源氏物語 第19帖 薄雲(4)
二条院の姫君と新年
姫君は二条院に着き、西面に美しく整えられた部屋に入る。はじめは母を求めて泣くが、すぐに紫の上になつき、紫の上はかわいい子を得たと喜ぶ。袴着の儀も盛大に行われる。大堰の明石の君は恋しさに嘆くが、尼君は姫君が大切にされていると聞いて喜ぶ。紫の上も姫君のかわいらしさに免じて明石の君を許す。年が明け、二条東院の花散里は、穏やかな人柄で、源氏の厚遇を受けて落ち着いた暮らしをしている。

- 1暗暗くろうううおはしおはしおわし着着つきききててて御御おん車車くるまよするよするよするよりよりより花花はなやかやかやかにににけはひけはひけわい殊殊ことなるなるなるををを田舍田舍いなかびびびたるたるたる心地心地ここちどもどもどもははははしたなくはしたなくはしたなくてててやややまじらはまじらはまじらわむむんととと思思おもひひいつれつれつれどどど、、、西西にしおもておもておもてををを殊殊ことにににしつらはしつらはしつらわせせせ給給たまひひいててて小小ちいさききき御御おん調度調度ちょうどどもどもども美美うつくしげしげしげににに整整ととのへへへさせさせさせ給給たまへへえりりり。。。めのとめのとめのとののの局局つぼねにににははは西西にしののの渡殿渡殿わたどのののの北北きたににに當當あたれれれるるるをををせせせさせさせさせ給給たまへへえりりり。。。
- 2若君若君わかぎみははは道道みちにてにてにて寢寢ね給給たまひひいにににけりけりけり。。。抱抱いだきききおろさおろさおろされれれててて泣泣なきききなどなどなどはははししし給給たまははわずずず。。。こなたこなたこなたにてにてにて御御おんくだものくだものくだものまゐりまゐりまいりなどなどなどししし給給たまへへえどどどやうやうやうやうようよう見見み廻廻めぐらしらしらしててて母君母君ははぎみののの見見みえええぬぬぬををを求求もとめめめてててらうたげらうたげろうたげにににうちうちうちひそみひそみひそみ給給たまへへえばばば乳母乳母めのと召召めししし出出いでででゝゝて慰慰なぐさめめめまぎらはしまぎらはしまぎらわし聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
- 3山里山里やまざとのののつれづれつれづれつれずれましてましてましていかにいかにいかにとととおぼしおぼしおぼしやるやるやるはははいとほしけれいとほしけれいとおしけれどどど明暮明暮あけくれおぼすおぼすおぼすさまさまさまにににかしづきかしづきかしずきつゝつゝつつ見見み給給たまふふうははは物物ものあひあひあいたるたるたる心地心地ここちししし給給たまふふうらむらむらん、、、いかにいかにいかにぞぞぞややや、、、人人ひとののの思思おもふふうべきべきべききずきずきずなきなきなきことことことはははこのこのこのわたりわたりわたりににに出出いでででおはせおはせおわせでででととと口口くちをしくをしくおしくおぼさおぼさおぼさるるる。。。
- 4しばししばししばしははは人々人々びともとめもとめもとめててて泣泣なきききなどなどなどししし給給たまひひいしかしかしかどどど大方大方おおかた心心こころ安安やすくくくをかしきをかしきおかしき心心こころざまざまざまなれなれなればばば上上うえにににいといといとよくよくよくつきつきつきむつびむつびむつび聞聞きこえええ給給たまへへえれれればばばいみじういみじういみじゅう美美うつくしきくしきくしき物物もの得得えたりたりたりととと覺覺おぼしししけりけりけり。。。ことことことごとごとごとなくなくなく抱抱いだきききあつかひあつかひあつかい翫翫もてあそびびび聞聞きこえええ給給たまひひいててて乳母乳母めのともももおのづからおのづからおのずから近近ちこううう仕仕つこうううまつりまつりまつりなれなれなれにににけりけりけり。。。
