源氏物語 第21帖 少女(10)
大宮と夕霧、雁の声
大宮は、夕霧ほどの若者はいないと思い、内大臣を恨めしく思う。何も知らずに訪れた夕霧に、大宮は内大臣が怒っていることを告げる。その夜、夕霧は雲居雁の部屋との境の襖を開けようとするが、固く閉ざされている。雁の鳴き渡る声に、雲居雁が「雲居の雁もわがごとや」とつぶやくのを聞き、夕霧は荻の上風の歌を詠む。二人は引き離され、手紙を交わすこともできない。

- 1宮宮みやはははいといといといとほしいとほしいとおしとととおぼすおぼすおぼす中中なかにににももも、、、をとこをとこおとこ君君きみののの御御おんかなしさかなしさかなしさはははすぐれすぐれすぐれ給給たまふふうにににやややあらあらあらむむん、、、かゝるかゝるかかる心心こころのののありありありけるけるけるもももうつくしううつくしううつくしゅう思思おぼさささるゝるゝるるににに、、、なさけなくなさけなくなさけなくこよなきこよなきこよなき事事ことのののやうやうようにににおぼしおぼしおぼしのたまへのたまへのたまえるるるををを、、、などなどなどかかかさしもさしもさしもあるあるあるべきべきべき、、、もとよりもとよりもとよりいたういたういとう思思おもひひいつきつきつき給給たまふふうとととなくなくなくててて、、、かくかくかくまでまでまでかしづかかしづかかしずかむむんととともももおぼしおぼしおぼしたゝたゝたたざりざりざりしししをををわがわがわがかくかくかくもてもてもてなしなしなしそめそめそめたれたれたればばばこそこそこそ春宮春宮とうぐうののの御御おん事事ことをををもももおぼしおぼしおぼしかけかけかけためためためれれれ、、、
- 2とりとりとりはづしはづしはずしてててたゞたゞただ人人ひとののの宿世宿世すくせあらあらあらばばば、、、このこのこの君君きみよりよりより外外ほかににに優優まさるるるべきべきべき人人ひとやはやはやは、、、かたちかたちかたち有樣有樣ありさまよりよりよりはじめはじめはじめててて、、、等等ひとしきしきしき人人ひとあるあるあるべきべきべきかはかはかは、、、これこれこれよりよりよりおよびなからおよびなからおよびなからむむんきはきはきわにににもももとととこそこそこそ思思おもへへえととと我我わが志志こころざしのののまされまされまさればばばにににややや、、、おとゞおとゞおとどをををうらめしううらめしううらめしゅう思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまふふう御心御心みこころののの中中なかををを見見みせせせ奉奉たてまつりりりたらたらたらばばばましてましてましていかにいかにいかに恨恨うらみみみ聞聞きこえええ給給たまははわむむん。。。
- 3かくかくかくさわがさわがさわがるるるらむらむらんとととももも知知しらららでででくわざくわざかざののの君君きみ參參まいりりり給給たまへへえりりり。。。一一ひと夜夜よももも人人ひと目目めしげうしげうしぎょうててて思思おもふふうことことことをををもももえええ聞聞きこえええずずずなりなりなりにににしかしかしかばばば常常つねよりよりよりももも哀哀あわれににに覺覺おぼえええ給給たまひひいけれけれければばば夕夕ゆうつつつ方方かたおはしおはしおわしたるたるたるなるなるなるべしべしべし。。。
