源氏物語 第22帖 玉鬘(13)
源氏の手紙と姫君の返事
源氏は右近を呼んで、姫君を六条院に迎えたい、実の父の内大臣には知らせず、自分の娘として、すき者たちの心を騒がせる種にしようと言う。右近は、夕顔を死なせた罪滅ぼしに姫君を助けてほしいと頼み、源氏は涙ぐむ。末摘花の例を思い出した源氏は、田舎育ちの姫君の教養を確かめるため、まず手紙を送る。姫君は、知らない人のもとに行くことをためらうが、右近たちに説得されて返事を書く。筆跡は頼りないが上品なので、源氏は安心する。

- 1かくかくかく聞聞ききききそめそめそめててて後後のちはははめしめしめしはなちはなちはなちつゝつゝつつ、、、「「「さらばさらばさらばかのかのかの人人ひとこのこのこのわたりわたりわたりににに渡渡わたいいい奉奉たてまつらららむむん。。。年年とし比比ごろ物物もののののついでついでついで殊殊ことにににくちくちくち惜惜くちおしうしうしゅう惑惑まどはしはしわしつるつるつることことことををを思思おもひひい出出いでででつるつるつるににに、、、いといといと嬉嬉うれしくしくしく聞聞きききき出出いでででながらながらながら今今いままでまでまでおぼつかなきおぼつかなきおぼつかなきもももかひなきかひなきかいなきことことことににになむなむなん。。。
- 2ちゝちゝちちおとゞおとゞおとどにににははは何何なにかかか知知しららられれれむむん。。。いといといとあまたあまたあまたもてもてもてさわがさわがさわがるるるめるめるめるにににかずかずかずならならならでででいまいまいまはじめはじめはじめ立立たちちちまじりまじりまじりたらたらたらむむんがががなかなかなかなかなかなかなるなるなることことことこそこそこそあらあらあらめめめ。。。われわれわれはははさうざうしきさうざうしきそうぞうしきにににおぼえおぼえおぼえぬぬぬ所所ところよりよりより尋尋たずねねね出出いだしししたるたるたるととともももいはいはいわむむんかしかしかし。。。すきものすきものすきものどもどもどもののの心心こころつくさつくさつくさするするするくさはひくさはひくさわいにてにてにていといといといたういたういとうもてもてもてなさなさなさむむん」」」などなどなど語語かたらひらひらい給給たまへへえばばば、、、
- 3かつがつかつがつかつがついといといと嬉嬉うれしくしくしく思思おもひひいつゝつゝつつ、、、「「「たゞたゞただ御心御心みこころににになむなむなん。。。おとゞおとゞおとどににに知知しらせらせらせ奉奉たてまつらららむむんとととももも誰誰たれかかかははは傳傳つたへへえほのめかしほのめかしほのめかし給給たまははわむむん。。。いたづらいたづらいたずらにににすぎすぎすぎ物物ものししし給給たまひひいしししかはりかはりかわりにににははは、、、ともかくもともかくもともかくもひきひきひき助助たすけけけさせさせさせ給給たまははわむむんことことことこそこそこそははは罪罪つみかるまかるまかるませせせ給給たまははわめめめ」」」ととと聞聞きこゆゆゆ。。。
- 4「「「いたういたういとうもももかこちかこちかこちなすなすなすかなかなかな」」」とととほゝゑみほゝゑみほほえみながらながらながら淚淚なみだぐみぐみぐみ給給たまへへえりりり。。。「「「あはれあはれあわれにににはかなかりはかなかりはかなかりけるけるける契契ちぎりとととなむなむなん年年とし比比ごろ思思おもひひいわたるわたるわたる。。。かくかくかくてててつどへつどへつどえたるたるたるかたがたかたがたかたがたのののなかなかなかににに、、、かのかのかのをりをりおりのののこゝろざしこゝろざしこころざしばかりばかりばかり思思おもひひいとゞむるとゞむるとどむる人人ひとなかりなかりなかりしししををを、、、
