源氏物語 第6帖 末摘花(6)
雪の夜の姫君の邸
行幸が近づくころ、命婦は源氏に姫君の様子を伝えて嘆く。源氏は紫の君に心を奪われ、姫君のもとにはたまにしか通わない。ある夜、源氏は格子のすき間から邸の中をのぞき、貧しい食事をとる女房たちが寒さを嘆き、昔をしのぶ様子を見る。雪の降る荒れた夜、源氏は姫君の邸に泊まり、夕顔を失ったなにがしの院を思い出す。

- 1行幸行幸ぎょうこう近近ちかくくくなりなりなりてててなどなどなどのののゝしるゝしるのしるころころころぞぞぞ命婦命婦みょうぶははは參參まいれれれるるる。。。「「「いかにいかにいかにぞぞぞ」」」などなどなど問問とひひい給給たまひひいててていとほしいとほしいとおしとととはははおぼしおぼしおぼしたりたりたり。。。有樣有樣ありさま聞聞きこえええててて、、、「「「いといといとかうかうこうもてもてもて離離はなれれれたるたるたる御御おん心心こころばへばへばえははは見見み給給たまふるふるうる人人ひとさへさへさへ心苦心苦こころぐるしくしくしく」」」などなどなど泣泣なきききぬぬぬばかりばかりばかりにににおもへおもへおもえりりり。。。
- 2心心こころにくゝにくゝにくくもてなしもてなしもてなしててて止止やみみみなななむむんととと思思おもへへえりりりしししことことことをををくたいくたいくたいてててけるけるける、、、心心こころもももなくなくなく、、、このこのこの人人ひとののの思思おもふふうらむらむらんをををさへさへさへおぼすおぼすおぼす。。。さうじみさうじみそうじみののの物物ものもももいはいはいわででで覺覺おぼしししうづもれうづもれうずもれ給給たまふふうらむらむらんさまさまさま思思おもひひいやりやりやり給給たまふふうもももいとほしけれいとほしけれいとおしければばば
- 3「「「いとまいとまいとまなさなさなさ程程ほどぞぞぞややや。。。わりなしわりなしわりなし」」」とととうちうちうち嘆嘆なげいいい給給たまひひいててて「「「物物もの思思おもひひい知知しらららぬぬぬやうやうようなるなるなる心心こころざまざまざまをををこらさこらさこらさむむんととと思思おもふふうぞぞぞかしかしかし」」」とととほゝゑみほゝゑみほほえみ給給たまへへえるるる、、、若若わこううううつくしげうつくしげうつくしげなれなれなればばば、、、我我わももも打打うちちち笑笑えまままるゝるゝるる心地心地ここちしししててて、、、
- 4わりなわりなわりなののの、、、人人ひとににに恨恨うらみみみられられられ給給たまふふう御御おんよはひよはひよわいややや。。。思思おもひひいやりやりやり少少すくなうなうのう御心御心みこころのののまゝまゝままならならならむむんもももことわりことわりことわりととと思思おもふふう。。。このこのこの御御おんいそぎいそぎいそぎののの程程ほど過過すぐしぐしぐしてててぞぞぞ時々時々ときどき坐坐おわしししけるけるける。。。
- 5かのかのかの紫紫むらさきのののゆかりゆかりゆかり尋尋たずねねねとりとりとり給給たまひひいてててはははそのそのそのうつくしみうつくしみうつくしみににに心心こころ入入いりりり給給たまひひいててて六條六條ろくじょうわたりわたりわたりにににだにだにだにかれかれかれまさりまさりまさり給給たまふふうめれめれめればばば、、、ましてましてまして荒荒あれれれたるたるたる宿宿やどははは哀哀あわれにににおぼしおぼしおぼし怠怠おこたらららずずずながらながらながら物物もの憂憂うきききぞぞぞわりなかりわりなかりわりなかりけるけるける。。。
- 6所所ところせきせきせき物物ものはぢはぢはじををを見見み顯顯あらわさささむむんののの御心御心みこころももも殊殊ことににになくなくなくててて過過すぎぎぎ行行ゆくくくををを、、、打打うちちち返返かえししし見見みまさりまさりまさりするするするやうやうようもももありありありかしかしかし。。。
