源氏物語 第15帖 蓬生(3)
叔母の企み
乳母子の侍従は、末摘花の叔母のもとにも通うようになる。叔母は受領の妻に落ちぶれた人で、かつて姉(末摘花の母)に見下されたことを根に持ち、末摘花を自分の娘たちの侍女にしようと企む。夫が大宰大弐となって筑紫へ下ることになり、叔母は末摘花を誘うが、末摘花は応じない。叔母は、源氏も見捨てたと悪態をつく。

- 1侍從侍從じじゅうなどなどなどいひいひいいししし御御おんめのとごめのとごめのとごのみのみのみこそこそこそ年年としごろごろごろあくがれあくがれあくがれ出出いでででぬぬぬものものものにてにてにてさぶらひさぶらひさぶらいつれつれつれどどど、、、通通かよひひい參參まいりりりししし齋院齋院さいいんうせうせうせ給給たまひひいなどなどなどしししててていといといと堪堪たへへえ難難がたくくく心心こころぼそきぼそきぼそきににに、、、
- 2このこのこの姫君姫君ひめぎみののの母母はは北北きたののの方方かたのののはらからはらからはらから世世よにににおちぶれおちぶれおちぶれてててずずず領領りょうののの北北きたののの方方かたににになりなりなり給給たまへへえるるるありありありけりけりけり。。。むすめむすめむすめどもどもどもかしづきかしづきかしずきてててよろしきよろしきよろしきわがうどわがうどわごうどゞゞどもももゝゝもむげにむげにむげに知知しらららぬぬぬ所所ところよりよりよりははは親親おやどもどもどもゝゝもまうでまうでもうで通通かよひひいしししをををととと思思おもひひいてててときどきときどきときどき通通かよふふう。。。
- 3このこのこの姫君姫君ひめぎみはははかくかくかく人人ひとうときうときうとき御御おん癖癖くせなれなれなればばば睦睦むつましくしくしくもももいひいひいい通通かよひひい給給たまははわずずず、、、「「「おのれおのれおのれをををばばばおとしめおとしめおとしめ給給たまひひいててておもてぶせおもてぶせおもてぶせにににおぼしおぼしおぼしたりたりたりしかしかしかばばば姫君姫君ひめぎみののの御御おん有樣有樣ありさまののの心苦心苦こころぐるしげしげしげなるなるなるももも見見みとぶらひとぶらひとぶらい聞聞きこえええずずず」」」などなどなどなまなまなまにくげにくげにくげなるなるなる詞詞ことばどもどもども言言いひひい聞聞きかせかせかせつゝつゝつつ時々時々ときどき聞聞きこえええけりけりけり。。。
- 4もとよりもとよりもとよりありつきありつきありつきたるたるたるさやうさやうさようのののなみなみなみなみなみなみののの人人ひとははは、、、なかなかなかなかなかなかよきよきよき人人ひとのののまねまねまねににに心心こころをををつくろひつくろひつくろい思思おもひひいあがるあがるあがるももも多多おおかるかるかるををを、、、やんごとなきやんごとなきやんごとなき筋筋すじながらながらながらもももかうかうこうまでまでまでおつおつおつべきべきべきすくせすくせすくせありありありけれけれければばばにににややや、、、心心こころ少少すこしししなほなほしきなほなほしきなおなおしき御御おんをばをばをばにににぞぞぞありありありけるけるける。。。
- 5わがわがわがかくかくかくおとりおとりおとりのののさまさまさまにてにてにてあなづらはしくあなづらはしくあなずらわしく思思おもははわれれれたりたりたりしししををを、、、いかでいかでいかでかかかかゝるかゝるかかる世世よののの末末すえにににこのこのこの君君きみををを我我わがががむすめむすめむすめどもどもどものののつかひつかひつかい人人ひとににになしなしなしてててしがしがしがななな、、、心心こころばせばせばせなどなどなどのののふるびふるびふるびたるたるたるかたかたかたこそこそこそあれあれあれ、、、いといといとうしろやすきうしろやすきうしろやすきうしろみうしろみうしろみならならならむむんととと思思おもひひいててて、、、「「「時々時々ときどきこゝこゝここににに渡渡わたらららせせせ給給たまひひいててて御御おん琴琴ことのののねねねももも承承うけたまはらはらわらまほしまほしまほしがるがるがる人人ひとなむなむなん侍侍はべるるる」」」ととと聞聞きこえええけりけりけり。。。
