源氏物語 第15帖 蓬生(4)
源氏の帰京と末摘花の嘆き
源氏が許されて帰京し、世の中は喜びに沸く。人々は争って源氏に忠誠を示そうとするが、源氏は末摘花を思い出す様子もないまま月日が過ぎる。末摘花は、源氏の帰京を待ち望んでいたのに、自分だけが取り残されたと人知れず泣く。叔母はそれ見たことかと嘲り、再び筑紫へ誘う。侍従も大弐の甥と結ばれて下ることになるが、末摘花は源氏がいつか思い出してくれると信じて、荒れた邸で待ち続ける。

- 1さるさるさる程程ほどにににげにげにげに世世よののの中中なかににに許許ゆるささされれれ給給たまひひいててて都都みやこにににかへりかへりかえり給給たまふふうととと、、、あめのしたあめのしたあめのしたののの悅悅よろこびにににててて立立たちちち騷騷さわぐぐぐ。。。我我わもももいかでいかでいかで人人ひとよりよりより先先さきににに深深ふかきききこゝろざしこゝろざしこころざしををを御覽御覽ごらんぜぜぜられられられむむんとととのみのみのみ思思おもひひいきほふきほふきおう。。。をとこをとこおとこ女女おんなにににつけつけつけてててたかきたかきたかきをををもももくだれくだれくだれるるるをををももも人人ひとののの心心こころばへばへばえををを見見み給給たまふふうににに、、、あはれあはれあわれにににおぼしおぼしおぼし知知しるるる事事ことさまざまさまざまさまざまなりなりなり。。。
- 2かやうかやうかようにににあわたゞしきあわたゞしきあわただしき程程ほどににに更更さらににに思思おもひひい出出いででで給給たまふふう氣色氣色けしき見見みえええででで月日月日つきひ經經へぬぬぬ。。。今今いまはははかぎりかぎりかぎりなりなりなりけりけりけり、、、年比年比としごろあらあらあらぬぬぬさまさまさまなるなるなる御御おんさまさまさまををを悲悲かなしうしうしゅういみじきいみじきいみじき事事ことををを思思おもひひいながらながらながらもももえええ出出いづるづるずる春春はるにににあひあひあい給給たまははわなむなむなんととと念念ねんじじじ渡渡わたりりりつれつれつれどどど、、、
- 3などなどなどまでまでまで悅悅よろこびびび思思おもふふうなるなるなる御御おん位位くらいあらたまりあらたまりあらたまりなどなどなどするするするをををよそよそよそにににのみのみのみ聞聞きくくくべきべきべきなりなりなりけりけりけり、、、悲悲かなしかりしかりしかりししし折折おりのののうれはしさうれはしさうれわしさはははたゞたゞただ我我わががが身身み一一ひとつつつのののためためためににになれなれなれるるるとととおぼえおぼえおぼえしししかひかひかいなきなきなき世世よかなかなかなととと、、、心心こころ碎碎くだけけけてててつらくつらくつらく悲悲かなしけれしけれしければばば、、、人人ひと知知しれれれずずずねねねをををのみのみのみ泣泣なききき給給たまふふう。。。
- 4大貳大貳だいにののの北北きたののの方方かた、、、さればよさればよさればよまさにまさにまさにかくかくかくたつきたつきたつきなくなくなく人人ひとわろきわろきわろき御御おんありさまありさまありさまをををかずまへかずまへかずまえ給給たまふふう人人ひとはははありありありなむなむなんややや、、、ほとけほとけほとけひじりひじりひじりももも罪罪つみ輕輕かろきききをををこそこそこそ導導みちびきききよくよくよくししし給給たまふふうなれなれなれ、、、
- 5かゝるかゝるかかる御御おん有樣有樣ありさまにてにてにてたけくたけくたけく世世よをををおぼしおぼしおぼし、、、宮宮みやうへうへうえなどなどなどのののおはせおはせおわせししし時時ときのののまゝまゝままにににならひならひならい給給たまへへえるるる御御おん心心こころおごりおごりおごりのののいとほしきいとほしきいとおしきことことことゝゝといとゞいとゞいとどをこがましげをこがましげおこがましげににに思思おもひひいててて、、、
- 6「「「猶猶なおももも思思おぼししし立立たちちちねねね。。。世世よのののうきうきうき時時ときははは見見みえええぬぬぬ山路山路やまじをををこそこそこそ尋尋たずぬぬぬなれなれなれ田舎田舎いなかなどなどなどはははむづかしきむづかしきむずかしきものものものとととおぼしおぼしおぼしやるやるやるらめらめらめどどどひたぶるひたぶるひたぶるににに人人ひとわろげわろげわろげにににはははよもよもよももてなしもてなしもてなし聞聞きこえええじじじ」」」などなどなどいといといと事事ことよくよくよくいへいへいえばばば、、、
