古典ライブラリー

大和物語 第20章(第147段)

生田川

摂津の国の娘に、同じ国の菟原の男と和泉の国の血沼の男が同じほどの志で求婚する。娘は選びかねて生田川に身を投げ、二人の男もあとを追う。三つの塚の由来、この話を描いた絵を見て宮廷の人々が人物になりかわってよんだ歌、そして塚のもとで旅人が見た男たちの争いの夢まで、生田川伝説の全容を語る段。

  1. 1昔むかし昔むかしむかし、、、ののの國くに國くにくにににに住す住すすむむむ女をんな女をんなおんなありけりありけりありけり。。。それそれそれをををよばふよばふよばう男をとこ男をとこおとこ二人ふたり二人ふたりふたりなむありけるなむありけるなむありける。。。一人ひとり一人ひとりひとりはははそのそのその國くに國くにくにににに住す住すすむむむ男をとこ男をとこおとこ、、、姓かばね姓かばねかばねははは。。。今一いまひと今一いまひといまひと人ひと人ひとひとははは和泉いづみ和泉いづみいずみののの國くに國くにくにののの人ひと人ひとひとになむありけるになむありけるになむありける。。。
  2. 2姓かばね姓かばねかばねははは。。。かくてそのかくてそのかくてその男をとこ男をとこおとこどもどもども、、、としよはひとしよはひとしよわい、、、かかかほかたちほかたちほかたち、、、人ひと人ひとひとののの程ほど程ほどほど唯ただ唯ただただ同おな同おなおなじばかりなむありけるじばかりなむありけるじばかりなむありける。。。志こころざし志こころざしこころざしのまさらむにこそのまさらむにこそのまさらむにこそはははあああはははめとめとめと思おも思おもおもふにふにうに、、、志こころざし志こころざしこころざしのののほどほどほど唯ただ唯ただただ同おな同おなおなじやうなりじやうなりじょうなり。。。
  3. 3暮く暮くくるればるればるれば諸共もろとも諸共もろとももろともににに來き來きき逢あ逢ああひぬひぬいぬ。。。物もの物ものものおこすればおこすればおこすれば唯ただ唯ただただ同おな同おなおなじやうにおこすじやうにおこすじょうにおこす。。。いづれまされりといふべくもあらずいづれまされりといふべくもあらずいずれまされりというべくもあらず。。。女をんな女をんなおんな思おも思おもおもひひい煩わづら煩わづらわずらひぬひぬいぬ。。。このこのこの人ひと人ひとひとののの志こころざし志こころざしこころざしのおろかならばいづれにもあふまじけれどのおろかならばいづれにもあふまじけれどのおろかならばいずれにもあうまじけれど、、、これもかれもこれもかれもこれもかれも月日つきひ月日つきひつきひををを經へ經へへててて家け家けけのかどにのかどにのかどに立た立たたちてよろづにちてよろづにちてよろずに志こころざし志こころざしこころざしををを見み見みみえけれはえけれはえけれはしわびぬしわびぬしわびぬ。。。
  4. 4これよりもかれよりもこれよりもかれよりもこれよりもかれよりも同おな同おなおなじやうにおこするじやうにおこするじょうにおこする物もの物ものものどもどもども取と取ととりもりもりも入い入いいれねどれねどれねど、、、いろいろにいろいろにいろいろに持も持ももちてちてちて立た立たたてりてりてり。。。親おや親おやおやありてありてありて、、、「「「かくかくかく見苦みぐる見苦みぐるみぐるしくしくしく年月としつき年月としつきとしつきををを經へ經へへててて人ひと人ひとひとのなげきのなげきのなげきをををいたづらにいたづらにいたずらに負お負おおふもいとほしふもいとほしうもいとおし。。。