- 7手手てさぐりさぐりさぐりのののたどたどしきたどたどしきたどたどしきににに怪怪あやしうしうしゅう心得心得こころえぬぬぬ事事こともももあるあるあるにににややや見見みてててしがしがしがなななとととおもほせおもほせおもおせどどど、、、けざやかけざやかけざやかにににとりなさとりなさとりなさむむんもももまばゆしまばゆしまばゆし。。。打打うちちち解解とけけけたるたるたるよひゐよひゐよいいののの程程ほどやをらやをらやおら入入いりりり給給たまひひいててて格子格子こうしのののはざまはざまはざまよりよりより見見み給給たまひひいけりけりけり。。。
- 8されどされどされどみづからみづからみずからははは見見みえええ給給たまふふうべくべくべくもももあらあらあらずずず。。。几帳几帳きちょうなどなどなどいたくいたくいたく損損そこなははわれれれたるたるたるものものものからからから、、、年年とし經經へにににけるけるけるたちどたちどたちど變變かわらららずずず押押おしししやりやりやりなどなどなど亂亂みだれれれねねねばばば心心こころもとなくもとなくもとなくててて御達御達ごたち四五人四五人しごにん居居いたりたりたり。。。
- 9御御おんやうやうようのののもろこしもろこしもろこしのののものものものなれなれなれどどど、、、人人ひとわろきわろきわろきににに何何なにのののくさはひくさはひくさわいもももなくなくなくあはれげあはれげあわれげなるなるなる、、、まかでゝまかでゝまかでて人々人々びとくふくふくう。。。
- 10すみすみすみのののまままばかりばかりばかりにににぞぞぞいといといと寒寒さむげげげなるなるなる女房女房にょうぼう白白しろききき衣衣きぬのののいひいひいいしらしらしらずずず煤煤すすけけけたるたるたるにににきたなげきたなげきたなげなるなるなるしびらしびらしびらひきひきひきゆひゆひゆいづけづけずけたるたるたる腰腰こしつきつきつきかたくなしげかたくなしげかたくなしげなりなりなり。。。
- 11さすがにさすがにさすがに櫛櫛くしおしおしおし垂垂たれれれてててさしさしさしたるたるたる額額ひたいつきつきつき、、、內敎坊內敎坊ないきょうぼう內侍所內侍所ないしどころのののほどほどほどにににかゝるかゝるかかる者者ものどもどもどものののあるあるあるはははやややとととをかしをかしをかし。。。かけてかけてかけてももも人人ひとのののあたりあたりあたりににに近近ちこうううふるまふふるまふふるまう者者ものとととももも知知しりりり給給たまははわざりざりざりけりけりけり。。。
- 12「「「あはれあはれあわれさもさもさも寒寒さむききき年年としかなかなかな。。。命命いのち長長ながけれけれければばばかへるかへるかえる世世よにににももも逢逢あふふうものものものなりなりなりけりけりけり」」」とととてててうちうちうち泣泣なくくくもももありありあり。。。「「「故故こ宮宮みやおはしましおはしましおわしましゝゝし世世よををを、、、などなどなどててて辛辛からしししととと思思おもひひいけむけむけん。。。かくかくかく賴賴たのみみみなくなくなくてててももも過過すぐるぐるぐるものものものなりなりなりけりけりけり」」」とととててて飛飛とびびび立立たちちちぬぬぬべくべくべくふるふふるふふるうもももありありあり。。。
- 13さまざまさまざまさまざまににに人人ひとわろきわろきわろき事事ことどもどもどもををを憂憂うれへへえあへあへあえるるるををを聞聞きききき給給たまふふうもももかたはらいたけれかたはらいたけれかたわらいたければばば、、、立立たちちちのきのきのきててて只今只今ただいまおはするおはするおわするやうやうようにてにてにてうちうちうち敲敲たたききき給給たまふふう。。。「「「そゝやそゝやそそや」」」などなどなどいひいひいいててて火火ひとりとりとりなほしなほしなおし格子格子こうし放放はなちちちててて入入いれれれ奉奉たてまつるるる。。。
