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源氏物語 第6帖 末摘花(3)

頭中将との張り合い

登場人物:光源氏・頭中将・大輔の命婦・末摘花

頭中将も姫君に手紙を送るが、源氏にも頭中将にも返事は来ない。頭中将は、自分には返事がないと源氏に打ち明け、源氏は内心おかしく思う。源氏は、口のうまい頭中将の方に姫君がなびくのではないかと気になり、命婦に仲立ちを頼む。春夏が過ぎ、秋になっても姫君からの返事はなく、源氏は意地になって命婦を責める。命婦は、物越しに会わせるくらいならと考えはじめる。

宮中の一室で、文を手にした二人の貴公子が、互いの恋の首尾を探り合うように笑い合っている場面(AI生成)
宮中の一室で、文を手にした二人の貴公子が、互いの恋の首尾を探り合うように笑い合っている場面
  1. 1君きみ君きみきみたちたちたちはははありありありつるつるつるきんきんきんのののねねねををを覺おぼ覺おぼおぼししし出い出いいでゝでゝでて、、、哀あはれ哀あはれあわれげげげなりなりなりつるつるつるすまひすまひすまいのののさまさまさまなどなどなどもももやうやうようかへかへかへてててをかしうをかしうおかしゅう思おも思おもおもひひい續つづ續つづつづけけけ、、、
  2. 2あらましごとあらましごとあらましごとにににいといといとをかしうをかしうおかしゅうらうたきらうたきろうたき人ひと人ひとひとのののさてさてさて年月としつき年月としつきとしつきををを重かさ重かさかさねねね居ゐ居ゐいたらたらたらむむん時とき時ときとき見み見みみそめそめそめててていみじういみじういみじゅう心苦こころぐる心苦こころぐるこころぐるしくしくしくばばば人ひと人ひとひとにににももももてもてもてさわがさわがさわがるるるばかりばかりばかりややや我わ我わわががが心こころ心こころこころもももさまさまさまあしからあしからあしからむむんなどなどなどさへさへさへ中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょうははは思おも思おもおもひひいけりけりけり。。。
  3. 3このこのこの君きみ君きみきみのののかうかうこう氣色けしき氣色けしきけしきばみばみばみありきありきありき給たま給たまたまふふうををを、、、まさにまさにまさにさてさてさてはははすぐしすぐしすぐし給たま給たまたまひひいてててむむんやややとととなまなまなまねたうねたうねとう危あやふ危あやふあやうがりがりがりけりけりけり。。。そのそのその後のち後のちのち此方こなた此方こなたこなたかなたかなたかなたよりよりより文ふみ文ふみふみなどなどなど遣や遣ややりりり給たま給たまたまふふうべしべしべし。。。
  4. 4いづれいづれいずれもももいづれいづれいずれももも返事かへりごと返事かへりごとかえりごと見み見みみえええずずず覺束おぼつか覺束おぼつかおぼつかなくなくなく心こころ心こころこころやましきやましきやましきににに、、、あまりあまりあまりうたてうたてうたてもももあるあるあるかなかなかな、、、さやうさやうさようなるなるなるすまひすまひすまいするするする人ひと人ひとひとははは、、、物もの物ものもの思おも思おもおもひひい知し知ししりりりたるたるたるけしきけしきけしき、、、はかなきはかなきはかなき木草きくさ木草きくさきくさ空そら空そらそらののの氣色けしき氣色けしきけしきにににつけつけつけてててもももとりなしとりなしとりなしなどなどなどしししててて心こころ心こころこころばせばせばせ推お推おおししし量はか量はかはからららるゝるゝるる折々をりをり折々をりをりおりおりあらあらあらむむんこそこそこそ哀あはれ哀あはれあわれなるなるなるべけれべけれべけれ、、、
  5. 5重おも重おもおもしししとととてててもももいといといとかうかうこうあまりあまりあまりうもれうもれうもれたらたらたらむむんははは心こころ心こころこころづきなくづきなくづきなくわろびわろびわろびたりたりたりととと中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょうはははまいてまいてまいて心こころ心こころこころいられいられいられしししけりけりけり。。。
  6. 6例れい例れいれいのののへだてへだてへだて聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまははわぬぬぬ心こころ心こころこころにてにてにて、、、「「「しかじかしかじかしかじかののの返事かへりごと返事かへりごとかえりごとははは見み見みみ給たま給たまたまふふうややや。。。試こころみ試こころみこころみにににかすめかすめかすめたりたりたりしししこそこそこそはしたなくはしたなくはしたなくててて止や止ややみみみにににしかしかしか」」」ととと憂うれ憂うれうれふれふれうればばば、、、