- 6このこのこの侍從侍從じじゅうももも常常つねににに言言いひひいもよほせもよほせもよおせどどど、、、人人ひとにににいどむいどむいどむ心心こころにににはははあらあらあらででで唯唯ただこちたきこちたきこちたき御御おん物物ものづゝみづゝみずつみなれなれなればばば、、、さささもももむつびむつびむつび給給たまははわぬぬぬをををねたしねたしねたしとととなむなむなん思思おもひひいけるけるける。。。
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現代語訳
侍従などといった御乳母子だけは、長年お側を離れずにお仕えしていたが、掛け持ちで仕えていた斎院がお亡くなりになったりして、たいそう堪えがたく心細いうえに、この姫君(末摘花)の母北の方の姉妹で、世に落ちぶれて受領の北の方になっていらっしゃる方がいた。娘たちを大切に育てて、ちょうどよい若い女房たちも、まったく知らない所よりは、親たちも出入りしていた所だからと思って、侍従は時々通う。
この姫君は、このように人づきあいの悪いご性分なので、叔母とも親しくお付き合いなさらない。叔母は「私を見下しなさって、恥だとお思いになっていたので、姫君のご様子がお気の毒なのも、お見舞いいたしません」などと、何となく憎らしげな言葉を侍従に言い聞かせながら、時々お便りを差し上げていた。
もともとそういう身分に生まれついた並の人は、かえって身分の高い人のまねをして心を取り繕い、気位を高く持つ者も多いのに、この叔母は高貴な血筋ながら、こうまで落ちぶれる運命だったからだろうか、心が少し下品な叔母君であった。自分がこのように劣った身分で軽んじられていたのを、何とかしてこのような落ちぶれた世に、この姫君を自分の娘たちの召使いにしたいものだ、気立てなどは古風なところがあるけれど、たいそう安心できる世話役になるだろうと思って、「時々こちらにおいでになって、お琴の音も聞きたがっている者がおります」と申し上げた。
この侍従もいつもお勧めするけれど、末摘花は人と張り合う気持ちからではなく、ただひどい人見知りなので、そうも親しくなさらないのを、叔母は憎らしいと思っていた。
そうこうするうちに、その家の主人(叔母の夫)が大宰大弐になった。娘たちをしかるべく縁づけて、任地に下ろうとする。叔母は、この姫君をなおも誘おうという気持ちが強くて、「遠くこうして下ろうとするにつけて、心細いご様子が、いつもお見舞いしているわけではないけれど、近くにいて頼りになっていた間はともかく、これからはたいそうお気の毒で心配です」などと、うまく言いつくろうのを、
末摘花はまったくお聞き入れにならないので、叔母は「まあ憎らしい、大げさなこと。ご自分一人で気位を高くお持ちになっても、あんな藪原に年月を過ごしていらっしゃる人を、大将殿も大切にはお思い申し上げなさらないでしょう」などと、恨んでのろうのだった。
意訳
末摘花の乳母子の侍従は、生活のために叔母の家にも通うようになる。叔母は受領の妻に落ちぶれた人で、昔、末摘花の母に見下されたことを恨み、末摘花を自分の娘たちの侍女にしようと企む。
夫が大宰大弐となって筑紫へ下ることになり、叔母は末摘花を一緒に下ろうと誘う。末摘花が応じないので、叔母は、源氏も見捨てたと悪態をつく。
語釈・文法注
- 大貳
- 大宰大弐。九州を治める大宰府の次官。大宰帥(そち)は親王が名目上任じられることが多く、大弐が実質的な長官であった。収入の多い官職とされた。
文法
- 願望の「てしがな」(つかひ人になしてしがな)
- 「召使いにしたいものだ」。
- 打消推量の「じ」(思ひ聞え給はじ)
- 「お思い申し上げなさらないだろう」。
解説
叔母は、高貴な血筋に生まれながら受領の妻に落ちぶれた女性で、末摘花の母に見下された恨みから、末摘花を召使いにしようとする。物語は、身分の上下と人の品性が必ずしも一致しないことを、皮肉を込めて描いている。
受領層は経済力を持ち、没落した皇族よりも豊かな暮らしを送っていた。叔母の企みは、平安時代中期の社会の変化を映し出している。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、308–309頁(コマ157)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日