ひとりひとりひとりひとりにあひなばひとりにあひなばひとりにあいなば今一いまひと今一いまひといまひと人ひと人ひとひとががが思おも思おもおもひひいははは絶た絶たたえなむえなむえなむ」」」といふにといふにというに、、、女をんな女をんなおんな「「「こゝにもさこゝにもさここにもさ思おも思おもおもふにふにうに、、、人ひと人ひとひとののの志こころざし志こころざしこころざしののの同おな同おなおなじやうなるになむじやうなるになむじょうなるになむ思おも思おもおもひひい煩わづら煩わづらわずらひぬるひぬるいぬる。。。さらばいかゞすべきさらばいかゞすべきさらばいかがすべき」」」といふにといふにというに、、、そのかみそのかみそのかみ川がは川がはがわのつらにのつらにのつらに、、、をををうちてゐにけりうちてゐにけりうちていにけり。。。
  5. 5かゝればそのよばひかゝればそのよばひかかればそのよばい人ひと人ひとひとどもどもどもをををよびによびによびに遣や遣ややりてりてりて親おや親おやおやのいふやうのいふやうのいうよう、、、「「「誰たれ誰たれたれももも御志おほんこころざし御志おほんこころざしおおんこころざしののの同おな同おなおなじやうなればこのをさなきものなむじやうなればこのをさなきものなむじょうなればこのおさなきものなむ思おも思おもおもひひい煩わづら煩わづらわずらひにてひにていにて侍はべ侍はべはべるるる。。。今日けふ今日けふきょういかにまれいかにまれいかにまれ、、、このこのこの事こと事ことことををを定さだ定さださだめてむめてむめてむ。。。あるあるあるははは遠とほ遠とほとおききき所ところ所ところところよりいまするよりいまするよりいまする人ひと人ひとひとありありあり、、、あるあるあるはははなしなしなし。。。これもかれもいとほしきわざなりこれもかれもいとほしきわざなりこれもかれもいとおしきわざなり」」」といふといふという時とき時ときときににに、、、いとかしこくいとかしこくいとかしこく喜よろこ喜よろこよろこびあへりびあへりびあえり。。。
  6. 6「「「申まう申まうもうさむとさむとさむと思おも思おもおもううう給たま給たまたまふるやうふるやううるようははは、、、このこのこの川がは川がはがわににに浮う浮ううきてきてきて侍はべ侍はべはべるるる水鳥みづとり水鳥みづとりみずとりををを射給いたま射給いたまいたまへへえ。。。それそれそれををを射い射いいあてあてあて給たま給たまたまへらむへらむえらむ人ひと人ひとひとににに奉たてまつ奉たてまつたてまつらむらむらむ」」」といふといふという時とき時ときときににに、、、「「「いとよきいとよきいとよき事こと事ことことなりなりなり」」」といひてといひてといいて射い射いいるるる程ほど程ほどほどににに、、、一人ひとり一人ひとりひとりははは頭とう頭とうとうののの方かた方かたかたををを射い射いいつつつ。。。
  7. 7今一いまひと今一いまひといまひと人ひと人ひとひとははは尾を尾をおののの方かた方かたかたををを射い射いいつつつ。。。そのかみいづれといふべくもあらぬにそのかみいづれといふべくもあらぬにそのかみいずれというべくもあらぬに、、、女をんな女をんなおんな思おも思おもおもひわづらひてひわづらひていわずらいて、、、
  8. 8「「「住す住すすみわびぬわがみわびぬわがみわびぬわが身み身みみなげてむなげてむなげてむ津つ津つつののの國くに國くにくにののの生田いくた生田いくたいくたののの川かは川かはかわははは名な名ななのみなりけりのみなりけりのみなりけり」」」
  9. 9とよみてとよみてとよみて、、、このこのこのひらばりひらばりひらばりははは川がは川がはがわににに臨のぞ臨のぞのぞみてしたりければみてしたりければみてしたりければ、、、つぶりとつぶりとつぶりと落お落おおちちち入い入いいりぬりぬりぬ。。。親おや親おやおやあわてあわてあわて騒さわ騒さわさわぎのゝしるぎのゝしるぎののしる程ほど程ほどほどににに、、、このよばふこのよばふこのよばう男をとこ男をとこおとこ二人ふたり二人ふたりふたりやがてやがてやがて同おな同おなおなじじじ所ところ所ところところににに落お落おおちいりぬちいりぬちいりぬ。。。
