕えさせていたが、急に逃げ出しなさった騒ぎで、皆置き去りにしてしまったので、ほかに人もいない。
都は自然と広い所なので、市女などのような者が、たいそううまく探しては連れて来る。その人(夕顔)のお子などとは知らせなかった。
右近の実家の五条に、まずこっそりお移し申し上げて、女房たちを選び整え、装束を整えなどして、十月にお移りになる。
大臣(源氏)は東の御方(花散里)に申し上げなさる。「いとしいと思っていた人が、世をはかなんで、つまらない山里に隠れ住んでいたのですが、幼い子がいたのを、長年人知れず探していましたけれど、聞き出すことができないまま、女になるまで過ぎてしまったのを、思いがけない方面から聞きつけたので、せめて今からでもと思って、移すのです。
母も亡くなってしまいました。中将(夕霧)をお預け申し上げているのに、悪いことがありましょうか。同じようにお世話ください。山里の者めいて育ったので、田舎びたことも多いでしょう。しかるべく、何かにつけて教えてやってください」と、たいそう丁寧に申し上げなさる。
「本当に、このような方がいらっしゃったのを存じ上げませんでした。姫君(明石の姫君)がお一人でいらっしゃるのが寂しいので、よいことですね」と、おっとりとおっしゃる。源氏は「あの子の親だった人は、気立てがめったにないほどよかった。あなたのお心も安心に思い申し上げているので」などとおっしゃる。花散里は「ふさわしくお世話する人なども多くなくて、所在なくしておりますので、うれしいことでございます」とおっしゃる。
殿の中の人々は、源氏の御娘とも知らずに、「どんな人をまた探し出しなさったのだろう。厄介な古物の扱いですこと」と言った。御車三台ほどで、供の人々の姿なども、右近がいるので田舎びないようにしていた。殿からは、綾や何やかやを差し上げなさった。
その夜、すぐに大臣の君がおいでになった。昔、光源氏などという名は聞き知り申し上げていたけれど、長年の世間知らずのために、それほどにも思い申し上げていなかったのを、ほのかな灯火に、御几帳のほころびから、わずかにお見申し上げる。いっそう恐ろしいほどにさえ思われることよ。
おいでになる方の戸を右近が押し開けると、「この戸口から入れる人は、格別な気がするね」とお笑いになって、廂の間の御座に膝をついてお座りになって、「灯火こそ、たいそう懸想めいた気がする。親の顔は見たいものと聞いている。そうはお思いにならないのか」と言って、几帳を少し押しやりなさる。
姫君はどうしようもなく恥ずかしいので、横を向いていらっしゃる姿などが、たいそう見苦しくなく見えるので、うれしくて、「もう少し明かりを見せてくれないか。あまりにも奥ゆかしすぎる」とおっしゃるので、右近が灯火をかき上げて少し近寄せる。「遠慮のない人だね」と少しお笑いになる。なるほどと思われる、気後れするほどのお目元である。
少しも他人と隔てがあるようにはおっしゃらない。たいそう親らしく、「長年、お行方も知らずに、心にかけない時もなく嘆いておりましたが、こうしてお会いするにつけても夢のような気がして、過ぎ去った昔のことなども加わって、こらえきれないので、何も申し上げられません」と言って、お目をぬぐいなさる。本当に悲しくお思い出しになる。
姫君のお年のほどをお数えになって、「親子の仲で、これほど長い年月を隔てた例はないだろうに、宿縁がつらいことだったよ。今はもう、ものおじして子どもっぽくしていらっしゃるべきお年でもないだろうに、長年のお話なども申し上げたいのに、どうしてよそよそしくなさるのか」とお恨みになると、
姫君は申し上げることもなく恥ずかしいので、「足も立たず、沈みはじめてしまいましてから、何事もあるかないかのようで」と、ほのかに申し上げなさる声が、昔の人(夕顔)にたいそうよく似ていて若々しかった。源氏はほほえんで、「沈んでいらっしゃったのを、かわいそうだと、今は私以外に誰が思うだろう」と言って、心ばえが言いようもないほど劣ってはいないお返事だとお思いになる。右近にしかるべきことをお指図になって、お帰りになった。
意訳
姫君はいったん右近の五条の家に移り、十月に六条院に入る。源氏は花散里に、昔愛した人の娘を引き取ったので、夕霧と同じように世話をしてほしいと頼み、花散里は快く引き受ける。
その夜、源氏は姫君のもとを訪れ、灯火を近づけて顔を見る。源氏は親らしく涙を流し、姫君の控えめな返事の声が夕顔によく似ていることに心ひかれる。
語釈・文法注
- 足立たず
- 「かぞいろはあはれと見ずや蛭の子は三年になりぬ足立たずして」(日本紀竟宴和歌)による。蛭子が三年たっても足が立たなかったという神話をふまえ、親に見捨てられた身を嘆く。
文法
- 反語の「やは」(惡しくやはある)
- 「悪いことがありましょうか、いや、ない」。
- 反語の「誰かは」(今はまた誰かは)
- 「今は私以外に誰が(あわれと思う)だろうか、いや、誰もいない」。
解説
源氏と姫君の初対面の場面である。源氏は親らしくふるまいながらも、灯火を近づけて姫君の顔を見たがる。その態度には、親の情とは別の関心が見え隠れしている。
姫君の返事の「足立たず」は、日本神話の蛭子をふまえた教養ある言葉であった。田舎育ちとは思えない姫君のたしなみに、源氏は感心する。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、434–437頁(コマ221–222)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日