源氏物語 第22帖 玉鬘(12)
右近、源氏に告げる
右近は六条院に戻り、源氏に話す機会をうかがう。源氏は、里下がりの長かった右近をからかう。夜、紫の上と並ぶ源氏の前で、右近は紫の上の美しさに改めて感嘆し、幸せのある人とない人との違いを思う。足をもむために召された右近に、源氏は冗談を言い、紫の上も笑う。源氏に問われた右近は、夕顔の遺児を見つけたことを告げる。源氏は、夕顔に劣らぬ美しさだと聞いて、自分に似ているなら安心だと親めいて言う。

- 1右近右近うこんははは大殿大殿おおとのにににまゐりまゐりまいりぬぬぬ。。。このこのこの事事ことをををかすめかすめかすめ聞聞きこゆるゆるゆるついでついでついでもももやややとてとてとて急急いそぐぐぐなりなりなりけりけりけり。。。御御おん門門かどひきひきひき入入いるゝるゝるるよりよりよりけはひけはひけわいことことことにににひろびろひろびろひろびろとととしししてててまかでまかでまかで參參まいるるる車車くるまおほくおほくおおくまよふまよふまよう。。。數數かずならならならででで立立たちちち出出いづるづるずるもももまばゆきまばゆきまばゆき心地心地ここちするするする玉玉たまのののうてなうてなうてななりなりなり。。。
- 2そのそのその夜夜よはははおまへおまへおまえにににももも參參まいらららででで思思おもひひい臥臥ふしししたりたりたり。。。又又またののの日日ひよべよべよべ里里さとよりよりより參參まいれれれるるる上﨟上﨟じょうろう若若わか人人うどどもどもどものののなかなかなかににに取取とりりりわきわきわきててて右近右近うこん召召めししし出出いづれづれずればばばおもだゝしくおもだゝしくおもだたしくおぼゆおぼゆおぼゆ。。。
- 3おとゞおとゞおとどももも御覽御覽ごらんじじじててて、、、「「「などなどなどかかか里里さと居居いははは久久ひさしくしくしくしししつるつるつる。。。例例れいならならならずずずやもめやもめやもめ人人ひとのののひきひきひきたがへたがへたがえこまがへるこまがへるこまがえるやうやうようもももありありありかしかしかし。。。をかしきをかしきおかしき事事ことなどなどなどありありありつつつらむらむらん」」」などなどなど、、、例例れいのののむつかしうむつかしうむつかしゅうたはぶれごとたはぶれごとたわぶれごとなどなどなどのたまふのたまふのたまう。。。
- 4「「「まかでまかでまかでゝゝて七七なぬ日日かににに過過すぎぎぎ侍侍はべりりりぬれぬれぬれどどどをかしきをかしきおかしき事事ことははは侍侍はべりりりがたくがたくがたくなむなむなん。。。山山やまぶみぶみぶみししし侍侍はべりりりてててあはれあはれあわれなるなるなる人人ひとをををなむなむなん見見み奉奉たてまつりりりつけつけつけたりたりたりししし」」」。。。「「「何何なに人人びとぞぞぞ」」」ととと問問とひひい給給たまふふう。。。
- 5ふとふとふと聞聞きこえええ出出いでででむむんもももまだまだまだうへうへうえににに聞聞きかかかせせせ奉奉たてまつらららでででとりわきとりわきとりわき申申もうしししたらたらたらむむんをををのちのちのちににに聞聞きききき給給たまひひいてててははは隔隔へだててて聞聞きこえええけるけるけるとととややや覺覺おぼさささむむんなどなどなど思思おもひひい亂亂みだれれれててて「「「今今いま聞聞きこえええさせさせさせ侍侍はべらららむむん」」」とてとてとて人々人々びと參參まいれれればばば聞聞きこえええさしさしさしつつつ。。。
- 6おほとなぶらおほとなぶらおおとなぶらなどなどなどまゐりまゐりまいりてててうちとけうちとけうちとけならびならびならびおはしますおはしますおわします。。。御御おん有樣有樣ありさまどもどもどもいといといと見見みるるるかひかひかい多多おおかりかりかり。。。女君女君おんなぎみははは廿廿はたち七七なな八八やつににになりなりなり給給たまひひいぬぬぬらむらむらんかしかしかし。。。盛盛さかりににに淸淸きよらにらにらにねびねびねびまさりまさりまさり給給たまへへえりりり。。。
