源氏物語 第15帖 蓬生(6)
侍従との別れ
末摘花が動かないので、叔母はせめて侍従だけでもと連れて行こうとする。侍従は泣く泣く、今日は見送りだけと言って出かける。末摘花は形見として、抜け落ちた自分の髪で作った鬘と薫衣香を侍従に贈り、歌を詠む。侍従も変わらぬ心を誓う歌を返して去る。残された老女房たちも、自分たちもいつまで辛抱できるかとささやき合う。

- 1されどされどされど動動うごくくくべうべうびょうもももあらあらあらねねねばばばよろづよろづよろずににに言言いひひい煩煩わずらひひいくらしくらしくらしててて、、、さらばさらばさらば侍從侍從じじゅうをををだにだにだにととと日日ひののの暮暮くるゝるゝるるまゝまゝままににに急急いそげげげばばば、、、心心こころあわたゞしくあわたゞしくあわただしくててて泣泣なくくくなくなくなく「「「さらばさらばさらばまづまづまずけふけふけうはははかうかうこう責責せめめめ給給たまふふうおくりおくりおくりばかりばかりばかりにににまうでまうでもうで侍侍はべらららむむん、、、かのかのかの聞聞きこえええ給給たまふふうもももことわりことわりことわりなりなりなり。。。又又またおぼしおぼしおぼし煩煩わずらふふうもももさるさるさることことことににに侍侍はべれれればばば中中なかににに見見み給給たまふるふるうるももも心苦心苦こころぐるしくしくしくなむなむなん」」」ととと忍忍しのびびびててて聞聞きこゆゆゆ。。。
- 2このこのこの人人ひとさへさへさへうちうちうち捨捨すてゝてゝててむむんとととするするするをををうらめしううらめしううらめしゅうもももあはれあはれあわれにににもももおぼせおぼせおぼせどどど言言いひひいとゞむとゞむとどむべきべきべきかたかたかたもももなくなくなくててていとゞいとゞいとどねねねをををのみのみのみたけきたけきたけきことことことにてにてにてものものものししし給給たまふふう。。。
- 3かたみかたみかたみにににそへそへそえ給給たまふふうべきべきべきみなれごろもみなれごろもみなれごろもゝゝもしほなれしほなれしおなれたれたれたればばば、、、年年とし經經へぬるぬるぬるしるししるししるし見見みせせせ給給たまふふうべきべきべきものものものなくなくなくててて、、、我我わみぐしみぐしみぐしののの落落おちちちたりたりたりけるけるけるををを取取とりりり集集あつめめめてててかづらかづらかずらにににししし給給たまへへえるるるががが九尺九尺くしゃくよよよばかりばかりばかりにてにてにていといといときよらきよらきよらなるなるなるををを、、、をかしげをかしげおかしげなるなるなる箱箱はこににに入入いれれれてててむかしむかしむかしののののののいといといとかうばしきかうばしきこうばしき一壺一壺ひとつぼぐしぐしぐしてててたまふたまふたまう。。。
- 4「「「たゆたゆたゆまじきまじきまじきすぢすぢすじととと賴賴たのみみみししし玉玉たまかづらかづらかずらおもひおもひおもいののの外外ほかにににかけかけかけはなれはなれはなれぬるぬるぬる。。。こまゝこまゝこままののののののたまひたまひたまい置置おきききしししことことこともももありありありしかしかしかばばばかひかひかいなきなきなき身身みなりなりなりともともとも見見みはてゝはてゝはててむむんとととこそこそこそ思思おもひひいつれつれつれ。。。うちうちうち捨捨すてててらるゝらるゝらるるもももことわりことわりことわりなれなれなれどどど、、、誰誰たれににに見見み讓讓ゆずりりりてててかかかとととうらめしううらめしううらめしゅうなむなむなん」」」とととててていみじういみじういみじゅう泣泣なききき給給たまふふう。。。
- 5このこのこの人人ひとももも物物ものももも聞聞きこえええやらやらやらずずず「「「まゝまゝままのののゆゐごんゆゐごんゆいごんははは更更さらにににももも聞聞きこえええさせさせさせずずず、、、年年としごろごろごろののの忍忍しのびびび難難がたききき世世よのののうさうさうさをををすぐしすぐしすぐし侍侍はべりりりつるつるつるにににかくかくかくおぼえおぼえおぼえぬぬぬみちみちみちにににいざなはいざなはいざなわれれれててて遙遙はるかにににまかりまかりまかりあくがるゝあくがるゝあくがるることことこと」」」とととててて、、、
- 6「「「玉玉たまかづらかづらかずら絕絕たえええてててもももやまやまやまじじじ行行ゆくくく道道みちのののたむけたむけたむけののの神神かみもももかけかけかけてててちかはちかはちかわむむん。。。いのちいのちいのちこそこそこそ知知しりりり侍侍はべらららねねね」」」などなどなどいふいふいうににに「「「いづらいづらいずら、、、暗暗くろうううなりなりなりぬぬぬ」」」とととつぶやかつぶやかつぶやかれれれててて心心こころもももそらそらそらにてにてにて引引ひききき出出いづれづれずればばば、、、かへりみかへりみかえりみのみのみのみせせせられられられけりけりけり。。。
