古典ライブラリー

源氏物語 第4帖 夕顔(8)

物の怪

登場人物:光源氏・夕顔・右近

宵過ぎ、源氏の夢枕に美しい女が現れ、恨み言を言って夕顔を引き起こそうとする。目覚めると灯は消え、源氏は宿直の者を起こしに出るが、戻ると夕顔はすでに息が絶えかけていた。紙燭の明かりで、夢に見た女の面影がふっと消えるのを見る。夕顔は冷えきって息絶え、源氏は右近とともに、惟光の来るのを待ちながら長い夜を過ごす。

暗い邸の寝所で、動かなくなった夕顔のそばに源氏が寄り添い、右近が心配そうに見守っている場面(AI生成)
暗い邸の寝所で、動かなくなった夕顔のそばに源氏が寄り添い、右近が心配そうに見守っている場面
  1. 1宵よひ宵よひよい過す過すすぐるぐるぐるほどほどほどににに少すこ少すこすこししし寢ね寢ねね入い入いいりりり給たま給たまたまへへえるるるににに、、、御おん御おんおん枕まくら枕まくらまくらがみがみがみにににいといといとをかしげをかしげおかしげなるなるなる女をんな女をんなおんな居ゐ居ゐいててて、、、
  2. 2「「「おのおのおのがががいといといとめでたしめでたしめでたしととと見み見みみ奉たてまつ奉たてまつたてまつるるるをををばばば尋たづ尋たづたずねねねもももおもほさおもほさおもおさでででかくかくかくことことことなるなるなる事こと事ことことなきなきなき人ひと人ひとひとをををゐゐいててておはしおはしおわしててて時とき時ときときめかしめかしめかし給たま給たまたまふふうこそこそこそいといといとめざましくめざましくめざましくつらけれつらけれつらけれとととてててこのこのこの御おん御おんおん傍かたはら傍かたはらかたわらののの人ひと人ひとひとををを搔か搔かかききき起おこ起おこおこさささむむんとととすすすととと見み見みみ給たま給たまたまふふう。。。
  3. 3物もの物ものものにににおそはるゝおそはるゝおそわるる心地ここち心地ここちここちしししててて驚おどろ驚おどろおどろききき給たま給たまたまへへえれれればばば火ひ火ひひももも消き消ききえええにににけりけりけり。。。うたてうたてうたておぼさおぼさおぼさるれるれるればばば太刀たち太刀たちたちををを引ひ引ひひききき拔ぬ拔ぬぬきききてててうちうちうち置お置おおききき給たま給たまたまひひいててて右近うこん右近うこんうこんををを起おこ起おこおこししし給たま給たまたまふふう。。。これこれこれももも恐おそろ恐おそろおそろしししととと思おも思おもおもひひいたるたるたるさまさまさまにてにてにて參まゐ參まゐまいりりりよれよれよれりりり。。。
  4. 4「「「渡殿わたどの渡殿わたどのわたどのなるなるなるとのゐびととのゐびととのいびと起おこ起おこおこしししてててさしさしさしててて參まゐ參まゐまいれれれととといへいへいえ」」」とととののの給のたま給のたまのたまへへえばばば、、、「「「いかでいかでいかでかかかまからまからまからむむん、、、闇くら闇くらくろうてうてうて」」」ととといへいへいえばばば、、、
  5. 5「「「あなあなあな若々わかわか若々わかわかわかわかししし」」」とととうちうちうち笑わら笑わらわらひひい給たま給たまたまひひいててて手て手ててををを叩たた叩たたたたききき給たま給たまたまへへえばばば、、、山響やまびこ山響やまびこやまびこののの答こた答こたこたふるふるうる聲こゑ聲こゑこえいといといとうとましうとましうとまし。。。
  6. 6人ひと人ひとひとはははえええ聞き聞きききききつけつけつけででで參まゐ參まゐまいらららぬぬぬににに、、、このこのこの女君をんなぎみ女君をんなぎみおんなぎみいみじういみじういみじゅうわなゝきわなゝきわななき惑まど惑まどまどひひいててて、、、いかさまいかさまいかさまにににせせせむむんととと思おも思おもおもへへえりりり。。。汗あせ汗あせあせもももしとゝしとゝしととににになりなりなりてててわれわれわれかかかののの氣色けしき氣色けしきけしきなりなりなり。。。
  7. 7「「「ものおぢものおぢものおじをををなむなむなんわりなくわりなくわりなくせせせさせさせさせ給たま給たまたまふふう御おん御おんおん本性ほんじやう本性ほんじやうほんじょうにてにてにていかにいかにいかにおぼさおぼさおぼさるゝるゝるるにににかかか」」」ととと右近うこん右近うこんうこんもももきこゆきこゆきこゆ。。。
