古典ライブラリー

源氏物語 第14帖 澪標(13)

御息所の死と斎宮

登場人物:光源氏・秋好中宮・六条御息所

七、八日の後、六条御息所は亡くなる。源氏は葬儀を取り仕切り、精進して喪に籠もる。雪やみぞれの降る日、源氏は斎宮に弔問の歌を送り、斎宮も控えめな返歌をする。源氏は斎宮に心を引かれながらも、御息所の遺言を守って親代わりに世話をし、いずれ冷泉帝に入内させようと考える。母を失った斎宮は、寂しい邸で泣き暮らす。

雪とみぞれの降り乱れる日、喪に服した六条の邸で、前斎宮が鈍色の紙に返歌をしたためている場面(AI生成)
雪とみぞれの降り乱れる日、喪に服した六条の邸で、前斎宮が鈍色の紙に返歌をしたためている場面
  1. 1御おん御おんおんとぶらひとぶらひとぶらい今いま今いまいま少すこ少すこすこしししたちたちたちまさりまさりまさりてててしばしばしばしばしばしば聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまふふう。。。七八日なぬかやうか七八日なぬかやうかなぬかようかありありありてててうせうせうせ給たま給たまたまひひいにににけりけりけり。。。あへなうあへなうあえのうおぼさるゝおぼさるゝおぼさるるににに世よ世よよもももいといといとはかなくはかなくはかなくててて物もの物ものもの心こころ心こころこころぼそうぼそうぼそう思おぼ思おぼおぼささされれれてててうちうちうちへへへももも參まゐ參まゐまいりりり給たま給たまたまははわずずず。。。
  2. 2とかくとかくとかくののの御おん御おんおん事こと事ことことなどなどなどおきておきておきてさせさせさせ給たま給たまたまふふう又また又またまたたのもしきたのもしきたのもしき人ひと人ひとひともももことことことにににおはせおはせおわせざりざりざりけりけりけり。。。ふるきふるきふるき齋宮さいぐう齋宮さいぐうさいぐうのののみやづかさみやづかさみやずかさなどなどなど仕つか仕つかつこうううまつりまつりまつり馴な馴ななれれれたるたるたるぞぞぞ僅わづか僅わづかわずかににに事こと事ことことどもどもども定さだ定さださだめめめけるけるける。。。御おん御おんおんみづからみづからみずからももも渡わた渡わたわたりりり給たま給たまたまへへえりりり。。。
  3. 3宮みや宮みやみやににに御おん御おんおんせうそこせうそこしょうそこ聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまふふう。。。「「「何事なにごと何事なにごとなにごともももおぼえおぼえおぼえ侍はべ侍はべはべらららでででなむなむなん」」」ととと女別當によべつたう女別當によべつたうにょべっとうしししててて聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまへへえりりり。。。「「「聞きこ聞きこきこえええさせさせさせのののたまひたまひたまい置お置おおきききしししことことことどもどもども侍はべ侍はべはべりりりしししををを、、、今いま今いまいまははは隔へだて隔へだてへだてなきなきなきさまさまさまにににおぼさおぼさおぼされれればばば嬉うれ嬉うれうれしくしくしくなむなむなん」」」ととと聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまひひいててて、、、人々びと人々びとびとめしめしめし出い出いいでででゝゝてあるあるあるべきべきべき事こと事ことことどもどもども仰おほ仰おほおおせせせ給たま給たまたまふふう。。。
  4. 4たのもしげたのもしげたのもしげににに年比としごろ年比としごろとしごろののの御心こころ御心こころこころばへばへばえとりとりとりかへしかへしかえしつつつべうべうびょう見み見みみゆゆゆ。。。いといといといかめしういかめしういかめしゅう殿との殿とのとのののの人々びと人々びとびと數かず數かずかずもももなうなうのう仕つか仕つかつこうううまつらまつらまつらせせせ給たま給たまたまへへえりりり。。。あはれあはれあわれにににうちうちうちながめながめながめつゝつゝつつ御おん御おんおんにてにてにてみすみすみすおろしおろしおろし込こ込ここめめめててて行おこな行おこなおこなははわせせせ給たま給たまたまふふう。。。