  10. 10一人ひとり一人ひとりひとりははは足あし足あしあしをををとらへとらへとらえ、、、今一いまひと今一いまひといまひと人ひと人ひとひとははは手て手ててををを捕とら捕とらとらへてへてえて死し死ししにけりにけりにけり。。。そのかみそのかみそのかみ親おや親おやおやいみじくいみじくいみじく騒さわ騒さわさわぎてぎてぎて、、、取と取ととりりり上あ上ああげてげてげて泣な泣ななきのゝしりてきのゝしりてきののしりてふりすふりすふりす。。。男をとこ男をとこおとこどものどものどもの親おや親おやおやももも來き來ききにけりにけりにけり。。。
  11. 11このこのこの女をんな女をんなおんなののの塚つか塚つかつかのかたはらにのかたはらにのかたわらに又また又またまた塚つか塚つかつかどもどもども作つく作つくつくりてりてりてほりほりほり埋う埋ううむむむ。。。時とき時ときときににに津つ津つつののの國くに國くにくにののの男をとこ男をとこおとこののの親おや親おやおやいふやういふやういうよう「「「同おな同おなおなじじじ國くに國くにくにののの男をとこ男をとこおとこをををこそこそこそ同おな同おなおなじじじ所ところ所ところところにににはせめはせめはせめ。。。ことぐにのことぐにのことぐにの人ひと人ひとひとのいかでかこののいかでかこののいかでかこの國くに國くにくにののの土ど土どどをばをばをば犯をか犯をかおかすべきすべきすべき」」」といひてといひてといいて妨さまた妨さまたさまたぐるぐるぐる時とき時ときときににに、、、和泉いづみ和泉いづみいずみののの方かた方かたかたののの親おや親おやおや、、、和泉いづみ和泉いづみいずみののの國くに國くにくにののの土ど土どどををを船ふね船ふねふねににに運はこ運はこはこびてびてびて、、、こゝにもてこゝにもてここにもて來き來ききてなむつひにてなむつひにてなむついに埋うづ埋うづうずみてけるみてけるみてける。。。
  12. 12さればさればされば女をんな女をんなおんなののの墓はか墓はかはかをばをばをば中なか中なかなかにてにてにて左右さいう左右さいうさゆうになむになむになむ男をとこ男をとこおとこののの塚つか塚つかつかどもどもども今いま今いまいまもあなるもあなるもあなる。。。かゝるかゝるかかる事こと事ことことどものどものどもの昔むかし昔むかしむかしありけるありけるありけるををを繪ゑ繪ゑえににに皆みな皆みなみな書か書かかきてきてきて故こ故ここ宮みや宮みやみやににに人ひと人ひとひとののの奉たてまつ奉たてまつたてまつりければりければりければ、、、これがこれがこれがうへうへうえををを皆人々みなひとびと皆人々みなひとびとみなひとびとこのこのこの人ひと人ひとひとににに代かは代かはかわりてよみけるりてよみけるりてよみける。。。のみやすんのみやすんのみやすん所ところ所ところところ、、、
  13. 13「「「影かげ影かげかげとのみとのみとのみ水みづ水みづみずのしたにてあひのしたにてあひのしたにてあい見み見みみれどれどれど魂たましひ魂たましひたましいなきからなきからなきからはははかひなかりけりかひなかりけりかいなかりけり」」」。。。
  14. 14女をんな女をんなおんなになりになりになり給たま給たまたもうてうてうて、、、一いち一いちいちののの宮みや宮みやみや、、、
  15. 15「「「かぎりなくかぎりなくかぎりなく深ふか深ふかふかくしづめるくしづめるくしずめる我わ我わわががが魂たましひ魂たましひたましいははは浮う浮ううきたるきたるきたる人ひと人ひとひとににに見み見みみえむものかえむものかえむものかははは」」」。。。
  16. 16またまたまた、、、みやみやみや、、、
