源氏物語 第3帖 空蝉(4)
軒端荻との契り
寝ていたのが軒端荻だと気づいた源氏は、人違いと知られるのも体裁が悪く、そのまま方違えのたびに会いに来ていたように言いつくろって契りを結ぶ。無邪気な娘をいとしく思いながらも、心は逃げ去った空蟬のかたくなさに向かう。源氏は空蟬の残した薄衣を取って部屋を出る。

- 1いぎたなきいぎたなきいぎたなきさまさまさまなどなどなどぞぞぞあやしくあやしくあやしく變變かわりりりててて、、、やうやうやうやうようよう見見み顯顯あらはしはしわし給給たまひひいてててあさましくあさましくあさましく心心こころやましけれやましけれやましけれどどど、、、
- 2人人ひとたがへたがへたがえとととたどりたどりたどりててて見見みえええむむんもももをこがましくをこがましくおこがましく怪怪あやしししととと思思おもふふうべしべしべし、、、ほほほののの人人ひとををを尋尋たずねねねよらよらよらむむんももも、、、かばかりかばかりかばかり遁遁のがるゝるゝるる心心こころあめれあめれあめればばばかひなくかひなくかいなくをこをこおこにににこそこそこそ思思おもははわめめめとととおぼすおぼすおぼす。。。
- 3かのかのかのをかしかりをかしかりおかしかりつるつるつる火影火影ほかげならならならばばばいかゞいかゞいかがはははせせせむむんととと覺覺おぼしししなるなるなるももも、、、わろきわろきわろき御心御心みこころ淺淺あささささなななめりめりめりかしかしかし。。。
- 4やうやうやうやうようよう目目めさめさめさめててていといといと覺覺おぼえええずずずあさましきあさましきあさましきににに、、、あきれあきれあきれたるたるたる氣色氣色けしきにてにてにて、、、何何なにののの心心こころふかくふかくふかくいとほしきいとほしきいとおしき用意用意よういもももなしなしなし。。。
- 5世世よののの中中なかをををまだまだまだ思思おもひひいしらしらしらぬぬぬ程程ほどよりよりよりはははざればみざればみざればみたるたるたるかたかたかたにてにてにてあえかあえかあえかにもにもにも思思おもひひい惑惑まどははわずずず、、、
- 6我我わともともとも知知しらせらせらせじじじとととおもほせおもほせおもおせどどど、、、いかにいかにいかにしししてててかゝるかゝるかかる事事ことぞぞぞととと後後のちににに思思おもひひい廻廻めぐらさらさらさむむんももも我我わががが爲爲ためにはにはにはことことことにもにもにもあらあらあらねねねどどど、、、
- 7あのあのあのつらきつらきつらき人人ひとのののあながちあながちあながちににに世世よをををつゝむつゝむつつむもももさすがにさすがにさすがにいとほしけれいとほしけれいとおしければばば、、、度々度々たびたびののの御御おん方方かたたがへたがへたがえにににことづけことづけことずけ給給たまひひいしししさまさまさまをををいといといとようようよう言言いひひいなしなしなし給給たまふふう。。。
- 8たどらたどらたどらむむん人人ひとははは心得心得こころえつつつべけれべけれべけれどどど、、、まだまだまだいといといと若若わかききき心地心地ここちにににさこそさこそさこそさしさしさしすぎすぎすぎたるたるたるやうやうようなれなれなれどどど、、、えええしもしもしも思思おもひひいわかわかわかずずず。。。
- 9憎憎にくしししとととはははなけれなけれなけれどどど御心御心みこころとまるとまるとまるべきべきべき故故ゆえもももなきなきなき心地心地ここちしししててて、、、猶猶なおかのかのかのうれたきうれたきうれたき人人ひとののの心心こころをををいみじくいみじくいみじくおぼすおぼすおぼす。。。
- 10いづこいづこいずこにににはひはひはいまぎれまぎれまぎれてててととと思思おもひひい居居いたらたらたらむむん、、、かくかくかく人人ひとはははありがたきありがたきありがたきものものものをををとととおぼすおぼすおぼすにににしもしもしも、、、あやにくあやにくあやにくににに紛紛まぎれれれがたうがたうがとう思思おもひひい出出いでででられられられ給給たまふふう。。。
- 11このこのこの人人ひとははは何何なに心心こころなくなくなく若若わかやかやかやかなるなるなるけはひけはひけわいもももあはれあはれあわれなれなれなればばばさすがにさすがにさすがになさけなさけしくなさけなさけしくなさけなさけしく契契ちぎりりりりおかおかおかせせせ給給たまふふう。。。
- 12「「「人人ひと知知しりりりたるたるたる事事ことよりよりよりもももかやうかやうかようなるなるなるははは哀哀あわれももも添添そふふうことことこととととなむなむなん昔昔むかしののの人人ひともももいひいひいいけるけるける。。。あひあひあい思思おもひひい給給たまへへえよよよ。。。
- 13つゝむつゝむつつむ事事ことなきなきなきにににしもしもしもあらあらあらねねねばばば身身みながらながらながら心心こころにもにもにも得得え任任まかすすすまじくまじくまじくなむなむなんありありありけるけるける。。。又又またさるべきさるべきさるべき人々人々ひとびとももも免免ゆるささされれれじじじかしかしかしとととかねてかねてかねて胸胸むね痛痛いたくくくなむなむなん。。。忘忘わすれれれででで待待まちちち給給たまへへえよよよ」」」などなどなど語語かたらひらひらい給給たまふふう。。。
- 14「「「人人ひとののの思思おもひひい侍侍はべらららむむん事事ことののの耻耻はずかしきしきしきににになむなむなんえええ聞聞きこえええさすさすさすまじきまじきまじき」」」ととと裏裏うらもももなくなくなくいふいふいう。。。
