源氏物語 第7帖 紅葉賀(4)
元日の紫の君
少納言の乳母は、思いがけない幸せは尼君の祈りのおかげだと思う。年が明け、紫の君は喪服を脱いで華やかな小袿を着る。元日の朝、源氏が参内の前にのぞくと、紫の君は人形遊びに夢中で、犬君が壊した人形の家を直している。少納言に「夫を持った人らしく」とたしなめられて、紫の君は初めて、自分には美しい若い夫がいるのだと気づく。

- 1少納言少納言しょうなごんははは、、、覺覺おぼえええずずずをかしきをかしきおかしき世世よをををももも見見みるるるかなかなかな、、、これこれこれももも故故こ尼上尼上あまうえのののこのこのこの御御おん事事ことをををおぼしおぼしおぼしててて御御おん行行おこないにににももも祈祈いのりりり聞聞きこえええ給給たまひひいししし佛佛ほとけののの御御おん驗驗しるしにににやややとととおぼゆおぼゆおぼゆ。。。
- 2おほいおほいおおい殿殿どのいといといとやんごとなくやんごとなくやんごとなくててておはしおはしおわし此所此所ここ彼所彼所かしこあまたあまたあまたかゝづらひかゝづらひかかずらい給給たまふふうをををぞぞぞ、、、誠誠まことにににおとなびおとなびおとなび給給たまははわむむんほどほどほどにににはははむつかしきむつかしきむつかしき事事こともももやややとととおぼえおぼえおぼえけるけるける。。。されどされどされどかくかくかくとりわきとりわきとりわき思思おもひひい給給たまへへえるるる御御おんおぼえおぼえおぼえののの程程ほどはははいといといとたのもしげたのもしげたのもしげなりなりなりかしかしかし。。。
- 3御御おんぶくぶくぶく母方母方ははかたははは三月三月みつきこそこそこそはははとととてててつごもりつごもりつごもりにににははは脫脫ぬがががせせせ奉奉たてまつりりり給給たまふふうををを、、、又又また親親おやもももなくなくなくててて生生おひひい出出いででで給給たまひひいしかしかしかばばば、、、まばゆきまばゆきまばゆき色色いろにににはははあらあらあらでででくれなゐくれなゐくれない紫紫むらさき山吹山吹やまぶきのののぢぢじのののかぎりかぎりかぎり織織おれれれるるる御御おん小袿小袿こうちきなどなどなどををを着着き給給たまへへえるるるさまさまさまいみじういみじういみじゅう今今いまめかしうめかしうめかしゅうをかしげをかしげおかしげなりなりなり。。。
- 4男君男君おとこぎみはははににに參參まいりりり給給たまふふうとてとてとてさしさしさしのぞきのぞきのぞき給給たまへへえりりり。。。「「「今日今日きょうよりよりよりはははおとなしくおとなしくおとなしくなりなりなり給給たまへへえりりりややや」」」とととてててうちうちうちゑみゑみえみ給給たまへへえるるるいといといとめでたうめでたうめでとう愛敬愛敬あいきょうづきづきづき給給たまへへえりりり。。。
- 5いつしかいつしかいつしかひゝなひゝなひいなおしおしおしすゑすゑすえてててそゝきそゝきそそき居居い給給たまへへえりりり。。。三尺三尺さんじゃくのののみづしみづしみずし一一ひとよろひよろひよろいににに品々品々しなじなしつらひしつらひしつらいすゑすゑすえててて又又また小小ちいさききき屋屋やどもどもども作作つくりりり集集あつめめめててて奉奉たてまつりりり給給たまへへえるるるををを、、、所所ところせきせきせきまでまでまで遊遊あそびびび廣廣ひろげげげ給給たまへへえりりり。。。
- 6「「「とととててていぬきいぬきいぬきがががこれこれこれをををこぼちこぼちこぼち侍侍はべりりりにににけれけれければばば繕繕つくろひひい侍侍はべるるるぞぞぞ」」」とととててていといといとだいじだいじだいじとととおぼいおぼいおぼいたりたりたり。。。「「「げにげにげにいといといと心心こころなきなきなき人人ひとのののしわざしわざしわざにににももも侍侍はべるるるかなかなかな。。。今今いまつくろはつくろはつくろわせせせ侍侍はべらららむむん。。。今日今日きょうはははことことこといみいみいみしししててて、、、ななな泣泣ないいい給給たまひひいそそそ」」」とととててて出出いででで給給たまふふう氣色氣色けしきいといといと所所ところせきせきせきををを、、、
- 7人々人々びとはしはしはしににに出出いでゝでゝでて見見み奉奉たてまつれれればばば、、、姫君姫君ひめぎみももも立立たちちち出出いでゝでゝでて見見み奉奉たてまつりりり給給たまひひいててて、、、ひゝなひゝなひいなののの中中なかののの源氏源氏げんじののの君君きみ繕繕つくろひひいたてゝたてゝたててうちうちうちににに參參まいらせらせらせなどなどなどししし給給たまふふう。。。
- 8「「「今年今年ことしだにだにだに少少すこしししおとなびおとなびおとなびさせさせさせ給給たまへへえ。。。とをとをとをにににあまりあまりあまりぬるぬるぬる人人ひとはははひゝなひゝなひいな遊遊あそびははは忌忌いみみみ侍侍はべるるるものものものををを、、、かくかくかく御御おんをとこをとこおとこなどなどなど儲儲もうけけけ奉奉たてまつりりり給給たまひひいてててはははあるべかしうあるべかしうあるべかしゅうしめやかしめやかしめやかにににこそこそこそ見見みえええ奉奉たてまつらららせせせ給給たまははわめめめ。。。みぐしみぐしみぐしまゐるまゐるまいる程程ほどをををだにだにだに物物ものうくうくうくせせせさせさせさせ給給たまふふう」」」などなどなど少納言少納言しょうなごん聞聞きこゆゆゆ。。。
