源氏物語 第10帖 賢木(16)
右大臣の訴えと大后の怒り
右大臣は胸にしまっておけず、大后に源氏と朧月夜のことを訴え、源氏が斎院にまで言い寄っているらしいと告げる。大后は激しく怒り、源氏が昔から自分たちを侮り、東宮方に心を寄せていると非難する。右大臣は言い過ぎたと後悔して、内密にしてほしいととりなすが、大后の機嫌は直らない。大后は、これを源氏を失脚させるよい機会だと考えをめぐらす。

- 1おとゞおとゞおとどははは思思おもひひいのののまゝまゝままににに籠籠こめめめたるたるたる所所ところおはせおはせおわせぬぬぬ本本ほんじやうじやうじょうにににいとゞいとゞいとど老老おいののの御御おんひがみひがみひがみさへさへさへ添添そひひいにににたれたれたればばば何事何事なにごとにににかかかははは滯滯とどこおりりり給給たまははわむむん、、、ゆくゆくゆくゆくゆくゆくととと宮宮みやにににももも憂憂うれへへえ聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
- 2「「「かうかうかうかうこうこうののの事事ことなむなむなん侍侍はべるるるをををこのこのこの疊紙疊紙たとうがみははは右大將右大將うだいしょうののの御手御手てなりなりなり、、、昔昔むかしももも心心こころ免免ゆるささされれれてててありありありそめそめそめにににけるけるける事事ことなれなれなれどどど、、、人柄人柄ひとがらににに萬萬よろずののの罪罪つみををを免免ゆるしししてててさてもさてもさても見見みむむんととといひいひいい侍侍はべりりりししし折折おりははは心心こころももも留留とどめめめずずずめざましげめざましげめざましげにににもてなさもてなさもてなされれれにににしかしかしかばばば安安やすからからからずずず思思おもひひい給給たまへへえしかしかしかどどど、、、
- 3さるべきさるべきさるべきにににこそこそこそはははとととててて世世よににに穢穢けがれれれたりたりたりともともともおぼしおぼしおぼし棄棄すつつつまじきまじきまじきをををたのみたのみたのみにてにてにてかくかくかくほいほいほいののの如如ごとくくく奉奉たてまつりりりながらながらながら、、、猶猶なおそのそのそのはゞかりはゞかりはばかりありありありてててうけばりうけばりうけばりたるたるたる女御女御にょうごなどなどなどもももいはいはいわせせせ侍侍はべらららぬぬぬをををだにだにだに飽飽あかかかずずず口惜口惜くちおしうしうしゅう思思おもひひい給給たまふるふるうるににに、、、又又またかゝるかゝるかかることことことさへさへさへ侍侍はべりりりけれけれければばば更更さらにににいといといと心心こころうくうくうくなむなむなん思思おもひひいなりなりなり侍侍はべりりりぬるぬるぬる。。。
- 4男男おとこののの例例れいとととはははいひいひいいながらながらながら大將大將だいしょうもももいといといとけしからけしからけしからぬぬぬ御心御心みこころなりなりなりけりけりけり。。。齋院齋院さいいんをををももも猶猶なお聞聞きこえええ犯犯おかしししつゝつゝつつ忍忍しのびびびににに御御おん文文ふみ通通かよはしはしわしなどなどなどしししててて氣色氣色けしきあるあるあることことことなどなどなど人人ひとののの語語かたりりり侍侍はべりりりしししをををももも、、、
- 5世世よのののためためためのみのみのみにににもももあらあらあらずずず我我わがががためためためにににもももよかるよかるよかるまじきまじきまじき事事ことなれなれなればばば、、、よもよもよもさるさるさる思思おもひひいやりやりやりなきなきなきわざわざわざししし出出いでででられられられじじじとととなむなむなん、、、時時ときのののととと天天あめののの下下したををを靡靡なびかしかしかし給給たまへへえるるるさまさまさまことことことなななめれめれめればばば大將大將だいしょうののの御心御心みこころををを疑疑うたがひひい侍侍はべらららざりざりざりつるつるつる」」」などなどなどのたまふのたまふのたまうににに、、、
- 6宮宮みやはははいとゞしきいとゞしきいとどしき御心御心みこころなれなれなればばばいといといとものしきものしきものしき御御おん氣色氣色けしきにてにてにて「「「帝帝みかどととと聞聞きこゆれゆれゆれどどど昔昔むかしよりよりより皆皆みな人人ひと思思おもひひいおとしおとしおとし聞聞きこえええててて致仕致仕ちじのののおとゞおとゞおとどもももまたまたまたなくなくなくかしづくかしづくかしずくひとつひとつひとつむすめむすめむすめをををののの坊坊ぼうにてにてにておはするおはするおわするにににははは奉奉たてまつらららででで、、、弟弟おとうとののの源氏源氏げんじにてにてにて稚稚おさなきききががが元服元服げんぶくのののそひぶしそひぶしそいぶしにににとりわきとりわきとりわき、、、
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現代語訳