- 4宮宮みや例例れいはははいひいひいい知知しらららずずずうちうちうちゑみゑみえみててて待待まちちち喜喜よろこびびび給給たまふふうををを、、、まめだちまめだちまめだちててて物語物語ものがたりなどなどなど聞聞きこえええ給給たまふふうついでついでついでににに「「「御御おんことことことににによりよりより內內うちのののおとゞおとゞおとどのののゑんじゑんじえんじててて物物ものししし給給たまひひいにににしかしかしかばばばいといといとなむなむなんいとほしきいとほしきいとおしき。。。ゆかしげゆかしげゆかしげなきなきなきことことことをををしもしもしも思思おもひひいそめそめそめ給給たまひひいててて人人ひとににに物物もの思思おもははわせせせ給給たまひひいつつつべきべきべきががが心苦心苦こころぐるしきしきしきとととかうかうこうももも聞聞きこえええじじじととと思思おもへへえどどどさるさるさる心心こころももも知知しりりり給給たまははわでででやややととと思思おもへへえばばばなむなむなん」」」ととと聞聞きこえええ給給たまへへえばばば
- 5心心こころにににかゝれかゝれかかれるるることことことのののすぢすぢすじなれなれなればばばふとふとふと思思おもひひいよりよりよりぬぬぬ。。。おもておもておもて赤赤あかみみみててて「「「何事何事なにごとにににかかか侍侍はべらららむむん。。。靜靜しずかなるなるなる所所ところににに籠籠こもりりり侍侍はべりりりにににししし後後のちともかくもともかくもともかくも人人ひとにににまじるまじるまじる折折おりなけれなけれなければばば怨怨うらみみみ給給たまふふうべきべきべきことことこと侍侍はべらららじじじとととなむなむなん思思おもううう給給たまふるふるうる」」」とてとてとていといといと耻耻はずかしかしかしととと思思おもへへえるるる氣色氣色けしきををを哀哀あわれににに心心こころぐるしうぐるしうぐるしゅうててて「「「よしよしよし今今いまよりよりよりだにだにだに用意用意よういししし給給たまへへえ」」」とととばかりばかりばかりにてにてにて異異こと事事ごとにににいひいひいいなしなしなし給給たまひひいつつつ。。。
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- 7いといといと心心こころぼそくぼそくぼそく覺覺おぼえええてててさうじさうじそうじににによりよりよりかゝりかゝりかかりててて居居い給給たまへへえるるるにににをんなをんなおんな君君きみももも目目めをををさましさましさましててて風風かぜののの音音おとののの竹竹たけににに待待まちちちとらとらとられれれてててうちうちうちそよめくそよめくそよめくににに雁雁かりののの鳴鳴なきききわたるわたるわたる聲聲こえのののほのかほのかほのかににに聞聞きこゆるゆるゆるににに幼幼おさなききき心地心地ここちにににもももとかくとかくとかくおぼしおぼしおぼし亂亂みだるゝるゝるるにににややや、、、「「「雲井雲井くもいのののもももわがわがわがごとごとごとややや」」」とととひとりごちひとりごちひとりごち給給たまふふうけはひけはひけわい若若わこうううらうたげらうたげろうたげなりなりなり。。。
- 8いみじういみじういみじゅう心心こころもとなけれもとなけれもとなければばば「「「これこれこれあけあけあけさせさせさせ給給たまへへえ。。。小侍從小侍從こじじゅうやややさぶらふさぶらふさぶらう」」」とととのたまへのたまへのたまえどどど音音おともももせせせずずず。。。御御おん乳母乳母めのとごごごなりなりなり、、、ひとりごとひとりごとひとりごとををを聞聞きききき給給たまひひいけるけるけるもももはづかしうはづかしうはずかしゅうてててあいなくあいなくあいなく御御おん顏顏かお引引ひききき入入いれれれ給給たまへへえどどど哀哀あわれははは知知しらららぬぬぬにににしもしもしもあらあらあらぬぬぬぞぞぞにくきにくきにくきややや。。。めのとめのとめのとたちたちたちなどなどなど近近ちかくくく臥臥ふしししてててうちうちうちみじろくみじろくみじろくももも苦苦くるしけれしけれしければばばかたみかたみかたみににに音音おともももせせせずずず。。。
