源氏物語 第19帖 薄雲(11)
斎宮女御の里下り
斎宮女御は、源氏の後見を得て帝の寵愛を受けている。秋、女御が二条院に里下りし、源氏は親代わりとして世話をする。秋雨の夕暮れ、源氏は鈍色の直衣姿で女御を訪れ、几帳越しに語らう。源氏は、六条御息所との恋の苦しみや、二条東院の人々を落ち着かせたことを語り、女御への思いをほのめかす。女御が答えないので、源氏は話をそらし、自分の娘(明石の姫君)の後見を頼む。

- 1齋宮齋宮さいぐうののの女御女御にょうごはははおぼしおぼしおぼしゝゝしもももしるきしるきしるき御御おん後見後見うしろみにてにてにてやんごとなきやんごとなきやんごとなき御御おんおぼえおぼえおぼえなりなりなり。。。御御おん用意用意ようい有樣有樣ありさまなどなどなどももも思思おもふふうさまさまさまにににあらまほしうあらまほしうあらまほしゅう見見みえええ給給たまへへえれれればばば辱辱かたじけなきなきなきものものものにににもてもてもてかしづきかしづきかしずき聞聞きこえええ給給たまへへえりりり。。。
- 2秋秋あきのののころころころ二條院二條院にじょういんにににまかでまかでまかで給給たまへへえりりり。。。寢殿寢殿しんでんののの御御おんしつらひしつらひしつらいいとゞいとゞいとどかゞやくかゞやくかがやくばかりばかりばかりししし給給たまひひいててて、、、今今いまはははむげむげむげののの親親おやざまざまざまにににもてなしもてなしもてなしてててあつかひあつかひあつかい聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
- 3秋秋あきののの雨雨あめいといといと靜靜しずかににに降降ふりりりててて、、、おまへおまへおまえののの前栽前栽せんざいのののいろいろいろいろいろいろ亂亂みだれれれたるたるたる露露つゆのののしげさしげさしげさににに古古いにしへへえののの事事ことどもどもどもかきかきかき續續つづけけけおぼしおぼしおぼし出出いでででられられられててて御御おん袖袖そでもももぬれぬれぬれつゝつゝつつ女御女御にょうごののの御御おん方方かたにににわたりわたりわたり給給たまへへえりりり。。。
- 4こまやかこまやかこまやかなるなるなるにびにびにび色色いろののの御御おん直衣直衣のうし姿姿すがたにてにてにて世世よののの中中なかののの騷騷さわがしきしきしきなどなどなどことつけことつけことつけ給給たまひひいててて、、、やがてやがてやがて御御おん精進精進そうじなれなれなればばばずゞずゞずずひきひきひきかくしかくしかくしててて御御おんさまさまさまよくよくよくもてなしもてなしもてなし給給たまへへえるるる、、、つきつきつきせせせずずずなまめかしきなまめかしきなまめかしき御御おん有樣有樣ありさまにてにてにてみすみすみすののの內內うちににに入入いりりり給給たまひひいぬぬぬ。。。
- 5御御おん几帳几帳きちょうばかりばかりばかりををを隔隔へだてゝてゝててみづからみづからみずから聞聞きこえええ給給たまふふう。。。「「「前栽前栽せんざいどもどもどもこそこそこそ殘殘のこりりりなくなくなくひもときひもときひもとき侍侍はべりりりにににけれけれけれ。。。いといといと物物ものすさまじきすさまじきすさまじき年年としなるなるなるををを心心こころやりやりやりててて時時とき知知しりりり顏顏がおなるなるなるももも哀哀あわれにににこそこそこそ」」」とととててて柱柱はしらににによりよりより居居い給給たまへへえるるる夕夕ゆうばえばえばえいといといとめでたしめでたしめでたし。。。
- 6昔昔むかしののの御御おん事事ことどもどもどもかのかのかの野野のののの宮宮みやにににたちたちたち煩煩わずらひひいししし曙曙あけぼのなどなどなどををを聞聞きこえええ出出いででで給給たまふふう。。。いといといと物物もの哀哀あわれとととおぼしおぼしおぼしたりたりたり。。。宮宮みやもももかくれかくれかくれとととにににややや少少すこしししなきなきなき給給たまふふうけはひけはひけわいいといといとらうたげらうたげろうたげにてにてにて、、、うちうちうちみじろきみじろきみじろき給給たまふふう程程ほどもももあさましくあさましくあさましくやはらかやはらかやわらかににになまめきなまめきなまめきててておはすおはすおわすべかべかべかめるめるめる。。。見見み奉奉たてまつらららぬぬぬこそこそこそ口惜口惜くちおしけれしけれしけれととと胸胸むねうちうちうちつぶるゝつぶるゝつぶるるぞぞぞうたてうたてうたてあるあるあるややや。。。
