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源氏物語 第3帖 空蝉(2)

碁打ちの垣間見

登場人物:光源氏・空蟬・軒端荻

格子のすき間からのぞくと、灯火のもとで空蟬と継娘の軒端荻が碁を打っていた。空蟬は小柄で、顔も手も隠すようにつつましい。軒端荻は色白でふくよかな華やかな娘で、胸もあらわにくつろいでいる。美しさでは劣る空蟬のたしなみ深さに、源氏は心ひかれる。

夏の夜、灯火のもとで空蟬と軒端荻が碁を打ち、光源氏が格子の陰からその姿をうかがう場面(AI生成)
夏の夜、灯火のもとで空蟬と軒端荻が碁を打ち、光源氏が格子の陰からその姿をうかがう場面
  1. 1このこのこの入い入いいりりりつるつるつる格子かうし格子かうしこうしはははまだまだまださゝさゝささねねねばばばひまひまひま見み見みみゆるゆるゆるににによりよりよりててて西にし西にしにしざまざまざまににに見み見みみ通かよ通かよかよししし給たま給たまたまへへえばばば、、、このこのこのきはきはきわににに立た立たたてててたるたるたる屏風びやうぶ屏風びやうぶびょうぶももも端はし端はしはしののの方かた方かたかたおしおしおし疊たた疊たたたたまままれれれたるたるたるににに、、、まぎるまぎるまぎるべきべきべき几張きちやう几張きちやうきちょうなどなどなどももも暑あつ暑あつあつけれけれければばばにににやややうちかけうちかけうちかけててていといといとよくよくよく見み見みみ入い入いいれれれらるらるらる。。。
  2. 2火ひ火ひひ近ちか近ちかちこうううともしともしともしたりたりたり。。。
  3. 3もやもやもやのののにににそばめそばめそばめるるる人ひと人ひとひとややや我わ我わわががが心こころ心こころこころかくるかくるかくるとととまづまづまず目め目めめとゞめとゞめとどめ給たま給たまたまへへえばばば、、、
  4. 4濃こ濃ここききき綾あや綾あやあやのののなななめりめりめり、、、何なに何なになににににかかかあらあらあらむむん上うへ上うへうえににに着き着ききててて、、、頭かしら頭かしらかしらつきつきつきほそやかほそやかほそやかににに小ちひさ小ちひさちいさききき人ひと人ひとひとののの、、、姿すがた姿すがたすがたぞぞぞゐゐいたるたるたる。。。
  5. 5かほかほかおなどなどなどはははさしさしさしむかひむかひむかいたるたるたる人ひと人ひとひとなどなどなどにもにもにもわざとわざとわざと見み見みみゆゆゆまじうまじうまじゅうもてなしもてなしもてなしたりたりたり。。。手て手ててつきつきつきやせやせやせやせやせやせとととしししててていたういたういとうひきひきひきかくしかくしかくしたたためりめりめり。。。
  6. 6今いま今いまいま一人ひとり一人ひとりひとりはははひんがしひんがしひんがしむきむきむきにてにてにて殘のこり殘のこりのこりるるる所ところ所ところところなくなくなく見み見みみゆゆゆ。。。
  7. 7白しろ白しろしろきききうすものうすものうすもののののひとへがさねひとへがさねひとえがさねのののだつだつだつ物もの物ものものないがしろないがしろないがしろににに着き着ききなしなしなしててて、、、紅くれなゐ紅くれなゐくれないののの腰こし腰こしこしひきひきひきゆへゆへゆえるるるきはきはきわまでまでまで胸むね胸むねむねのののあらはあらはあらわににになるなるなるもてなしもてなしもてなしなりなりなり。。。
  8. 8いといといと白しろ白しろしろうううをかしげをかしげおかしげにににつぶつぶつぶつぶつぶつぶととと肥こ肥ここえええてててなるなるなる人ひと人ひとひとののの頭かしら頭かしらかしらつきつきつきひたひつきひたひつきひたいつきものものものあざやかあざやかあざやかにににまみまみまみ口くち口くちくちつきつきつきいといといと愛敬あいぎやう愛敬あいぎやうあいぎょうづきづきずき華はな華はなはなやかやかやかなるなるなるかたちかたちかたちなりなりなり。。。
  9. 9髮かみ髮かみかみはははいといといとふさやかふさやかふさやかにてにてにて長なが長ながながくくくはははあらあらあらねねねどどど肩かた肩かたかたののの程ほど程ほどほどいといといと淸きよ淸きよきよげげげににに、、、凡すべ凡すべすべててていといといと拗ねぢ拗ねぢねじけけけたるたるたる所ところ所ところところなくなくなくをかしげをかしげおかしげなるなるなる人ひと人ひとひとととと見み見みみえええたりたりたり。。。
  10. 10うべうべうべこそこそこそ親おや親おやおやののの世よ世よよににになくなくなく思おも思おもおもふふうらめらめらめとととをかしくをかしくおかしく見み見みみ給たま給たまたまふふう。。。