  5. 5宮みや宮みやみやにににははは常つね常つねつねにににとぶらひとぶらひとぶらい聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまふふう。。。やうやうやうやうようよう御心みこころ御心みこころみこころしづまりしづまりしずまり給たま給たまたまひひいてててはははみづからみづからみずからももも御おん御おんおん返かへ返かへかえりりりなどなどなど聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまふふう。。。つゝましうつゝましうつつましゅうおぼしおぼしおぼしたれたれたれどどど御おん御おんおんめのとめのとめのとなどなどなどかたじけなしかたじけなしかたじけなしとととそゝのかしそゝのかしそそのかし聞きこ聞きこきこゆるゆるゆるなりなりなりけりけりけり。。。
  6. 6雪ゆき雪ゆきゆきみぞれみぞれみぞれかきかきかき亂みだ亂みだみだれれれ荒あ荒ああるゝるゝるる日ひ日ひひにににいかにいかにいかに宮みや宮みやみやののの御おん御おんおんありさまありさまありさまかすかかすかかすかににに眺なが眺ながながめめめ給たま給たまたまふふうらむらむらんととと思おも思おもおもひひいやりやりやり聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまひひいててて、、、御おん御おんおん使つかひ使つかひつかい奉たてまつ奉たてまつたてまつれれれ給たま給たまたまへへえりりり。。。「「「只今ただいま只今ただいまただいまののの空そら空そらそらをををいかにいかにいかに御覽ごらん御覽ごらんごらんずずずらむらむらん。。。降ふ降ふふりりりみだれみだれみだれひまひまひまなきなきなき空そら空そらそらににになきなきなき人ひと人ひとひとのののあまがけるあまがけるあまがけるらむらむらん宿やど宿やどやどぞぞぞかなしきかなしきかなしき」」」。。。
  7. 7空色そらいろ空色そらいろそらいろののの紙かみ紙かみかみのののくもらはしきくもらはしきくもらわしきににに書か書かかいいい給たま給たまたまへへえりりり。。。わかきわかきわかき人ひと人ひとひとののの御おん御おんおん目め目めめにににとゞまるとゞまるとどまるばかりばかりばかりととと心こころ心こころこころしししてててつくろひつくろひつくろい給たま給たまたまへへえるるる、、、いといといと目め目めめもももあやあやあやなりなりなり。。。
  8. 8宮みや宮みやみやはははいといといと聞きこ聞きこきこえええにくゝにくゝにくくししし給たま給たまたまへへえどどどこれかれこれかれこれかれ人ひと人ひとひとづてづてずてにてにてにてびんなきびんなきびんなきことことことゝゝと責せ責せせめめめ聞きこ聞きこきこゆれゆれゆればばば、、、にびいろにびいろにびいろののの紙かみ紙かみかみのののいといといとかうばしうかうばしうこうばしゅうえんえんえんなるなるなるににに墨すみ墨すみすみつぎつぎつぎなどなどなどまぎらはしまぎらはしまぎらわしててて、、、「「「消き消ききえええがてがてがてにににふるふるふるぞぞぞ悲かな悲かなかなしきしきしきかきかきかきくらしくらしくらし我わ我わわががが身み身みみそれそれそれととともももおもほえおもほえおもおえぬぬぬよよよににに」」」。。。
  9. 9つゝましげつゝましげつつましげなるなるなる書か書かかきききざまざまざまにてにてにて、、、いといといとおほどかおほどかおおどかににに御おん御おんおん手て手ててすぐれすぐれすぐれてててはははあらあらあらねねねどどどらうたげらうたげろうたげにににあてはかあてはかあてはかなるなるなる筋すぢ筋すぢすじににに見み見みみゆゆゆ。。。くだりくだりくだり給たま給たまたまひひいししし程ほど程ほどほどよりよりよりなほなほなおあかずあかずあかずおぼしおぼしおぼしたりたりたりしししををを、、、今いま今いまいまははは心こころ心こころこころにににかけかけかけてててともかくもともかくもともかくも聞きこ聞きこきこえええよりよりよりぬぬぬべきべきべきぞぞぞかしかしかしとととおぼすおぼすおぼすにににははは例れい例れいれいのののひきひきひきかへしかへしかえしいとほしくいとほしくいとおしくこそこそこそ。。。