  7. 7さればよさればよさればよ、、、ひよりひよりひよりにににけるけるけるをををやややとととほゝゑまほゝゑまほほえまれれれててて、、、「「「いさいさいさ、、、見み見みみむむんとととしもしもしも思おも思おもおもははわねねねばばばにににややや見み見みみるるるとととしもしもしもなしなしなし」」」ととといらへいらへいらえ給たま給たまたまふふうををを、、、人ひと人ひとひとわきわきわきしししけるけるけるととと妬ねた妬ねたねとううう思おも思おもおもふふう。。。
  8. 8君きみ君きみきみははは深ふか深ふかふこうううしもしもしも思おも思おもおもははわぬぬぬことことことのののかうかうこう情なさけ情なさけなさけなきなきなきをををすさまじくすさまじくすさまじく思おも思おもおもひひいなりなりなり給たま給たまたまひひいにににしかしかしかどどど、、、かうかうこうこのこのこの中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょうのののいひいひいいありきありきありきけるけるけるををを、、、ことことこと多おほ多おほおおくくくいひいひいいなれなれなれたらたらたらむむん方かた方かたかたにににぞぞぞ靡なび靡なびなびかかかむむんかしかしかし。。。
  9. 9したりしたりしたり顏がほ顏がほがおにてにてにてもともともとのののことことことををを思おも思おもおもひひい放はな放はなはなちちちたらたらたらむむん氣色けしき氣色けしきけしきこそこそこそうれはしかるうれはしかるうれわしかるべけれべけれべけれとととおぼしおぼしおぼしててて、、、命婦みやうぶ命婦みやうぶみょうぶをををまめやかまめやかまめやかににに語かた語かたかたらひらひらい給たま給たまたまふふう。。。
  10. 10「「「おぼつかなくおぼつかなくおぼつかなくもてもてもてはなれはなれはなれたるたるたる御おん御おんおん氣色けしき氣色けしきけしきなむなむなんいといといと心こころ心こころこころ憂う憂ううききき。。。すきずきしきすきずきしきすきずきしき方かた方かたかたににに疑うたが疑うたがうたがひひいよせよせよせ給たま給たまたまふふうにににこそこそこそあらあらあらめめめ。。。さりともさりともさりとも短みじか短みじかみじかききき心こころ心こころこころはははえええつかはつかはつかわぬぬぬものものものををを、、、人ひと人ひとひとののの心こころ心こころこころののののどやかのどやかのどやかなるなるなることことことなくなくなくててて思おも思おもおもははわずずずにににのみのみのみあるあるあるににになむなむなんおのづからおのづからおのずから我わ我わわががが過あやま過あやまあやまちちちにににもももなりなりなりぬぬぬべきべきべき。。。
  11. 11心こころ心こころこころのどかのどかのどかにてにてにて、、、親おや親おやおやはらからはらからはらからのののもてもてもてあつかひあつかひあつかい恨うら恨うらうらむるむるむるももも無な無なのううう心こころ心こころこころ安やす安やすやすからからからむむん人ひと人ひとひとはははなかなかなかなかなかなかなむなむなんらうたかるらうたかるろうたかるべきべきべきををを」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、
  12. 12「「「いでやいでやいでや、、、さやうさやうさようにににをかしきをかしきおかしき方かた方かたかたののの御おん御おんおんにににはははえええしもしもしもやややととと、、、つきなげつきなげつきなげにににこそこそこそ見み見みみえええ侍はべ侍はべはべれれれ。。。偏ひとへ偏ひとへひとえににに物もの物ものものづゝみづゝみづつみしししひきひきひき入い入いいりりりたるたるたる方かた方かたかたはははしもしもしもありがたうありがたうありがとう物もの物ものものししし給たま給たまたまふふう人ひと人ひとひとににになむなむなん」」」ととと見み見みみるるるありさまありさまありさまかたりかたりかたり聞きこ聞きこきこゆゆゆ。。。
