源氏物語 第21帖 少女(15)
夕霧と花散里
雲居雁を恋しく思う夕霧は、大宮のもとにも足が遠のき、二条東院に籠もる。源氏は夕霧の世話を花散里に頼む。夕霧は、花散里の容貌が美しくないのを見て、それでも見捨てない父の心を知り、心の優しい人こそ互いに思い合うべきだと考える。年の暮れ、大宮は夕霧の正月の装束を用意するが、夕霧は六位を侮られるのがつらく、宮中に参るのも気が進まないと涙ぐむ。大宮も、亡き太政大臣がいればと泣く。

- 1かのかのかの人人ひとははは文文ふみをををだにだにだにえええやりやりやり給給たまははわずずず立立たちちちまさるまさるまさる方方かたのののことことことししし心心こころにににかゝりかゝりかかりててて程程ほどふるふるふるまゝまゝままにににわりなくわりなくわりなく戀戀こいしきしきしき面面おもかげかげかげににに又又またあひあひあい見見みでででやややととと思思おもふふうよりよりより外外ほかのののことことことなしなしなし。。。
- 2宮宮みやののの御御おんもともともとへへへももも、、、あいなくあいなくあいなく心心こころうくうくうくててて參參まいりりり給給たまははわずずずおはせおはせおわせしししかたかたかた年頃年頃としごろ遊遊あそびびび馴馴なれれれししし所所ところのみのみのみ思思おもひひい出出いでででらるゝらるゝらるることことことまされまされまさればばば里里さとさへさへさへうくうくうく覺覺おぼえええ給給たまひひいつゝつゝつつまたまたまた籠籠こもりりり居居い給給たまへへえりりり。。。
- 3殿殿とのはははこのこのこの西西にしののの對對たいにににぞぞぞ聞聞きこえええあづけあづけあずけ奉奉たてまつりりり給給たまひひいけるけるける。。。「「「大宮大宮おおみやののの御御おん世世よののの殘殘のこりりり少少すくなげげげなるなるなるをををおはさおはさおわさずずずなりなりなりなむなむなん後後のちもももかくかくかく幼幼おさなききき程程ほどよりよりより見見みならはしならはしならわしててて後見後見うしろみおぼせおぼせおぼせととと」」」聞聞きこえええ給給たまへへえばばば唯唯ただのたまふのたまふのたまうまゝまゝままののの御心御心みこころにてにてにて懷懷なつかしうしうしゅう哀哀あわれににに思思おもひひいあつかひあつかひあつかい奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。
- 4ほのかほのかほのかににになどなどなど見見み奉奉たてまつるるるにににもももかたちかたちかたちのののまほまほまほならならならずずずもももおはしおはしおわしけるけるけるかなかなかな、、、かゝるかゝるかかる人人ひとをををももも人人ひとははは思思おもひひい捨捨すててて給給たまははわざりざりざりけりけりけりなどなどなどわがわがわがあながちあながちあながちにににつらきつらきつらき人人ひとののの御御おんかたちかたちかたちををを心心こころにににかけかけかけててて戀戀こいしししととと思思おもふふうもももあぢきなしあぢきなしあじきなしややや。。。心心こころばへばへばえのののかやうかやうかようにににやはらかやはらかやわらかならならならむむん人人ひとをををこそこそこそあひあひあい思思おもははわめめめととと思思おもふふう。。。
- 5又又また向向むかひひいててて見見みるるるかひかひかいなからなからなからむむんもももいとほしげいとほしげいとおしげなりなりなり。。。かくかくかくててて年年とし經經へ給給たまひひいにににけれけれけれどどど殿殿とののののさやうさやうさようなるなるなる御御おんかたちかたちかたち御心御心みこころとととみみみ給給たもうううてててばかりばかりばかりのののへだてへだてへだてさしさしさしかくしかくしかくしつゝつゝつつ何何なにくれくれくれととともてもてもてなしなしなし紛紛まぎらはしはしわし給給たまふふうめるめるめるもももうべうべうべなりなりなりけりけりけりととと思思おもふふう心心こころのののうちうちうちぞぞぞ耻耻はずかしかりしかりしかりけるけるける。。。
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- 8「「「などなどなどてててかかかさささもももあらあらあらむむん。。。老老おいいいくづほれくづほれくずおれたらたらたらむむん人人ひとのののやうやうようにににももものたまふのたまふのたまうかなかなかな」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば「「「老老おいいいねねねどどどくづほれくづほれくずおれたるたるたる心地心地ここちぞぞぞするするするややや」」」とととひとりごちひとりごちひとりごちててて打打うちちち淚淚なみだぐみぐみぐみててて居居い給給たまへへえりりり。。。かのかのかの事事ことををを思思おもふふうならならならむむんととといといといと心苦心苦こころぐるしうしうしゅうててて宮宮みやもももうちうちうち潜潜ひそみみみ給給たまひひいぬぬぬ。。。
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現代語訳
あの人(夕霧)は、手紙さえお送りになることができず、いっそうまさる方(雲居雁)のことばかりが心にかかって、日がたつにつれて、どうしようもなく恋しい面影に、また会うことはできないのだろうかと思うよりほかのことはない。