  10. 10故こ故ここみやすみやすみやす所どころ所どころどころのののいといといと後うしろ後うしろうしろめたげめたげめたげににに心こころ心こころこころおきおきおき給たま給たまたまひひいしししををを、、、ことわりことわりことわりなれなれなれどどど世よ世よよののの中なか中なかなかののの人ひと人ひとひともももさやうさやうさようににに思おも思おもおもひひいよりよりよりぬぬぬべきべきべき事こと事ことことなるなるなるををを、、、ひきひきひきたがへたがへたがえ心こころ心こころこころ淸きよ淸きよきよくくくてててあつかひあつかひあつかい聞きこ聞きこきこえええむむん、、、うへうへうえののの今いま今いまいま少すこ少すこすこししし物もの物ものものおぼしおぼしおぼし知し知ししるるる齡よはひ齡よはひよわいにににならならならせせせ給たま給たまたまひひいなななばばばうちずみうちずみうちずみせせせさせさせさせ奉たてまつ奉たてまつたてまつりりりてててさうざうしきさうざうしきそうぞうしきにににかしづきかしづきかしずきぐさぐさぐさにににこそこそこそとととおぼしおぼしおぼしなるなるなる。。。
  11. 11いといといとまめやかまめやかまめやかにににねんごろねんごろねんごろににに聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまひひいてててさるべきさるべきさるべき折々をりをり折々をりをりおりおりははは渡わた渡わたわたりりりなどなどなどししし給たま給たまたまふふう。。。「「「かたじけなくかたじけなくかたじけなくともともとも昔むかし昔むかしむかしののの御おん御おんおん名殘なごり名殘なごりなごりにににおぼしおぼしおぼしなずらへなずらへなずらえてててけどほからけどほからけどおからずずずもてなさもてなさもてなさせせせ給たま給たまたまははわゞゞばなむなむなん本意ほい本意ほいほいなるなるなる心地ここち心地ここちここちすすすべきべきべき」」」などなどなど聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまへへえどどどわりなくわりなくわりなく物もの物ものものはぢはぢはじをををししし給たま給たまたまふふう。。。
  12. 12おくまりおくまりおくまりたるたるたる人ひと人ひとひとざまざまざまにてにてにてほのかほのかほのかにににももも御おん御おんおん聲こゑ聲こゑこえなどなどなど聞き聞ききかかかせせせ奉たてまつ奉たてまつたてまつらららむむんはははいといといと世よ世よよににになくなくなくめづらかめづらかめずらかなるなるなることことことゝゝとおぼしおぼしおぼしたれたれたればばば、、、人々びと人々びとびとももも聞きこ聞きこきこえええわづらひわづらひわずらいてててかゝるかゝるかかる御おん御おんおん心こころ心こころこころざまざまざまををを憂うれ憂うれうれひひい聞きこ聞きこきこえええあへあへあえりりり。。。
  13. 13女別當によべつたう女別當によべつたうにょべっとう內侍ないし內侍ないしないしなどなどなどいふいふいう人々びと人々びとびと、、、あるあるあるははは離はな離はなはなれれれ奉たてまつ奉たてまつたてまつらららぬぬぬわかんどほりわかんどほりわかんどおりなどなどなどにてにてにて心こころ心こころこころばせばせばせあるあるある人々びと人々びとびと多おほ多おほおおかるかるかるべしべしべし。。。このこのこの人ひと人ひとひと知し知ししれれれずずず思おも思おもおもふふう方かた方かたかたのののまじらひまじらひまじらいをををせせせさせさせさせ奉たてまつ奉たてまつたてまつらららむむんににに、、、人ひと人ひとひとににに劣おと劣おとおとりりり給たま給たまたまふふうまじかまじかまじかめりめりめり。。。