  13. 13「「「らうらうしうらうらうしうろうろうしゅうかどかどかどめきめきめきたるたるたる心こころ心こころこころはははなきなきなきなななめりめりめり。。。いといといと子こ子ここめかしうめかしうめかしゅうおほどかおほどかおおどかならならならむむんこそこそこそらうたくらうたくろうたくはははあるあるあるべけれべけれべけれ」」」ととと覺おぼ覺おぼおぼししし忘わす忘わすわすれれれずずずののの給のたま給のたまのたまふふう。。。
  14. 14わらはやみわらはやみわらわやみににに煩わづら煩わづらわずらひひい給たま給たまたまひひい、、、人ひと人ひとひと知し知ししれれれぬぬぬ物思ものおもひ物思ものおもひものおもいののの紛まぎ紛まぎまぎれれれももも御心みこころ御心みこころみこころのののいとまいとまいとまなきなきなきやうやうようにてにてにて春夏はるなつ春夏はるなつはるなつ過す過すすぎぎぎぬぬぬ。。。
  15. 15秋あき秋あきあきののの頃ころ頃ころころほひほひおい靜しづか靜しづかしずかにににおぼしおぼしおぼし續つづ續つづつづけけけててて、、、かのかのかのきぬたきぬたきぬたののの音おと音おとおとももも耳みみ耳みみみみにににつきつきつきててて聞き聞きききききにくかりにくかりにくかりしししさへさへさへ戀こひ戀こひこいしうしうしゅうおぼしおぼしおぼし出い出いいでででらるゝらるゝらるるまゝまゝままににに、、、常陸ひたち常陸ひたちひたちののの君きみ君きみきみにににはははしばしばしばしばしばしば聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまへへえどどど、、、
  16. 16猶なほ猶なほなおおぼつかなうおぼつかなうおぼつかのうのみのみのみあれあれあればばば世よ世よよづかづかづかずずず心こころ心こころこころやましうやましうやましゅう、、、まけまけまけてててははは止や止ややまままじじじののの御心みこころ御心みこころみこころさへさへさへ添そ添そそひひいててて命婦みやうぶ命婦みやうぶみょうぶををを責せ責せせめめめ給たま給たまたまふふう。。。「「「いかなるいかなるいかなるやうやうようぞぞぞ、、、いといといとかゝるかゝるかかる事こと事ことことこそこそこそまだまだまだ知し知ししらららねねね」」」ととと、、、いといといとものしものしものしととと思おも思おもおもひひいてててのたまへのたまへのたまえばばば、、、
  17. 17いとほしいとほしいとおしととと思おも思おもおもひひいててて「「「もてもてもてはなれはなれはなれててて似に似ににげなきげなきげなき御おん御おんおん事こと事ことことともともともおもむけおもむけおもむけ侍はべ侍はべはべらららずずず。。。唯ただ唯ただただ大方おほかた大方おほかたおおかたののの御おん御おんおん物もの物ものものづゝみづゝみづつみのののわりなきわりなきわりなきににに手て手ててをををえええさしさしさし出い出いいででで給たま給たまたまははわぬぬぬとととなむなむなん見み見みみ給たま給たまたまふるふるうる」」」ととと聞きこ聞きこきこゆれゆれゆればばば、、、
  18. 18「「「それそれそれこそこそこそははは世よ世よよづかづかづかぬぬぬことことことなれなれなれ。。。物もの物ものもの思おも思おもおもひひい知し知ししるるるまじきまじきまじきほどほどほど獨身ひとりみ獨身ひとりみひとりみをををえええ心こころ心こころこころににに任まか任まかまかせせせぬぬぬほどほどほどこそこそこそさやうさやうさようにににかゞやかしきかゞやかしきかがやかしきもももことわりことわりことわりなれなれなれ。。。何事なにごと何事なにごとなにごとももも思おも思おもおもひひいしづまりしづまりしずまり給たま給たまたまへへえらむらむらんととと思おも思おもおもふふうにににこそこそこそ。。。
  19. 19そこはかとなくそこはかとなくそこはかとなくつれづれつれづれつれづれににに心こころ心こころこころ細ぼそ細ぼそぼそうううのみのみのみ覺おぼ覺おぼおぼゆるゆるゆるををを、、、同おな同おなおなじじじ心こころ心こころこころにににいらへいらへいらえ給たま給たまたまははわむむんははは願ねが願ねがねがひひいかなふかなふかなう心地ここち心地ここちここちなむなむなんすすすべきべきべき。。。何なに何なになにやややかやかやかやととと世よ世よよづけづけづけるるるすぢすぢすじならならならででで、、、そのそのその荒あ荒ああれれれたるたるたるすのこすのこすのこにににたゞずまゝたゞずまゝただずままほしきほしきほしきなりなりなり