- 14侍從侍從じじゅうははは齋院齋院さいいんににに參參まいりりり通通かよふふうわかうどわかうどわこうどにてにてにて、、、このこのこの頃頃ころはははなかりなかりなかりけりけりけり。。。いよいよいよいよいよいよあやしうあやしうあやしゅう鄙鄙ひなびびびたるたるたるかぎりかぎりかぎりにてにてにて見見みならはならはならわぬぬぬ心地心地ここちぞぞぞするするする。。。
- 15いとゞいとゞいとどうれふうれふうれうなりなりなりつるつるつる雪雪ゆきかきかきかきたれたれたれいみじういみじういみじゅう降降ふりりりけりけりけり。。。空空そらののの氣色氣色けしき烈烈はげしうしうしゅう風風かぜ吹吹ふききき荒荒あれれれててておほとなぶらおほとなぶらおおとなぶら消消きえええにににけるけるけるをををともしともしともしつくるつくるつくる人人ひともももなしなしなし。。。
- 16かのかのかのものものものにににおそはれおそはれおそわれししし折折おりおぼしおぼしおぼし出出いでででられられられててて、、、荒荒あれれれたるたるたるさまさまさまははは劣劣おとらららざざざめるめるめるををを程程ほどのののせばうせばうせぼう人人ひとげげげののの少少すこしししあるあるあるなどなどなどににに慰慰なぐさめめめたれたれたれどどど、、、すごうすごうすごううたてうたてうたていざときいざときいざとき心地心地ここちするするするよよよのののさまさまさまなりなりなり。。。
- 17をかしうをかしうおかしゅうもももあはれあはれあわれにににもももやうやうようかへかへかへててて心心こころとまりとまりとまりぬぬぬべきべきべきありさまありさまありさまをををいといといとうもれうもれうもれすくよかすくよかすくよかにてにてにて何何なにのののはえはえはえなきなきなきをををぞぞぞ口惜口惜くちおしうしうしゅうおぼすおぼすおぼす。。。
現代語訳
行幸が近くなって、試楽などで大騒ぎをしているころ、命婦が参上した。源氏は「どうしている」などとお尋ねになって、気の毒だとはお思いになっている。命婦は様子を申し上げて、「こんなにまで冷たくお離れになったお心は、拝見している私までつらくて」などと、泣き出しそうに思っている。
命婦が、奥ゆかしく思わせておいて終わりにしようと思っていたことを、台なしにしてしまったと、思慮もなく、この人がどう思っているかまでをお思いになる。ご本人が物も言わずに、ふさぎこんでいらっしゃるだろう様子を思いやりなさるのも気の毒なので、「暇がないからなのだよ。しかたがない」とため息をおつきになって、「物の情けのわからないような心を、こらしめてやろうと思うのさ」とほほえみなさるのが、若々しく美しいので、命婦も思わずほほえまれる気がして、困ったこと、女に恨まれなさるお年ごろですね、思いやりが少なく、お心のままでいらっしゃるのももっともだと思う。
この行幸の準備の時期が過ぎてから、源氏は時々おいでになった。あの紫のゆかりの人(若紫)を尋ね出して引き取りなさってからは、そのかわいらしさに夢中になっていらっしゃって、六条あたりにさえますます足が遠のいていらっしゃるようなので、まして荒れた宿の姫君のことは、気の毒にお思いになって忘れはしないものの、気が進まないのはしかたのないことであった。
ひどく恥ずかしがる姫君の姿を見きわめようというお気持ちも特になくて過ぎていくが、もう一度よく見たら、見直すこともあるかもしれない。手さぐりのおぼつかない感じでは、不思議にわからないこともあるのか、見てみたいものだとお思いになるが、あからさまに見るのもきまりが悪い。女房たちが打ち解けている宵のころに、そっとお入りになって、格子のすき間からご覧になった。