  14. 14いかでいかでいかでさやかさやかさやかににに御おん御おんおんかたちかたちかたちををを見み見みみてててしがしがしがなななとととおぼすおぼすおぼすもももうちうちうちとくとくとくべきべきべき御おん御おんおん親心おやごころ親心おやごころおやごころにににはははあらあらあらずずずやややありありありけむけむけん。。。我わ我わわががが御心みこころ御心みこころみこころももも定さだ定さださだめめめ難がた難がたがたけれけれければばばかくかくかく思おも思おもおもふふうととといふいふいうことことことももも人ひと人ひとひとにににももも漏もら漏もらもらししし給たま給たまたまははわずずず。。。御おん御おんおんわざわざわざなどなどなどののの御おん御おんおん事こと事ことこともももとりわきとりわきとりわきてててせせせさせさせさせ給たま給たまたまへへえばばばありがたきありがたきありがたき御心みこころ御心みこころみこころををを宮人みやびと宮人みやびとみやびとももも喜よろこ喜よろこよろこびびびあへあへあえりりり。。。
  15. 15はかなくはかなくはかなく過す過すすぐるぐるぐる月日つきひ月日つきひつきひにににそへそへそえててていとゞいとゞいとどさびしくさびしくさびしく心こころ心こころこころぼそきぼそきぼそき事こと事ことことのみのみのみまさるまさるまさるににに、、、侍さぶら侍さぶらさぶらふふう人々びと人々びとびともももやうやうやうやうようようあかれあかれあかれゆきゆきゆきなどなどなどしししてててしもつしもつしもつ方かた方かたかたののの京極きやうごく京極きやうごくきょうごくわたりわたりわたりなれなれなればばば人ひと人ひとひとげげげ遠とほ遠とほとおくくく山寺やまでら山寺やまでらやまでらののの入相いりあひ入相いりあひいりあいののの聲々こゑごゑ聲々こゑごゑこえごえにににそへそへそえてててもももねねねなきなきなきがちがちがちにてにてにてぞぞぞ過す過すすぐしぐしぐし給たま給たまたまふふう。。。
  16. 16同おな同おなおなじきじきじき御おん御おんおん親おや親おやおやととと聞きこ聞きこきこえええししし中なか中なかなかにににももも片時かたとき片時かたときかたときのののまままももも立た立たたちちち離はな離はなはなれれれ奉たてまつ奉たてまつたてまつりりり給たま給たまたまははわでででならはしならはしならわし奉たてまつ奉たてまつたてまつりりり給たま給たまたまひひいててて、、、齋宮さいぐう齋宮さいぐうさいぐうにににももも親おや親おやおやそひそひそいてててくだりくだりくだり給たま給たまたまふふうことことことははは例れい例れいれいなきなきなきことことことなるなるなるををを、、、あながちあながちあながちににに誘さそ誘さそさそひひい聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまひひいしししみこゝろみこゝろみこころににに、、、限かぎり限かぎりかぎりあるあるある道みち道みちみちにてにてにてはははたぐひたぐひたぐい聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまははわずずずなりなりなりにににしししをををひるまひるまひるまなうなうのうおぼしおぼしおぼし歎なげ歎なげなげきききたりたりたり。。。
  17. 17侍さぶら侍さぶらさぶらふふう人々びと人々びとびとにににつけつけつけててて心こころ心こころこころかけかけかけ聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまふふう人ひと人ひとひとたかきたかきたかきいやしきいやしきいやしきもももあまたあまたあまたありありあり。。。されどされどされどおとゞおとゞおとどののの御おん御おんおんめのとめのとめのとたちたちたちににに「「「心こころ心こころこころににに任まか任まかまかせせせたるたるたることことこと引ひ引ひひききき出い出いいししし仕つか仕つかつこうううまつるまつるまつるななな」」」などなどなど親おや親おやおやがりがりがり申まう申まうもうししし給たま給たまたまへへえばばば、、、いといといと耻はづか耻はづかはずかしきしきしき御おん御おんおんありさまありさまありさまにににびんなきびんなきびんなき事こと事ことこと聞きこ聞きこきこしししめしめしめしつけつけつけられられられじじじととと言い言いいひひい思おも思おもおもひひいつゝつゝつつはかなきはかなきはかなきことことことのののなさけなさけなさけももも更さら更さらさらににに作つく作つくつくらららずずず。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