- 5又又またやんごとなきやんごとなきやんごとなき人人ひとののの、、、ちちちあるあるある添添そへへえててて參參まいりりり給給たまふふう。。。御御おん袴着袴着はかまぎははは何何なにばかりばかりばかりわざとわざとわざとおぼしおぼしおぼし急急いそぐぐぐ事事ことはははなけれなけれなけれどどど氣色氣色けしきことことことなりなりなり。。。御御おんしつらひしつらひしつらいひゝなひゝなひいな遊遊あそびののの心地心地ここちしししてててをかしうをかしうおかしゅう見見みゆゆゆ。。。參參まいりりり給給たまへへえるるるまらうどまらうどまろうどゞゞどももも唯唯ただ明暮明暮あけくれのののけぢめけぢめけじめしししなけれなけれなければばばあながちあながちあながちににに目目めもももたゝたゝたたざりざりざりききき。。。唯唯ただ姫君姫君ひめぎみのののひきひきひきゆひゆひゆい給給たまへへえるるる胸胸むねつきつきつきぞぞぞ美美うつくしげしげしげさささそひそひそいててて見見みえええ給給たまへへえるるる。。。
- 6大井大井おおいにににはははつきつきつきせせせずずず戀戀こいしきしきしきにににももも、、、身身みのののをこたりをこたりおこたりををを歎歎なげきききそへそへそえたりたりたり。。。さささこそこそこそいひいひいいしがしがしが、、、尼君尼君あまぎみもももいとゞいとゞいとど淚淚なみだもろもろもろなれなれなれどどどかくかくかくもてなしもてなしもてなしかしづかかしづかかしずかれれれ給給たまふふうををを聞聞きくくくははは嬉嬉うれしかりしかりしかりけりけりけり。。。
- 7何事何事なにごとをををかかかなかなかなかなかなかなかとぶらひとぶらひとぶらい聞聞きこえええ給給たまははわむむん、、、唯唯ただ御御おん方方かたののの人々人々びとににに乳母乳母めのとよりよりより初初はじめめめててて世世よににになきなきなき色色いろあひあひあいををを思思おもひひい急急いそぎぎぎてててぞぞぞ送送おくりりり聞聞きこえええ給給たまひひいけるけるける。。。待待まち遠遠どおならならならむむんもももいとゞいとゞいとどさればよさればよさればよととと思思おもははわむむんにににいとほしけれいとほしけれいとおしければばば年年としののの內內うちににに忍忍しのびびびててて渡渡わたりりり給給たまへへえりりり。。。
- 8いとゞいとゞいとど淋淋さびしきしきしきすまひすまひすまいににに明暮明暮あけくれのののかしづきかしづきかしずきぐさぐさぐさをををさへさへさへ離離はなれれれ聞聞きこえええててて思思おもふふうらむらむらんとととののの心苦心苦こころぐるしけれしけれしければばば御御おん文文ふみなどなどなどももも絕間絕間たえまなくなくなく遣遣つかわすすす。。。女君女君おんなぎみももも今今いまははは殊殊ことにににゑじゑじえじ聞聞きこえええ給給たまははわずずず美美うつくしきしきしき人人ひとににに罪罪つみ免免ゆるししし聞聞きこえええ給給たまへへえりりり。。。
- 9年年としもももかへりかへりかえりぬぬぬ。。。うらゝかうらゝかうららかなるなるなる空空そらににに思思おもふふう事事ことなきなきなき御御おん有樣有樣ありさまはははいとゞいとゞいとどめでたくめでたくめでたく磨磨みがききき改改あらためめめたるたるたる御御おんよそひよそひよそいににに參參まいりりり集集つどひひい給給たまふふうめるめるめる人人ひとのののおとなしきおとなしきおとなしき程程ほどのののははは七日七日なぬかののの御御おん悅悅よろこびなどなどなどししし給給たまふふう。。。ひきひきひきつれつれつれ給給たまへへえりりり。。。若若わかやかやかやかなるなるなるははは何何なにととともももなくなくなく心地心地ここちよげよげよげににに見見みえええたりたりたり。。。つぎつぎつぎつぎつぎつぎののの人人ひとももも心心こころののの中中うちにににははは思思おもふふう事事こともももやややあらあらあらむむん。。。うはべうはべうわべはははほこりかほこりかほこりかににに見見みゆるゆるゆるころほひころほひころおいなりなりなりかしかしかし。。。