- 9御御おん遊遊あそびにににのみのみのみ心心こころ入入いれれれ給給たまへへえれれればばば耻耻はずかしししととと思思おもははわせせせ奉奉たてまつらららむむんとととててていへいへいえばばば、、、心心こころののの中中うちににに我我わはははさささはははをとこをとこおとこまうけまうけもうけてててけりけりけり、、、このこのこの人々人々びとのののをとこをとこおとことととてててあるあるあるははは醜醜みにくくくくこそこそこそあれあれあれ、、、我我わはははかくかくかくをかしげをかしげおかしげににに若若わかききき人人ひとをををももももたりもたりもたりけるけるけるかなかなかなととと今今いまぞぞぞおぼしおぼしおぼし知知しりりりけるけるける。。。
- 10さささはははいへいへいえどどど御御おん年年としののの數數かずそふそふそうしるししるししるしなななめりめりめりかしかしかし。。。かくかくかく幼幼おさなききき御御おんけはひけはひけわいののの事事ことににに觸觸ふれれれてててしるけれしるけれしるければばば殿殿とのののの內內うちののの人々人々びとももも怪怪あやしししととと思思おもひひいけれけれけれどどど、、、いといといとかうかうこう世世よづかづかづかぬぬぬ御御おんそひぶしそひぶしそいぶしならならならむむんとととははは思思おもははわざりざりざりけりけりけり。。。
現代語訳
少納言は、思いもかけずすばらしい世の中を見ることだ、これも亡き尼上が、この姫君のことを案じて、勤行の折にもお祈り申し上げなさった仏のご利益なのだろうかと思う。左大臣家の姫君(葵の上)がたいそう高貴でいらっしゃり、ほかにもあちらこちら大勢の女性と関わっていらっしゃるのを、姫君が本当に大人におなりになったら、面倒なこともあるのではないかと思った。けれども、こうして格別に大切にお思いになっているご寵愛のほどは、たいそう頼もしいことである。
喪服は、母方の祖母の喪は三か月ということで、大晦日には脱がせ申し上げなさるが、また親もなく育っていらっしゃったので、派手な色ではなく、紅や紫、山吹の、地の色だけで織った小袿などを着ていらっしゃる様子が、たいそう当世風でかわいらしい。
男君(源氏)は、朝拝に参内なさるということで、のぞきなさった。「今日からは大人らしくなられましたか」と言って、ほほえんでいらっしゃるのが、たいそうすばらしく、魅力にあふれていらっしゃる。姫君は、もう早くも人形を並べて、忙しくしていらっしゃる。三尺の御厨子一対にいろいろな道具を並べ、また小さな家々を作り集めて源氏が差し上げなさったものを、部屋いっぱいに広げて遊んでいらっしゃる。
「鬼やらいをするといって、犬君がこれを壊してしまいましたので、直しているのです」と言って、たいそう一大事だと思っていらっしゃる。源氏は「本当に、気のきかない者のしわざですね。すぐに直させましょう。今日は縁起の悪いことは慎んで、お泣きにならないでください」と言って、お出かけになる様子がたいそう堂々としているのを、女房たちは端に出てお見送り申し上げるので、姫君も出てきてお見送り申し上げなさって、人形の中の「源氏の君」を着飾らせて、宮中に参らせるまねなどをなさる。
少納言が「せめて今年は、少しは大人らしくなさいませ。十歳を過ぎた人は、人形遊びはしないものですのに。こうして夫をお持ち申し上げなさったからには、奥さまらしく、しとやかにお振る舞いなさいませ。御髪をおとかし申し上げる間さえ、いやがりなさって」などと申し上げる。
お遊びにばかり夢中になっていらっしゃるので、恥ずかしいと思わせ申し上げようとして言うと、姫君は心の中で、私は、それでは夫を持ったのだ、この人たちの夫だという人は、醜い人ばかりなのに、私はこんなに美しく若い人を持っているのだと、今になってお気づきになった。そうはいっても、お年が一つ加わったしるしなのだろう。このように幼いご様子が何かにつけてはっきりしているので、邸の人々も不思議に思っていたが、まさかこんなに世間離れした添い寝の相手だとは思わなかった。
意訳
年が明け、紫の君は祖母の喪が明けて、華やかな小袿を着る。元日の朝も、紫の君は人形遊びに夢中で、犬君が壊した人形の家を一生懸命直している。
少納言に「夫のいる人らしく」とたしなめられて、紫の君は、自分には美しくて若い夫がいるのだと初めて気づく。まだ夫婦の意味もわからない幼さが、ほほえましく描かれている。
語釈・文法注
- 朝拜
- 朝拝(ちょうはい)。元日の朝、天皇に臣下が新年の挨拶をする儀式。
- なやらふ
- 追儺(ついな)。大晦日の夜、鬼を追い払う行事。鬼やらい。
文法
- 禁止の「な…そ」(な泣い給ひそ)
- 「お泣きにならないでください」。
- 推量の「めり」(しるしなめりかし)
- 「なるめり」の撥音便の撥音無表記。「しるしなのだろう」。
解説
元日の紫の君の場面は、源氏物語の中でもとくに愛らしい場面である。人形遊びの家を壊されて真剣に直す姿、人形の「源氏の君」を参内させるまねをする姿に、子どもらしさがあふれている。
紫の君が「美しく若い夫を持っている」と気づく場面は、のちに二人が本当の夫婦となることを予感させる。邸の人々が、まさかこんなに幼い添い寝の相手とは思わなかったという結びは、源氏と紫の君の関係の特殊さを示している。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、142–143頁(コマ73)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日