  17. 17「「「いづこにかたまいづこにかたまいずこにかたまをもをもをもとめむわたつみのこゝかしこともおもほえなくにとめむわたつみのこゝかしこともおもほえなくにとめむわたつみのここかしこともおもおえなくに」」」。。。
  18. 18ののの命婦みやうぶ命婦みやうぶみょうぶ、、、
  19. 19「「「つかのまももろともにとぞつかのまももろともにとぞつかのまももろともにとぞ契ちぎ契ちぎちぎりけるりけるりける逢あ逢ああふとふとうとははは人ひと人ひとひとににに見み見みみえぬものからえぬものからえぬものから」」」。。。
  20. 20別當べつたう別當べつたうべっとう、、、
  21. 21「「「かちまけもなくてやかちまけもなくてやかちまけもなくてやはてむはてむはてむ君きみ君きみきみによりによりにより思おも思おもおもひひいののの山やま山やまやまははは越こ越ここゆともゆともゆとも」」」。。。
  22. 22生い生いいきたりしきたりしきたりし折をり折をりおりののの女をんな女をんなおんなになりてになりてになりて、、、
  23. 23「「「あふことのかたみにあふことのかたみにあうことのかたみに植う植うううるうるうる竹たけ竹たけたけのたちわづらふとのたちわづらふとのたちわずらうと聞き聞ききくぞかなしきくぞかなしきくぞかなしき」」」。。。
  24. 24またまたまた、、、人ひと人ひとひと、、、
  25. 25「「「身み身みみをををなげてなげてなげて逢あ逢ああはむとはむとわむと人ひと人ひとひとににに契ちぎ契ちぎちぎらねどうきらねどうきらねどうき身み身みみははは水みづ水みづみずにかげにかげにかげをををならべつならべつならべつ」」」。。。
  26. 26又また又またまた、、、今一いまひと今一いまひといまひと人ひと人ひとひとののの男をとこ男をとこおとこになりてになりてになりて、、、
  27. 27「「「おなじえにおなじえにおなじえに住す住すすむむむはははうれしきうれしきうれしき中なか中なかなかなれどなどなれどなどなれどなど我わ我わわとのみとのみとのみ契ちぎ契ちぎちぎらざりけむらざりけむらざりけむ」」」。。。
  28. 28かへしかへしかへし、、、女をんな女をんなおんな、、、
  29. 29「「「うかりけるうかりけるうかりける我わ我わわがみなそこがみなそこがみなそこををを大おほ大おほおおかたかたかたはははかゝるかゝるかかる契ちぎり契ちぎりちぎりのなからましかばのなからましかばのなからましかば」」」。。。
  30. 30又また又またまた、、、一人ひとり一人ひとりひとりののの男をとこ男をとこおとこになりてになりてになりて、、、
  31. 31「「「我わ我わわとのみとのみとのみ契ちぎ契ちぎちぎらずながららずながららずながら同おな同おなおなじじじ江え江ええにすむにすむにすむははは嬉うれ嬉うれうれしきみぎしきみぎしきみぎはははとぞとぞとぞ思おも思おもおもふふう」」」。。。
  32. 32さてこのさてこのさてこの男をとこ男をとこおとこははは吳竹くれたけ吳竹くれたけくれたけのよのよのよふかきふかきふかきををを切き切ききりてりてりて、、、限かぎ限かぎかぎりてりてりて、、、狩かり狩かりかりぎぬぎぬぎぬ、、、袴はかま袴はかまはかま、、、烏帽子えぼし烏帽子えぼしえぼし、、、帶おび帶おびおびなどなどなどををを入い入いいれてれてれて、、、弓ゆみ弓ゆみゆみ、、、、、、太刀たち太刀たちたちなどなどなどををを入い入いいれてぞれてぞれてぞ埋うづ埋うづうずみけるみけるみける。。。
