源氏物語 第7帖 紅葉賀(3)
紫の君と兵部卿宮
二条院の紫の君は、源氏にすっかりなつき、源氏は実の娘を迎えたように手本を書いて習わせる。源氏が出かけると寂しがる紫の君を、源氏は母のない子を持ったように気づかう。一方、源氏は藤壺の里邸の三条宮を訪ね、そこで藤壺の兄の兵部卿宮と親しく語らう。宮は源氏を女にして見たいと思うほど気に入るが、源氏は藤壺に近づけず、むなしく帰る。

- 1幼幼おさなききき人人ひとははは見見みついついつい給給たまふふうまゝまゝままにににいといといとよきよきよき心心こころざまざまざまかたちかたちかたちにてにてにて何何なに心心ごころもももなくなくなくむつれむつれむつれまとはしまとはしまとわし聞聞きこえええ給給たまふふう。。。暫暫しばししし殿殿とのののの內內うちののの人人ひとにににももも誰誰たれととと知知しらせせせじじじとととおぼしおぼしおぼしててて、、、
- 2猶猶なお離離はなれれれたるたるたる對對たいににに御御おんしつらひしつらひしつらいになくになくになくしししててて、、、我我わももも明暮明暮あけくれ入入いりりりおはしおはしおわしててて萬萬よろずののの御御おん事事ことどもどもどもををを敎敎おしへへへ聞聞きこえええ給給たまふふう。。。手本手本てほん書書かきききててて習習ならははわせせせなどなどなどしししつゝつゝつつ唯唯ただほかほかほかなりなりなりけるけるける御御おんむすめむすめむすめををを迎迎むかへへえ給給たまへへえらららむむんやうやうようにににぞぞぞおぼしおぼしおぼしたるたるたる。。。
- 3まんまんまんけいしけいしけいしなどなどなどををを初初はじめめめ、、、ことことことにににわかちわかちわかちててて心心こころもとなからもとなからもとなからずずず仕仕つこうううまつらまつらまつらせせせ給給たまふふう。。。惟光惟光これみつよりよりより外外ほかののの人人ひとははは覺束覺束おぼつかなくなくなくのみのみのみ思思おもひひい聞聞きこえええたりたりたり。。。かのかのかの父宮父宮ちちみやもももえええ知知しりりり聞聞きこえええ給給たまははわざりざりざりけりけりけり、、、
- 4姫君姫君ひめぎみははは猶猶なお時々時々ときどき思思おもひひい出出いででで聞聞きこえええ給給たまふふう時時ときははは、、、尼君尼君あまぎみををを戀戀こひひい聞聞きこえええ給給たまふふうをりをりおり多多おおかりかりかり。。。君君きみのののおはするおはするおわするほどほどほどははは紛紛まぎらはしはしわし給給たまふふうををを、、、夜夜よなどなどなどははは時々時々ときどきこそこそこそとまりとまりとまり給給たまへへえ。。。
- 5此所此所ここ彼所彼所かしこののの御御おんいとまいとまいとまなくなくなくててて暮暮くるれるれるればばば出出いででで給給たまふふうををを慕慕したひひい聞聞きこえええ給給たまふふう折折おりなどなどなどあるあるあるををを、、、いといといとらうたくらうたくろうたく思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまへへえりりり。。。
- 6二三日二三日ふつかみかうちうちうちににに侍侍さぶらひらひらい大殿大殿おおいとのにににもももおはするおはするおわするをりをりおりはははいといといといたくいたくいたくくしくしくしなどなどなどししし給給たまへへえばばば、、、心苦心苦こころぐるしうしうしゅうててて、、、母母ははなきなきなき子子こもたらもたらもたらむむん心地心地ここちしししてててありきありきありきもももしづしづしず心心ごころなくなくなくおぼえおぼえおぼえ給給たまふふう。。。
- 7僧都僧都そうずはははかくかくかくなむなむなんととと聞聞きききき給給たまひひいてててあやしきあやしきあやしきものものものからからから嬉嬉うれしししとととなむなむなんおぼしおぼしおぼしけるけるける。。。かのかのかの御御おん法事法事ほうじなどなどなどししし給給たまふふうにににもももいかめしういかめしういかめしゅうとぶらひとぶらひとぶらい聞聞きこえええ給給たまへへえりりり。。。
- 8藤壺藤壺ふじつぼのののまかでまかでまかで給給たまへへえるるる三條三條さんじょうののの宮宮みやににに御御おん有樣有樣ありさまもももゆかしうゆかしうゆかしゅうててて參參まいりりり給給たまへへえれれればばば、、、命婦命婦みょうぶ中納言中納言ちゅうなごんののの君君きみ中務中務なかつかさなどなどなどやうやうようののの人々人々びとたいめんたいめんたいめんしししたりたりたり。。。
- 9けざやかけざやかけざやかにににもてなしもてなしもてなし給給たまふふうかなかなかなととと安安やすからからからずずず思思おもへへえどどど、、、しづめしづめしずめててて大方大方おおかたののの御御おん物語物語ものがたり聞聞きこえええ給給たまふふう程程ほどににに兵部卿兵部卿ひょうぶきょうののの宮宮みや參參まいりりり給給たまへへえりりり。。。このこのこの君君きみおはすおはすおわすととと聞聞きききき給給たまひひいてててたいめんたいめんたいめんししし給給たまへへえりりり。。。