- 7「「「過過すぎぎぎにににししし方方かた殊殊ことににに思思おもひひい惱惱なやむむむべきべきべき事事こともももなくなくなくててて侍侍はべりりりぬぬぬべかりべかりべかりししし世世よののの中中なかにににももも、、、猶猶なお心心こころからからからすきずきしきすきずきしきすきずきしき事事ことにににつけつけつけててて物思物思ものおもひひいののの絕絕たえええずずずももも侍侍はべりりりけるけるけるかなかなかな。。。さるさるさるまじきまじきまじき事事ことどもどもどもののの心苦心苦こころぐるしきしきしきがががあまたあまたあまた侍侍はべりりりししし中中なかににに、、、遂遂ついににに心心こころもももとけとけとけずずずむすぼゝれむすぼゝれむすぼおれててて止止やみみみぬるぬるぬる事事こと二二ふたつつつなむなむなん侍侍はべるるる。。。
- 8まづまづまず一一ひとつつつははは、、、このこのこのすぎすぎすぎ給給たまひひいにににししし御御おん事事ことよよよ。。。あさましうあさましうあさましゅうのみのみのみ思思おもひひいつめつめつめてててやみやみやみ給給たまひひいにににしししががが、、、長長ながききき世世よののの憂憂うれはしきはしきわしき節節ふしととと思思おもひひい給給たまへへえられられられしししをををかうかうこうまでまでまでももも仕仕つこううう奉奉まつりりり御覽御覽ごらんぜぜぜらるゝらるゝらるるをををなむなむなん慰慰なぐさめめめににに思思おもううう給給たまへへえなせなせなせどどど燃燃もえええししし煙煙けぶりのののむすぼゝれむすぼゝれむすぼおれ給給たまひひいけむけむけんははは猶猶なおいぶせういぶせういぶしょうこそこそこそ思思おもひひい給給たまへへえらるれらるれらるれ」」」とととててて今今いま一一ひとつつつはははのののたまひたまひたまいさしさしさしつつつ。。。
- 9「「「中頃中頃なかごろ身身みのののなきなきなきににに沈沈しずみみみ侍侍はべりりりししし程程ほどかたがたかたがたかたがたににに思思おもひひい給給たまへへえしししことことことかたはしかたはしかたわしづゝづゝずつかなひかなひかないにににたりたりたり。。。ひんがしひんがしひんがしののの院院いんにににものものものするするする人人ひとのののそこはかとなくそこはかとなくそこはかとなくててて心苦心苦こころぐるしうしうしゅう覺覺おぼえええ渡渡わたりりり侍侍はべりりりしししもももおだしうおだしうおだしゅう思思おもひひいなりなりなりにににててて侍侍はべりりり。。。心心こころばへばへばえのののにくからにくからにくからぬぬぬなどなどなど我我わももも人人ひとももも見見み給給たまへへえあきらめあきらめあきらめててていといといとこそこそこそさはやかさはやかさわやかなれなれなれ。。。
- 10かくかくかく立立たちちちかへりかへりかえり公公おおやけののの御御おん後見後見うしろみ仕仕つこうううまつるまつるまつる喜喜よろこびびびなどなどなどはははさしもさしもさしも心心こころににに深深ふかくくくしましましまずずず、、、かやうかやうかようなるなるなるすきがましきすきがましきすきがましき方方かたはははしづめしづめしずめ難難がとうううのみのみのみ侍侍はべるるるをををおぼろげおぼろげおぼろげににに思思おもひひい忍忍しのびびびたるたるたる御御おん後見後見うしろみとととはははおぼしおぼしおぼし知知しらららせせせ給給たまふふうらむらむらんややや。。。哀哀あわれとととだにだにだにのののたまはせたまはせたまわせずずずははは、、、いかにいかにいかにかひかひかいなくなくなく侍侍はべらららむむん」」」とととのののたまふたまふたまう。。。
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- 12數數かずならならならぬぬぬ幼幼おさなききき人人ひとののの侍侍はべるるる、、、おひさきおひさきおいさきいといといと待待まち遠遠どおなりなりなりややや。。。辱辱かたじけなくくくともともとも猶猶なおこのこのこの門門かど廣廣ひろげげげさせさせさせ給給たまひひいててて、、、侍侍はべらららずずずなりなりなりなむなむなん後後のちにににもももかずまへかずまへかずまえさせさせさせ給給たまへへえ」」」などなどなど聞聞きこえええ給給たまふふう。。。御御おんいらへいらへいらえはははいといといとおほどかおほどかおおどかなるなるなるさまさまさまににに辛辛かろうううじてじてじてひとことひとことひとことばかりばかりばかりかすめかすめかすめ給給たまへへえるるるけはひけはひけわい、、、いといといとなつかしげなつかしげなつかしげなるなるなるににに聞聞ききききつきつきつきてててしめじめしめじめしめじめととと暮暮くるゝるゝるるまでまでまでおはすおはすおわす。。。
現代語訳
斎宮の女御は、源氏がお考えになったとおりの立派なご後見で、帝のご寵愛も格別である。ご心づかいやご様子なども、思いどおりに理想的にお見えになるので、源氏は畏れ多い方として大切にお世話申し上げていらっしゃる。秋のころ、女御は二条院に里下りなさった。源氏は寝殿のお部屋のしつらえをいっそう輝くばかりになさって、今はすっかり親のように振る舞ってお世話申し上げなさる。
