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源氏物語 第3帖 空蝉(5)

明け方の帰り道

登場人物:光源氏・小君・老女房

小君に導かれて邸を出ようとすると、老女房に見とがめられ、源氏は背の高い女房と取り違えられる。冷や汗をかきながら渡殿の陰に隠れて、ようやく抜け出す。二条院に戻った源氏は、小君を相手に空蟬のつれなさを恨む。

明け方の渡殿で、光源氏が柱の陰に身をひそめ、小君が老女房に応対している場面(AI生成)
明け方の渡殿で、光源氏が柱の陰に身をひそめ、小君が老女房に応対している場面
  1. 1小君こぎみ小君こぎみこぎみ近ちか近ちかちかくくく臥ふ臥ふふしししたるたるたるををを起お起おおししし給たま給たまたまへへえばばば、、、うしろめたううしろめたううしろめとうおもひおもひおもいつゝつゝつつ寢ね寢ねねけれけれければばばふとふとふと驚おどろ驚おどろおどろきききぬぬぬ。。。
  2. 2戶と戶ととをををやをらやをらやおら押お押おおししし明あ明ああくるくるくるににに、、、老お老おおいいいたるたるたる御達ごたち御達ごたちごたちののの聲こゑ聲こゑこえにてにてにて「「「あれあれあれはははたぞたぞたぞ」」」とととおどろおどろしくおどろおどろしくおどろおどろしく問と問ととふふう。。。
  3. 3わづらはしくわづらはしくわずらわしくててて「「「まろまろまろぞぞぞ」」」ととといらふいらふいらう。。。「「「夜中よなか夜中よなかよなかにににこはこはこはなぞなぞなぞありかありかありかせせせ」」」とととさかしがりさかしがりさかしがりてててへへへくくく。。。
  4. 4にくゝにくゝにくくててて「「「あらあらあらずずずこゝもとこゝもとここもとへへへ出い出いいづるづるずるぞぞぞ」」」とととててて君きみ君きみきみをををおしおしおし出い出いいででで奉たてまつ奉たてまつたてまつるるるににに、、、曉あかつき曉あかつきあかつき近ちか近ちかちかききき月つき月つきつき隈くま隈くまくまなくなくなくさしさしさし出い出いいでゝでゝでてふとふとふと人ひと人ひとひとのののかげかげかげ見み見みみえええけれけれければばば、、、
  5. 5「「「たまたまたまおはするおはするおわするははは」」」ととと問と問ととふふう。。。「「「民部みんぶ民部みんぶみんぶのののなななめりめりめり。。。けしうけしうけしゅうはははあらあらあらぬぬぬおもとおもとおもとのののかなかなかな」」」ととといふいふいう。。。
  6. 6丈たけ丈たけたけ高たか高たかたかききき人ひと人ひとひとののの常つね常つねつねににに笑わら笑わらわらははわるゝるゝるるをををいふいふいうなりなりなりけりけりけり。。。
  7. 7老人おいびと老人おいびとおいびとこれこれこれをををつらねつらねつらねてててありきありきありきけるけるけるととと思おも思おもおもひひいててて、、、「「「いまいまいま只今ただいま只今ただいまただいま立た立たたちちち並なら並ならならびびび給たま給たまたまひひいなむなむなん」」」ととといふいふいふいふいういう、、、我わ我わわもももこのこのこの戶と戶ととよりよりより出い出いいでゝでゝでてくくく。。。