- 10ひんがしひんがしひんがしののの院院いんののの對對たいののの御御おん方方かたももも有樣有樣ありさまははは好好このましうましうましゅう、、、あらまほしきあらまほしきあらまほしきさまさまさまににに侍侍さぶらふふう人々人々びとわらはべわらはべわらわべののの姿姿すがたなどなどなどうちとけうちとけうちとけずずず心心こころづかひづかひづかいしししつゝつゝつつ過過すぐしぐしぐし給給たまふふうににに、、、近近ちかきききしるししるししるしはははこよなくこよなくこよなくててて長閑長閑のどかなるなるなる御御おん暇暇いとまのののひまひまひまなどなどなどにににはははふとふとふとはひはひはい渡渡わたりりりなどなどなどししし給給たまへへえどどどよるよるよる立立たちちちとまりとまりとまりなどなどなどやうやうようにににわざとわざとわざとははは見見みえええ給給たまははわずずず。。。
- 11唯唯ただ御心御心こころざまざまざまのののおいらかおいらかおいらかにににこめきこめきこめきててて、、、かばかりかばかりかばかりののの宿世宿世すくせなりなりなりけるけるける身身みにににこそこそこそあらあらあらめめめととと思思おもひひいなしなしなしつゝつゝつつありがたきありがたきありがたきまでまでまでうしろやすくうしろやすくうしろやすく長閑長閑のどかににに物物ものししし給給たまへへえばばば、、、をりふしをりふしおりふしののの御御おん心心こころおきておきておきてなどもなどもなども、、、こなたこなたこなたののの御御おん有樣有樣ありさまににに劣劣おとるるるけぢめけぢめけじめこよなからこよなからこよなからずずずもてなしもてなしもてなし給給たもうううてててあなづりあなづりあなずり聞聞きこゆゆゆべうべうびょうはははあらあらあらねねねばばばおなじおなじおなじごとごとごと人人ひとももも參參まいりりり仕仕つこううう奉奉まつりりりててて、、、べたうべたうべとうけいしけいしけいしどもどもどもゝゝも事事こと怠怠おこたらららずずず、、、なかなかなかなかなかなか亂亂みだれれれたるたるたる所所ところなくなくなくめやすきめやすきめやすき御御おん有樣有樣ありさまなりなりなり。。。
現代語訳
暗くなってからお着きになって、お車を寄せるところから、華やかで、雰囲気が格別なので、田舎じみた気持ちの者たちは、きまりが悪くて交じっていけるだろうかと思っていたけれど、西面を格別に整えさせなさって、小さなお道具類をかわいらしく整えさせていらっしゃった。乳母の局には、西の渡殿の北に当たる所を用意させなさった。
若君(姫君)は道中で寝てしまわれた。抱き下ろされても泣いたりはなさらない。こちらでお菓子を召し上がったりなさるけれど、だんだん見回して、母君が見えないのを探して、かわいらしくべそをかきなさるので、紫の上は乳母を呼び出して、慰めたり紛らわしたりなさる。
源氏は、山里の所在なさは、ましてどんなだろうと思いやりなさるのはお気の毒だけれど、明け暮れ思いどおりに大切に育てながら見ていらっしゃるのは、満ち足りた気持ちがなさるだろう。どうしたものか、人が非難しそうな欠点のないことには、この紫の上のもとに生まれてこられなかったのが残念だとお思いになる。
姫君は、しばらくは人々を探して泣いたりなさったけれど、だいたい素直でかわいらしいご気性なので、上(紫の上)にたいそうよくなついてお慕い申し上げなさるので、紫の上はたいそうかわいいものを得たとお思いになった。ほかのことはさしおいて、抱いてお世話し、かわいがり申し上げなさって、乳母も自然と紫の上の近くにお仕えし慣れていった。
