古典ライブラリー

源氏物語 第9帖 葵(8)

御息所の弔問の文

登場人物:光源氏・六条御息所・頭中将・桐壺院

喪に服して左大臣邸にこもる源氏のもとに、ある霧の朝、御息所から弔問の歌が届く。源氏はその美しい筆跡に心ひかれながらも、生霊のことを思ってつれなさを感じ、含みのある返歌を送る。御息所は源氏が生霊のことを知っていると悟って、身の不運を嘆き、伊勢へ下ることを考える。源氏のもとには頭中将がしばしば訪れて慰める。

秋の霧が立ちこめる朝、菊の枝に結ばれた青鈍色の文を、喪服の源氏が手に取って見つめている場面(AI生成)
秋の霧が立ちこめる朝、菊の枝に結ばれた青鈍色の文を、喪服の源氏が手に取って見つめている場面
  1. 1かのかのかの御おん御おんおんやすやすやす所どころ所どころどころははは齋宮さいぐう齋宮さいぐうさいぐうののの左衛門さゑもん左衛門さゑもんさえもんののの司つかさ司つかさつかさににに入い入いいりりり給たま給たまたまひひいにににけれけれければばばいとゞいとゞいとどいつくしきいつくしきいつくしき御おん御おんおんきよまはりきよまはりきよまわりにににことづけことづけことづけててて聞きこ聞きこきこえええももも通かよ通かよかよひひい給たま給たまたまははわずずず。。。
  2. 2憂う憂ううしししととと思おも思おもおもひひいしみしみしみにににししし世よ世よよもももなべてなべてなべていとはしくいとはしくいとわしくなりなりなり給たま給たまたまひひいてててかゝるかゝるかかるほだしほだしほだしだにだにだに添そ添そそははわざらざらざらましかましかましかばばば願ねが願ねがねがはしきはしきわしきさまさまさまにににもももなりなりなりなななましましましとととおぼすおぼすおぼすにににははは、、、まづまづまず對たい對たいたいののの姫君ひめぎみ姫君ひめぎみひめぎみのののさうざうしくさうざうしくそうぞうしくててて物もの物ものものししし給たま給たまたまふふうらむらむらん有樣ありさま有樣ありさまありさまぞぞぞふとふとふとおぼしおぼしおぼしやらやらやらるゝるゝるる。。。
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  14. 14さるはさるはさるは大方おほかた大方おほかたおおかたののの世よ世よよにににつけつけつけててて、、、心こころ心こころこころにくゝにくゝにくくよしよしよしあるあるある聞きこ聞きこきこえええありありありててて、、、昔むかし昔むかしむかしよりよりより名な名なな高だか高だかだかくくく物もの物ものものししし給たま給たまたまへへえばばば野の野ののののの宮みや宮みやみやののの御おん御おんおんうつろひうつろひうつろいののの程ほど程ほどほどにににももも、、、をかしうをかしうおかしゅう今いま今いまいまめきめきめきたるたるたる事こと事ことこと多おほ多おほおおくくくしししなしなしなしててて
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引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

あの御息所は、斎宮が左衛門府にお入りになったので、いっそう厳重な潔斎にかこつけて、便りも差し上げなさらない。源氏は、つらいと身にしみて思った世の中も、すべていとわしくおなりになって、こうした絆(若君)さえ加わらなかったならば、望みどおりの出家の身にもなってしまうのにとお思いになるにつけては、まず西の対の姫君(紫の君)が寂しくしていらっしゃるだろう様子が、ふと思いやられなさる。

夜は御帳台の中に一人でお休みになるが、宿直の女房たちは近くを取り巻いてお仕えしているものの、かたわらが寂しくて、「時しもあれ」と寝覚めがちなので、声のすぐれた僧ばかりを選んでお仕えさせなさる。念仏の明け方などは、こらえがたい。深まる秋の悲しさがいっそうつのっていく、風の音が身にしみることだと、慣れない独り寝に夜を明かしかねていらっしゃる明け方、霧が一面に立ちこめているところに、菊のつぼみがほころびかけた枝に、濃い青鈍色の紙に書いた手紙をつけて、置いて帰っていった。

気のきいたことをと思ってご覧になると、御息所の筆跡である。「ご無沙汰していた間のことは、お察しくださるでしょうか。人の命のはかなさを聞くだけでも涙に濡れるのに、先立たれて残されたあなたの袖は、どんなに濡れていることかと思いやっています。ただ今の空の様子に、思いあまりまして」と書いてある。

いつもより優雅にお書きになったものだと、さすがに下に置きにくくご覧になるものの、素知らぬ顔のお見舞いだなあと、いやな気持ちがする。そうかといって、すっかりお便りを絶ってしまうのも気の毒で、御息所の評判が傷ついてしまうに違いないことを、思い乱れなさる。

亡くなった人は、どうなるにしても、そうなるはずの運命でいらっしゃったのだろうが、どうしてあんなことをはっきりと見聞きしてしまったのだろうと、悔やまれるのはご自分の心ながら、やはり思い直すことはおできにならないようである。斎宮の潔斎のさまたげになるだろうかなどと、長い間思い悩みなさるが、わざわざ下さった手紙への返事がなくては情けがないだろうと、紫がかった鈍色の紙に、