  8. 8いといといとかよわくかよわくかよわくててて晝ひる晝ひるひるももも空そら空そらそらをををのみのみのみ見み見みみつるつるつるものものものををを、、、いとほしいとほしいとおしとととおぼしおぼしおぼしててて、、、「「「われわれわれ人ひと人ひとひとをををおこさおこさおこさむむん。。。手て手てて叩たた叩たたたたけけけばばば、、、山響やまびこ山響やまびこやまびこののの答こた答こたこたふるふるうるいといといとうるさしうるさしうるさし。。。こゝこゝここにににしばししばししばし近ちか近ちかちかくくく」」」とととててて、、、
  9. 9右近うこん右近うこんうこんををを引ひ引ひひききき寄よ寄よよせせせ給たま給たまたまひひいててて、、、西にし西にしにしののの妻戶つまど妻戶つまどつまどににに出い出いいでゝでゝでて戶と戶ととををを押お押おおしししあけあけあけ給たま給たまたまへへえれれればばば渡殿わたどの渡殿わたどのわたどのののの火ひ火ひひももも消き消ききえええにににけりけりけり。。。風かぜ風かぜかぜ少すこ少すこすこしししうちうちうち吹ふ吹ふふきききたるたるたるににに人ひと人ひとひとははは少すくな少すくなすくなくくくててて侍さぶら侍さぶらさぶらふふうかぎりかぎりかぎり皆みな皆みなみな寢ね寢ねねたりたりたり。。。
  10. 10このこのこの院ゐん院ゐんいんののの預あづかり預あづかりあずかりののの子こ子ここのののむつましくむつましくむつましくつかひつかひつかい給たま給たまたまふふう若わか若わかわかきききをのこをのこおのこまたまたまたうへわらはうへわらはうえわらわ一人ひとり一人ひとりひとり例れい例れいれいののの隨身ずいじん隨身ずいじんずいじんばかりばかりばかりぞぞぞありありありけるけるける。。。召め召めめせせせばばば御おん御おんおん答いらへ答いらへいらえしししててて起お起おおきききたれたれたればばば、、、
  11. 11「「「紙燭しそく紙燭しそくしそくさしさしさしてててまゐれまゐれまいれ。。。隨身ずいじん隨身ずいじんずいじんもももしししててて絕た絕たたえええずずずこわづくれこわづくれこわづくれととと仰おほ仰おほおおせせせよよよ。。。人ひと人ひとひと離ばな離ばなばなれれれたるたるたる所ところ所ところところににに心こころ心こころこころとけとけとけててていぬるいぬるいぬるものものものかかか。。。惟光これみつ惟光これみつこれみつののの朝臣あそん朝臣あそんあそんのののきたりきたりきたりつつつらむらむらんははは」」」ととと問と問ととはははせせせ給たま給たまたまへへえばばば、、、
  12. 12「「「侍はべ侍はべはべらひらひらいつれつれつれどどど仰事おほせごと仰事おほせごとおおせごともももなしなしなし。。。曉あかつき曉あかつきあかつきににに御おん御おんおん迎むかへ迎むかへむかえににに參まゐ參まゐまいるるるべきべきべきよしよしよし申まう申まうもうしししてててなむなむなん罷まか罷まかまかででで出い出いいででで侍はべ侍はべはべりりりぬるぬるぬる」」」ととときこゆきこゆきこゆ。。。
  13. 13このこのこのかうかうこう申まう申まうもうすすすものものものはははなりなりなりけれけれければばば、、、ゆづるゆづるゆずるいといといとつきづきしくつきづきしくつきづきしく打う打ううちちち鳴なら鳴ならならしししててて「「「火ひ火ひひ危あやふ危あやふあやうししし」」」ととといふいふいふいふいういう預あづかり預あづかりあずかりががが曹司ざうし曹司ざうしぞうしのののかたかたかたへへへにににいぬるいぬるいぬるなりなりなり。。。
  14. 14內うち內うちうちををを覺おぼ覺おぼおぼしししやりやりやりててて、、、ははは過す過すすぎぎぎぬぬぬらむらむらん、、、瀧口たきぐち瀧口たきぐちたきぐちのののとのゐまうしとのゐまうしとのいもうし今いま今いまいまこそこそこそととと推お推おおししし量はか量はかはかりりり給たま給たまたまふふうははは、、、まだまだまだいたういたういとう更ふ更ふふけけけぬぬぬにににこそこそこそははは、、、
  15. 15歸かへ歸かへかえりりり入い入いいりりりててて探さぐ探さぐさぐりりり給たま給たまたまへへえばばば、、、女君をんなぎみ女君をんなぎみおんなぎみはははさながらさながらさながら臥ふ臥ふふしししててて右近うこん右近うこんうこんははは傍かたはら傍かたはらかたわらにににうつぶしうつぶしうつぶし臥ふ臥ふふしししたりたりたり。。。
