源氏物語 第21帖 少女(3)
字をつける儀式と作文会
夕霧が大学に入るための字(あざな)をつける儀式が、二条東院で行われる。博士たちは借り物の不格好な装束で、いかめしく作法を守り、上達部たちのふるまいを咎めては叱りつけるので、人々は笑いをこらえきれない。儀式の後には作文会が開かれ、夜を徹して詩が作られる。蛍雪の功にたとえて夕霧の志をたたえる詩が、世間で評判になる。

- 1つくるつくるつくることことことはははひんがしひんがしひんがしののの院院いんにてにてにてししし給給たまふふう。。。ひんがしひんがしひんがしののの對對たいをををしつらはしつらはしつらわれれれたりたりたり。。。上達部上達部かんだちめ殿上人殿上人てんじょうびと珍珍めずらしくしくしくいぶかしきいぶかしきいぶかしきことことことにににしししてててわれわれわれもももわれわれわれもももととと集集つどひひい參參まいりりり給給たまへへえりりり。。。博士博士はかせどもどもどもゝゝもなかなかなかなかなかなか臆臆おくしししぬぬぬべしべしべし。。。
- 2「「「憚憚はばかるるる所所ところなくなくなく例例れいあらあらあらむむんににに任任まかせせせてててなだむるなだむるなだむることことことなくなくなくきびしうきびしうきびしゅう行行おこなへへえ」」」ととと仰仰おおせせせ給給たまへへえばばば、、、しひしひしいてててつれなくつれなくつれなく思思おもひひいなしなしなしててて、、、家家いえよりよりより外外ほかににに求求もとめめめたるたるたるさうさうそう束束ぞくどもどもどものののうちあはうちあはうちあわずずずかたくなしきかたくなしきかたくなしき姿姿すがたなどなどなどをををもももはぢはぢはじなくなくなくおもゝちおもゝちおももちこわづかひこわづかひこわずかいうべうべしくうべうべしくうびょうべしくもてもてもてなしなしなしつゝつゝつつ座座ざにににつきつきつき並並ならびびびたるたるたる作法作法さほうよりよりより初初はじめめめ、、、見見みももも知知しらららぬぬぬさまさまさまどもどもどもなりなりなり。。。
- 3若若わかききききんだちきんだちきんだちはははえええ堪堪たへへえずずずほゝゑまほゝゑまほほえまれれれぬぬぬ。。。さるはさるはさるは物物もの笑笑わらひひいなどなどなどすすすまじくまじくまじくすぐしすぐしすぐしつゝつゝつつ靜靜しずまれまれまれるるる限限かぎりをををとととえりえりえり出出いだしししててて、、、瓶子瓶子へいじなどなどなどももも取取とらららせせせ給給たまへへえれれれどどどすぢすぢすじ異異ことなりなりなりけるけるける交交まじらひらひらいにてにてにて右大將右大將うだいしょう民部卿民部卿みんぶきょうなどなどなどのののおふなおふなおふなおふなおうなおうなかはらけかはらけかわらけとりとりとり給給たまへへえるるるををを淺淺あさましうましうましゅう咎咎とがめめめ出出いでででつゝつゝつつおろすおろすおろす。。。
- 4「「「おぼしかいもとおぼしかいもとおぼしかいもとあるじあるじあるじはなはだはなはだはなはだ非非ひざうざうぞうににに侍侍はべりりりたうぶたうぶとうぶ。。。かくかくかくばかりばかりばかりのののしるししるししるしとととあるあるあるなにがしなにがしなにがしををを知知しらららずずずしししてててやややおほやけおほやけおおやけにににははは仕仕つこううう奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。はなはだはなはだはなはだをこをこおこなりなりなり」」」などなどなどいふいふいうににに人々人々びと皆皆みなほころびほころびほころびててて笑笑わらひひいぬれぬれぬればばば「「「又又またなりなりなり高高たかししし、、、なりなりなり止止やまままむむん、、、はなはたはなはたはなはだ非非ひざうざうぞうなりなりなり。。。座座ざをををひきひきひきててて立立たちちちたうびたうびとうびなむなむなん」」」などなどなどおどしおどしおどしいふいふいうもももいといといとをかしをかしおかし。。。
- 5見見みならひならひならい給給たまははわぬぬぬ人々人々びとははは珍珍めずらしくしくしく興興きょうありありありととと思思おもひひい、、、このこのこの道道みちよりよりより出出いででで立立たちちち給給たまへへえるるる上達部上達部かんだちめなどなどなどはははしたりしたりしたり顏顏がおにににうちうちうちほゝゑみほゝゑみほほえみなどなどなどしししつゝつゝつつかゝるかゝるかかる方方かたざまざまざまをををおぼしおぼしおぼし好好このみみみててて心心こころざしざしざし給給たまふふうがががめでたきめでたきめでたきことことことととと限限かぎりなくなくなく思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまへへえりりり。。。