「たいそう長い間ご無沙汰してしまいましたが、思い怠ることはないものの、喪中で遠慮している間は、お察しくださるだろうと思いまして。生き残る身も、消えていった人も、同じ露のようにはかない世なのに、心を残して執着するのはむなしいことです。一方では、執着の心をお消しになってください。喪中の手紙はご覧にならないかと思いまして、これにも」と申し上げなさった。

御息所は、里の邸にいらっしゃる時だったので、こっそりご覧になって、源氏がほのめかしていらっしゃる様子を、良心のとがめから、はっきりとお読み取りになって、やはりそうだったのかとお思いになるのも、たいそう悲しい。

やはりこの上なく不運な身の上であったよ。こうした噂が立って、院もどうお思いになるだろう。亡き前東宮とは同じご兄弟という中でも、たいそう仲よくしていらっしゃって、この斎宮のことをも、ねんごろにお頼み申し上げなさったので、院は、その身代わりにもそのままお世話申し上げようなどと、いつもおっしゃって、そのまま宮中に住みなさいと、たびたび申し上げなさったのでさえ、まったくあってはならないことと思い離れたのに、

このように心ならずも年がいもない物思いをして、とうとう浮き名までも流してしまうに違いないことと、思い乱れなさるので、やはりいつものご様子でもいらっしゃらない。とはいえ、御息所は、世間一般には、奥ゆかしく趣味のよい評判があって、昔から名高い方でいらっしゃるので、野宮へのお移りの時にも、趣深く、当世風なことを多く工夫して、

殿上人たちの風流好みの者などは、朝夕に露を分けて野宮に通うのを、そのころの務めにしているなどとお聞きになっても、大将の君は、もっともなことだ、たしなみの深さは十分に備えていらっしゃる方なのだから、もし世の中に愛想をつかして伊勢へ下ってしまわれたら、寂しくもあるだろうなあと、さすがにお思いになるのだった。

ご法事なども過ぎたが、四十九日までは、やはり左大臣邸にこもっていらっしゃる。慣れない所在なさを気の毒にお思いになって、三位の中将(頭中将)はいつも参上なさっては、世の中のお話などで、まじめなことも、またいつもの色めいたことも申し上げながらお慰め申し上げなさるが、あの源典侍が、お笑いになる話の種になっているようだ。

大将の君は「ああ、かわいそうに。おばあさまのことを、あまり軽んじなさるな」と諫めなさるものの、いつも面白いとお思いになっていた。あの十六夜の月がさやかだった秋のことなど、そのほかにもさまざまな色事を、互いに残らず打ち明けなさる。しまいには、無常の世を語り合って、泣いたりもなさるのだった。

意訳

喪に服して左大臣邸にこもる源氏は、出家も考えるが、紫の君のことが気にかかる。そこへ御息所から弔問の歌が届く。源氏は、生霊のことを思い出して、つれない見舞いだと感じる。

源氏は、生霊のことをほのめかす返歌を送る。それを読んだ御息所は、源氏がすべてを知っていると悟り、身の不運を嘆く。

頭中将は、源氏のもとにしばしば訪れ、源典侍の噂話や昔の色事を語り合って、源氏を慰める。

語釈・文法注

しやうにち
正日(しょうにち)。死後四十九日目の日。この日まで、遺族は喪に服して家にこもる。

文法

反実仮想の「ましかば…まし」(添はざらましかば…なりなまし)
「もし絆が加わらなかったならば、出家の身になってしまうだろうに」。
禁止の「な…そ」(ないたうかろめ給ひそ)
「あまり軽んじなさるな」。

和歌

人の世をあはれときくも露けきにおくるゝ袖を思ひこそやれ

詠者
六条御息所
状況
葵の上の死を弔って、御息所が源氏に送った歌。人の命のはかなさを聞くだけでも涙に濡れるのに、先立たれて残されたあなたの袖は、どんなに濡れていることかと思いやっています。

とまる身も消えしもおなじ露の世に心おくらむほどぞはかなき

詠者
光源氏
状況
御息所への返歌。生き残る身も、消えていった人も、同じ露のようにはかない世なのに、心を残して執着するのはむなしいことです。

修辞

縁語
「露」「消え」「おく」は縁語。「心おく」に、執着する意を込め、生霊となった御息所の執念をほのめかす。

解説

御息所の弔問の歌は、表向きは礼儀正しいが、源氏にとっては「つれなの御とぶらひ」であった。生霊となって葵の上を苦しめた本人が、何食わぬ顔で弔問してきたように見えたのである。源氏の返歌の「心おくらむ」という言葉は、御息所の執念を暗にとがめている。

御息所は、源氏の返歌から自分の生霊のことが知られていると悟り、深く傷つく。前東宮の妃として、院からも大切にされた身でありながら、浮き名を流し、生霊の噂まで立てられた自分を恥じるのである。この苦悩が、次の賢木の巻での伊勢下向へとつながる。

関連

出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、176–179頁(コマ90–91)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日