  16. 16「「「こここはははなぞなぞなぞ。。。あなあなあなものぐるほしものぐるほしものぐるおしのののものおぢものおぢものおじややや。。。荒あ荒ああれれれたるたるたる所ところ所ところところははは狐きつね狐きつねきつねなどなどなどやうやうようののの物もの物ものものののの、、、人ひと人ひとひとおびやかさおびやかさおびやかさむむんとととてててけけけおそろしうおそろしうおそろしゅう思おも思おもおもははわするするするならならならむむん。。。まろまろまろあれあれあればばばさやうさやうさようののの物もの物ものものにににはははおどさおどさおどされれれじじじ」」」とととててて引ひ引ひひききき起おこ起おこおこししし給たま給たまたまふふう。。。
  17. 17「「「いといといとうたてうたてうたてみだりみだりみだり心地ごこち心地ごこちごこちののの惡あ惡ああしうしうしゅう侍はべ侍はべはべれれればばばうつぶしうつぶしうつぶし臥ふ臥ふふしししててて侍はべ侍はべはべるるるなりなりなり。。。おまへおまへおまえにににこそこそこそわりなくわりなくわりなくおぼさおぼさおぼさるるるらめらめらめ」」」ととといへいへいえばばば、、、「「「そよそよそよ、、、などなどなどかうかうこうははは」」」とととてててかいかいかい探さぐ探さぐさぐりりり給たま給たまたまふふうににに息いき息いきいきもももせせせずずず。。。
  18. 18引ひ引ひひききき動うごか動うごかうごかししし給たま給たまたまへへえどどどなよなよなよなよなよなよとととしししててて我わ我わわにににもももあらあらあらぬぬぬさまさまさまなれなれなればばば、、、いといといと痛いた痛いたいたくくくわかびわかびわかびたるたるたる人ひと人ひとひとにてにてにて物もの物ものものににに氣け氣けけ取ど取どどららられれれぬるぬるぬるなななめりめりめりとととせせせむむんかたかたかたなきなきなき心地ここち心地ここちここちししし給たま給たまたまふふう。。。
  19. 19しそくしそくしそくもてもてもて參まゐ參まゐまいれれれりりり。。。「「「右近うこん右近うこんうこんももも動うご動うごうごくくくべきべきべきさまさまさまにもにもにもあらあらあらねねねばばば近ちか近ちかちかききき御おん御おんおん几帳きちやう几帳きちやうきちょうををを引ひ引ひひききき寄よ寄よよせせせててて、、、猶なほ猶なほなおもてもてもて參まゐ參まゐまいれれれ」」」とととののの給のたま給のたまのたまふふう。。。
  20. 20例れい例れいれいならならならぬぬぬことことことにてにてにて、、、おまへおまへおまえ近ちか近ちかちかくくくもももえええ參まゐ參まゐまいらららぬぬぬつゝましさつゝましさつつましさににに、、、にもにもにもえええのぼらのぼらのぼらずずず、、、「「「猶なほ猶なほなおもてもてもてこここややや。。。所ところ所ところところににに從したが從したがしたがひひいてててこそこそこそ」」」とととててて召め召めめししし寄よ寄よよせせせててて見み見みみ給たま給たまたまへへえばばば、、、
  21. 21唯ただ唯ただただこのこのこの枕まくら枕まくらまくらがみがみがみににに夢ゆめ夢ゆめゆめににに見み見みみつるつるつる形かたち形かたちかたちしししたるたるたる女をんな女をんなおんな面影おもかげ面影おもかげおもかげににに見み見みみえええてててふとふとふと消き消ききえええ失う失ううせせせぬぬぬ。。。昔むかし昔むかしむかし物語ものがたり物語ものがたりものがたりなどなどなどにににこそこそこそ斯かか斯かかかかるるる事こと事ことことはははきけきけきけ」」」ととといといといと珍めづ珍めづめずらからからかにににむくつけゝれむくつけゝれむくつけけれどどど、、、
  22. 22まづまづまずこのこのこの人ひと人ひとひとはははいかにいかにいかになりなりなりぬるぬるぬるぞぞぞとととおもほすおもほすおもおす心騷ごころさわぎ心騷ごころさわぎごころさわぎににに身み身みみののの上うへ上うへうえももも知し知ししららられれれ給たま給たまたまははわずずず。。。添そ添そそひひい臥ふ臥ふふしししててて「「「やゝやゝやや」」」ととと驚おどろ驚おどろおどろかしかしかし給たま給たまたまへへえどどど、、、たゞたゞただひえひえひえににに冷ひ冷ひひえええ入い入いいりりりててて息いき息いきいきははは疾と疾ととくくく絕た絕たたえええはてはてはてにににけりけりけり。。。
  23. 23いはいはいわむむんかたかたかたなしなしなし。。。たのもしくたのもしくたのもしくいかにいかにいかにととと言い言いいひひいふれふれふれ給たま給たまたまふふうべきべきべき人ひと人ひとひともももなしなしなし。。。法師ほふし法師ほふしほうしなどなどなどをををこそこそこそはははかゝるかゝるかかる方かた方かたかたのののたのもしきたのもしきたのもしきものものものにににははは覺おぼ覺おぼおぼすすすべけれべけれべけれどどど、、、