- 7年年としごろごろごろわびわびわびつゝつゝつつももも行行ゆききき離離はなれれれざりざりざりつるつるつる人人ひとのののかくかくかく別別わかれれれぬるぬるぬることことことをををいといといと心心こころぼそうぼそうぼそうおぼすおぼすおぼすににに、、、世世よににに用用もちゐゐいらるらるらるまじきまじきまじきおいびとおいびとおいびとさへさへさへ、、、いでいでいでやややことわりことわりことわりぞぞぞ、、、いかでいかでいかでかかか立立たちちちとまりとまりとまりたまはたまはたまわむむん我等我等われらもももえええこそこそこそ念念ねんじじじはつはつはつまじけれまじけれまじけれととと、、、おのがおのがおのが身々身々みみにににつけつけつけたるたるたるたよりたよりたよりどもどもども思思おもひひい出出いでででゝゝてとまるとまるとまるまじうまじうまじゅう思思おもへへえるるるををを人人ひとわろくわろくわろく聞聞ききききおはすおはすおわす。。。
現代語訳
けれども、末摘花が動きそうもないので、叔母はあれこれと言いあぐねて日を暮らし、それならせめて侍従だけでもと、日が暮れるにつれて急ぐので、侍従は気が気でなく、泣く泣く「それでは、ひとまず今日は、こうお責めになるお見送りだけにまいりましょう。あちらの申し上げることももっともです。また姫君がお悩みになるのも当然のことでございますので、間に立って拝見しているのも心苦しくて」と、こっそり申し上げる。
末摘花は、この人までが自分を見捨てていこうとするのを、恨めしくも悲しくもお思いになるが、引き止めるすべもなくて、ますます声をあげて泣くことばかりを精一杯のこととしていらっしゃる。形見として添えなさるはずの着慣れた衣も、汗じみて古びているので、長年仕えてくれたしるしとしてお見せになるような品もなくて、ご自分の御髪の抜け落ちたのを取り集めて鬘にしていらっしゃったのが、九尺余りほどで、たいそう美しいのを、趣のある箱に入れて、昔の薫衣香のたいそう香りのよいものを一壺添えてお与えになる。
「絶えることのない縁と頼みにしていた玉鬘のようなあなたが、思いもかけず遠く離れていってしまうことです。亡くなった乳母が言い残したこともあったので、かいのない身ではあっても、最後まで面倒を見てもらおうと思っていたのに。見捨てられるのももっともなことだけれど、誰に私を託していくのかと恨めしくて」と言って、ひどくお泣きになる。侍従も、何もお答え申し上げられず、「母の遺言は改めて申し上げるまでもありません。長年の堪えがたい世のつらさを過ごしてまいりましたのに、このように思いがけない旅路に誘われて、遠くさまよい出ることになりまして」と言って、
「玉鬘が絶えるように、お別れしても縁は絶えません。旅の道の手向けの神にもかけて誓いましょう。命のほどはわかりませんが」などと言うと、叔母が「どうしたの、暗くなってしまった」と小言を言うので、気もそぞろで車を引き出すと、振り返ってばかりいるのだった。
長年、つらい思いをしながらも離れていかなかった人が、このように別れていったことを、末摘花がたいそう心細くお思いになるのに、世間に用いられそうもない老女房までが、「さあ、もっともなことだ。どうしてとどまっていられようか。私たちもとても辛抱しきれないだろう」と、それぞれの身につけた縁故を思い出して、とどまっていられそうにないと思っているのを、末摘花は肩身の狭い思いでお聞きになっている。
意訳
末摘花が動かないので、叔母はせめて侍従だけでもと連れて行こうとし、侍従は泣く泣く見送りだけと言って出かける。末摘花は形見として、抜け落ちた自分の髪で作った鬘と薫衣香を侍従に贈り、別れの歌を詠む。侍従も変わらぬ心を誓う歌を返して去る。
残された老女房たちも、自分たちもいつまで辛抱できるかとささやき合い、末摘花は肩身の狭い思いをする。
語釈・文法注
- くのえかう
- 薫衣香(くのえこう)。衣服に香りを移すための練り香。
文法
- 強意の「こそ…けれ」(え念じはつまじけれ)
- 「とても辛抱しきれないだろう」。「え…まじ」で不可能の推量を表し、「こそ」の結びで已然形となる。
- 「こそ…ね」(いのちこそ知り侍らね)
- 「命のほどはわかりませんが」。「こそ」の結びの已然形で、逆接の余韻を残す。
和歌
たゆまじきすぢと賴みし玉かづらおもひの外にかけはなれぬる
- 詠者
- 末摘花
- 状況
- 去っていく侍従に、形見の鬘を贈って詠んだ歌。絶えることのない縁と頼みにしていた玉鬘のようなあなたが、思いもかけず遠く離れていってしまうことです。
修辞
- 縁語
- 「たゆ」「すぢ」「かけ」は「玉かづら」の縁語。
玉かづら絕えてもやまじ行く道のたむけの神もかけてちかはむ
- 詠者
- 侍従
- 状況
- 末摘花への返歌。玉鬘が絶えるように、お別れしても縁は絶えません。旅の道の手向けの神にもかけて誓いましょう。
修辞
- 縁語
- 「絶え」「かけ」は「玉かづら」の縁語。
解説
末摘花が形見として贈る鬘は、彼女の唯一の美点である長く美しい髪で作ったものである。貧しさの中で贈り物もない末摘花が、自らの身の一部を形見とする場面は、哀れでありながら気品を感じさせる。
乳母子の侍従は、末摘花にとって最後の頼りであった。その侍従までが去ることで、末摘花の孤独は極まる。しかし、これがかえって、源氏との再会の場面の感動を準備している。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、312–313頁(コマ159)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日