大臣は、思ったままを胸に収めておくところのないご性分で、そのうえ老人のひがみまで加わってしまったので、どうしてためらいなさろうか、すらすらと大后にも訴え申し上げなさる。
「これこれのことがございまして、この懐紙は右大将の筆跡です。昔も、心を許し合って関係が始まったことですが、人柄に免じてすべての罪を許し、それならば婿として世話をしようと申しましたときは、気にもかけず、心外な扱いをされましたので、穏やかでなく思っておりましたが、
そういう宿縁なのだろうと思って、汚れた身であっても、帝がお見捨てにはなるまいと頼みにして、このように当初の望みどおりに入内させ申し上げながら、やはりあの事への遠慮があって、晴れがましく女御などとも呼ばせないでおりますことさえ、物足りず残念に思っておりますのに、またこうしたことまでございましたので、まったく情けない気持ちになってしまいました。
男の常とはいいながら、大将もたいそうけしからぬお心ですね。斎院にもやはり言い寄りながら、こっそりとお手紙を通わせなどして、怪しい様子があることなどを人が話しておりましたのも、世の中のためばかりでなく、自分のためにもよくないことなので、まさかそんな思慮のないことはなさるまいと、時代の有識者として天下をなびかせていらっしゃる様子が格別のようなので、大将のお心を疑っておりませんでした」などとおっしゃると、
大后は、もともと激しいご気性なので、たいそう不機嫌なご様子で、「帝と申し上げても、昔から皆が軽んじ申し上げて、致仕の大臣(左大臣)も、またとなく大切に育てた一人娘を、兄の東宮でいらっしゃった帝には差し上げないで、弟の源氏で幼い者の元服の添い臥しにわざわざ差し出し、
また、この君(朧月夜)をも、宮仕えにと志しておりましたのに、ばかげた有り様になってしまったのを、誰も変だとお思いになったでしょうか。皆があの源氏の方に心を寄せていたようでしたが、その当初の望みに反した様子で、こうして宮仕えしていらっしゃるようですが、
気の毒なので、何とかしてその方面でも人に劣らないように扱い申し上げよう、あれほど憎らしかった人(源氏)の目にも見せてやろうなどと思っておりましたのに、無理に自分の心のひかれる方になびいていらっしゃるのでしょう。
斎院のことは、ましてそうでもあるのでしょう。何事につけても、帝の御ためには安心できないように見えるのは、東宮の御代に心を寄せることが格別な人だから、もっともなことのようです」と、容赦なく言い続けなさるので、大臣はさすがに気の毒で、どうして申し上げてしまったのだろうとお思いになるので、
「まあ、しばらくこのことは漏らさずにおきましょう。帝にも申し上げなさいますな。このように罪がありましても、お見捨てにはなるまいと頼みにして、甘えているのでございましょう。内々に戒めておっしゃっても聞き入れませんなら、その罪は私が引き受けましょう」などと、とりなし申し上げなさるが、特にご機嫌も直らない。
このように大后も同じ邸にいて、すき間もないのに、遠慮するところもなく、あのように入りこんでいらっしゃるらしいのは、特に軽んじ、ばかにしていらっしゃるのだろうとお思いになると、いっそうひどく腹立たしく、この機会に、しかるべき事件を仕組み出すのによい手がかりだと、考えをめぐらしていらっしゃるのだろう。
意訳
右大臣は、源氏と朧月夜のことを胸にしまっておけず、大后に訴える。源氏が斎院にまで言い寄っているらしいことも告げる。
大后は激しく怒り、左大臣が娘を朱雀帝でなく源氏に嫁がせたことや、朧月夜が源氏に心を寄せたことなど、昔からの恨みを並べ立てる。右大臣は言い過ぎたと後悔してとりなすが、大后はこれを源氏を失脚させるよい機会だと考える。
語釈・文法注
- このかみの坊
- 兄の東宮。朱雀帝が東宮だったころをさす。左大臣は娘の葵の上を、東宮ではなく弟の源氏に嫁がせた。
- いうそく
- 有職(ゆうそく)。学識や教養にすぐれ、故実に通じた人。
文法
- 反語の「何事にかは…む」(何事にかは滯り給はむ)
- 「何事にためらいなさろうか、いや、ためらわない」。
- 禁止の「な」(奏せさせ給ふな)
- 「(帝に)申し上げなさいますな」。
解説
賢木の巻は、右大臣と大后の会話で閉じられる。大后の怒りの言葉からは、左大臣家と源氏に対する長年の恨みが噴き出している。葵の上が朱雀帝ではなく源氏に嫁いだこと、朧月夜が源氏に心を寄せたことは、大后にとって屈辱であった。
大后は、この機会に源氏を失脚させようと考える。こうして源氏は、朧月夜との密会という私事を口実に、政治的に追い詰められていく。次の花散里の巻を経て、須磨の巻で源氏は自ら都を離れることになる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、224–225頁(コマ114)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日