  24. 24さささこそこそこそ心こころ心こころこころ强つよ强つよつよがりがりがり給たま給たまたまへへえどどど若わか若わかわかききき御おん御おんおん心地ここち心地ここちここちにてにてにていふいふいうがががひひひなくなくなくなりなりなりぬるぬるぬるををを見み見みみ給たま給たまたまふふうににに、、、遣や遣ややるるる方かた方かたかたなくなくなくてててつとつとつと抱いだ抱いだいだきききててて「「「あがあがあが君きみ君きみきみ生い生いいききき出い出いいででで給たま給たまたまへへえ。。。いみじきいみじきいみじきめめめななな見み見みみせせせ給たま給たまたまひひいそそそ」」」とととののの給のたま給のたまのたまへへえどどど、、、冷ひ冷ひひえええ入い入いいりりりたれたれたればばばけはひけはひけわい物もの物ものものうくうくうくなりなりなり行ゆ行ゆゆくくく。。。
  25. 25右近うこん右近うこんうこんははは唯ただ唯ただただあなあなあなむづかしむづかしむずかしととと思おも思おもおもひひいけるけるける心地ここち心地ここちここち皆みな皆みなみな醒さ醒ささめめめててて泣な泣ななききき惑まど惑まどまどふふうさまさまさまいといといといみじいみじいみじ。。。
  26. 26南殿なでん南殿なでんなでんののの鬼おに鬼おにおにのののなにがしなにがしなにがしのののおとゞおとゞおとどををを脅おど脅おどおどしししたるたるたるををを覺おぼ覺おぼおぼししし出い出いいでゝでゝでて心こころ心こころこころづよくづよくづよく「「「さりともさりともさりともいたづらいたづらいたずらににになりなりなりはてはてはて給たま給たまたまははわじじじ。。。よるよるよるののの聲こゑ聲こゑこえはははおどろおどろしおどろおどろしおどろおどろし。。。あなかまあなかまあなかま」」」ととといさめいさめいさめ給たま給たまたまひひいててて、、、いといといとあわたゞしきあわたゞしきあわただしきににに呆あき呆あきあきれれれたるたるたる心地ここち心地ここちここちししし給たま給たまたまふふう。。。
  27. 27このこのこの男をとこ男をとこおとこををを召め召めめしししててて、、、こゝこゝここにににいといといと怪あや怪あやあやしうしうしゅう物もの物ものものにににおそはれおそはれおそわれたるたるたる人ひと人ひとひとののの惱なや惱なやなやましげましげましげなるなるなるををを、、、只今ただいま只今ただいまただいま惟光これみつ惟光これみつこれみつののの朝臣あそん朝臣あそんあそんののの宿やど宿やどやどれれれるるる所ところ所ところところににに罷まか罷まかまかりりりててて急いそ急いそいそぎぎぎ參まゐ參まゐまいるるるべきべきべきよしよしよしいへいへいえととと仰おほ仰おほおおせせせよよよ。。。
  28. 28なにがしなにがしなにがしののの、、、そこそこそこにににものするものするものする程ほど程ほどほどならならならばばば、、、此所ここ此所ここここににに來く來くくべきべきべきよしよしよし忍しの忍しのしのびびびててていへいへいえ。。。かのかのかの尼君あまぎみ尼君あまぎみあまぎみなどなどなどののの聞き聞ききかかかむむんにににおどろおどろしくおどろおどろしくおどろおどろしくいふいふいうななな。。。かゝるかゝるかかるありきありきありき許ゆる許ゆるゆるさささぬぬぬ人ひと人ひとひとなりなりなり」」」などなどなど、、、物もの物ものものののの給のたま給のたまのたまふふうやうやうようなれなれなれどどど胸むね胸むねむねはははふたがりふたがりふたがりててて、、、
  29. 29このこのこの人ひと人ひとひとををを空むな空むなむなしくしくしくなしなしなしてててむむんことことことのののいみじくいみじくいみじく覺おぼ覺おぼおぼさささるゝるゝるるににに添そ添そそへへえててて、、、大方おほかた大方おほかたおおかたのののむくむくしさむくむくしさむくむくしさ譬たと譬たとたとへへえむむんかたかたかたなしなしなし。。。
  30. 30夜中よなか夜中よなかよなかももも過す過すすぎぎぎにににけむけむけんかしかしかし、、、風かぜ風かぜかぜやゝやゝやや荒々あらあら荒々あらあらあらあらしうしうしゅう吹ふ吹ふふきききたるたるたるははは。。。ましてましてまして松まつ松まつまつのののひゞきひゞきひびき木こ木ここぶかくぶかくぶかくきこえきこえきこえててて、、、氣色けしき氣色けしきけしきあるあるあるとりとりとりのののからごゑからごゑからごえににになきなきなきたるたるたるももも、、、梟ふくろふ梟ふくろふふくろうはははこれこれこれにににやややとととおぼゆおぼゆおぼゆ。。。