- 5命命いのち長長ながくくくててて我我わががが心心こころながさながさながさをををももも見見みはつるはつるわつるたぐひたぐひたぐい多多おおかかかめるめるめるなかなかなかにににいふかひなくいふかひなくいうかいなくてててそこそこそこばかりばかりばかりをををかたみかたみかたみににに見見みるるるははは口惜口惜くちおしくしくしくなむなむなん。。。思思おもひひい忘忘わするゝるゝるる時時ときなきなきなきにににさてさてさてものしものしものし給給たまははわゞゞばいといといとこそこそこそほいほいほいかなふかなふかなう心地心地ここちすすすべけれべけれべけれ」」」とてとてとて御御おんせうそこせうそこしょうそこ奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。
- 6かのかのかの末摘花末摘花すえつむはなのののいふかひなかりいふかひなかりいうかいなかりしししをををおぼしおぼしおぼし出出いづれづれずればばば、、、さやうさやうさようににに沈沈しずみみみててておひおひおい出出いでででたらたらたらむむん人人ひとのののありさまありさまありさまうしろめたくうしろめたくうしろめたくててて、、、まづまづまずふみふみふみのののけしきけしきけしきゆかしうゆかしうゆかしゅうおぼさるゝおぼさるゝおぼさるるなりなりなりけりけりけり。。。
- 7ものものものまめやかまめやかまめやかにににあるべかしくあるべかしくあるべかしく書書かききき給給たまひひいてててはしはしはしにににかくかくかく聞聞きこゆるゆるゆるををを、、、「「「しらしらしらずずずともともとも尋尋たずねねねてててしらしらしらむむんみしまえみしまえみしまえににに生生おふるふるうるのののすぢすぢすじははは絕絕たえええじじじををを」」」とととなむなむなんありありありけるけるける。。。御御おんふみふみふみみづからみづからみずからまかでまかでまかでゝゝてのたまふのたまふのたまうさまさまさまなどなどなどきこゆきこゆきこゆ。。。
- 8御御おんさうぞくさうぞくそうぞく人々人々びとのののれうれうりょうなどなどなどさまざまさまざまさまざまありありありうへうへうえにににももも語語かたらひらひらい聞聞きこえええ給給たまへへえるるるなるなるなるべしべしべし。。。みくしげどのみくしげどのみくしげどのなどなどなどにににもももまうけまうけもうけののの物物もの召召めししし集集あつめめめててて色色いろあひあひあいしししざまざまざまなどなどなど異異ことなるなるなるをををとととえらえらえらせせせ給給たまへへえれれればばば、、、田舎田舎いなかびびびたるたるたるめめめどもどもどもにににはははましてましてまして珍珍めずらしきしきしきまでまでまでなむなむなん思思おもひひいけるけるける
- 9さうじみさうじみそうじみはははたゞたゞただかごとかごとかごとばかりばかりばかりにてにてにてもももまことまことまことののの親親おやののの御御おんけはひけはひけわいならならならばばばこそこそこそ嬉嬉うれしからしからしからめめめ、、、いかでいかでいかでかかか知知しらららぬぬぬ人人ひとののの御御おんあたりあたりあたりにににはははまじらはまじらはまじらわむむんとととおもむけおもむけおもむけててて苦苦くるしげしげしげにににおぼしおぼしおぼしたれたれたれどどど、、、あるべきあるべきあるべきさまさまさまををを右近右近うこん聞聞きこえええ知知しらせらせらせ、、、
