源氏物語 第14帖 澪標(3)
二条東院の造営と明石の姫君誕生
源氏は二条院の東の院を改築し、花散里など頼りない人々を住まわせようと考える。三月、明石から姫君誕生の知らせが届く。源氏は、子は三人、帝と后と太政大臣になるという宿曜の予言を思い出し、冷泉帝の即位によってそれが当たりつつあると知る。姫君は后になる宿命と考えた源氏は、母子を京に迎えようと、東の院の造営を急がせる。

- 1二條院二條院にじょういんにににももも同同おなじじじごとごとごとまちまちまち聞聞きこえええけるけるける人人ひとをををあはれあはれあわれなるなるなるものものものにににおぼしおぼしおぼしててて年比年比としごろののの胸胸むねあくあくあくばかりばかりばかりととと思思おぼせせせばばば、、、中將中將ちゅうじょう中務中務なかつかさやうやうようののの人々人々びとにににはははほどほどほどほどほどほどにににつけつけつけつゝつゝつつ情情なさけををを見見みえええ給給たまふふうににに、、、御御おんいとまいとまいとまなくなくなくててて外外ほかありきありきありきもももししし給給たまははわずずず、、、
- 2二條院二條院にじょういんののの東東ひんがしなるなるなる宮宮みや、、、院院いんののの御御おんなりなりなりしししををを二二になくなくなくあらためあらためあらため作作つくらららせせせ給給たまふふう。。。花散里花散里はなちるさとなどなどなどやうやうようののの心苦心苦こころぐるしきしきしき人々人々びと住住すままませせせむむんなどなどなどおぼしおぼしおぼしあてゝあてゝあててつくろはつくろはつくろわせせせ給給たまふふう。。。
- 3まことまことまことやややかのかのかの明石明石あかしににに心苦心苦こころぐるしげしげしげなりなりなりしししことことことはははいかにいかにいかにとととおぼしおぼしおぼし忘忘わするゝるゝるる時時ときなけれなけれなけれどどど、、、おほやけおほやけおおやけわたくしわたくしわたくしいそがしきいそがしきいそがしきまぎれまぎれまぎれにににえええおぼすおぼすおぼすまゝまゝままにににもももとぶらひとぶらひとぶらい給給たまははわざりざりざりけりけりけり。。。やよひやよひやよいついたちついたちついたちのののほどほどほど、、、このこのこの比比ころやややとととおぼしおぼしおぼしやるやるやるににに人人ひと知知しれれれずずずあはれあはれあわれにてにてにて御御おん使使つかいありありあり。。。
- 4とくとくとく歸歸かえりりり參參まいりりりててて「「「十六日十六日じゅうろくにちににになむなむなん女女おんなにてにてにてたひらかたひらかたいらかにににものものものししし給給たまふふう」」」ととと告告つげげげ聞聞きこゆゆゆ。。。珍珍めずらしきしきしきさまさまさまにてにてにてさへさへさへあああなるなるなるをををおぼすおぼすおぼすにににおろかおろかおろかならならならずずず。。。などなどなどててて京京きょうににに迎迎むかへへえてててかゝるかゝるかかる事事ことをををもももせせせさせさせさせざりざりざりけむけむけんととと口惜口惜くちおしうしうしゅうおぼさおぼさおぼさるるる。。。
- 5にににみこみこみこ三人三人みたり、、、みかどみかどみかど、、、きさききさききさき必必かならずずず並並ならびびびててて生生うまれれれ給給たまべしべしべし、、、中中なかのののおとりおとりおとりははは太政大臣太政大臣だじょうだいじんにてにてにて位位くらいををを極極きわむむむべしべしべしととと考考かんがへへえ申申もうしししたりたりたりししし。。。中中なかのののおとりおとりおとりばらばらばらににに女女おんなははは出出いでででききき給給たまふふうべしべしべしとととありありありししし事事こと、、、さしさしさしてててかなふかなふかなうなめりなめりなめり。。。
- 6大方大方おおかたかみかみかみなきなきなき位位くらいにににのぼりのぼりのぼり世世よをををまつりごちまつりごちまつりごち給給たまふふうべきべきべき事事こと、、、さばかりさばかりさばかり賢賢かしこかりかりかりしししあまたあまたあまたののの相人相人そうにんどもどもどもののの聞聞きこえええ集集あつめめめたるたるたるははは、、、年比年比としごろははは世世よのののわづらはしさわづらはしさわずらわしさににに皆皆みなおぼしおぼしおぼし消消けちちちつるつるつるををを、、、當代當代とうだいのののかくかくかく位位くらいにににかなひかなひかない給給たまひひいぬるぬるぬる事事ことををを思思おもひひいのののごとごとごと嬉嬉うれしししとととおぼすおぼすおぼす。。。
- 7自自みずからららはははもてもてもてはなれはなれはなれ給給たまへへえるるるすぢすぢすじははは更更さらにににあるあるあるまじきまじきまじきことことことゝゝとおぼすおぼすおぼす。。。あまたあまたあまたのののみこみこみこ達達たちのののなかなかなかにににすぐれすぐれすぐれてててらうたきらうたきろうたきものものものにににおぼしおぼしおぼしたりたりたりしかしかしかどどど、、、たゞたゞただ人人びとにににおぼしおぼしおぼしおきておきておきてけるけるける御心御心みこころををを思思おもふふうにににすくせすくせすくせとほかりとほかりとおかりけりけりけり。。。