- 15「「「なべてなべてなべてののの人人ひとににに知知しらせらせらせばばばこそこそこそあらあらあらめめめ。。。このこのこの小小ちいさきききうへうへうえなどなどなどににに傳傳つたへへえててて聞聞きこえええむむん。。。氣色氣色けしきなくなくなくもてなしもてなしもてなし給給たまへへえ」」」などなどなど言言いひひい置置おきききててて、、、
- 16かのかのかの脫脫ぬぎぎぎすべしすべしすべしたるたるたる薄薄うすををを取取とりりりててて出出いででで給給たまひひいぬぬぬ。。。
現代語訳
寝坊な様子などが不思議に違っていて、だんだん別人だとお気づきになって、あきれて不愉快にお思いになるけれど、人違いだとうろたえて見せるのも、みっともなく、相手も変だと思うだろう、本来の目当ての人を探し出して近寄るにしても、これほど逃げようとする心があるようだから、かいのないことで、ばかにされるだけだろうとお思いになる。あの、灯影で見た美しい娘であるなら、まあよいだろうとお思いになるのも、よくないお心の浅さというものだろう。
娘はようやく目を覚まして、まったく思いもよらないことにあきれた様子で、深い思慮も、気の毒になるような心づかいもない。まだ男女の仲を知らない年頃にしては、ませたところがあって、か弱く取り乱すこともない。源氏は自分だとも知らせまいとお思いになるが、どうしてこんなことになったのかと後で娘が考えめぐらしても、自分にとってはどうということもないが、あのつれない人(空蟬)が、ひたすら世間体をはばかっているのも、さすがにかわいそうなので、たびたびの方違えにかこつけて、ここへ来ていたのはあなたに会うためだったと、たいそううまく言いつくろいなさる。
よく考える人なら気づくだろうが、まだたいそう若い心なので、あんなにませたところがあるようでも、そこまでは見分けられない。源氏は、憎いというのではないけれど、お心がひかれるわけもない気がして、やはりあの恨めしい人の心を、たいそうなものだとお思いになる。どこに隠れて、私を愚かな男だと思っているのだろう、これほど強情な人はめったにいないものを、とお思いになるにつけても、あいにく、心から紛れようもなく思い出されなさる。
この娘は無邪気で若々しい様子もいとしいので、源氏はさすがに情をこめて、将来のことをお約束なさる。「人に知られた仲よりも、こうした忍ぶ仲のほうが、情けも深まるものだと、昔の人も言っています。私を思ってくださいね。私にも人目をはばかることがないわけではないので、思うままにはできないのです。またあなたのしかるべきご家族も、お許しにならないだろうと、今から胸が痛みます。忘れずに待っていてくださいね」などと、ありきたりにお話しになる。
娘は「人がどう思うかが恥ずかしくて、お便りも差し上げられないでしょう」と、隠しだてもなく言う。源氏は「世間一般の人に知らせるのなら困るでしょう。この小さな殿上童(小君)などに託して便りをしましょう。そ知らぬふりをしていてください」などと言い置いて、あの人(空蟬)が脱ぎすべらせていった薄衣を取って、お出になった。
意訳
人違いに気づいた源氏は、それを相手に悟らせないよう、軒端荻に会うために来ていたのだと言いつくろう。語り手はこれを「わろき御心淺さなめりかし」と、はっきり批判している。源氏の振る舞いを美化せず、その身勝手さを語り手が指摘するところに、源氏物語の語りの特徴がある。
軒端荻と契りながらも、源氏の心は逃げた空蟬に向かっている。「かくしうねき人はありがたきものを」という言葉には、拒まれたことへの悔しさと、それだけに強まる空蟬への思いがこめられている。源氏が最後に空蟬の薄衣を持ち去るのは、その思いのあらわれである。
語釈・文法注
- ほ意
- 本意(ほい)。もともとの目当て、本来の目的。ここでは空蟬。
- かたくなし
- 愚かだ、見苦しい。
- しうねし
- 強情だ、執念深い。
- なほなほし
- ありきたりだ、平凡だ。
- うへ人
- 殿上人。ここでは殿上童として宮中に出入りする小君を指す。
- 薄ぎぬ
- 薄い衣。空蟬が脱ぎ残していった小袿(こうちき)。
文法
- 推量「べし」(怪しと思ふべし)
- 源氏が相手の気持ちを推し量る。「変だと思うだろう」。
- 草子地(わろき御心淺さなめりかし)
- 語り手が物語の外から、登場人物を評する言葉。「よくないお心の浅さなのだろうよ」。
- 係り結び(こそ…め)(をこにこそ思はめ)
- 係助詞「こそ」を受けて、推量の「む」が已然形「め」で結ばれている。
解説
軒端荻(のきばのおぎ)は、伊予介の娘で、空蟬の継娘にあたる。この巻ではまだ名がなく、夕顔の巻で源氏が荻の枝に歌を結んで贈ったことから、軒端荻と呼ばれるようになる。
人違いのまま契りを結ぶ場面で、語り手は源氏の心の動きを細かく描きつつ、「わろき御心淺さ」と批判する。源氏物語は、主人公を理想化するだけでなく、その欠点や身勝手さも描く物語である。
源氏が持ち去った「薄ぎぬ」は、次の場面以降、空蟬の象徴となる。脱ぎ捨てられた衣と蝉の抜け殻を重ねる発想が、この巻の巻名へとつながっていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、51–53頁(コマ27–28)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日