  31. 31うちうちうち思おも思おもおもひひいめぐらすめぐらすめぐらすににに、、、こなたかなたこなたかなたこなたかなたけけけどほくどほくどおくうとましきうとましきうとましきにににひとひとひと聲こゑ聲こゑこえせせせずずず、、、などなどなどてててかくかくかくはかなきはかなきはかなきやどりやどりやどりははは取と取ととりりりつるつるつるぞぞぞととと悔くや悔くやくやしさしさしさもももやらやらやらむむんかたかたかたなしなしなし。。。
  32. 32右近うこん右近うこんうこんはははものものものもももおぼえおぼえおぼえずずず君きみ君きみきみにににつとつとつと添そ添そそひひい奉たてまつ奉たてまつたてまつりりりてててわなゝきわなゝきわななき死し死ししぬぬぬべしべしべし。。。又また又またまたこれこれこれもももいかならいかならいかならむむんととと心こころ心こころこころそらそらそらにてにてにてとらへとらへとらえ給たま給たまたまへへえりりり。。。我わ我わわれれれ一人ひとり一人ひとりひとりさかしきさかしきさかしき人ひと人ひとひとにてにてにて覺おぼ覺おぼおぼしししやるやるやる方かた方かたかたぞぞぞなきなきなきややや。。。
  33. 33火ひ火ひひはははほのかほのかほのかにににまたゝきまたゝきまたたきてててもやもやもやのののきはきはきわににに立た立たたてててたるたるたる屏風びやうぶ屏風びやうぶびょうぶのののかみかみかみ、、、こゝかしここゝかしこここかしこのののくまぐましくくまぐましくくまぐましく覺おぼ覺おぼおぼえええ給たま給たまたまふふうににに、、、物もの物ものものののの足音あしおと足音あしおとあしおとひしひしひしひしひしひしととと蹈ふ蹈ふふみみみ鳴な鳴なならしらしらしつゝつゝつつうしろうしろうしろよりよりより寄よ寄よよりりり來き來ききるるる心地ここち心地ここちここちすすす。。。
  34. 34惟光これみつ惟光これみつこれみつ疾と疾ととくくく參まゐ參まゐまいらららなむなむなんとととおぼすおぼすおぼす。。。ありかありかありか定さだ定さださだめめめぬぬぬものものものにてにてにてこゝかしここゝかしこここかしこ尋たづ尋たづたずねねねけるけるける程ほど程ほどほどににに夜よ夜よよののの明あ明ああくるくるくる程ほど程ほどほどののの久ひさ久ひさひさしさしさしさ千夜ちよ千夜ちよちよをををすぐさすぐさすぐさむむん心こころ心こころこころちちちししし給たま給たまたまふふう。。。
  35. 35辛から辛からからうじてうじてうじてとりとりとりののの聲こゑ聲こゑこえ遙はるか遙はるかはるかににに聞きこ聞きこきこゆるゆるゆるににに、、、命いのち命いのちいのちをををかけかけかけててて何なに何なになにののの契ちぎり契ちぎりちぎりにににかゝるかゝるかかるめめめををを見み見みみるるるらむらむらん。。。我わ我わわががが心こころ心こころこころながらながらながらかゝるかゝるかかるすぢすぢすじにににおほけなくおほけなくおおけなくあるあるあるまじきまじきまじき心こころ心こころこころののの報むくい報むくいむくいににに、、、かくかくかくきしきしきし方かた方かたかた行ゆ行ゆゆくくくさきさきさきのののためしためしためしとととなりなりなりぬぬぬべきべきべき事こと事ことことはははあるあるあるなななめりめりめり、、、
  36. 36忍しの忍しのしのぶぶぶともともとも世よ世よよにににあるあるあることことこと隱かく隱かくかくれれれなくなくなくててて、、、うちうちうちにににきこしきこしきこし召め召めめささされれれむむんことことことををを始はじ始はじはじめめめててて人ひと人ひとひとののの思おも思おもおもひひいいはいはいわむむん事こと事ことこと、、、よからよからよからぬぬぬわらはべわらはべわらわべののの口くち口くちくちずさびずさびずさびににになりなりなりぬぬぬべきべきべきなななめりめりめり、、、ありありてありありてありありてをこがましきをこがましきおこがましき名な名ななををを取と取ととるるるべきべきべきかなかなかなととと覺おぼ覺おぼおぼしししめぐらすめぐらすめぐらす。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