  8. 8侘わ侘わわしけれしけれしけれどどどえええはたはたはたおしおしおしかへさかへさかえさででで渡殿わたどの渡殿わたどのわたどのののの口くち口くちくちにににかいかいかい添そ添そそひひいててて隱かく隱かくかくれれれ立た立たたちちち給たま給たまたまへへえれれればばば、、、このこのこのおもとおもとおもとさしさしさし寄よ寄よよりりりててて
  9. 9「「「おもとおもとおもとははは今宵こよひ今宵こよひこよいはははうへうへうえにににややや侍さぶら侍さぶらさぶらひひい給たま給たまたまひひいつるつるつる。。。をとゝひをとゝひおとといよりよりより腹はら腹はらはらををを病や病ややみみみててていといといとわりなけれわりなけれわりなければばばしもしもしもににに侍はべ侍はべはべりりりつるつるつるををを、、、
  10. 10人ひと人ひとひとずくなずくなずくななりなりなりとととててて召め召めめしゝしゝししかばかばかばよべよべよべ參ま參まもううう上のぼ上のぼのぼりりりしかしかしかどどど、、、猶なほ猶なほなおえええ堪た堪たたふふうまじくまじくまじくなむなむなん」」」ととと憂うれ憂うれうれふふう。。。
  11. 11いらへいらへいらえももも聞き聞ききかかかででで「「「あなあなあな、、、今いま今いまいま聞きこ聞きこきこえええむむん」」」とととててて過す過すすぎぎぎぬるぬるぬるににに、、、辛から辛からかろうううじてじてじて出い出いいででで給たま給たまたまふふう。。。
  12. 12猶なほ猶なほなおかゝるかゝるかかるありきありきありきはははかろがろしくかろがろしくかろがろしく危あや危あやあやふかりふかりうかりけりけりけりととといよいよいよいよいよいよおぼしおぼしおぼし懲こ懲ここりりりぬぬぬべしべしべし。。。
  13. 13小君こぎみ小君こぎみこぎみ御車みくるま御車みくるまみくるまののの尻しり尻しりしりにてにてにて二條院にでうのゐん二條院にでうのゐんにじょうのいんにににおはしましおはしましおわしましぬぬぬ。。。
  14. 14ありさまありさまありさまののの給のたま給のたまのたまひひいててて、、、幼をさな幼をさなおさなかりかりかりけりけりけりとととあばめあばめあばめ給たま給たまたまひひいててて、、、かのかのかの人ひと人ひとひとののの心こころ心こころこころををを、、、爪つま爪つまつまはじきはじきはじきをををしししつゝつゝつつ怨うら怨うらうらみみみ給たま給たまたまふふう。。。
  15. 15いとほしういとほしういとおしゅうてててものものものももも聞きこ聞きこきこえええずずず、、、「「「いといといと深ふか深ふかふこううう惡にく惡にくにくみみみ給たま給たまたまふふうべかべかべかめれめれめればばば身み身みみももも憂う憂ううくくく思おも思おもおもひひいはてはてはてぬぬぬ。。。
  16. 16などなどなどかかかよそよそよそにてもにてもにても懷なつ懷なつなつかしきかしきかしきいらへいらへいらえばかりばかりばかりはははししし給たま給たまたまふふうまじきまじきまじき。。。伊豫いよ伊豫いよいよののの介すけ介すけすけににに劣おと劣おとおとりりりけるけるける身み身みみこそこそこそ」」」などなどなど、、、心こころ心こころこころづきなしづきなしずきなしととと思おも思おもおもひひいてててのたまふのたまふのたまう。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