- 6聊聊いささかかか物物ものいふいふいうをををももも制制せいすすす。。。なめげなめげなめげなりなりなりとてとてとてももも咎咎とがむむむ。。。かしかましうかしかましうかしかましゅう詈詈ののしりりり居居いるるる顏顏かおどもどもどもゝゝも夜夜よににに入入いりりりてててはははなかなかなかなかなかなか今今いま少少すこしししけちえんけちえんけちえんなるなるなる火影火影ほかげににに猿猿さるがうがうごうがましくがましくがましく侘侘わびしげしげしげににに人人ひとわろげわろげわろげなるなるなるなどなどなどさまざまさまざまさまざまにににげにげにげにいといといとなべてなべてなべてならならならずずずさまさまさま異異ことなるなるなるわざわざわざなりなりなりけりけりけり。。。
- 7おとゞおとゞおとどははは「「「いといといとあざれあざれあざれかたくなかたくなかたくなゝゝなるるる身身みにてにてにてけうさうけうさうきょうそうしししまどはさまどはさまどわされれれなむなむなん」」」とととののの給給たまひひいてててみすみすみすののの內內うちににに隱隱かくれれれてててぞぞぞ御覽御覽ごらんじじじけるけるける。。。數數かず定定さだまれまれまれるるる座座ざににに着着つきききあまりあまりあまりててて歸歸かえりりりまかづるまかづるまかずる大學大學だいがくののの衆衆しゅうどもどもどもあるあるあるををを聞聞きこしめししめししめしててて釣殿釣殿つりどのののの方方かたににに召召めししし留留とどめめめててて殊殊ことににに物物ものなどなどなど賜賜たまはせはせわせけりけりけり。。。
- 8事事ことはてはてはてゝゝてまかづるまかづるまかずる博士博士はかせ才人才人さいにんどもどもどもめしめしめしててて又又また々々また文文ふみ作作つくらららせせせ給給たまふふう。。。上達部上達部かんだちめ殿上人殿上人てんじょうびともももさるべきさるべきさるべき限限かぎりをををばばば皆皆みなとゞめとゞめとどめさぶらはさぶらはさぶらわせせせ給給たまふふう。。。博士博士はかせののの人々人々びとははは四韻四韻しいん、、、たゞたゞただののの人人ひとははは大臣大臣おとどをををはじめはじめはじめ奉奉たてまつりりりてててぜくぜくぜく作作つくりりり給給たまふふう。。。興興きょうあるあるある題題だいのののもじもじもじえりえりえりてててもんさうもんさうもんそう博士博士はかせ奉奉たてまつるるる。。。
- 9短短みじかきききころころころののの夜夜よなれなれなればばば明明あけけけはてはてはてゝゝてぞぞぞ講講こうずるずるずる。。。左中辨左中辨さちゅうべん講講こうじじじ仕仕つかうまつるうまつるうまつる。。。かたちかたちかたちいといといと淸淸きよげげげなるなるなる人人ひとのののこわづかひこわづかひこわずかいものものしくものものしくものものしくかんさびかんさびかんさびててて讀讀よみみみあげあげあげたるたるたる程程ほどいといといと面面おも白白しろししし。。。おぼえおぼえおぼえ心心こころことことことなるなるなる博士博士はかせなりなりなりけりけりけり。。。
- 10かゝるかゝるかかるたかきたかきたかき家家いえににに生生うまれれれ給給たまひひいててて、、、世界世界せかいののの榮花榮花えいがにににのみのみのみたはぶれたはぶれたわぶれ給給たまふふうべきべきべき御御おん身身みをををもちもちもちてててののの螢螢ほたるをををむつびむつびむつび枝枝えだののの雪雪ゆきをををならしならしならし給給たまふふう志志こころざしのののすぐれすぐれすぐれたるたるたるさまさまさまををを萬萬よろずののの事事ことににによそへよそへよそえなずらへなずらへなずらえててて心々心々こころごころににに作作つくりりり集集あつめめめたるたるたる、、、句句くごとごとごとににに面面おも白白しろくくく、、、唐土唐土もろこしにににももももてもてもて渡渡わたりりり傳傳つたへへえまほしげまほしげまほしげなるなるなる世世よののの文文ふみどもどもどもなりなりなりとととなむなむなんそのそのそのころころころ世世よにににめでめでめでゆすりゆすりゆすりけるけるける。。。
- 11おとゞおとゞおとどののの御御おんははは更更さらなりなりなり、、、親親おやめきめきめき哀哀あわれなるなるなる事事ことさへさへさへすぐれすぐれすぐれたるたるたるををを淚淚なみだおとしおとしおとしてててずじずじずじさわぎさわぎさわぎしかしかしかどどど女女おんなのののえええ知知しらららぬぬぬ事事ことまねぶまねぶまねぶはははにくきにくきにくきことことことをををとととうたてうたてうたてあれあれあればばば漏漏もらしししつつつ。。。
現代語訳
字をつける儀式は、二条東院でなさる。東の対を整えなさった。上達部や殿上人が、珍しく興味深いこととして、我も我もと集まって参上なさった。博士たちもかえって気後れしてしまいそうである。
