源氏物語 第19帖 薄雲(1)
明石の君の苦悩
冬になり、大堰の暮らしはいっそう心細い。源氏は明石の君に二条東院に移るよう勧めるが、明石の君はためらう。源氏は、姫君を紫の上のもとで育て、袴着も人目につくように盛大に行いたいと切り出す。明石の君は胸がつぶれる思いで、源氏が語る紫の上の人柄のすばらしさを聞き、姫君の将来のためには譲るべきかと思いながらも、手放した後の寂しさを思って思い乱れる。

- 1冬冬ふゆににになりなりなり行行ゆくくくまゝまゝままににに、、、河河かわづらづらずらのののすまひすまひすまいいとゞいとゞいとど心心こころぼそさぼそさぼそさまさりまさりまさりててて、、、うはうはうわののの空空そらなるなるなる心地心地ここちのみのみのみしししつゝつゝつつ明明あかししし暮暮くらすすすををを、、、君君きみももも「「「猶猶なおかくかくかくてててはははえええすぐさすぐさすぐさじじじ。。。かのかのかの近近ちかききき所所ところににに思思おもひひい立立たちちちねねね」」」ととと勸勸すすめめめ給給たまへへえどどど、、、つらきつらきつらき所所ところ多多おおくくく試試こころみみみはてはてはてむむんももも殘殘のこりりりなきなきなき心心ここちちちすすすべきべきべきをををいかにいかにいかにいひいひいいてててかかかなどなどなどいふいふいうやうやうようににに思思おもひひい亂亂みだれれれたりたりたり。。。
- 2「「「さらばさらばさらばこのこのこの若君若君わかぎみをををかくかくかくてててのみのみのみはははびんなきびんなきびんなきことことことなりなりなり。。。思思おもふふう心心こころあれあれあればばばかたじけなしかたじけなしかたじけなし。。。對對たいににに聞聞きききき置置おきききててて常常つねにににゆかしがるゆかしがるゆかしがるをををしばししばししばし見見みならはせならはせならわせてててのののことことことなどなどなどももも人人ひと知知しれれれぬぬぬさまさまさまならならならずずずしししなさなさなさむむんとととなむなむなん思思おもふふう」」」とととまめやかまめやかまめやかににに語語かたらひひい給給たまふふう。。。さささおぼすおぼすおぼすらむらむらんととと思思おもひひい渡渡わたるるる事事ことなれなれなればばばいとゞいとゞいとど胸胸むねつぶれつぶれつぶれぬぬぬ。。。
- 3「「「改改あらためめめてててやむごとなきやむごとなきやむごとなき方方かたにににもてなさもてなさもてなされれれ給給たまふふうともともとも人人ひとののの漏漏もりりり聞聞きかかかむむんことことことはははなかなかなかなかなかなかにににやややつくろひつくろひつくろい難難がたくくくおぼさおぼさおぼされれれむむん」」」とととててて放放はなちちち難難がたくくく思思おもひひいたりたりたり。。。
- 4「「「ことわりことわりことわりにににもももあれあれあれどどど、、、うしろうしろうしろ安安やすからからからぬぬぬ方方かたにににやややなどなどなどはははななな疑疑うたがひひいそそそ。。。かしこかしこかしこにににははは年年とし經經へぬれぬれぬれどどどかゝるかゝるかかる人人ひともももなきなきなきがががさうざうしくさうざうしくそうぞうしく覺覺おぼゆるゆるゆるまゝまゝままにににさきさきさきののの齋宮齋宮さいぐうのののおとなびおとなびおとなび物物ものししし給給たまふふうをををだにだにだにこそこそこそあながちあながちあながちにににあつかひあつかひあつかい聞聞きこゆゆゆめれめれめればばばましてましてましてかくかくかく惡惡にくみみみ難難がたげげげなめるなめるなめる程程ほどをををおろかおろかおろかにににははは思思おもひひい放放はなつつつまじきまじきまじき心心こころばへばへばえににになむなむなん」」」とととをんなをんなおんな君君きみののの御御おん有樣有樣ありさまののの思思おもふふうやうやうようなるなるなる事事ことももも語語かたりりり給給たまふふう。。。
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- 7又又また手手てををを放放はなちちちてててうしろめたからうしろめたからうしろめたからむむんととと徒然徒然つれずれももも慰慰なぐさむむむ方方かたなくなくなくてててはははいかゞいかゞいかが明明あかししし暮暮くらすすすべからべからべからむむん。。。何何なににににつけつけつけてててかかかたまさかたまさかたまさかののの御御おん立立たちちちよりよりよりもももあらあらあらむむんなどなどなどさまざまさまざまさまざま思思おもひひい亂亂みだるゝるゝるるにににももも身身みののの憂憂うききき事事ことかぎりかぎりかぎりなしなしなし。。。