秋の雨がたいそう静かに降って、御前の前栽の色とりどりに乱れ咲いた花の露がしげく置いているのにつけて、昔のことが次々と思い出されて、御袖も涙で濡らしながら、女御の御方にお渡りになった。濃い鈍色の御直衣姿で、世の中の騒がしいことなどにかこつけて、そのままご精進中なので、数珠を袖に隠して、ご様子よく振る舞っていらっしゃる、尽きることなく優美なご様子で、御簾の内にお入りになった。
御几帳だけを隔てて、ご自身で申し上げなさる。「前栽の花々は、残らずほころびてしまいましたね。たいそう興ざめな年なのに、心のままに時を知り顔に咲いているのも、しみじみとしたことです」と言って、柱に寄りかかっていらっしゃる夕映えの姿は、たいそうすばらしい。昔のこと、あの野の宮で立ちわずらった明け方のことなどを、お話しになる。女御もたいそうしみじみとお思いになっている。宮も、「かくれば」の歌のようにお感じになったのだろうか、少しお泣きになる気配が、たいそういじらしくて、身じろぎなさる様子も、驚くほど柔らかで優美でいらっしゃるようだ。お見申し上げられないのが残念だと、胸がどきどきするのは、困ったことである。
「過ぎ去った昔、特に思い悩むようなこともなく過ごせたはずの世の中でも、やはり自分の心から、色恋のことにつけて物思いが絶えなかったことです。してはならないことで、気の毒なことがたくさんあった中で、ついに心も解けずに、わだかまったままに終わってしまったことが二つございます。
まず一つは、この亡くなられた母君のことです。ひどく思いつめたままお亡くなりになってしまったのが、長く後々までの嘆きの種と思われましたが、このようにあなたにお仕えして、ご覧いただけるのを慰めに思うようにしていますが、燃えた煙のように、あの方のお心が結ぼれたままでいらっしゃるのではないかと、やはり気がかりに思われます」と言って、もう一つのことは言いかけてやめた。
「中ごろ、身を失ったように沈んでおりました時、あれこれと思っておりましたことが、少しずつかなってまいりました。東の院に住んでいる人(花散里)が、頼りない様子で気の毒に思われ続けておりましたのも、穏やかに落ち着くようになりました。気立てのよいことなど、私もその人も互いによく知り合って、たいそうさっぱりとしております。
このように返り咲いて朝廷のご後見をお務めする喜びなどは、それほど心に深くしみず、このような色恋めいた方面は、静めがたくばかりおりますのに、並々でなく思いをこらえているご後見だとは、おわかりいただけるでしょうか。せめて哀れとだけでもおっしゃっていただけなければ、どんなにかいのないことでしょう」とおっしゃる。
女御が困ってお返事もなさらないので、源氏は「やはりそうか、ああ情けない」と言って、ほかのことに話を紛らわしなさった。「今はどうにかして、のんびりと、生きている間は思い残すことなく、来世のための勤行も心のままにして籠もろうと思っておりますが、この世の思い出にできるような事がないのが、さすがに残念でございましょう。人数にも入らない幼い子がおりますが、成長が待ち遠しいことです。畏れ多いことですが、やはりこの一門を広げてくださって、私がいなくなった後にも、その子を人並みに扱ってくださいませ」などと申し上げなさる。女御のお返事は、たいそうおっとりとした様子で、やっと一言ばかりかすかに答えなさる気配が、たいそう慕わしい感じなので、源氏は聞き入って、しみじみと日が暮れるまでいらっしゃる。
意訳
秋、斎宮女御が二条院に里下りし、源氏は親代わりとして世話をする。秋雨の夕暮れ、源氏は鈍色の直衣姿で女御を訪れ、几帳越しに野の宮の思い出などを語る。
源氏は、六条御息所との恋の苦しみや、二条東院の人々を落ち着かせたことを語り、女御への思いをほのめかす。女御が答えないので、源氏は話をそらし、自分の娘(明石の姫君)の後見を頼む。
語釈・文法注
- かくれば
- 「いにしへの事をかくれば」という古歌によるか。昔のことを口にすると涙がこぼれる、という意をふまえて、斎宮女御が母を思い出して泣くことをいう。
文法
- 推定の「めり」(おはすべかめる)
- 「いらっしゃるようだ」。「べかるめる」の撥音便の撥音を表記しない形。
- 「こそ…けれ」(見奉らぬこそ口惜しけれ)
- 「お見申し上げられないのが残念だ」。
解説
源氏は、六条御息所の遺言で斎宮女御を恋の相手にしないと約束したにもかかわらず、女御への思いをほのめかす。語り手は、「胸うちつぶるゝぞうたてあるや」と、源氏の懲りない色好みを皮肉っている。
源氏が言いかけてやめた「今一つ」は、藤壺のことと考えられる。藤壺の死の直後に、源氏が別の女性に思いをほのめかす場面は、源氏の心の空洞を暗示しているとも読める。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、364–365頁(コマ185)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日