  33. 33今一いまひと今一いまひといまひと人ひと人ひとひとははは、、、おろかなるおろかなるおろかなる親おや親おやおやにやありけむにやありけむにやありけむ、、、さもせずぞありけるさもせずぞありけるさもせずぞありける。。。かのかのかの塚つか塚つかつかののの名な名ななをばをばをば、、、塚つか塚つかつかとぞいひけるとぞいひけるとぞいいける。。。あるあるある旅人たびびと旅人たびびとたびびとこのこのこの塚つか塚つかつかのもとにのもとにのもとに宿やど宿やどやどりたりけるにりたりけるにりたりけるに、、、人ひと人ひとひとのいさかひするのいさかひするのいさかいする音おと音おとおとのしければのしければのしければ、、、怪あや怪あやあやしとしとしと思おも思おもおもひてひていて見み見みみせけれどせけれどせけれど、、、「「「さるさるさる事こと事ことこともなしもなしもなし」」」といひければといひければといいければ、、、怪あや怪あやあやしとしとしと思おも思おもおもふふう思おも思おもおもふねぶりたるにふねぶりたるにうねぶりたるに、、、血ち血ちちにまみれたるにまみれたるにまみれたる男をとこ男をとこおとこ前まへ前まへまえににに來き來ききてててひざまづきてひざまづきてひざまずきて、、、「「「我われ我われわれかたきにかたきにかたきに攻せ攻せせめられてわびにてめられてわびにてめられてわびにて侍はべ侍はべはべりりり。。。はははかしかしかし暫しば暫しばしばししし貸か貸かかししし給たま給たまたまはははらむらむらん。。。妬ねた妬ねたねたききき者もの者ものものののの報むく報むくむくししし侍はべ侍はべはべらむらむらむ」」」といふにといふにというに恐おそ恐おそおそろしとろしとろしと思おも思おもおもへどへどえど貸か貸かかしてけりしてけりしてけり。。。
  34. 34覺さ覺ささめてめてめて夢ゆめ夢ゆめゆめにやあらむとにやあらむとにやあらむと思おも思おもおもへどへどえど、、、太刀たち太刀たちたちははは誠まこと誠まことまことにとらせてにとらせてにとらせて遣や遣ややりてけりりてけりりてけり。。。とばかりとばかりとばかり聞き聞ききけばいみじうさきのごといさかふなりけばいみじうさきのごといさかふなりけばいみじゅうさきのごといさかうなり。。。しばしありてしばしありてしばしありて初はじめ初はじめはじめののの男をとこ男をとこおとこ來き來ききていみじうていみじうていみじゅう喜よろこ喜よろこよろこびてびてびて、、、「「「御おん御おんおん徳とく徳とくとくににに年とし年としとしごろねたきごろねたきごろねたき者もの者ものものうちうちうち殺ころ殺ころころししし侍はべ侍はべはべりぬりぬりぬ。。。今いま今いまいまよりよりよりははは長なが長ながながききき御おん御おんおんまもりとなりまもりとなりまもりとなり侍はべ侍はべはべるべきるべきるべき」」」とてとてとて、、、このこのこの事こと事ことことののの初はじめ初はじめはじめよりかたるよりかたるよりかたる。。。
  35. 35いとむくつけしといとむくつけしといとむくつけしと思おも思おもおもへどへどえど、、、珍めづ珍めづめずらしきことなればらしきことなればらしきことなれば問と問ととひひい聞き聞ききくくくほどにほどにほどに、、、夜よ夜よよももも明あ明ああけにければけにければけにければ人ひと人ひとひともなしもなしもなし。。。あしたにあしたにあしたに見み見みみればればれば塚つか塚つかつかのもとにのもとにのもとに血ち血ちちなどなむなどなむなどなむ流なが流ながながれたりけるれたりけるれたりける。。。
  36. 36太刀たち太刀たちたちにもにもにも血ち血ちちつきてなむありけるつきてなむありけるつきてなむありける。。。いといといとうとましくおぼゆるうとましくおぼゆるうとましくおぼゆる事こと事ことことなれどなれどなれど、、、人ひと人ひとひとののの言い言いいひけるまゝなりひけるまゝなりいけるままなり。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