源氏が近くに寝ていた小君をお起こしになると、小君は気がかりに思いながら寝ていたので、すぐに目を覚ました。小君が妻戸をそっと押し開けると、年老いた女房の声で、「そこにいるのは誰ですか」と、大げさに尋ねる。小君は面倒に思って「私だよ」と答える。「夜中に、これはまあ、どうしてお出歩きになるのですか」と、利口ぶって、外の方へ出てくる。

小君は憎らしく思って、「いや、ちょっとそこまで出るだけだ」と言って、源氏を押し出し申し上げると、明け方近い月が隈なく照らしていて、ふと人影が見えたので、老女房は「もう一人いらっしゃるのはどなたですか」と尋ねる。そして「民部のおもとのようですね。なかなか見事な背丈ですこと」と言う。背の高い女房で、いつも人に笑われている者のことを言うのだった。

老女房は、小君がその女房を連れて歩いているのだと思って、「今にあなたも、同じくらいの背丈におなりでしょう」と言いながら、自分もこの戸から出てくる。源氏は困ったことだと思うが、押し返すこともできず、渡殿の口に身を寄せて隠れて立っていらっしゃると、この老女房が近寄ってきて、

「おもとは今夜は御前にお仕えしていたのですか。私はおとといからお腹をこわして、ひどくつらいので下がっていたのですが、人が少ないからと呼ばれたので、ゆうべ参上したのですけれど、やはり我慢できそうにありません」とこぼす。返事も聞かないで「ああ、お腹が痛い。また後でお話ししましょう」と言って通り過ぎたので、源氏はやっとのことでお出になった。

やはりこうした忍び歩きは、軽々しく危ないものだと、いよいよ懲りておしまいになったことだろう。小君は御車の後ろの方に乗って、源氏は二条院にお帰りになった。

源氏は昨夜の様子をお話しになって、おまえは幼かったなあとけなしなさり、あの人の心を、爪はじきをしながら恨みなさる。小君は気の毒で、何も申し上げられない。「たいそう深く私を嫌っていらっしゃるようだから、我が身もいやになってしまった。どうして、よそよそしくても、せめて優しい返事ぐらいはしてくださらないのだろう。伊予介にも劣る身なのだなあ」などと、気に入らないと思っておっしゃる。

意訳

緊張した夜の場面の後に、老女房との滑稽なやりとりが置かれている。源氏は背の高い女房「民部のおもと」と間違えられ、身動きできずに渡殿の陰に隠れる。腹痛を訴えて去っていく老女房の姿には、ユーモアがある。

光源氏が女房と取り違えられ、冷や汗をかく場面は、理想の貴公子の姿とはほど遠い。語り手は「いよいよおぼし懲りぬべし」と、源氏の失敗をやや皮肉をこめて語る。二条院に戻った源氏が、小君を相手に空蟬への恨み言を並べ、「伊豫の介に劣りける身こそ」と嘆くところにも、若い源氏の子どもっぽさが表れている。

語釈・文法注

ありかせまたふ
底本の表記。「歩(あり)かせ給ふ」で、お出歩きになる、の意と解される。老女房の言葉。
とざま
外の方。
たまおはするはたぞ
もう一人いらっしゃるのは誰か、の意か。語句の解釈には諸説ある。
おもと
女房を親しんで、また敬って呼ぶ言葉。
たけだち
背丈、身の丈。
あなはらはら
ああ、お腹が痛い。「腹腹」と腹痛を訴える言葉と解されている。

文法

推量「べし」(おぼし懲りぬべし)
語り手の推量。「懲りてしまわれたことだろう」。草子地。
推定「めり」(民部のおもとなめり)
目で見て推定する「…のようだ」。老女房が月明かりの人影を見て判断している。
係り結びの省略(伊豫の介に劣りける身こそ)
係助詞「こそ」の後に「あれ」などが省略され、言いさしで嘆きを表す。

解説

空蟬の巻は、緊張した場面と滑稽な場面を交互に配している。源氏が背の高い女房と間違えられる場面は、物語の中でも珍しい、源氏の失敗談である。夜明けの月明かりの中、身を隠す源氏と、腹痛を訴える老女房の対比が、場面をいきいきとさせている。

「民部のおもと」は、背が高くて笑われていた女房だという。老女房は小君が女房を連れて歩いていると思い込み、源氏に話しかけてくる。月の光がありながら、男の源氏に気づかないところに、場面のおかしみがある。

二条院は、桐壺の巻で帝が改築させた源氏の母の里邸である。源氏はここを自分の私邸としており、のちに紫の上を迎えることになる。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、53–54頁(コマ28–29)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日