宵を過ぎるころ、源氏が少しお眠りになったところ、お枕もとに、たいそう美しい女が座っていて、「私がたいそうすばらしいとお慕い申し上げているのに、訪ねようともお思いにならず、こんな格別でもない人を連れておいでになって、ご寵愛なさるのは、まことに心外でつらいことです」と言って、このお側の人を引き起こそうとする、と夢にご覧になる。

何かに襲われるような気持ちがして、はっと目をさましなさると、灯火も消えていた。気味悪くお思いになるので、太刀を引き抜いてそばにお置きになって、右近をお起こしになる。右近も恐ろしいと思っている様子で、そばに寄ってきた。

「渡殿にいる宿直の者を起こして、紙燭をともして参れと言いなさい」とおっしゃると、右近は「どうして行けましょう、暗くて」と言うので、源氏は「まあ、子どもっぽい」とお笑いになって手をお叩きになると、こだまが答える声がたいそう気味悪い。誰も聞きつけないで参上しないので、この女君はひどく震えおびえて、どうしようと思っている。汗もびっしょりになって、正気を失った様子である。

右近も「ひどく物おじをなさるご性分なので、どんなにお苦しいことでしょう」と申し上げる。たいそうかよわくて、昼も空ばかり見ていたのにと、源氏はかわいそうにお思いになって、「私が人を起こそう。手を叩くと、こだまが答えるのがとてもうるさい。ここにしばらく、そばにいなさい」と言って、右近を女の側に引き寄せなさって、西の妻戸に出て戸を押し開けなさると、渡殿の灯火も消えていた。