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現代語訳
幼い人(紫の君)は、源氏がなじんでいかれるにつれて、たいそうよい気立てや容貌で、無心になついてまつわりついていらっしゃる。源氏は、しばらくは邸の中の人にも誰とは知らせまいとお思いになって、やはり離れた対の屋に、この上なく調度を整えて、自分も明け暮れ入りびたって、何もかもお教え申し上げなさる。手本を書いて習わせたりしながら、まるでよそで育った自分の娘を迎えたかのようにお思いになっている。
政所の家司などをはじめ、特に別に係を設けて、不安のないようにお仕えさせなさる。惟光のほかの人は、どういう方なのか、わからずにばかり思い申し上げていた。あの父宮もご存じではなかった。姫君は、やはり時々思い出し申し上げなさる時は、尼君を恋しがり申し上げなさることが多い。源氏がいらっしゃる間は気が紛れていらっしゃるが、夜などは、源氏は時々しかお泊まりにならない。
あちらこちらでお忙しくて、日が暮れるとお出かけになるのを、姫君が慕い申し上げなさる折などもあるのを、源氏はたいそういとしく思い申し上げなさる。二、三日宮中にお仕えし、左大臣邸にもいらっしゃる時は、姫君がひどくふさぎこんだりなさるので、源氏はかわいそうで、母のない子を持ったような気持ちがして、出歩くのも落ち着かないお気持ちになる。
僧都は、これこれだとお聞きになって、不思議に思いながらも、うれしいとお思いになった。尼君の法事などをなさる時にも、源氏は盛大にお見舞いを申し上げなさった。
藤壺が退出していらっしゃる三条の宮に、源氏はご様子も知りたくて参上なさると、命婦、中納言の君、中務などといった女房たちが応対した。よそよそしいおもてなしだなと、源氏は心穏やかでなく思うが、気持ちを静めて、ひととおりのお話を申し上げていらっしゃるうちに、兵部卿宮が参上なさった。この君がおいでだとお聞きになって、対面なさった。
宮は、たいそう風雅な様子で、色っぽく優美でいらっしゃるので、源氏は、女として見たらさぞすばらしいだろうと、人知れず拝見なさるにつけても、藤壺の兄であり、紫の君の父でもある方として、あれこれと親しみを感じなさって、心をこめてお話しなさる。宮も、この君のご様子が、いつもよりとりわけ慕わしく打ち解けていらっしゃるのを、たいそうすばらしいと拝見なさって、まさか婿だなどとは思いもよらず、女にして見たいものだと、色好みのお心にはお思いになる。
日が暮れたので、宮が御簾の中にお入りになるのを、源氏はうらやましく思い、昔は帝のお計らいで、たいそう近くで、人づてでなく直接お話しも申し上げたのに、今はすっかり遠ざけていらっしゃるのもつらく思われるのは、どうしようもないことである。源氏は「しばしばお伺いすべきですが、特に用のない時は、自然とご無沙汰してしまいますので、しかるべき事などは、お申しつけくださるとうれしいのですが」などと、そっけなく言ってお帰りになった。
命婦も手引きのしようがなく、宮のご様子も、以前よりいっそうつらいことと思い定めていらっしゃって、打ち解けないご様子も、恥ずかしくお気の毒なので、何のかいもなく過ぎていく。はかない縁だと、お二人とも思い乱れなさることが尽きない。
意訳
二条院の紫の君は、源氏にすっかりなつく。源氏は手本を書いて習わせ、実の娘のように大切に育てる。源氏が出かけると寂しがる紫の君を、源氏は母のない子を持ったように気づかう。
源氏は藤壺の里邸を訪ねるが、藤壺には近づけない。そこで出会った兵部卿宮(藤壺の兄で紫の君の父)と、源氏は親しく語り合う。宮は、娘が源氏のもとにいるとは知らない。
語釈・文法注
- まん所
- 政所(まんどころ)。貴族の家の事務を取り扱う所。家司(けいし)はその職員。
文法
- 願望の「ばや」(女にて見ばや)
- 「女として見たいものだ」。
- 推量の「べし」(をかしかりぬべく)
- 「きっと美しいだろう」。
解説
源氏と兵部卿宮が互いに相手を「女にて見ばや」と思う場面は、二人がともに美しい貴公子であることを示している。同時に、宮が娘の行方を知らないまま源氏と親しく語らう様子に、皮肉がこめられている。
藤壺は懐妊のことを隠しながら、源氏をいっそう遠ざける。源氏はかつて帝の計らいで藤壺と親しく話せた日々を思い出し、今の隔たりを嘆く。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、140–143頁(コマ72–73)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日