源氏が「遠慮するところなく、先例のあるままに、手加減することなく厳しく行え」とおっしゃるので、博士たちは無理に平然と思いなして、自分の家以外から借りてきた装束などの、体に合わず不格好な姿なども恥じることなく、顔つきや声づかいをもっともらしくふるまいながら、座について並んだ作法をはじめとして、見たこともない様子である。
若い公達は、こらえきれずに笑ってしまった。とはいえ、物笑いなどしそうにない、落ち着いた者ばかりを選び出して、瓶子なども取らせなさっていたけれど、筋違いの交わりなので、右大将や民部卿などが一生懸命に杯を取っていらっしゃるのを、あきれるほど咎め立てしては叱りつける。
「おおよそ、相伴の人々は、はなはだ不作法でございます。これほど名の知られたなにがしを知らずに、朝廷にお仕えしていらっしゃるのか。はなはだ愚かである」などと言うので、人々が皆こらえきれずに笑ってしまうと、「また騒がしい。静まりなさい。はなはだ不作法である。座を退いて立ち去っていただこう」などと脅して言うのも、たいそうおかしい。
見慣れていらっしゃらない人々は、珍しく面白いと思い、この大学の道から出世なさった上達部などは、得意顔にほほえみなどしながら、源氏がこのような方面をお好みになって、夕霧を大学に入れようとお志しになるのが、すばらしいことだと、この上なくお思い申し上げていらっしゃる。
少しでも物を言うのも制止する。無礼だといっても咎める。やかましく怒鳴っている博士たちの顔も、夜になってからは、かえって今少しはっきりと見える灯火の光の中で、猿楽めいて、みすぼらしげで、体裁が悪いなど、さまざまに、本当にたいそう並々でなく、変わった儀式であった。
大臣(源氏)は、「たいそうしまりがなく、頑固な身なので、叱られて戸惑わされてしまうだろう」とおっしゃって、御簾の中に隠れてご覧になっていた。数の決まった座に着ききれずに、帰って退出する大学の学生たちがいるのをお聞きになって、釣殿の方に呼び止めて、特別に品物などをお与えになった。
儀式が終わって退出する博士や文人たちを呼んで、またまた詩を作らせなさる。上達部や殿上人も、しかるべき人々は皆とどめてお仕えさせなさる。博士の人々は四韻の律詩を、普通の人は大臣をはじめとして絶句をお作りになる。面白い題の文字を選んで、文章博士が献上する。
短いころの夜なので、すっかり明けてから詩を披講する。左中弁が講師をお務め申し上げる。容貌がたいそうきれいな人で、声づかいが重々しく、神々しく読み上げたところは、たいそう趣がある。評判が格別な博士であった。
このような高い家にお生まれになって、世の栄華にばかり戯れていらっしゃってよいはずのお身でありながら、窓の蛍を友とし、枝の雪に親しみなさる志のすぐれた様子を、さまざまの故事になぞらえて、思い思いに作り集めた詩は、句ごとに趣深く、唐土にも持って渡って伝えたいほどの、世にまれな詩文であると、そのころ世間でほめはやしたということだ。
大臣(源氏)のお作は言うまでもなく、親らしく情のこもったことまですぐれていたので、人々は涙を落として口ずさみ騒いだけれど、女が知りもしないことを口まねするのは憎らしいことだと言われるのも嫌なので、書き漏らした。
意訳
夕霧の字をつける儀式が二条東院で行われる。博士たちは借り物の不格好な装束で、いかめしく作法を守り、上達部たちのふるまいを咎めては叱りつけるので、人々は笑いをこらえきれない。
儀式の後には作文会が開かれ、夜を徹して詩が作られる。蛍雪の功にたとえて夕霧の志をたたえる詩が世間で評判になるが、語り手は、女が漢詩のことを語るのは憎まれるとして、源氏の詩を書き漏らす。
語釈・文法注
- あざな
- 字。大学に入る学生に、博士が漢風の名をつける儀式。中国の風習にならったもの。
- 窓の螢をむつび枝の雪をならし
- 中国の晋の車胤が蛍の光で、孫康が雪明かりで書物を読んだという「蛍雪の功」の故事。苦学して学問に励むことのたとえ。
文法
- 推量の「べし」(臆しぬべし)
- 「ぬべし」で「きっと…てしまいそうだ」。強い推量。
- 草子地(漏しつ)
- 語り手が自分の立場から物語に口をはさむ表現。女房である語り手が、漢詩のことは書かないと断っている。
解説
博士たちの古風でいかめしい作法は、貴族たちにとっては珍しい見世物でもあった。作者は、学問の世界の堅苦しさを、ユーモアを交えて描いている。
最後の「女のえ知らぬ事まねぶはにくきこと」という語り手の言葉には、漢学の素養を持ちながら、それを表に出すことをはばかった当時の女性の立場がうかがえる。紫式部日記にも、漢字の「一」すら書けないふりをしたという記述がある。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、384–387頁(コマ195–196)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日