  20. 20いといといとおぼつかなうおぼつかなうおぼつかのう心こころ心こころこころ得え得ええぬぬぬ心地ここち心地ここちここちするするするををを、、、かのかのかの御おん御おんおんゆるしゆるしゆるしなくなくなくともともともたばかれたばかれたばかれかしかしかし。。。心こころ心こころこころいられいられいられしししうたてうたてうたてあるあるあるもてなしもてなしもてなしにににはははよもよもよもあらあらあらじじじ」」」などなどなど語かた語かたかたらひらひらい給たま給たまたまふふう。。。
  21. 21猶なほ猶なほなお世よ世よよににに在あ在ああるるる人ひと人ひとひとののの有樣ありさま有樣ありさまありさまををを大方おほかた大方おほかたおおかたなるなるなるやうやうようにてにてにて聞き聞ききききき集あつ集あつあつめめめ耳みみ耳みみみみとゞめとゞめとどめ給たま給たまたまふふう癖くせ癖くせくせのののつきつきつき給たま給たまたまへへえるるるををを、、、さうざうしきさうざうしきそうぞうしき宵居よひゐ宵居よひゐよいいなどなどなどにににはかなきはかなきはかなきついでついでついでににに「「「さるさるさる人ひと人ひとひとこそこそこそ」」」とととばかりばかりばかりきこえきこえきこえ出い出いいでででたりたりたりしししににに
  22. 22かくかくかくわざとがましうわざとがましうわざとがましゅうのたまひのたまひのたまいわたれわたれわたればばばなまなまなま煩わづ煩わづわずらはしくらはしくらわしく姫君ひめぎみ姫君ひめぎみひめぎみののの御おん御おんおん有樣ありさま有樣ありさまありさまももも似に似ににつかはしくつかはしくつかわしくよしめきよしめきよしめきなどなどなどもももあらあらあらぬぬぬををを、、、なかなかなかなかなかなかなるなるなるみちびきみちびきみちびきにににいとほしきいとほしきいとおしきことことことややや見み見みみえええなななむむんととと思おも思おもおもひひいけれけれけれどどど、、、君きみ君きみきみのののかくかくかくまめやかまめやかまめやかにににのたまふのたまふのたまうににに聞き聞ききききき入い入いいれれれざらざらざらむむんもももひがひがしかるひがひがしかるひがひがしかるべしべしべし。。。
  23. 23父ちち父ちちちちみこみこみこのののおはしおはしおわしけるけるける折をり折をりおりにににだにだにだにふりふりふりにににたるたるたるあたりあたりあたりとととててておとなひおとなひおとない聞きこ聞きこきこゆるゆるゆる人ひと人ひとひともももなかりなかりなかりけるけるけるををを、、、ましてましてまして今いま今いまいまははは淺芽あさぢ淺芽あさぢあさじわくるわくるわくる人ひと人ひとひとももも跡あと跡あとあと絕た絕たたえええたるたるたるににに、、、かくかくかく世よ世よよににに珍めづら珍めづらめずらしきしきしき御おん御おんおんけはひけはひけわいのののもりもりもり匂にほ匂にほにおひひいくるくるくるをををばばばなまなまなま女をんな女をんなおんなばらばらばらなどなどなどもももゑみゑみえみまけまけまけててて、、、
  24. 24「「「猶なほ猶なほなお聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまへへえ」」」とととそゝのかしそゝのかしそそのかし奉たてまつ奉たてまつたてまつれれれどどど、、、淺あさ淺あさあさましうましうましゅう物もの物ものものづゝみづゝみづつみししし給たま給たまたまふふう心こころ心こころこころにてにてにてひたぶるひたぶるひたぶるににに見み見みみももも入い入いいれれれ給たま給たまたまははわぬぬぬなりなりなりけりけりけり。。。
  25. 25命婦みやうぶ命婦みやうぶみょうぶははは、、、さらばさらばさらばさりぬべからさりぬべからさりぬべからむむん折をり折をりおりににに物もの物ものものごしごしごしににに聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまははわむむんほどほどほど御心みこころ御心みこころみこころにににつかつかつかずずずばばばさてさてさてももも止や止ややみみみねねねかしかしかし、、、又また又またまたさるべきさるべきさるべきにてにてにて假かり假かりかりにににもももおはしおはしおわし通かよ通かよかよははわむむんををを咎とが咎とがとがめめめ給たま給たまたまふふうべきべきべきひとひとひとなしなしなしなどなどなど、、、あだめきあだめきあだめきたるたるたるはやりはやりはやり心こころ心こころこころはははうちうちうち思おも思おもおもひひいててて、、、父君ちちぎみ父君ちちぎみちちぎみにににもももかゝるかゝるかかる事こと事ことことなどなどなどもももいはいはいわざりざりざりけりけりけり。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