〔第147段〕昔、摂津の国に住む女がいた。その女に求婚する男が二人いた。一人はその国に住む男で、姓は菟原(うばら)であった。もう一人は和泉の国の人であった。姓は血沼(ちぬ)といった。さてその男たちは、年齢も、顔かたちも、人柄も、まったく同じほどであった。女は「志のまさっている方と結婚しよう」と思うのだが、志の深さもまったく同じようである。日が暮れると二人そろってやって来る。贈り物をよこすと、まったく同じように贈ってくる。どちらがまさっているとも言えない。女は思い悩んだ。この人たちの志がいいかげんなら、どちらとも結婚はしないのだが、どちらも月日を重ねて家の門口に立って、何かにつけて志を見せるので、女は困りはててしまった。どちらからも同じように贈ってくる品々を受け取りもしないのに、男たちはいろいろな品を持って立っている。親がいて、「こんなにみっともなく年月を過ごして、人の嘆きをむなしく負うのも気の毒だ。どちらか一人と結婚したら、もう一人の思いもあきらめがつくだろう」と言うと、女は「わたしもそう思うのですが、あの方々の志が同じようなので、思い悩んでいるのです。それなら、どうしたらよいでしょう」と言う。その当時、生田川のほとりに平張(幕屋)を張って住んでいた。そこで、その求婚者たちを呼びにやって、親が言うには、「どなたもお志が同じようなので、この幼い者が思い悩んでおります。今日、何としてでも、このことを決めてしまいましょう。ある方は遠い所からいらっしゃるし、ある方は地元ながら、そのご苦労はこのうえないものです。どちらの方も気の毒なことです」と言うと、男たちはたいへん喜び合った。「申し上げようと思いますことは、この川に浮いております水鳥を射てください。それを射当てなさった方にさし上げましょう」と言うと、「たいへんよいことだ」と言って射たところ、一人は頭の方を射た。もう一人は尾の方を射た。そこで、どちらとも言えないので、女は思い悩んで、

