源氏物語 第21帖 少女(13)
五節の舞姫
この年、源氏は新嘗祭の五節の舞姫を出すことになり、惟光の娘を選ぶ。惟光は渋るが、按察大納言も娘を出すのだからと説得されて承知する。雲居雁を失って沈んでいた夕霧は、二条院に上がった舞姫をのぞき見て、雲居雁と同じ年ごろの美しさに心を動かされ、歌を詠みかける。五節を口実に浅葱以外の直衣の色を許された夕霧は、宮中にも参上する。舞姫の中では、源氏方と大納言方の舞姫がすぐれていると評判になる。

- 1おほいおほいおおい殿殿どのにににははは今年今年ことし奉奉たてまつりりりたまふたまふたまう。。。何何なにばかりばかりばかりののの御御おんいそぎいそぎいそぎならならならねねねどどどわらはべわらはべわらわべのののさうさうそう束束ぞくなどなどなど近近ちこうううなりなりなりぬぬぬとてとてとて急急いそぎぎぎせせせさせさせさせ給給たまふふう。。。ひんがしひんがしひんがしののの院院いんにににははは參參まいりりりののの夜夜よののの人々人々びとさうさうそう束束ぞくせせせさせさせさせ給給たまふふう。。。殿殿とのにににははは大方大方おおかたのののことことことゞゞどももも中宮中宮ちゅうぐうよりよりよりもももわらはわらはわらわしもづかへしもづかへしもづかえのののれうれうりょうまでまでまでえええならならならででで奉奉たてまつれれれ給給たまへへえりりり。。。
- 2過過すぎぎぎにににししし年年とし五節五節ごせちなどなどなどとまりとまりとまりしししがががさうざうしかりさうざうしかりそうぞうしかりしししつもりつもりつもりももも取取とりりり添添そへへえ人人ひとののの心地心地ここちももも常常つねよりよりよりももも花花はなやかやかやかににに思思おもふふうべかべかべかめるめるめる年年としなれなれなればばば、、、所々所々ところどころいどみいどみいどみててていといといといみじくいみじくいみじく萬萬よろずををを盡盡つくししし給給たまふふう聞聞きこえええありありあり。。。
- 3あぜちあぜちあぜちののの大納言大納言だいなごん、、、左衛門左衛門さえもんののの督督かみ、、、うへうへうえののの五節五節ごせちにににははは良淸良淸よしきよ今今いまははは近江近江おうみののの守守かみにてにてにて左中辨左中辨さちゅうべんなるなるなるなむなむなん奉奉たてまつりりりけるけるける。。。皆皆みなとゞめとゞめとどめさせさせさせ給給たまひひいててて宮宮みやづかへづかへづかえすすすべくべくべく仰言仰言おおせごとことことことなるなるなる年年としなれなれなればばばむすめむすめむすめををを各各おのおの奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。
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- 5舞舞まいならはしならはしならわしなどなどなどははは、、、さとさとさとにてにてにていといといとようようようしししたてたてたてゝゝてかしづきかしづきかしずきなどなどなどしたしうしたしうしたしゅう身身みにににそふそふそうべきべきべきはははいみじういみじういみじゅうえりえりえり整整ととのへへえててて、、、そのそのその日日ひののの夕夕ゆうつけつけつけててて參參まいらららせせせたりたりたり。。。
- 6殿殿とのにににももも御御おんかたがたかたがたかたがたのののわらはわらはわらわしもづかへしもづかへしもづかえのののすぐれすぐれすぐれたるたるたるをををととと御覽御覽ごらんじじじくらべくらべくらべえりえりえり出出いでででらるゝらるゝらるる心地心地ここちどもどもどもはははほどほどほどほどほどほどにににつけつけつけててていといといとおもだゝしげおもだゝしげおもだたしげなりなりなり。。。ごぜんごぜんごぜんににに召召めしししててて御覽御覽ごらんせせせむむんうちうちうちならしならしならしにににおまへおまへおまえををを渡渡わたらららせせせてててととと定定さだめめめ給給たまふふう。。。捨捨すつつつべうべうびょうもももあらあらあらずずずとりどりとりどりとりどりなるなるなるわらはべわらはべわらわべのののやうだいやうだいようだいかたちかたちかたちをををおぼしおぼしおぼし煩煩わずらひひいててて「「「今今いま一一ひと所所ところののの料料りょうをををこれこれこれよりよりより奉奉たてまつらららばやばやばや」」」などなどなど笑笑わらひひい給給たまふふう。。。たゞたゞただもてなしもてなしもてなし用意用意よういににによりよりよりてててぞぞぞえらびえらびえらびににに入入いりりりけるけるける。。。
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現代語訳
太政大臣家(源氏)では、今年五節の舞姫を献上なさる。たいしたご準備ではないけれど、付き添いの童女の装束などを、日が近くなったといって急いで作らせなさる。二条東院では、参内の夜の付き添いの人々の装束を作らせなさる。殿(源氏)では、おおよその用意を、中宮からも童女や下仕えの料まで、すばらしいものを差し上げなさった。
去年は五節などが中止になって物足りなかった気持ちの積もりも加わって、人々の気持ちもいつもより華やかに思っているような年なので、あちこちで競い合って、たいそうみごとに万事を尽くしていらっしゃるという評判がある。
按察大納言、左衛門督、殿上の五節には良清、今は近江守で左中弁である者が献上した。皆、舞姫を宮中にとどめさせなさって、宮仕えをさせるようにと、仰せごとが格別な年なので、それぞれ娘を献上なさる。