- 7少少すこしししほどほどほど經經へててて見見み奉奉たてまつるるるははは又又またこのこのこのほどほどほどにににこそこそこそにほひにほひにおい加加くわわりりり給給たまひひいにににけれけれけれととと見見みえええ給給たまふふう。。。かのかのかの人人ひとをををいといといとめでたくめでたくめでたく劣劣おとらららじじじととと見見み奉奉たてまつりりりしかしかしかどどど、、、思思おもひなしひなしいなしにににやややなほなほなおこよなきこよなきこよなきにににさいはひさいはひさいわいのののあるあるあるとととなきなきなきとととへだてへだてへだてあるあるあるべきべきべきわざわざわざかなかなかなととと見見み合合あわせせせらるらるらる。。。
- 8大殿大殿おおとのごもるごもるごもるとてとてとて右近右近うこんををを御御おんあしあしあしにににめすめすめす。。。「「「若若わかききき人人ひとははは苦苦くるしししとてとてとてむつかるむつかるむつかるめりめりめり。。。なほなほなお年年とし經經へぬるぬるぬるどちどちどちこそこそこそ心心こころかはしかはしかはしてててむつびむつびむつびよかりよかりよかりけれけれけれ」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば人々人々びと忍忍しのびびびててて笑笑わらふふう。。。
- 9「「「さりやさりやさりや。。。たれたれたれかかかそのそのその使使つかひひい馴馴ならひひい給給たまははわむむんをををばばばむつからむつからむつからむむん。。。うるさきうるさきうるさきたはぶれごとたはぶれごとたわぶれごといひいひいいかゝりかゝりかかり給給たまふふうををを煩煩わずらはしきはしきわしきににに」」」などなどなどいひいひいいあへあへあえりりり。。。うへうへうえももも「「「年年とし經經へぬるぬるぬるどちどちどちうちとけうちとけうちとけ過過すぎぎぎばばば、、、はたはたはたむつかりむつかりむつかり給給たまははわむむんとととややや」」」。。。「「「さるさるさるまじきまじきまじき心心こころととと見見みねねねばばばあやふしあやふしあやうし」」」などなどなど右近右近うこんににに語語かたらひらひらいててて笑笑わらひひい給給たまふふう。。。
- 10いといといとあいぎやうづきあいぎやうづきあいぎょうずきをかしきをかしきおかしきけけけさへさへさへ添添そひひい給給たまへへえりりり。。。今今いまはははおほやけおほやけおおやけににに仕仕つかへへえいそがしきいそがしきいそがしき御御おん有樣有樣ありさまにににもももあらあらあらぬぬぬ御御おん身身みにてにてにて世世よののの中中なかのどやかのどやかのどやかにににおぼさるゝおぼさるゝおぼさるるまゝまゝままににに唯唯ただはかなきはかなきはかなき御御おん戯戯たわふれごとふれごとうれごとをををののの給給たまひひい、、、をかしくをかしくおかしく人人ひとののの心心こころををを見見み給給たまふふうあまりあまりあまりにににかゝるかゝるかかるふるふるふる人人ひとをををさへさへさへぞぞぞたはぶれたはぶれたわぶれ給給たまふふう。。。
- 11「「「かのかのかの尋尋たずねねね出出いでででたりたりたりけむけむけんややや、、、何何なにざまざまざまののの人人ひとぞぞぞ。。。たふときたふときとうときすぎやうざすぎやうざすぎょうざ語語かたらひらひらいてててゐゐいててて來來きたるたるたるかかか」」」ととと問問とひひい給給たまへへえばばば、、、「「「あなあなあな見見みぐるしぐるしぐるしややや。。。はかなくはかなくはかなく消消きえええ給給たまひひいにににししし夕顏夕顏ゆうがおののの露露つゆののの御御おんゆかりゆかりゆかりをををなむなむなん見見み給給たまへへえつけつけつけたりたりたりししし」」」ととと聞聞きこゆゆゆ。。。