風が少し吹いているところに、人は少なくて、お仕えしている者はみな寝ている。この院の管理人の子で、源氏が親しく召し使っていらっしゃる若い男と、殿上童一人と、いつもの随身だけがいたのだった。お呼びになると、お返事をして起きたので、「紙燭をともして参れ。随身も弦打ちをして、絶えず声を立てるように言え。人里離れた所で、気を許して寝ている者があるか。惟光朝臣が来ていたようだが」とお尋ねになると、

「お控えしておりましたが、ご命令もありません。明け方にお迎えに参上するよしを申し上げて退出いたしました」と申し上げる。このように申す者は滝口の武士だったので、弓の弦をたいそうそれらしく打ち鳴らして、「火の用心」と言いながら、管理人の部屋の方へ行くようだ。

源氏は宮中を思いやりなさって、名対面は過ぎたころだろう、滝口の宿直申しはちょうど今ごろだろうと推し量りなさるところを見ると、まだそれほど夜も更けていないのだろう。部屋に戻ってお探りになると、女君はそのまま臥していて、右近はそのそばにうつぶしている。

「これはどうしたことだ。なんとひどい物おじだ。荒れた所には、狐などのようなものが、人をおどかそうとして、恐ろしく思わせるのだろう。私がいるからには、そのようなものにはおどされはしない」と言って、右近を引き起こしなさる。

右近が「たいそうひどく気分が悪うございますので、うつぶしているのでございます。ご主人こそ、どんなにかお苦しいことでしょう」と言うので、源氏は「そうだ、どうしてこうなのか」と言って手さぐりなさると、息もしていない。揺り動かしなさるが、なよなよとして正気もない様子なので、たいそうひどく子どもっぽい人なので、物の怪に魂を取られてしまったのだろうと、どうしようもないお気持ちになる。

紙燭を持って参った。「右近も動けそうにないから、近くの御几帳を引き寄せて、もっと近くに持って参れ」とおっしゃる。ふだんにないことなので、おそば近くにも参上できない遠慮から、長押にも上がらないので、「もっと持ってこい。遠慮も場所によってだ」と言って、呼び寄せてご覧になると、ちょうどこの枕もとに、夢に見た姿をした女が面影に見えて、ふっと消え失せた。

「昔物語などではこうしたことを聞くが」と、たいそう珍しく気味悪いけれど、まずこの人はどうなったのかとお思いになる胸騒ぎに、ご自分の身の危険も考えられなさらない。添い寝して「これ、これ」と起こしなさるが、ただもう冷たく冷えきって、息はとうに絶えてしまっていた。

何とも言いようがない。頼りになるように、どうしたらよいかと相談なさることのできる人もいない。法師などこそ、こうした時の頼りになるものとお思いになるはずだが、あれほど気丈にふるまっていらっしゃっても、若いお心なので、女が言いようもなく死んでしまったのをご覧になると、どうしようもなくて、ひしと抱いて、「いとしい人よ、生き返ってください。ひどい目にあわせないでください」とおっしゃるが、冷えきってしまっているので、様子もうとましくなっていく。

右近は、ただ「ああ気味が悪い」と思っていた気持ちもすっかりさめて、泣きまどう様子はたいそう痛ましい。源氏は、南殿の鬼が何某の大臣をおどしたという例をお思い出しになって、気丈に、「いくらなんでも、このまま死んでしまわれることはあるまい。夜の声は大げさに響く。静かに」とおいさめになって、たいそうあわただしいので、途方にくれたお気持ちになる。

源氏はこの男を呼んで、「ここに、たいそう奇妙なことに物の怪に襲われた人が苦しそうにしているので、今すぐ惟光朝臣の泊まっている所へ行って、急いで参上するように言えと命じよ。何某の阿闍梨が、そこに来ているなら、ここに来るよう、こっそりと言え。あの尼君などが聞くと困るから、大げさに言うな。こうした忍び歩きを許さない人だ」などと、何かおっしゃるようではあるが、胸はふさがって、この人を死なせてしまうことがたいそう悲しく思われなさるのに加えて、あたりの気味悪さはたとえようもない。

夜中も過ぎたのだろうか、風がやや荒々しく吹いているのは。まして松の響きが木深く聞こえて、異様な鳥がしわがれた声で鳴いているのも、梟とはこれだろうかと思われる。あれこれと思いめぐらすと、どこもかしこも人気がなく、気味が悪いのに、人の声もしない。どうしてこんな頼りない宿を取ってしまったのかと、後悔してもどうしようもない。