現代語訳
冬になってゆくにつれて、川辺の住まいはいっそう心細さがまさって、うわの空のような気持ちばかりで明かし暮らしているので、源氏の君も「やはりこのままでは過ごせないだろう。あの近い所(二条東院)に移ることを決心しなさい」とお勧めになるけれど、明石の君は、源氏のつれない所を多く見届けてしまうのも、すっかり望みを失うような気持ちがするだろうから、どう言ったらよいだろうかと思い乱れていた。
源氏は「それならば、この若君を、このままにしておくのは不都合なことだ。考えていることがあるので、畏れ多い。対の上(紫の上)が聞き知って、いつも見たがっているので、しばらく見慣れさせて、袴着のことなども、人目につかないようにではなく、盛大に行おうと思うのだ」と、真剣にお話しになる。明石の君は、そうお思いだろうとずっと思っていたことなので、いっそう胸がつぶれる思いである。「改めて高貴な方の子としてお扱いになられても、人が漏れ聞くことは、かえって取り繕いにくくお思いになるでしょう」と言って、手放しがたく思っている。
源氏は「もっともではあるが、後見が不安な方ではないかなどと疑いなさるな。あちらでは長年連れ添っているけれど、こういう子もいないのが物足りなく思われるままに、前斎宮の大人びていらっしゃるのでさえ、無理にお世話しているようなので、まして、このように憎みにくそうな幼い子を、いいかげんには見捨てまいという気持ちなのだ」と、女君(紫の上)のご様子の理想的なことも話しなさる。
明石の君は、本当に昔はどれほどのことで落ち着きなさるのだろうかと、人づてにもほのかに聞いていたお心が、名残もなく落ち着かれたのは、並々でないご宿縁なのだ。その方のご様子も、大勢の方々の中ですぐれていらっしゃるからこそだろうと思いやられて、
人数にも入らない自分が肩を並べ申し上げられる評判でもないのに、そうは言っても出て行って、その方も目障りだとお思いになることがあるかもしれない、我が身はどうなっても同じことだが、将来の長い姫君の御身の上も、結局はあの方のお心次第になるのだろう。そうであるならば、本当にこのように何もわからない年ごろのうちに、お譲り申し上げようかと思う。
また、手放して気がかりだろうし、所在なさも慰める方法がなくては、どうやって明かし暮らしたらよいだろう。何を口実にして、たまのお立ち寄りもあるだろうかなどと、さまざまに思い乱れるにつけても、身のつらさは限りない。
意訳
冬、源氏は明石の君に二条東院に移るよう勧めるが、明石の君はためらう。源氏は、姫君を紫の上のもとで育て、袴着も盛大に行いたいと切り出す。
明石の君は、紫の上の人柄のすばらしさを聞き、姫君の将来のためには譲るべきかと思いながらも、手放した後の寂しさや、源氏の訪れが途絶えることを思って思い乱れる。
語釈・文法注
- 袴着
- 幼児が初めて袴をつける儀式。三歳から七歳ごろに行われ、貴族の子女の成長を祝う大切な儀式であった。腰紐を結ぶ「腰結い」の役は、身分の高い人が務めた。
文法
- 禁止の「な…そ」(な疑ひそ)
- 「疑いなさるな」。
- 反実仮想の「まし」(讓り聞えまし)
- 「お譲り申し上げようか」。「や」と呼応して、ためらいを表す。
解説
薄雲の巻は、明石の君が姫君を手放す場面から始まる。源氏は、姫君の将来のためには、身分の高い紫の上の養女とすることが必要だと考える。母の身分が低いことは、姫君が后となるための大きな障害だったからである。
明石の君は、源氏の申し出の理を認めながらも、母としての情との間で揺れ動く。この葛藤は、平安時代の身分社会の中で生きる女性の苦悩を鮮やかに描き出している。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、348–351頁(コマ177–178)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日