- 9「「「さささ夜中夜中よなかににに友友とも呼呼よびびびわたるわたるわたるかりがねかりがねかりがねにににうたてうたてうたて吹吹ふきききそふそふそう荻荻おぎのののうはうはうわ風風かぜ。。。身身みにににもももしみしみしみけるけるけるかなかなかな」」」ととと思思おもひひい續續つづけけけててて宮宮みやののの御前御前おまえにににかへりかへりかえりててて歎歎なげきききがちがちがちなるなるなるももも御御おん目目め覺覺さめめめてててややや聞聞きかかかせせせ給給たまふふうらむらむらんとととつゝましくつゝましくつつましくみじろきみじろきみじろき臥臥ふししし給給たまへへえりりり。。。
- 10あいなくあいなくあいなく物物ものはづかしうはづかしうはずかしゅうててて我我わががが御御おん方方かたににに疾疾とくくく出出いでででゝゝて御御おん文文ふみかきかきかき給給たまへへえれれれどどど、、、小侍從小侍從こじじゅうにににもももえええ逢逢あひひい給給たまははわずずず、、、かのかのかの御御おん方方かたざまざまざまにににもももえええいかいかいかずずず胸胸むね潰潰つぶれれれててて覺覺おぼえええ給給たまふふう。。。
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現代語訳
大宮は、たいそう気の毒だとお思いになる中でも、男君(夕霧)へのかわいさはまさっていらっしゃるのだろうか、このような心があったのもかわいらしくお思いになるのに、内大臣が情けなく、とんでもないことのようにお思いになっておっしゃったのを、どうしてそれほどのことがあろう、もともとたいして可愛がりなさるというわけでもなく、これほどまで大切に育てようともお思い立ちにならなかったのを、私がこうして世話をし始めたからこそ、東宮妃のことも思いをかけなさったのだろう、
もし思惑がはずれて臣下に嫁ぐ宿縁であるならば、この君より他にまさる人がいようか、容貌や様子をはじめとして、肩を並べる人がいるだろうか、これより及びもつかない身分の人にもと思うのにと、ご自分の愛情がまさっているからだろうか、大臣を恨めしくお思い申し上げなさる。そのお心の中をお見せ申し上げたら、まして内大臣はどんなにお恨み申し上げなさることだろう。
このように騒がれているとも知らずに、冠者の君が参上なさった。先夜も人目が多くて、思うことも申し上げられずに終わってしまったので、いつもより恋しく思われなさったので、夕方にいらっしゃったのであろう。
大宮は、いつもは言いようもなくほほえんで待ち喜びなさるのに、まじめな顔つきでお話などを申し上げなさるついでに、「あなたのことで、内大臣が恨んでいらっしゃったので、たいそうお気の毒です。感心できないことを思い始めなさって、人に心配をおかけになりそうなのがつらいのです。こうも申し上げまいと思うけれど、そうした事情もご存じないのではと思うので」と申し上げなさると、
心にかかっている方面のことなので、すぐに思い当たった。顔を赤らめて、「何事でございましょう。静かな所に籠もりましてから、何事につけても人に交わる折もございませんので、お恨みになるようなことはございますまいと存じます」と言って、たいそう恥ずかしいと思っている様子を、大宮はしみじみといじらしくお思いになって、「よい、せめて今からでも気をおつけなさい」とだけ言って、他のことに話をそらしなさった。
いよいよ手紙なども通わせることが難しいようだと思うと、たいそう嘆かわしい。お食事などを差し上げるけれど、まったく召し上がらずに、お休みになったようだけれど、心もうわの空で、人が寝静まるころに中の襖を引くけれど、いつもは特に鍵をかけたりもしないのに、しっかりと閉めて、人の気配もしない。