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- 9さるさるさるにてにてにてはははかしこきかしこきかしこきすぢすぢすじにににもももなるなるなるべきべきべき人人ひとのののあやしきあやしきあやしき世界世界せかいににに生生うまれれれたらたらたらむむんはははいとほしういとほしういとおしゅう忝忝かたじけなくなくなくもももあるあるあるべきべきべきかなかなかな。。。このこのこの程程ほどすぐしすぐしすぐしててて迎迎むかへへえてててむむんとととおぼしおぼしおぼしててて、、、ひんがしひんがしひんがしののの院院いん急急いそぎぎぎ造造つくらららすすすべきべきべきよしよしよし催催もよおししし仰仰おおせせせ給給たまふふう。。。
現代語訳
二条院でも、同じように帰りを待ち申し上げていた人々を、源氏は気の毒なものとお思いになって、長年の胸のつかえが晴れるほどにとお思いになるので、中将や中務などの女房たちには、身分に応じて情愛をお見せになるので、お暇がなくて、外出もなさらない。二条院の東にある宮殿は、故院のご遺産であったのを、またとないほど立派に改築させなさる。花散里などのような気の毒な人々を住まわせようなどとお考えになって、手入れをおさせになる。
そうそう、あの明石で気の毒な様子だったことはどうなったかと、お忘れになる時はないけれど、公私ともに忙しいのにまぎれて、お思いになるままにお見舞いにもなれなかった。三月の初めのころ、もうそろそろ生まれるころかとお思いやりになると、人知れずしみじみとして、お使いをお遣わしになる。使いはすぐに帰参して、「十六日に、女のお子様で、無事にお生まれになりました」とご報告申し上げる。珍しく女の子でさえあるというのをお思いになると、並々ならずうれしい。どうして京に迎えて、お産をさせなかったのだろうと、残念にお思いになる。
宿曜の占いで、「お子は三人、帝と后が必ずそろってお生まれになるだろう。その中の劣った方は太政大臣として位を極めるだろう」と占い申し上げたのだった。「その中の劣った方の腹に、女の子がお生まれになるだろう」とあったことが、まさにかなうようだ。おおよそ、この上ない位に昇って天下の政治をお執りになるだろうということは、あれほど賢かった多くの人相見たちが口をそろえて申し上げていたのを、長年は世の中の煩わしさに、すべて打ち消していらっしゃったが、今上帝(冷泉帝)がこのように位におつきになったことを、思いどおりにうれしいとお思いになる。
ご自身は、帝位から遠く離れた身の上は、まったくありえないことだとお思いになる。故院が大勢の皇子たちの中で、ことにかわいいものとお思いになっていたけれど、臣下にとお決めになったお心を思うと、帝位とは縁が遠かったのだ。今上帝がこうして位にいらっしゃることを、真相として人が知っているわけではないけれど、人相見の言葉はむなしくなかったと、心の中でお思いになった。今、将来の見通しをお考えになると、住吉の神のお導きで、本当にあの人も世に並々でない宿縁があって、ひがんだ親も身分不相応な望みを抱いたのだろうか。
そうであるならば、尊い身分にもなるはずの人が、辺鄙な田舎に生まれたというのは、気の毒で畏れ多いことであるよ。しばらくしてから迎えようとお思いになって、東の院の造営を急ぐようにと、催促してお命じになる。
意訳
源氏は二条院の東の院を改築し、花散里などを住まわせようと考える。三月、明石の君が姫君を産んだという知らせが届く。
源氏は、子は三人、帝と后と太政大臣になるという宿曜の予言を思い出す。冷泉帝の即位でその一つが実現したことを知り、姫君は后になる運命だと考える。源氏は、母子を京に迎えるため、東の院の造営を急がせる。
語釈・文法注
- 御そうぶん
- 御処分。親から子へ譲られた財産。遺産。
- すくえう
- 宿曜。星の運行によって人の運命を占う術。宿曜道。
文法
- 伝聞の「なり」(あなる)
- 「あるという」。「あるなる」の撥音便「あんなる」の撥音を表記しない形。使いの報告によって知ったことを表す。
- 推量の「べし」(並びて生れ給べし)
- 「必ずそろってお生まれになるだろう」。予言の内容を表す。
解説
宿曜の予言は、源氏物語全体の構想を示す重要な場面である。帝(冷泉帝)、后(明石の姫君)、太政大臣(夕霧)という三人の子の運命が予告され、物語はこの予言に沿って進んでいく。
明石の姫君の誕生によって、明石の入道の夢と住吉の神の加護が、源氏の栄華の構想と結びつく。源氏が明石の君を「身分の低い女」としてではなく、后の母として扱おうとし始めるのはここからである。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、284–287頁(コマ145–146)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日