けれども、姫君ご自身はお見えになりそうもない。几帳などはひどく傷んでいるものの、長年置かれた場所は変わらず、押しやったりして乱れていないので、よく見えなくて、女房が四、五人座っている。お膳や、青磁らしい中国渡来の器だが、みすぼらしくて、何のおかずもなく、哀れな様子のものを、姫君の御前から下げて、女房たちが食べている。
隅の間には、たいそう寒そうな女房が、白い衣の言いようもなく煤けたものに、汚らしい褶を腰に結びつけている腰つきが、ぶざまである。それでも櫛を額に垂らして挿している額つきは、内教坊や内侍所あたりにこうした者たちがいるなあと、おかしい。まさか姫君のおそば近くに仕える者とは、お思いにもならなかった。
「ああ、なんて寒い年でしょう。長生きすると、こんなつらい目にもあうものですね」と言って泣く者もいる。「亡き宮様がいらっしゃった頃を、どうしてつらいと思ったのでしょう。こんなに頼りなくても、過ごしていけるものなのですね」と言って、飛び上がりそうに震えている者もいる。
さまざまに体裁の悪いことを嘆き合っているのをお聞きになるのも、いたたまれないので、源氏は立ち退いて、たった今おいでになったようにして、戸をたたきなさる。「それっ」などと言って、灯火の向きを直し、格子を開けてお入れ申し上げる。侍従は斎院にもお仕えしている若い女房で、このころはいなかった。ますます奇妙で田舎じみた者ばかりで、見慣れない気がする。
女房たちがいっそう嘆いていた雪が、空を暗くして激しく降っていた。空の様子も荒々しく、風が吹き荒れて、灯火が消えてしまったのを、ともしなおす人もいない。源氏は、あの物の怪に襲われた時(なにがしの院)を思い出しなさって、荒れた様子は劣らないようだが、邸が狭く、人の気配が少しはあるのなどで心を慰めていらっしゃるが、ぞっとするような、気味悪く寝つけない気がする夜の様子である。
おもしろくも、しみじみとも、普通とは違っていて、心がひかれそうな有様なのに、姫君がたいそう引っこみ思案で、そっけなく、何の見ばえもないのを、源氏は残念にお思いになる。
意訳
源氏は若紫を引き取ってから、そのかわいらしさに夢中になり、六条の女君のもとへも、末摘花のもとへも足が遠のく。
ある夜、源氏は格子のすき間から邸の中をのぞく。姫君は見えないが、すすけた衣を着た老女房たちが、粗末な食事をとり、寒さを嘆き、昔をしのんでいる。宮家の零落ぶりが、生々しく描かれる。
雪の降る荒れた夜、源氏は姫君の邸に泊まる。風が吹き荒れ、灯火が消えた様子に、源氏は夕顔を失ったなにがしの院を思い出す。
語釈・文法注
- 試樂
- 試楽(しがく)。行幸などの舞楽の予行演習。
- だい
- 台盤(だいばん)。食器をのせる台。
- ひそく
- 秘色(ひそく)。中国渡来の青磁。もとは高級品だが、ここでは古びて粗末な食器になっている。
文法
- 願望の「てしがな」(見てしがな)
- 「見たいものだ」。
- 推量の「めり」(かれまさり給ふめれば)
- 語り手が「…足が遠のいていらっしゃるようなので」と推し量る。
解説
格子のすき間から女房たちをのぞく場面は、源氏物語の中でも珍しい、生活感あふれる描写である。高貴な宮家の邸に仕える女房たちが、寒さに震え、粗末な食事をとり、昔をしのんで嘆く。零落した宮家の現実が、ありのままに描かれる。
雪の夜の荒れた邸で、源氏がなにがしの院を思い出す場面は、夕顔の巻との対比を意識させる。同じような荒れた邸でも、夕顔のいた夜と、末摘花のいる夜とでは、源氏の心の動きがまったく違う。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、128–131頁(コマ66–67)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日