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現代語訳
そのうちに、本当に源氏は世間に許されて都にお帰りになると、天下の喜びとして大騒ぎする。我も何とかして人より先に深い忠誠をご覧に入れようとばかり競い合う。源氏は、男につけ女につけ、身分の高い者にも低い者にも、人の心の内をご覧になって、しみじみとお感じになることがさまざまである。このように慌ただしいうちに、末摘花をまったく思い出しなさる様子も見えないまま月日がたった。
末摘花は、今はもうおしまいだ、長年、思いもかけないつらいご境遇を悲しくひどいことと思いながらも、草木の萌え出る春にめぐりあってほしいと祈り続けてきたのに、瓦や小石のような下々の者までが喜ぶという源氏の御位の改まったことなども、よそごとに聞くばかりであったのか、悲しかった折の嘆きは、ただ私一人のためのものになってしまったと思われる、かいのない世の中だことと、心も砕けてつらく悲しいので、人知れず声をあげて泣いてばかりいらっしゃる。
大弐の北の方(叔母)は、それ見たことか、本当に、このように頼るものもなく見苦しいご様子を、人並みに扱ってくださる人などいるものか、仏や聖でさえ、罪の軽い者をこそよく導いてくださるというのに、こんなご様子で気位を高く持って、父宮や母上がいらっしゃった時のままに慣れていらっしゃるお心の高ぶりが気の毒なことだと、ますますばかばかしそうに思って、
「やはり思い立ちなさいませ。世の中がつらい時は、見えない山路をこそ訪ねていくといいます。田舎などはいやなものとお思いになっているでしょうが、決して見苦しいようにはお扱い申し上げません」などと、たいそう言葉巧みに言うので、すっかり気落ちしている女房たちは、「そうお従いになってほしいものです。たいしたこともありそうにないご身分なのに、どうお思いになって、こうも意地を張っていらっしゃるのでしょう」と非難してつぶやく。
侍従も、あの大弐の甥とかいう人と親しくなって、残っていられそうにもなかったので、「心ならずも出かけていって、姫君を見捨て申し上げるのはたいそう心苦しいので」と言ってお勧め申し上げるけれど、末摘花は、やはりこのように遠ざかって長くなってしまわれた人を頼みにしていらっしゃるお心の内で、いくら何でも、生きていれば思い出してくださる折がないことがあろうか、しみじみと深いお約束をなさったのに、私の運が悪くて、こうして忘れられているのだろう、
風の便りにでも、私のこのようなひどい有様をお聞きつけになったら、必ずお訪ねくださるだろうと、長年思っていらっしゃったので、お住まい全体も以前よりいっそうひどい有様だけれど、自分の考えで、ちょっとしたお道具なども手放させなさらず、気丈に同じ様子で辛抱して過ごしていらっしゃるのだった。
声をあげて泣いてばかりで、いっそう沈み込んでいらっしゃるのは、まるで山人が赤い木の実を一つ顔から離さないように見えるご横顔などは、並の人ならば見るに堪えるものではないだろう。詳しくは申し上げまい。お気の毒で、口の悪いことのようだから。
意訳
源氏が帰京し、世の中は喜びに沸くが、源氏は末摘花を思い出す様子もない。末摘花は、自分だけが取り残されたと人知れず泣く。
叔母はそれ見たことかと嘲って、再び筑紫へ誘い、女房たちもそれに従うよう勧める。侍従も大弐の甥と結ばれて下ることになる。しかし末摘花は、源氏がいつか思い出してくれると信じて、荒れた邸で調度も手放さずに待ち続ける。
語釈・文法注
- たびしかはら
- 瓦や小石のこと。転じて、取るに足りない下々の者をいう。
- 山人の赤きこのみ
- 山に住む仙人が赤い木の実を顔から離さないという言い回しによるか。末摘花の赤い鼻を、語り手がからかって言う。
文法
- 願望の「なむ」(春にあひ給はなむ)
- 「春にめぐりあってほしい」。
- 反語の「やは」(ついであらじやは)
- 「折がないことがあろうか、いや、きっとある」。
解説
源氏の帰京を喜ぶ人々の中で、末摘花だけが取り残される。「たびしかはら」まで喜ぶという表現は、末摘花の孤独を際立たせている。
末摘花が源氏を信じて待ち続けるのは、世間知らずの一途さとも、誇り高い誠実さとも読める。語り手は、赤い鼻をからかいながらも、その心のあり方には共感を寄せている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、308–311頁(コマ157–158)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日