- 10人々人々びとももも、、、「「「おのづからおのづからおのずからさてさてさて人人ひとだちだちだち給給たまひひいなななばばばおとゞおとゞおとどののの君君きみももも尋尋たずねねね聞聞きこえええ給給たまひひいなむなむなん。。。親親おや子子こののの御御おん契契ちぎりははは絕絕たえええててて止止やまままぬぬぬものものものなりなりなり右近右近うこんががが數數かずにににももも侍侍はべらららずずずいかでいかでいかでかかか御覽御覽ごらんじじじつけつけつけられられられむむんととと思思おもううう給給たまへへえしししだにだにだに、、、佛佛ほとけ神神かみののの御御おん導導みちびききき侍侍はべらららざりざりざりけりけりけりやややましてましてまして誰誰たれももも誰誰たれもももたひらかたひらかたいらかにににおはしまさおはしまさおわしまさばばば」」」ととと皆皆みな聞聞きこえええなぐさむなぐさむなぐさむ。。。
- 11「「「まづまづまず御御おん返返かえしししをををとととせめてせめてせめてかゝかゝかかせせせ奉奉たてまつるるる。。。いといといとこよなくこよなくこよなく田舍田舍いなかびびびたらたらたらむむんものものものをををととと恥恥はずかしくかしくかしくおぼいおぼいおぼいたりたりたりからからからののの紙紙かみのののいといといとかうばしきかうばしきこうばしき取取とりりり出出いでででゝゝて書書かかかかせせせ奉奉たてまつるるる「「「數數かずならならならぬぬぬみくりみくりみくりややや何何なにのののすぢすぢすじなれなれなればばばうきうきうきにににしもしもしもかくかくかくねねねをををとゞめとゞめとどめけむけむけん」」」とととのみのみのみほのかほのかほのかなりなりなり。。。
- 12手手てははははかなだちはかなだちはかなだちてててよろぼはしけれよろぼはしけれよろぼわしけれどどど、、、あてはかあてはかあてはかにてにてにてくちくちくち惜惜くちおしからしからしからねねねばばば御心御心みこころおちおちおちゐゐいにににけりけりけり。。。
現代語訳
このように聞き始めてからは、右近を人を遠ざけて呼んでは、「それでは、あの人をこのあたりにお移し申し上げよう。長年、何かの折ごとに、特に残念にも見失ってしまったことを思い出していたが、たいそううれしく聞き出しながら、今まで気がかりなままにしておくのも、かいのないことだ。
父大臣にはどうして知らせる必要があろうか。たいそう大勢の子をもてはやしているようなので、人数にも入らない者として、今さら初めて交じったら、かえって具合の悪いことになるだろう。私は、子が少なくて寂しいので、思いがけない所から探し出したとでも言おう。すき者たちの心を尽くさせる種として、たいそう大切に扱おう」などとお話しになるので、
右近は、とりあえずたいそううれしく思いながら、「ただお心のままに。大臣にお知らせ申し上げようとしても、誰がお伝えしてほのめかしなさいましょう。むなしく亡くなられた方の代わりには、何とかしてお助けくださることこそ、罪を軽くしてさしあげることになりましょう」と申し上げる。
「ひどく恨みがましく言うものだな」とほほえみながら、涙ぐんでいらっしゃる。「しみじみとはかない縁であったと、長年思い続けてきた。こうして集まっている方々の中にも、あの折の思いほど心にとどめている人はいなかったが、
長生きして、私の心の長さを見届けた人も多いようなのに、言いようもなく、おまえだけを形見として見ているのは残念なことだ。忘れる時もないので、その姫君がこちらにいらっしゃったら、本当に本望がかなう気持ちがするだろう」と言って、お手紙を差し上げなさる。
あの末摘花の言いようもなかったことをお思い出しになると、そのように落ちぶれて育った人の様子が気がかりで、まず手紙の様子を知りたくお思いになるのであった。
何となく誠実に、きちんとお書きになって、端に、このように申し上げなさるのを、「今はご存じなくても、尋ねてわかってくださるでしょう。三島江に生える三稜草の筋が絶えないように、私とあなたの縁の筋は絶えないのですから」とあった。お手紙は右近が自分で退出して持って行き、源氏のおっしゃる様子などを申し上げる。