君達(源氏と頭中将)は、さっきの琴の音を思い出しなさって、みすぼらしかった住まいの様子なども、普通とは違っておもしろいと思い続け、頭中将は、もし、たいそう美しくかわいらしい人が、あのようにして年月を過ごしていた時に、自分が見初めて、ひどくいとしく思うようになったら、人にも騒がれるほどに、自分の心も見苦しく乱れるだろうか、などと想像までしたのだった。

この源氏の君がこうして気をそそられて通っていらっしゃるのを、まさかこのままでお済ませにはなるまいと、頭中将は何となくいまいましく、気がかりに思った。その後、二人ともあちらこちらから手紙などをお送りになったのだろう。どちらにも返事がなく、気がかりでいらいらするので、頭中将は、あまりにもひどいではないか、ああした住まいをする人なら、物の情趣がわかっている様子で、ちょっとした木や草、空の様子につけても返事をして、気立てが推し量られる折々があってこそ、心ひかれるものだろうに、重々しいといっても、こうまで引っこみ思案なのは、気にくわず、みっともないと、なおさらいらいらしていた。

いつものように源氏に隔てを置き申し上げない気性なので、「これこれの返事はご覧になりましたか。試しにちょっと手紙を送ってみたのですが、きまり悪いことに、それきりになってしまいました」と嘆くので、源氏は、やはりそうか、言い寄ったのだなとほほえまれて、「さあ、見たいとも思わないからだろうか、見たこともない」とお答えになるのを、頭中将は、分けへだてをしたなと、いまいましく思う。

源氏は、それほど深くも思っていないことなので、こうまでつれないのを興ざめに思うようになっていらっしゃったが、こうしてこの頭中将が言い寄っていたのなら、口数多く言い慣れているほうになびくだろう、頭中将が得意顔になって、先に言い寄った私のことなど思い捨てた様子になったら、つらいことだろうとお思いになって、命婦にまじめにご相談なさる。

「はっきりしない、よそよそしいご様子がたいそう情けない。私を浮気な者と疑っていらっしゃるのだろう。それにしても、私は気の短い心は持たないのに、相手の心がおっとりとしていないで、思いがけないことばかりあるので、自然と私の過ちにもなってしまうのだ。心がおっとりとして、親や兄弟が世話を焼いたり恨んだりすることもなく、気楽な人こそ、かえってかわいらしいだろうに」とおっしゃると、

命婦は「いえいえ、そのような風流なお遊びの雨宿りには、とてもふさわしくないようにお見受けします。ひたすら遠慮深く引っこんでいらっしゃる点では、めったにない方で」と、見ている様子をお話し申し上げる。源氏は「気がきいて、才走った心はないようだね。たいそう子どもっぽく、おっとりとしているのこそ、かわいらしいものだ」と、お忘れにならずにおっしゃる。

