源氏物語 第10帖 賢木(15)
朧月夜との密会の露見
朧月夜は瘧病の治療のため右大臣邸に里下がりする。源氏は大后も同じ邸にいる危うさを顧みず、夜な夜な忍んで通う。ある雷雨の明け方、人目が多くて源氏は帰れなくなる。そこへ右大臣が娘を見舞いに入ってきて、源氏の帯と懐紙を見つけ、几帳の中をのぞいて源氏の姿を見てしまう。右大臣は懐紙を持って寝殿へ去り、朧月夜は生きた心地もしない。

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- 2いといといと盛盛さかりににに賑賑にぎはゝしきはゝしきわわしきけはひけはひけわいししし給給たまへへえるるる人人ひとののの少少すこしししうちうちうち惱惱なやみみみててて瘦々瘦々やせやせににになりなりなり給給たまへへえるるる程程ほどいといといとをかしげをかしげおかしげなりなりなり。。。
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- 4おとゞおとゞおとどはたはたはた思思おもひひいかけかけかけ給給たまははわぬぬぬににに、、、雨雨あめ俄俄にわかにににおどろおどろしうおどろおどろしうおどろおどろしゅう降降ふりりりててて神神かみいたういたういとう鳴鳴なりりりさわぐさわぐさわぐ曉曉あかつきににに、、、殿殿とののののきんだちきんだちきんだちみやつかさみやつかさみやつかさなどなどなど立立たちちちさわぎさわぎさわぎててて此方彼方此方彼方こなたかなたののの人目人目ひとめしげくしげくしげく女房女房にょうぼうどもどもどもゝゝもおぢおぢおじ惑惑まどひひいててて近近ちこううう集集つどひひいまゐるまゐるまいるにににいといといとわりなくわりなくわりなく出出いででで給給たまははわむむん方方かたなくなくなくててて明明あけけけはてはてはてぬぬぬ。。。
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現代語訳
そのころ、尚侍の君(朧月夜)が里に退出なさった。瘧病に長く患っていらっしゃって、まじないなども気楽にしようというのであった。修法などを始めて、よくおなりになったので、誰もがうれしくお思いになるが、いつものように、めったにない機会だと、源氏と便りを交わしなさって、無理をして毎晩お会いになる。
たいそう女盛りで、華やかな様子でいらっしゃる人が、少し病んでやせ細っていらっしゃる様子が、たいそう魅力的である。大后も同じ邸にいらっしゃるころなので、気配もたいそう恐ろしいけれど、こうした危ういことにかえって心がひかれるご性分なので、たいそう忍んで、度重なっていくので、気づく女房たちもあるようだが、面倒なので、大后にはそうとは申し上げない。
大臣(右大臣)はまた、思いもかけていらっしゃらないところに、雨が急にひどく降って、雷がひどく鳴り騒ぐ明け方に、右大臣家の君達や大后の宮司などが立ち騒いで、あちらこちらに人目が多く、女房たちも怖がってうろたえて近くに集まって来るので、源氏はたいそう困って、お出になる方法もなく、夜がすっかり明けてしまった。
御帳台のまわりにも女房たちが大勢並んでいるので、たいそう胸がつぶれる思いがなさる。事情を知っている女房が二人ほど、気をもんでいる。雷が鳴りやんで、雨が少し小やみになったころに、大臣がおいでになって、まず大后の御方にいらっしゃったのを、村雨の音にまぎれて、気づくことができずにいると、大臣は軽々しく、ふと入ってこられて、御簾を引き上げなさるなり、
「どうだね。たいそうひどかった夜の様子に、心配申し上げながら、参りもしないで。中将や宮の亮などはお仕えしていたか」などとおっしゃる様子が、早口で軽々しいのを、大将は、こんな時にも、左大臣のご様子とふと比べられなさって、比べものにならないとほほえまずにはいらっしゃれない。本当に、すっかり中に入ってからおっしゃればよいのに。
尚侍の君はたいそう困ったとお思いになって、そっと膝行して出ていらっしゃると、顔が赤らんでいるのを、まだ苦しくお思いなのだろうかとご覧になって、「どうして顔色がいつもと違うのか。物の怪などがしつこいのだから、修法を延長させるべきだった」とおっしゃると、
薄二藍色の帯が、尚侍の君のお召し物にまつわりついて引き出されているのを見つけなさって、変だとお思いになると、また、懐紙に手習などをしたものが、御几帳のもとに落ちていた。これはどういうものだろうと驚かれて、「あれは誰のものか。様子の変わったものだな。こちらへよこしなさい。それを取って、誰のものか見よう」とおっしゃるので、尚侍の君は振り返って、自分でも見つけなさったが、ごまかしようもないので、どうお答え申し上げられようか。
呆然としていらっしゃるのを、わが子ながらも恥ずかしくお思いだろうと、あれほどの身分の人なら、遠慮なさるべきであるよ。けれども、たいそう性急で落ち着いたところのない大臣は、よく考えもなさらず、懐紙をお取りになるとすぐに、几帳の中をのぞき込みなさると、たいそうしどけない様子で、悪びれもせず添い臥している男がいる。今になって、そっと顔を隠して、何とかごまかそうとする。
あきれて、腹立たしく不愉快だが、面と向かってはどうしてあばきたてることがおできになろうか、目もくらむ気持ちがするので、その懐紙を持って寝殿へお行きになった。尚侍の君は、生きた心地もなく、死んでしまいそうにお思いになる。大将殿も、気の毒に、とうとうつまらない振る舞いが重なって、人の非難を受けることになったとお思いになるが、女君の痛々しいご様子を、何かとお慰め申し上げなさる。
意訳
朧月夜が病気の療養で右大臣邸に里下がりすると、源氏は大后も同じ邸にいる危険を顧みず、毎晩忍んで通う。危ういことにかえって心ひかれる源氏の性分が、ここで破局を招く。
ある雷雨の明け方、源氏は帰る機会を失う。娘を見舞いに来た右大臣は、源氏の帯と懐紙を見つけ、几帳の中をのぞいて源氏の姿を見てしまう。右大臣は懐紙を持って去り、朧月夜は生きた心地もしない。
語釈・文法注
- わらはやみ
- 瘧病(わらわやみ)。周期的に発熱する病気。マラリアの類。若紫の巻で源氏が北山に赴いたのも、この病の治療のためであった。
- したど
- 舌疾(したど)。早口であること。
文法
- 反語の「いかでか…む」(いかでか顯し給はむ)
- 「どうしてあばきたてることがおできになろうか、いや、できない」。
- 当然の「べき」(おぼし憚るべきぞかし)
- 「遠慮なさるべきであるよ」。語り手が右大臣のふるまいを批評する。
解説
右大臣の軽率な人柄は、品格のある左大臣と対照的に描かれる。娘の部屋にいきなり入り、几帳の中をのぞき込むふるまいに、語り手は「さばかりの人はおぼし憚るべきぞかし」と批評を加えている。
源氏と朧月夜の密会が右大臣に見つかったことは、源氏の運命を大きく変える。このことを口実に、弘徽殿大后は源氏の失脚をはかり、源氏はやがて須磨へ退去することになる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、222–225頁(コマ113–114)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日