大宮のもとへも、わけもなくつらくて参上なさらない。いらっしゃった部屋や、長年遊び慣れた所ばかりが思い出されることがまさるので、三条の里邸までもつらく思われなさって、また二条東院に籠もっていらっしゃった。
殿(源氏)は、この院の西の対(花散里)に夕霧をお預け申し上げなさった。「大宮のご寿命も残り少ないようなので、亡くなられた後も、こうして幼いころから見慣れさせて、お世話をしてください」と申し上げなさると、花散里は、ただおっしゃるとおりになさるお心で、親しみ深く、しみじみとお世話申し上げなさる。
夕霧は、ほのかにお見申し上げるにつけても、容貌が整っていらっしゃらないことよ、このような人をも、父上は見捨てなさらなかったのだなどと、自分が無理につれない人(雲居雁)のご容貌を心にかけて恋しいと思うのもつまらないことよ。心ばえがこのように穏やかな人とこそ、互いに思い合おうと思う。
また、向かい合っても見るかいのないようなのも、お気の毒なようである。こうして長年過ごしていらっしゃったけれど、殿がそのようなご容貌とご性分とをご覧になって、浜木綿ほどの隔てを隠しながら、何やかやとうまく取りつくろっていらっしゃるようなのも、もっともなことだったと思う心の中は、こちらが恥ずかしくなるほどであった。
大宮は尼姿でいらっしゃるけれど、まだたいそう美しくていらっしゃり、こちらでもあちらでも、人は容貌の美しいものとばかり見慣れていらっしゃったので、もともとすぐれていなかったご容貌が、やや盛りを過ぎた感じで、痩せて御髪も少ないなどが、こうして欠点をあげつらいたくなるのであった。
年の暮れには、正月のご装束などを、大宮はただこの君お一人のことを、ほかに交えることなくお急ぎになる。何揃いもたいそう美しく仕立てていらっしゃるのを見るのも、気が重くばかり思われるので、「元日などには、必ずしも宮中へ参上しまいと存じますのに、どうしてこんなにお急ぎになるのでしょう」と申し上げなさると、
「どうしてそんなことがありましょう。老いぼれた人のようなことをおっしゃいますね」とおっしゃると、「老いてはいないけれど、くずおれた心地がするのですよ」と独り言を言って、涙ぐんでいらっしゃる。あのことを思っているのだろうと、たいそうお気の毒で、大宮も泣き顔におなりになった。
「男は、身分の低い者でさえ、心を高く持つものだそうです。あまりそんなに生真面目に沈んでいらっしゃいますな。どうしてこんなに物思いがちに思い込みなさるのでしょう。縁起でもない」とおっしゃる。
「何ほどのこともありません。六位などと人が侮るようですので、しばらくのことだとは存じますが、宮中へ参上するのも気が重くて。故大臣(祖父)が生きていらっしゃったら、冗談にも人には侮られなかったでしょうに。
隔てのない親でいらっしゃるけれど、たいそうよそよそしく突き放してお思いになっているので、いらっしゃるあたりに気安く参り慣れることもございません。二条東院でだけ、おそば近くにおります。対の御方(花散里)こそやさしくしてくださいますが、母がもう一人生きていらっしゃったら、何を思い悩むことがありましょう」と言って、涙が落ちるのを紛らわしていらっしゃる様子がたいそういじらしいので、
大宮はいっそうほろほろとお泣きになって、「母に先立たれた人は、身分に応じて、そのようにばかり悲しいものですが、自然とそれぞれの宿縁で一人前になってしまえば、おろそかに思う人もいなくなるものですから、思い込まないようにしていらっしゃい。故大臣が、せめてもうしばらく生きていらっしゃったらよかったのに。
この上ない源氏のお陰を、故大臣と同じことと頼み申し上げているけれど、思うようにならないことが多いことよ。内大臣の心ばえも並の人ではないと、世の人もほめて言うそうだけれど、昔と変わることばかりがまさってゆくので、長生きも恨めしいのに、将来の長い人までもが、こうして少しでも世の中を思い沈んでいらっしゃるので、まったく何もかも恨めしい世の中です」と言って泣いていらっしゃる。
意訳
雲居雁を恋しく思う夕霧は、二条東院に籠もり、源氏は夕霧の世話を花散里に頼む。夕霧は、容貌の美しくない花散里を見捨てない父の心を知り、心の優しい人こそ互いに思い合うべきだと考える。
年の暮れ、大宮は夕霧の正月の装束を用意するが、夕霧は六位を侮られるのがつらく、宮中に参るのも気が進まないと涙ぐむ。大宮も、亡き太政大臣がいればと嘆き、ともに泣く。
語釈・文法注
- はまゆふばかりのへだて
- 浜木綿の葉が幾重にも重なるように、わずかな隔て。「み熊野の浦の浜木綿百重なる心は思へどただに逢はぬかも」(拾遺集)による。源氏は花散里と、几帳などを隔てて会っていたらしい。
文法
- 禁止の「な…そ」(かくな物し給ひそ)
- 「そのようにしていらっしゃいますな」。
- 反実仮想の「ましかば…まし」(おはしまさましかば…侍らまし)
- 「生きていらっしゃったら、…なかったでしょうに」。
解説
夕霧は、花散里の容貌が美しくないのに、父が大切にしていることを見て、容貌よりも心の優しさこそ大切だと悟る。この考えは、のちの夕霧の誠実な人柄につながっていく。
夕霧が六位という位を恥じ、亡き祖父や母を思って涙を流す場面には、母を早く亡くし、父とも距離のある少年の孤独が描かれている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、404–407頁(コマ206–207)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日