- 12「「「げにげにげにあはれあはれあわれなりなりなりけるけるけることことことかなかなかな。。。年年とし比比ごろはははいづくいづくいずくにににかかか」」」とととののの給給たまへへえばばば、、、ありありありのののまゝまゝままにににははは聞聞きこえええにくゝにくゝにくくててて「「「あやしきあやしきあやしき山里山里やまざとににになむなむなん。。。昔昔むかし人人びともももかたへかたへかたえははは變變かわらららででで侍侍はべりりりけれけれければばば、、、そのそのその世世よののの物語物語ものがたりししし出出いででで侍侍はべりりりててて堪堪たへへえ難難がたくくく思思おもううう給給たまへへえりりりししし」」」などなどなど聞聞きこえええ居居いたりたりたり。。。
- 13「「「よしよしよし、、、心心こころ知知しりりり給給たまははわぬぬぬ御御おんあたりあたりあたりににに」」」とととかくしかくしかくし聞聞きこえええ給給たまへへえばばば、、、うへうへうえ「「「あなあなあなわづらはしわづらはしわずらわし。。。ねぶたきねぶたきねぶたきににに聞聞きききき入入いるるるべくべくべくもももあらあらあらぬぬぬものものものををを」」」とてとてとて御御おん袖袖そでしししててて御御おん耳耳みみふたぎふたぎふたぎ給給たまひひいつつつ。。。
- 14「「「かたちかたちかたちなどなどなどはははかのかのかの昔昔むかしののの夕顏夕顏ゆうがおととと劣劣おとらららじじじややや」」」などなどなどのたまへのたまへのたまえばばば、、、「「「必必かならずずずさしもさしもさしもいかでいかでいかでかかか物物ものししし給給たまははわむむんととと思思おもひひい給給たまへへえりりりしししををを、、、こよなうこよなうこよのうこそこそこそおひおひおいまさりまさりまさりててて見見みえええ給給たまひひいしかしかしか」」」ととと聞聞きこゆれゆれゆればばば、、、「「「をかしをかしおかしのののことことことややや。。。たれたれたればかりばかりばかりとととかかかおぼゆおぼゆおぼゆ。。。このこのこの君君きみ」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、「「「いかでいかでいかでかかかさささまでまでまでははは」」」ととと聞聞きこゆれゆれゆればばば、、、「「「したりしたりしたり顏顏がおにににこそこそこそ思思おもふふうべけれべけれべけれ。。。われわれわれににに似似にたらたらたらばばばしもしもしもうしろやすしうしろやすしうしろやすしかしかしかし」」」ととと親親おやめきめきめきてててのたまふのたまふのたまう。。。
現代語訳
右近は大殿(六条院)に参上した。このことをそれとなく申し上げる機会もあろうかと、急いだのであった。御門を入るとすぐに、気配が格別に広々としていて、退出したり参上したりする車が多く行き交っている。人数にも入らない身で出入りするのもまばゆい気持ちのする、玉の御殿である。
その夜は御前にも参上せず、思いにふけって横になっていた。翌日、昨夜里から参上した上臈や若い女房たちの中から、特に右近を召し出されたので、晴れがましく思われる。
大臣(源氏)もご覧になって、「どうして里下がりが長かったのか。珍しく、やもめ暮らしの人が打って変わって若返るようなこともあるものだな。面白いことなどあったのだろう」などと、いつものように困るような冗談などをおっしゃる。
「退出して七日を過ぎましたけれど、面白いことはめったにございません。山詣でをいたしまして、しみじみとした人をお見つけ申し上げました」。「誰だ」とお尋ねになる。
すぐに申し上げるのも、まだ上(紫の上)にお聞かせ申し上げないで、特に源氏にだけ申し上げたら、後でお聞きになって、隠し立てをしたとお思いになるだろうかなどと思い乱れて、「いずれ申し上げましょう」と言って、人々が参上したので、言いさした。
灯火などをともして、くつろいで並んでいらっしゃる。お二人のご様子は、たいそう見るかいがある。女君(紫の上)は二十七、八歳におなりになっただろうか。盛りに美しく、成熟していらっしゃる。