  11. 11心地ここち心地ここちここちぞぞぞ猶なほ猶なほなお靜しづか靜しづかしずかなるなるなるけけけをををそへそへそえばやばやばやととと、、、ふとふとふと見み見みみゆるゆるゆるかどかどかどなきなきなきにはにはにはあるあるあるまじまじまじ、、、
  12. 12碁ご碁ごご打う打ううちちちはてゝはてゝはててさすさすさすわたりわたりわたりとげとげとげににに見み見みみえええてててきはきはきはきはきわきわとととばばば、、、
  13. 13奧おく奧おくおくののの人ひと人ひとひとはははいといといと靜しづか靜しづかしずかにににのどめのどめのどめててて「「「待ま待ままちちち給たま給たまたまへへえやややそこそこそこはははにににこそこそこそあらあらあらめめめ。。。このこのこのわたりわたりわたりのののをををこそこそこそ」」」などなどなどいへいへいえどどど、、、
  14. 14「「「いでいでいでこのこのこの度たび度たびたびははは負ま負ままけけけにににけりけりけり。。。隅すみ隅すみすみののの所々ところどころ所々ところどころところどころいでいでいでいでいでいで」」」ととと、、、およびおよびおよびををを屈かが屈かがかがめめめてててとをとをとをはたはたはたみそみそみそなどなどなど數かず數かずかずふるふるうるさまさまさま、、、
  15. 15伊豫いよ伊豫いよいよのののもももたどたどしかるたどたどしかるたどたどしかるまじうまじうまじゅう見み見みみゆゆゆ。。。少すこ少すこすこししし品しな品しなしなおくれおくれおくれたりたりたり。。。
  16. 16たとしへたとしへたとしえなくなくなく口くち口くちくちおほひおほひおおいてててさやかさやかさやかにもにもにも見み見みみせせせねねねどどど、、、目め目めめをををしつとしつとしつとつけつけつけ給たま給たまたまへへえれれればばばおのづからおのづからおのずからににに見み見みみゆゆゆ。。。
  17. 17目め目めめ少すこ少すこすこししし腫は腫ははれれれたるたるたる心地ここち心地ここちここちしししててて、、、鼻はな鼻はなはななどなどなどもももあざやかあざやかあざやかなるなるなる所ところ所ところところなうなうのうててて匂にほ匂にほにおはしきはしきわしき所ところ所ところところももも見み見みみえええずずず。。。
  18. 18言い言いいひひいたつれたつれたつればばば、、、わろきわろきわろきににによれよれよれるるるかたちかたちかたちをををいといといといたういたういとうもてつけもてつけもてつけててて此こ此ここののの勝すぐ勝すぐすぐれれれるるる人ひと人ひとひとよりよりよりははは心こころ心こころこころあらあらあらむむんととと目め目めめとゞめとゞめとどめつつつべきべきべきさまさまさましししたりたりたり。。。
  19. 19賑にぎ賑にぎにぎはゝしくはゝしくわわしく愛敬あいぎやう愛敬あいぎやうあいぎょうづきづきずきをかしげをかしげおかしげなるなるなるをををいよいよいよいよいよいよ誇ほこ誇ほこほこりかりかりかにににうちうちうち解と解ととけけけててて笑わら笑わらわらひひいなどなどなどばばば匂にほ匂にほにおひひい多おほ多おほおおくくく見み見みみえええてててさるさるさる方かた方かたかたにににいといといとをかしきをかしきおかしきひとざまひとざまひとざまなりなりなり。。。
  20. 20とととはははおぼしおぼしおぼしながらながらながら、、、まめならまめならまめならぬぬぬ御心みこころ御心みこころみこころはははこれこれこれもももおぼしおぼしおぼし放はな放はなはなつつつまじかりまじかりまじかりけりけりけり。。。
  21. 21見み見みみ給たま給たまたまふふうかぎりかぎりかぎりののの人ひと人ひとひとはははうちうちうち解と解ととけけけたるたるたる世よ世よよなくなくなくひきひきひきつくろひつくろひつくろいそばめそばめそばめたるたるたるうはべうはべうわべをををのみのみのみこそこそこそ見み見みみ給たま給たまたまへへえ。。。
  22. 22かくかくかくうちうちうち解と解ととけけけたるたるたる人ひと人ひとひとののの有樣ありさま有樣ありさまありさまなどなどなどはははまだまだまだししし給たま給たまたまははわざりざりざりつるつるつる事こと事ことことなれなれなればばば、、、何なに何なになに心こころ心こころこころもももなうなうのうさやかさやかさやかなるなるなるはははいとほしいとほしいとおしながらながらながら久ひさ久ひさひさしうしうしゅう見み見みみ給たま給たまたまへへえまほしきまほしきまほしきににに、、、