瘧病にお悩みになり、人知れぬ物思い(藤壺のこと)の紛れもあって、お心に余裕がないようなうちに、春も夏も過ぎた。秋のころ、静かに思い続けなさって、あの夕顔の宿で聞いた砧の音も、耳について聞きにくかったことまでが恋しく思い出されるにつけて、常陸宮の姫君にはしばしばお手紙をお送りになるが、やはりはっきりしない様子ばかりなので、常識はずれで、いらいらし、負けてはいられないというお気持ちまで加わって、命婦をお責めになる。

「どういうことなのだ。こんなことは、まだ経験したことがない」と、たいそう不愉快に思っておっしゃるので、命婦は気の毒に思って、「まったく不釣り合いなご縁だとも、姫君は思っていらっしゃいません。ただ、ひととおりでない内気さのせいで、お手紙に手をお出しになれないのだと拝見しております」と申し上げると、

源氏は「それこそ世間知らずなことだ。物の分別もつかない年ごろや、自分の身を思いどおりにできない身の上なら、そのように恥ずかしがるのももっともだが、何事も落ち着いて考えていらっしゃるだろうと思えばこそ。何となく退屈で心細くばかり思われるのを、同じ心で返事をしてくださったら、願いがかなう心地がするだろう。何やかやと色めいた方面ではなく、あの荒れた簀子にたたずんでいたいのだ。たいそう気がかりで、わけのわからない気がするから、姫君のお許しがなくても、取り計らっておくれ。いらいらして、ひどいことをするようなことはまさかしないから」などとお話しになる。

世の中にいる女性の様子を、何気ないふうに聞き集めて、耳をとめなさる癖がおつきになっていたのを、命婦は、退屈な夜の話相手などの折に、ちょっとしたついでに「こんな方が」とだけ申し上げたのに、こうしてわざわざ言い続けなさるので、何となくわずらわしく、姫君のご様子も、源氏にふさわしいようなたしなみもないので、なまじっかな手引きをして、お気の毒なことになるのではないかと思ったけれど、源氏がこうしてまじめにおっしゃるのに、聞き入れないのもひねくれているだろう。

父宮がいらっしゃった時でさえ、古びた家だということで、訪ねてくる人もなかったのに、まして今は、浅茅を分けて訪れる人も跡絶えているところに、こうして世にも珍しいお方の気配が漏れてくるのを、年配の女房たちもにこにこして、「やはりご返事なさいませ」とお勧め申し上げるけれど、姫君はあきれるほど内気なお心で、まったくご覧にもならないのだった。

命婦は、それならば、適当な折に、物越しにお話しなさって、お気に召さなかったら、それでおしまいにすればよい、また、もしご縁があって、仮にも通っていらっしゃるようになっても、とがめなさる人もいないなどと、浮ついた、はやりの心で思って、父君にもこうしたことなどは言わなかった。

意訳

源氏と頭中将は、ともに常陸宮の姫君に手紙を送るが、どちらにも返事は来ない。頭中将は源氏に打ち明けるが、源氏ははぐらかす。

姫君は、ただ内気で、手紙の返事も書けないのだった。返事のないことにかえって意地になった源氏は、命婦を責めて、仲立ちを頼む。命婦は、物越しに会わせてみて、だめならそれまでと考える。

語釈・文法注

かさやどり
笠宿り。雨宿り。催馬楽「妹が門」の「笠宿り」をふまえ、ちょっとした気まぐれの恋の相手、という意で使っている。

文法

推量の「べし」(文など遣り給ふべし)
語り手が「…お送りになったのだろう」と推し量る。
命令の「ね」(さても止みねかし)
完了の「ぬ」の命令形。「それでおしまいになってしまえばよい」。

解説

源氏と頭中将が同じ女性をめぐって張り合う様子が、ユーモラスに描かれる。源氏は、姫君にそれほど深い思いがあるわけではないのに、頭中将に負けたくないという気持ちから、意地になっていく。

姫君は、返事が書けないほど内気で、和歌のやりとりもできない。当時の貴族社会では、和歌の贈答は恋の基本であり、返事がないことは、姫君の教養のなさを暗示している。

関連

出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、120–125頁(コマ62–64)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日