また身分の高い人で、乳の出る人を乳母として加えて参上させなさる。御袴着は、それほどわざわざ急いで準備なさるわけではないけれど、様子が格別である。お部屋の飾りつけは、雛遊びのような気がして趣深く見える。参上なさった客人たちも、ただ明け暮れ出入りして区別もないので、特に目にとめることもなかった。ただ姫君が襷を結んでいらっしゃる胸のあたりが、かわいらしさを添えてお見えになった。
大堰では、尽きることなく恋しいにつけても、我が身の至らなさを嘆き加えていた。あれほど言っていたけれど、尼君もいっそう涙もろくなったが、このように大切にお世話されていらっしゃるのを聞くのはうれしかった。何をかえって、こちらからお見舞い申し上げられようか、ただ姫君付きの人々に、乳母をはじめとして、世にまたとない色合いの衣装を心を込めて急いで用意してお贈りになった。
源氏は、訪れが待ち遠しいのも、いっそう、やはりそうだったかと明石の君が思うだろうと気の毒なので、年内にこっそりお訪ねになった。いっそう寂しい住まいに、明け暮れの世話の楽しみまで離れ申し上げて、どんなに思っているだろうと心苦しいので、お手紙なども絶え間なくお遣わしになる。女君(紫の上)も、今は特に恨み申し上げなさらず、かわいい姫君に免じて罪をお許し申し上げていらっしゃる。
年も改まった。うららかな空に、何の物思いもない源氏のご様子はいっそうすばらしく、磨き改めた装いで参り集まりなさるような人々で、年配の者は七日の叙位のお礼などをなさる。連れ立っていらっしゃる。若い人は、何ということもなく気持ちよさそうに見えた。それ以下の人々も、心の中には思うこともあるのだろうか。うわべは得意げに見えるころであった。
東の院の対の御方(花散里)も、ご様子は好ましく、理想的な様子で、お仕えする女房や童女の姿なども気を抜かずに心を配りながら過ごしていらっしゃるが、近くに住むかいはこの上なくて、源氏はのんびりしたお暇の折などには、ふとお立ち寄りになったりなさるけれど、夜泊まっていかれるなど、わざわざそうしたふうにはお見えにならない。
ただお人柄がおっとりと子どもっぽくて、この程度の宿縁の身なのだろうと思いなしながら、めったにないほど安心できるように、のどかに過ごしていらっしゃるので、源氏は折々のお心づかいなども、紫の上のご様子に劣る差もないようにお扱いになって、軽んじ申し上げるようなことはないので、同じように人々も参上してお仕えし、別当や家司たちも仕事を怠らず、かえって乱れたところもなく、感じのよいご様子である。
意訳
姫君は二条院に着き、はじめは母を求めて泣くが、すぐに紫の上になつき、紫の上はかわいい子を得たと喜ぶ。袴着の儀も盛大に行われる。大堰の明石の君は恋しさに嘆くが、尼君は姫君が大切にされていると聞いて喜ぶ。紫の上も、姫君のかわいらしさに免じて明石の君への嫉妬を和らげる。
年が明け、源氏の邸は新年の祝賀でにぎわう。二条東院の花散里は、穏やかな人柄で、源氏の厚遇を受けて落ち着いた暮らしをしている。
語釈・文法注
- たすき
- 袴着の儀で、姫君が胸に掛けた襷(たすき)。幼児が袴をつける時、胸の前で結んだ。
文法
- 現在推量の「らむ」(物あひたる心地し給ふらむ)
- 「満ち足りた気持ちがなさるだろう」。
- 「こそ…め」(宿世なりける身にこそあらめ)
- 「宿縁の身なのだろう」。
解説
紫の上は、明石の君に嫉妬しながらも、姫君を心から愛して育てる。子のない紫の上にとって、姫君は生きがいとなり、源氏の家庭の新たな絆となる。
花散里の穏やかな暮らしぶりは、明石の君の悲しみと対照的に描かれる。身の程をわきまえて安らかに暮らす花散里の生き方は、物語の中で一つの理想として示されている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、352–355頁(コマ179–180)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日