少し時がたってから拝見すると、またこの間にも美しさがお加わりになったと見える。あの人(姫君)をたいそうすばらしく、劣らないとお見申し上げたけれど、気のせいか、やはりこの上なく、幸せのある人とない人とでは隔たりがあるものだと、見比べられる。
お休みになるというので、右近を御足をもむためにお召しになる。「若い人はつらいといって嫌がるようだ。やはり年をとった者どうしこそ、心が通って親しみやすいものだ」とおっしゃるので、女房たちはこっそり笑う。
「そうでしょうか。誰が、お使い慣れていらっしゃる方を嫌がりましょう。うるさい冗談を言いかけていらっしゃるのが厄介なのです」などと言い合っている。上も「年をとった者どうしで打ち解けすぎたら、またお怒りになるのではないかしら」とおっしゃる。源氏は「そうならないとも限らない心だと見るので、危ないものだ」などと右近に話してお笑いになる。
たいそう愛嬌があって、面白い様子までがお加わりになっている。今は朝廷にお仕えして忙しいご様子でもないお身で、世の中をのどかにお思いになるままに、ただちょっとしたご冗談をおっしゃり、面白く人の心をご覧になるあまりに、このような古参の女房までもからかいなさる。
「あの見つけ出したというのは、どんな人だ。尊い修行者を誘って連れて来たのか」とお尋ねになるので、「まあ、みっともない。はかなくお亡くなりになった夕顔の露のゆかりの方をお見つけ申し上げたのです」と申し上げる。
「本当に、しみじみとしたことよ。長年どこにいたのか」とおっしゃるので、ありのままには申し上げにくくて、「辺鄙な山里に。昔の人も一部は変わらずにおりましたので、その当時の話をし出しまして、こらえきれない思いでございました」などと申し上げている。
源氏が「よい、事情をご存じない方のそばで」と隠し立てなさるので、上は「まあ、面倒なこと。眠たくて聞き入る気もありませんのに」と言って、お袖でお耳をふさぎなさった。
「容貌などは、あの昔の夕顔に劣らないか」などとおっしゃるので、「まさかそれほどではいらっしゃるまいと思っておりましたが、この上なく立派にお育ちになっていらっしゃるようにお見受けしました」と申し上げると、「面白いことよ。誰ほどと思うか。この君(紫の上)と比べて」とおっしゃるので、「どうしてそれほどまでは」と申し上げると、「得意顔に思っているようだな。私に似ているなら安心だが」と、親らしくおっしゃる。
意訳
右近は六条院に戻り、源氏に話す機会をうかがう。夜、紫の上と並ぶ源氏の前で、右近は紫の上の美しさに改めて感嘆し、幸せのある人とない人との違いを思う。
足をもむために召された右近に、源氏は冗談を言い、紫の上も笑う。源氏に問われた右近は、夕顔の遺児を見つけたことを告げる。源氏は、夕顔に劣らぬ美しさだと聞いて、自分に似ているなら安心だと親めいて言う。
語釈・文法注
- 御あしまゐり
- 足をもむこと。按摩。主人の寝る前に、親しい女房が奉仕した。
文法
- 推量の「らむ」(廿七八になり給ひぬらむかし)
- 「おなりになっただろうよ」。語り手の推量。
- 「こそ…べけれ」(したり顏にこそ思ふべけれ)
- 「得意顔に思っているようだ」。強調の係り結び。
解説
右近が紫の上と姫君とを見比べて、「さいはひのあるとなき」の違いを思う場面は、女性の幸福が、本人の資質だけでなく、境遇によって左右されることを示している。
源氏が「われに似たらばしもうしろやすし」と親めいて言うのは、姫君を自分の娘として引き取ろうという考えの表れである。しかし、その「親めき」には、のちの源氏の恋心の萌芽も見えている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、430–433頁(コマ219–220)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日