御装束や人々の料などがさまざまにあった。上(紫の上)にもご相談申し上げなさったのであろう。御匣殿などからも、用意してある品物を集めさせて、色合いや仕立てなどが格別なものをとお選びになったので、田舎びた人々の目には、なおさら珍しいほどに思われた。
ご本人(姫君)は、ただ形ばかりでも、本当の親のお便りならうれしいだろうが、どうして知らない人のところに交じれようと、気が進まない様子で苦しそうにお思いになっているけれど、どうすべきかを右近が申し上げて聞かせ、
人々も、「自然と、そのようにして一人前になっていらっしゃれば、大臣の君(父)もお探し申し上げなさるでしょう。親子のご縁は絶えてしまうことのないものです。右近が人数にも入らず、どうしてお見つけ申し上げられようと思っていたのでさえ、神仏のお導きがなかったでしょうか。まして皆が無事でいらっしゃれば」と、皆でお慰め申し上げる。
「まずお返事を」と、無理にお書かせ申し上げる。たいそうひどく田舎びているだろうにと、恥ずかしくお思いになっている。唐の紙のたいそう香ばしいものを取り出して書かせ申し上げる。「人数にも入らない三稜草のような私は、どのような縁で、このつらい身にこうして根を下ろしてしまったのでしょう」とだけ、ほのかに書いてある。
筆跡は頼りなげで、よろよろとしているけれど、上品で見劣りしないので、源氏はご安心なさった。
意訳
源氏は、姫君を六条院に迎え、実の父の内大臣には知らせず、自分の娘として、すき者たちの心を騒がせる種にしようと右近に言う。右近は、夕顔の代わりに姫君を助けてほしいと頼み、源氏は涙ぐむ。
末摘花の例を思い出した源氏は、姫君の教養を確かめるため、まず手紙を送る。姫君は、知らない人のもとに行くことをためらうが、右近たちに説得されて返事を書く。筆跡は頼りないが上品なので、源氏は安心する。
語釈・文法注
- みくり
- 三稜草。水辺に生える草。「三島江」(大阪府高槻市の淀川沿いの入り江)は、三稜草の名所として歌に詠まれた。
文法
- 「こそ…め」(罪かるませ給はめ)
- 「罪を軽くしてさしあげることになりましょう」。推量・適当の「む」の已然形で結ぶ。
- 「ばこそ…め」(親の御けはひならばこそ嬉しからめ)
- 「本当の親のお便りならうれしいだろうが」。逆接の余韻を残す。
和歌
しらずとも尋ねてしらむみしまえに生ふるみくりのすぢは絕えじを
- 詠者
- 光源氏
- 状況
- 姫君に初めて送った手紙の歌。今はご存じなくても、尋ねてわかってくださるでしょう。三島江に生える三稜草の筋が絶えないように、私とあなたの縁の筋は絶えないのですから。
修辞
- 掛詞
- 「すぢ」に「(三稜草の)筋」と「血筋・縁」をかける。
數ならぬみくりや何のすぢなればうきにしもかくねをとゞめけむ
- 詠者
- 玉鬘
- 状況
- 源氏への返歌。人数にも入らない三稜草のような私は、どのような縁で、このつらい身にこうして根を下ろしてしまったのでしょう。
修辞
- 掛詞
- 「うき」に「泥(うき)」と「憂き」、「ね」に「根」と「音(泣く声)」をかける。
解説
源氏が姫君を内大臣に知らせず、自分の娘として引き取ろうとするのは、夕顔への思いと、内大臣への対抗意識の両方からである。「すきものどもの心つくさするくさはひ」という言葉には、姫君を六条院の華やかさを増す存在にしようという源氏の思惑が表れている。
末摘花の教訓から、源氏はまず手紙で姫君の教養を確かめる。姫君の返歌は、つらい身の上を嘆きつつも品位を保っており、源氏を安心させる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、432–433頁(コマ220)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日