源氏はお見舞いを今少し増やして、たびたび申し上げなさる。七、八日たって、御息所は亡くなってしまった。源氏はあっけなくお思いになるにつけても、世の中もたいそうはかなく、何となく心細くお思いになって、宮中へも参内なさらない。葬儀のことなどを指図なさる。ほかに頼りになる人も特にいらっしゃらなかった。昔の斎宮の宮司などで、お仕えし慣れた者が、わずかに事を取り決めていた。源氏ご自身もお出向きになった。

斎宮にお悔やみのお手紙を申し上げなさる。「何事もわかりませんで」と、女別当を通して申し上げなさった。源氏は「お母上に申し上げ、またおっしゃり置かれたこともございましたので、今は隔てのないようにお思いくださればうれしく存じます」と申し上げなさって、人々を呼び出して、しかるべきことをお命じになる。頼もしげで、長年の冷たかったお心を取り返すほどに見える。たいそう盛大に、源氏の邸の人々を数知れずお仕えさせなさった。源氏はしみじみと物思いに沈みながら、精進して御簾を下ろして籠もり、勤行をおさせになる。

斎宮にはいつもお見舞い申し上げなさる。だんだんお心が落ち着きなさってからは、ご自身でもご返事などを申し上げなさる。気がひけるとお思いになっているけれど、御乳母などが、畏れ多いことですとお勧め申し上げるのであった。雪やみぞれが降り乱れて荒れる日に、どんなに斎宮のご様子は心細く物思いにふけっていらっしゃるだろうと思いやり申し上げなさって、お使いを差し上げなさった。「ただ今の空をどのようにご覧になっていますか。雪やみぞれが絶え間なく降り乱れる空に、亡き人の魂が天翔っているだろうこの宿が悲しく思われます」。

空色の紙の、曇ったような色のものにお書きになっていた。若い人のお目にとまるほどにと、気を配って整えなさったのは、たいそうまぶしいほどである。斎宮はたいそうお返事しにくくお思いになるけれど、誰も彼もが人づてのお返事では失礼ですとお責め申し上げるので、鈍色の紙で、たいそう香りのよい優美なものに、墨つぎなども目立たないようにして、「消えそうで消えずに生き長らえているのが悲しいことです。悲しみに目の前が暗くなって、我が身が自分とも思われないこの世で」。

控えめな書きぶりで、たいそうおっとりとして、ご筆跡はすぐれてはいないけれど、かわいらしく上品な筆づかいに見える。源氏は、斎宮が伊勢にお下りになった時から、やはり心残りにお思いになっていたのを、今は思いのままに言い寄ってもよいのだとお思いになるにつけては、例によって思い返して、気の毒に思われる。亡き御息所が、たいそう気がかりそうに心配していらっしゃったのを、もっともなことだが、世間の人もそのように推量するに違いないことなのだから、それとは逆に、清い心でお世話申し上げよう、帝がもう少し物事がおわかりになる年齢におなりになったら、入内させ申し上げて、子のない寂しさの慰めに大切にお育てしようとお思いになる。

たいそう誠実に、心をこめて申し上げなさって、しかるべき折々にはお訪ねなどなさる。「畏れ多いことですが、亡き母上の名残と思って、親しくお付き合いくだされば、本意がかなった気持ちがすることでしょう」などと申し上げなさるけれど、斎宮はむやみに恥ずかしがりなさる。奥ゆかしいご性格で、ほのかにでもお声などをお聞かせ申し上げることは、たいそうとんでもない珍しいことだとお思いになっているので、女房たちも申し上げあぐねて、このようなご気性を気がかりに申し上げ合っている。