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

小君が入っていった格子は、まだ閉めていないので、すき間が見えるところから西の方をのぞいてごらんになると、こちら側に立ててある屏風も、端の方が折り畳まれていて、目隠しになるはずの几帳なども、暑いからだろうか、帷子をかけ上げてあって、たいそうよく見通せる。灯火を近くにともしている。

母屋の中柱に横向きに寄りかかっているのが、自分の思いを寄せている人だろうかと、まず目をとめてごらんになると、濃い紫の綾の単襲(ひとえがさね)であろうか、何かを上に着て、頭の形がほっそりとした小柄な人で、ぱっとしない姿で座っている。顔などは、向かい合っている人にもわざと見せないようにしている。手つきもやせやせとしていて、たいそう袖の中に引き隠しているようだ。

もう一人は東向きで、すっかり見える。白い薄物の単襲に、二藍の小袿のようなものを無造作に着て、紅の袴の腰ひもを結んだところまで胸をあらわにした、しどけない振る舞いである。たいそう色白でかわいらしく、まるまると太って背の高い人で、頭の形や額つきがくっきりとして、目もとや口もとがたいそう愛嬌があり、華やかな顔立ちである。髪はたいそう豊かで、長くはないけれど、垂れた髪の先や肩のあたりがすっきりと美しく、すべてにひねくれたところがなく、かわいらしい人に見えた。なるほど、親がこのうえなく大切に思うのも当然だろうと、源氏はおもしろくご覧になる。気立てにもう少し落ち着いたところを加えたいものだと、ふと思われる。才気がないわけではなさそうだ。

碁を打ち終えて、駄目を詰めるあたりは、気がきいているように見えて、てきぱきとはしゃいでいると、奥の人(空蟬)はたいそう静かに落ち着いて、「お待ちなさい、そこは持でしょう。このあたりの劫を先に」などと言うけれど、娘は「いいえ、今度は負けてしまいました。隅のあちこちを数えましょう、さあさあ」と、指を折って「十、二十、三十、四十」などと数える様子は、伊予の湯桁の数でも、すらすらと数えてしまいそうに見える。少し品が劣っている。

空蟬は、たとえようもなく口もとを覆って、はっきりとは見せないけれど、源氏がじっと目をこらしていらっしゃるので、自然と横顔が見える。目が少し腫れぼったい感じで、鼻なども整ったところがなく、老けて見えて、つややかな美しさも見えない。言ってしまえば、不器量なほうの顔立ちを、たいそうよく身だしなみで繕って、こちらのすぐれた美しい人よりも、たしなみがありそうだと目をとめずにはいられない様子をしている。

娘のほうは、陽気で愛嬌があり、かわいらしいのを、ますます得意げにくつろいで、笑ったりしてふざけているので、つややかな美しさが多く見えて、それなりにたいそう魅力のある人柄である。源氏は、軽はずみな娘だとはお思いになりながら、まじめでないお心には、この娘も放っておけないのだった。