たいそう心細く思われて、襖に寄りかかって座っていらっしゃると、女君(雲居雁)も目を覚まして、風の音が竹に受けとめられてさやさやと鳴る中に、雁の鳴き渡る声がかすかに聞こえるので、幼い心にもあれこれと思い乱れていらっしゃるのだろうか、「雲居の雁も私と同じなのかしら」と独り言をおっしゃる気配が、若々しくかわいらしい。
たいそうじれったいので、「ここを開けてください。小侍従はおりますか」とおっしゃるけれど、返事もない。小侍従は乳母の子なのであった。雲居雁は、独り言をお聞きになったのも恥ずかしくて、わけもなくお顔を夜具に引き入れなさるけれど、恋しさを知らないわけでもないのが憎らしいことよ。乳母たちなどが近くに寝ていて、身動きするのもつらいので、互いに音も立てない。
「夜中に友を呼びながら鳴き渡る雁の声に、いっそうつらく吹き添う荻の上風よ。身にもしみることだ」と思い続けて、大宮の御前に戻って、ため息がちなのも、大宮がお目覚めになってお聞きになっているだろうかと気がねして、身じろぎしながら横になっていらっしゃった。
わけもなく気恥ずかしくて、ご自分の部屋に早く出て、お手紙をお書きになったけれど、小侍従にも会うことがおできにならず、あちらの御方の方にも行くことができず、胸がつぶれる思いでいらっしゃる。
女君もまた、騒がれなさったことばかりが恥ずかしくて、自分の身はどうなるのだろう、人がどう思うだろうかとも深くはお思い込みにならず、かわいらしく、いじらしく語り合った様子などを、いやだとも思い離れなさらなかった。
また、このように騒がれるべきこととも思っていらっしゃらなかったのに、お世話役の女房たちもたいそうたしなめ申し上げるので、お便りも通わせなさることができない。大人びた人なら、しかるべき隙をも作り出すだろうが、男君もまだ少し頼りない年頃で、ただたいそう残念にばかり思う。大臣(内大臣)はそのまま参上なさらず、大宮をたいそう恨めしいと思い申し上げなさる。
意訳
大宮は、夕霧ほどの若者はいないと思い、内大臣を恨めしく思う。何も知らずに訪れた夕霧に、大宮は内大臣が怒っていることを告げ、夕霧は顔を赤らめる。
その夜、夕霧は雲居雁の部屋との境の襖を開けようとするが、固く閉ざされている。雁の声に、雲居雁が「雲居の雁もわがごとや」とつぶやくのを聞き、夕霧は荻の上風の歌を詠む。二人は引き離され、手紙を交わすこともできない。
語釈・文法注
- 雲井の雁もわがごとや
- 「霧深き雲居の雁もわがごとや晴れずもの思ふ頃にはあるらむ」(古今六帖)による。雲居雁という呼び名は、この独り言から生まれた。
文法
- 反語の「やは」(優るべき人やは)
- 「まさる人がいようか、いや、いない」。
- 「にしもあらぬ」(哀は知らぬにしもあらぬ)
- 「知らないわけでもない」。強意の「しも」を挟んだ二重否定。
和歌
さ夜中に友呼びわたるかりがねにうたて吹きそふ荻のうは風
- 詠者
- 夕霧
- 状況
- 雲居雁と隔てられた夜、雁の声を聞いて詠んだ歌。夜中に友を呼びながら鳴き渡る雁の声に、いっそうつらく吹き添う荻の上風よ。
修辞
- 見立て
- 友を呼んで鳴く雁に、雲居雁を恋い慕う自分の姿を重ねる。
解説
雁の鳴き渡る秋の夜、襖一枚を隔てて、引き離された幼い恋人たちが互いを思う。雲居雁の独り言と夕霧の歌が響き合う、少女の巻の中でも印象深い場面である。
雲居雁という呼び名は、この場面で彼女が口ずさむ古歌から付けられた。夕霧(霧)と雲居雁(雲居の雁)という二人の呼び名は、ともに同じ古歌に由来するとも考えられる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、396–399頁(コマ201–203)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日