殿(源氏)の舞姫には、惟光の朝臣で、摂津守で左京大夫を兼ねている者の娘で、容貌などがたいそう美しいと評判のある娘をお召しになる。惟光はつらいことに思ったけれど、「大納言が外腹の娘を献上なさるというのに、朝臣の大切な娘を出したとしても、何の恥があろうか」と責めるので、困って、同じことならそのまま宮仕えさせようと心に決めた。
舞の稽古などは、自分の家でたいそうよく仕込んで、付き添いなどの、身近に付き添うべき者は、たいそう選りすぐって整えて、その日の夕方に参上させた。
殿(源氏)でも、御方々の童女や下仕えのすぐれた者をと、ご覧になり比べて選び出される者たちの気持ちは、身分に応じてたいそう晴れがましそうである。帝の御前に召してご覧になるときの予行に、源氏の御前を通らせてとお決めになる。捨てられそうもなく、それぞれにすぐれた童女の姿や容貌に、お選びになるのにお困りになって、「もう一人分の付き添いを、こちらから差し上げたいものだ」などとお笑いになる。ただふるまいや心づかいによって選ばれたのであった。
大学の君(夕霧)は、胸ばかりがふさがって、食事なども見向きもされず、ひどくふさぎこんで、書物も読まずに物思いにふけって横になっていらっしゃったが、気も紛れようかと出かけて、紛れ歩いていらっしゃる。様子や容貌はすばらしく美しくて、落ち着いて優雅でいらっしゃるので、若い女房などはたいそうすばらしいとお見申し上げる。
紫の上の御方には、御簾の前にさえ近づけないようにしていらっしゃる。源氏はご自分のお心の癖から、どうお思いになったのだろうか、よそよそしくなさるので、女房たちなども疎遠なのだが、今日は取り込みの紛れに入りこんでいらっしゃったのであろう。
舞姫を大切に車から降ろして、妻戸の間に屏風などを立てて、仮の設けをしてあるところに、そっと近寄ってのぞきなさると、舞姫は苦しそうに物に寄りかかって横になっている。
ちょうどあの人(雲居雁)と同じ年ごろと見えて、もう少し背が高く、姿などの格別に趣深いところは、まさってさえ見える。暗いので細かくは見えないけれど、年ごろがたいそうよく雲居雁を思い出させる様子なので、心が移るというわけではないけれど、平気ではいられなくて、衣の裾を引いて音を立てなさる。
舞姫が無心に、不審だと思っていると、「天にいらっしゃる豊岡姫に仕える宮人であるあなたも、私が心をかけて標を結んだことを忘れないでください。瑞垣の」とおっしゃるのは、だしぬけなことであった。
若々しく美しい声だけれど、誰とも見当がつかず、何となく気味が悪いところに、化粧を直そうと騒いでいた付き添いの者たちが近くに寄ってきて、騒がしくなったので、たいそう残念で、立ち去りなさった。
浅葱の袍が不愉快なので、宮中へ参上なさることもせず、気が進まないでいらっしゃったが、五節にかこつけて、直衣なども違った色を許されて参上なさる。幼く美しいものの、早くも大人びて、戯れ歩いていらっしゃる。帝をはじめとして、お思いになっている様子は並々でなく、世にもまれなご信望である。
五節の舞姫が参内する儀式は、どれも劣らず、思い思いにこの上なくなさったが、舞姫の容貌は、大殿(源氏)のと大納言殿のとがすぐれていると、ほめはやす。本当にたいそう美しいけれど、おっとりとかわいらしいことは、やはり大殿の舞姫には及ばないようであった。
何となくこぎれいで今風で、その身分の者とも見えないように仕立てた姿などが、めったにないほど美しいのを、こうして褒められるのだろう。いつもの舞姫たちよりは、皆少し大人びていて、本当に格別な年である。
意訳
源氏は五節の舞姫に惟光の娘を選ぶ。惟光は渋るが、按察大納言も娘を出すのだからと説得されて承知する。
雲居雁を失って沈んでいた夕霧は、二条院に上がった舞姫をのぞき見て、雲居雁と同じ年ごろの美しさに心を動かされ、歌を詠みかける。五節を口実に浅葱以外の直衣の色を許された夕霧は宮中にも参上する。舞姫の中では、源氏方と大納言方の舞姫がすぐれていると評判になる。
語釈・文法注
- 五節
- 十一月の新嘗祭や大嘗祭に行われる五節の舞。公卿や受領の家から未婚の娘が舞姫として献上される。
- とよをかひめ
- 豊岡姫。天照大神とも、豊受大神ともいわれる。五節の舞姫を、神に仕える乙女に見立てた。
文法
- 反語の「何の…か…べき」(何のはぢかあるべき)
- 「何の恥があろうか、いや、ない」。
- 願望の「ばや」(奉らばや)
- 「差し上げたいものだ」。
和歌
あめにますとよをかひめの宮人もわが心ざすしめをわするな
- 詠者
- 夕霧
- 状況
- 五節の舞姫(惟光の娘)をのぞき見て、詠みかけた歌。天にいらっしゃる豊岡姫に仕える宮人であるあなたも、私が心をかけて標を結んだことを忘れないでください。
修辞
- 縁語
- 「宮人」「しめ」「みづがき」は神に関わる縁語。舞姫を神に仕える乙女に見立てる。
解説
五節の舞姫として、源氏はかつての腹心・惟光の娘を選ぶ。惟光の娘は、のちに夕霧の妻の一人(藤典侍)となり、多くの子を産む。
雲居雁を奪われた夕霧が、舞姫に心を動かされる場面は、少年の恋の移ろいやすさと、失った恋人への思いの深さとを同時に描いている。源氏が夕霧を紫の上に近づけないのは、自身の藤壺への恋の経験からである。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、402–405頁(コマ205–206)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日