源氏がご覧になる女性は、どなたも打ち解けた様子を見せることなく、身を取り繕って横を向いた、うわべの姿ばかりをご覧になっている。このように打ち解けた人の様子をのぞき見ることなどは、まだなさったことがなかったので、何の用心もなくすっかり見えてしまうのは気の毒ながら、もっと長く見ていたいとお思いになるところに、

意訳

空蟬の巻のもっとも有名な場面である。源氏は格子のすき間から、空蟬と軒端荻が碁を打つ姿をのぞき見る。軒端荻は色白でふくよかな、華やかな娘で、胸もあらわにくつろぎ、碁に負けると大きな声で目を数える。空蟬は顔も手も隠し、静かに勝負を進める。美しさでは軒端荻がまさるが、源氏は空蟬のたしなみ深さに心ひかれる。

語り手は空蟬を「目少し腫れたる心地して、鼻などもあざやかなる所なう」と、容貌に恵まれない女性として描く。それでも、身だしなみと気立てで人を引きつける空蟬の姿は、雨夜の品定めで語られた「中の品」の女性の魅力そのものである。容貌よりも心ばえ、という物語の価値観が、二人の対比の中に表れている。

語釈・文法注

中柱
母屋の中ほどに立つ柱。
ひとへがさね
単襲(ひとえがさね)。単衣(ひとえ)を何枚か重ねて着る夏の装い。
ものげなし
見ばえがしない、ぱっとしない。
ふたあゐ
二藍(ふたあい)。紅花と藍で染めた、赤みのある紫色。
こうちき
小袿(こうちき)。女性の略式の上着。
ばうぞく
放俗(ほうぞく)。しどけない、だらしない。
そゞろか
背が高くすらりとしている。
さがりば
下がり端。額から左右に垂れた髪の先。
けちさす
囲碁で、勝負がついた後、境界のあいている目(駄目)を詰めること。
心とし
気がきいている、機転がきく。
さうどく
騒ぐ、はしゃぐ。
持(ぢ)
囲碁で、どちらの石も取れない状態。引き分け。
劫(こう)
囲碁で、互いに一子ずつ取り返しができる形。すぐには取り返せない決まりがある。
とをはたみそよそ
十(とお)、二十(はた)、三十(みそ)、四十(よそ)。碁の目を数える声。
伊豫のゆげた
伊予の湯桁。伊予(今の愛媛県)の道後温泉の湯船の桁は数が多いことで知られた。「伊予の湯の湯桁の数は左八つ右は九つ中は十六」という歌謡が伝わる。数の多いものも数えきってしまいそうだ、という意。
そばめ
横顔。
ねびる
年をとって見える、老けている。
そぼる
ふざける、はしゃぐ。
あはつけし
軽はずみだ、浮ついている。
かいまみ
垣間見(かいまみ)。物のすき間からのぞき見ること。平安時代の男女の出会いのきっかけとして、物語によく描かれる。

文法

推定の助動詞「めり」(ひとへがさねなめり)
目で見て推定する「…のようだ」。断定「なり」と結んで「なめり」となる。
係り結び(こそ…らめ)(うべこそ親の世になく思ふらめ)
係助詞「こそ」を受けて、推量の「らむ」が已然形「らめ」で結ばれている。「なるほど…と思うのだろう」。
願望の終助詞「まほし」(見給へまほしき)
「見ていたい」。下二段の「給ふ」はここでは尊敬ではなく、本文の語り方による。

解説

碁を打つ空蟬と軒端荻の垣間見は、『源氏物語絵巻』にも描かれた名場面である。平安時代の女性も碁を楽しんでおり、「持」「劫」「けちさす」などの囲碁の用語がそのまま使われている。

二人の女性の描写は、対照的に組み立てられている。軒端荻は東向きで「殘る所なく見ゆ」、空蟬は横向きで顔も手も隠す。軒端荻は色白でふくよか、空蟬は小柄でやせている。軒端荻は大声ではしゃぎ、空蟬は静かに碁を進める。語り手は、空蟬の容貌がすぐれないことをはっきり書いたうえで、それでも源氏が空蟬に心ひかれる理由を描いている。

「伊豫のゆげた」のたとえは、軒端荻の父が伊予介であることにかけた冗談でもある。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、49–50頁(コマ26–27)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日