女別当や内侍などという人々、あるいはお離れ申し上げない皇族の血を引く人などで、心配りのある人々が多いのだろう。源氏がひそかに考えている宮仕えをおさせ申し上げるにしても、ほかの人に劣りなさることはないだろう。どうにかしてはっきりとご容貌を見たいものだとお思いになるのも、すっかり打ち解けた親心ではなかったのだろうか。ご自身のお心も決めかねているので、このように考えているということも人にもお漏らしにならない。御法事などのこともとりわけ盛大におさせになるので、ありがたいお心を宮の人々も喜び合っている。

はかなく過ぎていく月日につれて、いっそう寂しく心細いことばかりがまさるうえに、お仕えする人々もしだいに散り散りに去っていったりして、下京の京極のあたりなので、人の気配も遠く、山寺の入相の鐘の音につけても、声をあげて泣いてばかりお過ごしになる。同じ親と申し上げる中でも、片時の間もお離れにならずにお慣れになっていて、斎宮に親が付き添って伊勢に下ることは例のないことなのに、無理にお誘い申し上げなさったお心なのに、限りある死出の道にはご一緒申し上げなさらずに終わったことを、涙の乾く間もなくお嘆きになっていた。

お仕えする女房たちを通して、斎宮に思いをかけ申し上げなさる人は、身分の高い人も低い人も大勢いる。けれども源氏の大臣が、御乳母たちに「勝手なことをしでかしてお仕えするな」などと親らしく申し上げなさるので、たいそう気恥ずかしいご身分の方に、不都合なことをお聞きつけられまいと言い合い思い合って、ちょっとした恋の取り次ぎもまったくしない。

意訳

六条御息所は亡くなり、源氏は葬儀を取り仕切って喪に籠もる。源氏は斎宮に弔問の歌を送り、斎宮も控えめな返歌をする。源氏は斎宮に心を引かれながらも、御息所の遺言を守って清い心で世話をし、いずれ冷泉帝に入内させようと考える。

母を失った斎宮は、下京の寂しい邸で泣き暮らす。斎宮に思いを寄せる男たちも多いが、源氏が乳母たちに厳しく言いつけているので、恋の取り次ぎをする者はいない。

語釈・文法注

御さうじ
御精進(ごそうじ)。喪に服して肉食などを断ち、身を清めて籠もること。

文法

推量の「らむ」(あまがけるらむ宿)
「亡き人の魂が天翔っているだろう宿」。目の前にないことを推量する。
疑問の「や…けむ」(親心にはあらずやありけむ)
「親心ではなかったのだろうか」。語り手が源氏の心中を推し量る草子地。

和歌

降りみだれひまなき空になき人のあまがけるらむ宿ぞかなしき

詠者
光源氏
状況
雪やみぞれの降る日に、斎宮に送った弔問の歌。雪やみぞれが絶え間なく降り乱れる空に、亡き人の魂が天翔っているだろうこの宿が悲しく思われます。

消えがてにふるぞ悲しきかきくらし我が身それともおもほえぬよに

詠者
秋好中宮
状況
源氏への返歌。消えそうで消えずに生き長らえているのが悲しいことです。悲しみに目の前が暗くなって、我が身が自分とも思われないこの世で。

修辞

掛詞
「ふる」に「降る」と「経る(生き長らえる)」、「よ」に「世」と「夜」をかける。「消え」「ふる」「かきくらし」は雪の縁語。

解説

六条御息所の死によって、物語の前半を彩った激しい恋の物語が幕を閉じる。源氏は御息所の遺言を守り、斎宮を養女として後見する立場を選ぶ。

それでも源氏は斎宮の姿を見たいと思い、語り手はそれを「親心にはあらずやありけむ」と皮肉を込めて評している。源氏の心の揺れは、のちに斎宮が冷泉帝に入内した後も続いていく。

関連

出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、300–303頁(コマ153–154)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日