右近は何もわからなくなって、源氏にぴったりと寄り添い申し上げて、震えて死にそうである。またこの右近もどうなることかと、うわの空で、源氏は右近をつかまえていらっしゃる。自分ひとりが正気の人で、どうしたらよいか思案のしようもない。

灯火はかすかにまたたいて、母屋の境に立ててある屏風の上や、あちらこちらの隅々が暗く気味悪く思われなさるうえに、何かの足音がみしみしと踏み鳴らしながら、背後から近寄ってくる気がする。惟光が早く参ってほしいとお思いになる。惟光は居所の定まらない者で、あちらこちらを探しまわるうちに、夜が明けるまでの長さは、千夜を過ごすような気持ちがなさる。

ようやく鶏の声が遠くに聞こえるにつけても、源氏は、命をかけて、どんな因縁でこのような目にあうのだろう、我ながら、こうした恋の道で、身のほど知らずの、あってはならない心を持った報いとして、このように過去にも未来にも例となりそうなことが起こったのだろう、隠しても、世の中にあることは隠れようもなく、帝のお耳に入ることをはじめとして、人々が思ったり言ったりすること、たちの悪い子どもたちの口ずさみにもなりそうだ、あげくのはてに、ばかげた評判を取ることになるだろうと、思いめぐらしなさる。

意訳

源氏の夢に美しい女が現れ、「私をさしおいて、こんなつまらない人を」と恨み、夕顔を引き起こそうとする。名は明かされないが、前の場面で源氏が六条の女君を思い出していたことから、この女は六条の女君の生霊だと読まれることが多い。

灯の消えた荒れた院で、源氏は人を呼ぶが、手を叩けばこだまが返るばかりで、誰も来ない。紙燭が届いた時、夢の女の面影がふっと消え、夕顔はすでに冷たくなっていた。

頼れる人もいない夜、源氏は右近を抱えながら、松風の響き、梟の声、背後から近づく足音の気配におびえる。夜明けまでの時間は千夜のように長い。源氏は、身のほど知らずの恋の報いを思い、世間の噂になることを恐れる。

語釈・文法注

しそく
紙燭(しそく)。松の木を細く削って先を焦がし、油を塗って火をともす照明具。
つるうち
弦打ち。弓の弦を手で引いて鳴らし、魔物をはらうこと。
瀧口
滝口の武士。清涼殿の東北にある滝口に詰めて、宮中を警護した武士。
なだいめん
名対面。宮中で、夜の亥の刻(午後十時ごろ)に、宿直の殿上人が名のりをあげる儀式。その後、滝口の武士の「宿直申し(とのいもうし)」が行われた。
なげし
長押。柱と柱をつなぐ横木。ここでは廂の間と母屋の境の、一段高くなった所。
南殿の鬼のなにがしのおとゞを脅したるためし
紫宸殿(南殿)に鬼が出て、ある大臣(藤原忠平とされる)をおどしたが、大臣が太刀を抜いて叱ると逃げ去ったという話。『大鏡』などに見える。
あざり
阿闍梨(あじゃり)。高僧の称号。惟光の兄にあたる僧。

文法

禁止の「な…そ」(いみじきめな見せ給ひそ)
副詞「な」と終助詞「そ」で動詞をはさみ、「…しないでくれ」とやわらかく禁止する。
強意+推量の「てむ」(空しくなしてむ)
「きっと死なせてしまうだろう」。
他に誂える「なむ」(惟光疾く參らなむ)
未然形につく終助詞で、他人に対する願望を表す。「早く参ってほしい」。

解説

物の怪の場面は、源氏物語の中でもとくに名高い。夢に現れた女の正体について、本文は何も語らない。六条の女君の生霊とする説が有力だが、なにがしの院に住みついた霊とする説もある。源氏自身も、荒れた所には狐のようなものがいるのだろうと考えている。

宮中の名対面や滝口の宿直申しを思いやる場面は、源氏が日常の秩序の中にいる自分を思い出そうとしているかのようである。その日常から遠く離れた荒れた院で、源氏は初めて、頼る人のいない恐怖を味わう。

夜明けを待つ源氏の思いは、恐怖から、自らの恋の罪への反省、そして世間の噂への心配へと移っていく。若い源氏の動揺が、細やかに描かれている。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、69–74頁(コマ36–38)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日