「この世に住むのがつらくなりました。わが身を投げてしまいましょう。摂津の国の生田の川は、生きるという名ばかりのものでした」

とよんで、この平張は川に臨んで張ってあったので、ざぶんと川に落ち入ってしまった。親があわてて騒ぎ立てているうちに、この求婚した男二人も、すぐに同じ所に飛び込んだ。一人は女の足をつかまえ、もう一人は手をつかまえて死んでしまった。そこで親はたいへん騒いで、亡骸を取り上げて泣き叫んで葬った。男たちの親もやって来た。この女の塚のそばに、また塚を作って埋めようとする。その時、摂津の国の男の親が言うには、「同じ国の男をこそ同じ所に葬るべきだ。よその国の人が、どうしてこの国の土を侵してよいものか」と言って妨げた時に、和泉の方の親は、和泉の国の土を船で運んで、ここに持って来て、とうとう埋めた。だから、女の墓を中にして、左右に男たちの塚が今もあるということだ。

このような事が昔あったのを、すべて絵に描いて、故后の宮(穏子)に人がさし上げたところ、この話について、人々が皆、この人々になりかわって歌をよんだ。伊勢の御息所が、

「影としてだけ水の下で会っても、魂のない亡骸では、何のかいもないことです」。

女になりかわりなさって、女一の宮が、

「限りなく深く沈んだわたしの魂は、浮ついた人に見られたりするものでしょうか」。

また、宮が、

「どこに魂を求めたらよいのでしょう。海のここかしこと、思いあたるところもないのに」。

兵衛の命婦が、

「つかの間でも一緒にいようと約束しました。逢ったとは、人には見えないけれど」。

糸所の別当が、

「勝ち負けもなく終わってしまうのだろうか。あなたのために、思いを比べて、くらぶ山を越えたとしても」。

生きていた時の女になりかわって、

「逢うことの難しさに、形見に植える細い竹のように、二人が立ちわずらっていると聞くのが悲しい」。

また、ある人が、

「身を投げて逢おうと、あの人に約束したわけではないけれど、つらいこの身は、水に影を並べることになりました」。

また、もう一人の男になりかわって、

「同じ江に住むのは、うれしい仲だけれど、どうしてわたしとだけ契ってくれなかったのだろう」。

女の返し、

「つらいことになったわたしの水底――こんなことになるくらいなら、いっそこのような縁がなければよかったのに」。

また、一人の男になりかわって、

「わたしとだけ契ってくれたのではないけれど、同じ江に住む――同じ汀にいられるのは、うれしいことだと思う」。

さて、この男(和泉の男)の方は、呉竹の節の深いのを切って、柩に作り、狩衣・袴・烏帽子・帯などを入れ、弓・胡籙・太刀などを入れて埋めた。もう一人の方は、考えの浅い親だったのか、そうもしなかった。その塚の名を、乙女塚といった。ある旅人が、この塚のもとに泊まったところ、人の言い争う音がしたので、不思議に思って人に見させたが、「何事もない」と言ったので、不思議に思いながら眠っていると、血まみれの男が前に来てひざまずいて、「わたしは敵に攻められて困っております。御太刀をしばらく貸してください。憎い者に仕返しをいたしましょう」と言うので、恐ろしいと思ったが貸してやった。目が覚めて夢だったのだろうかと思ったけれど、太刀は本当に取らせてやっていた。しばらく聞いていると、たいへん激しく、さきほどのように争っている。しばらくして、さっきの男が来て、たいへん喜んで、「おかげで、長年憎かった者を打ち殺しました。これからは末長くお守りいたしましょう」と言って、このことの初めから語る。たいへん気味が悪いと思ったが、めずらしいことなので問い聞いているうちに、夜も明けてしまったので、人もいない。朝になって見ると、塚のもとに血などが流れていた。太刀にも血がついていた。たいへん気味の悪く思われることだけれど、人が言ったとおりに書きとめた。

意訳

同じ国の菟原の男と、和泉の国の血沼の男。年も顔も人柄も、志の深さも、何から何まで同じ二人に求婚された娘は、どちらも選べない。親の提案で、川の水鳥を射当てた方に嫁がせることになったが、一人は頭、一人は尾に当たって、また決着がつかない。「生きるという名の生田川も、名ばかりだった」とよんで、娘は川に身を投げ、二人の男もあとを追って、手と足をつかんだまま死んだ。

死んでなお争いは続く。地元の男の親は、よそ者が同じ地に葬られるのを拒み、和泉の男の親は故郷の土を船で運んで塚を築いた。こうして娘の墓を挟んで、二人の男の塚が並ぶことになった。

後日、この話を描いた絵が中宮穏子に献上され、宮廷の人々が登場人物になりかわって歌をよみ合った。伝説が、絵と歌によって宮廷で味わい直されていたことを示す、興味深い場面である。

さらに後日談として、塚のそばに泊まった旅人の夢に血まみれの男が現れ、「敵を討つ」と太刀を借りていく。目覚めると、太刀には本当に血がついていた。死後も終わらない二人の男の争いが、怪談として語られて段は閉じられる。

語釈・文法注

津の國
摂津国。今の大阪府北部と兵庫県南東部。
うばら
菟原(うない)。摂津国菟原郡(今の神戸市東部・芦屋市のあたり)にちなむ姓。『万葉集』では「菟原壮士(うないおとこ)」。
ちぬ
血沼(茅渟)。和泉国の古名で、その地の姓。『万葉集』では「血沼壮士(ちぬおとこ)」。
生田川
摂津国の川。今の神戸市中央区を流れる。「生く」を掛ける。
ひらばり
平張。柱を立て、幕を平らに張った仮屋。
いたづき
苦労、骨折り。
はふり
葬り。葬送。
故きさいの宮
醍醐天皇の中宮、藤原穏子。
伊勢のみやすん所
歌人の伊勢。第1段参照。宇多天皇の皇子を生んだので御息所と呼ぶ。
女一の宮
醍醐天皇の第一皇女、勧子内親王か。
兵衞の命婦
女房の名。
いとどころの別當
糸所の別当。糸所は宮中の縫製や組紐を担当した所。その長官の女房。
くらぶの山
暗部山。鞍馬山の古名。「比ぶ」を掛ける。
なよ竹
しなやかな細い竹。
限りて
底本の本文。通行本文には「籠(こ)に作りて」とあるものがあり、柩を作る意と解した。
やなぐひ
胡籙。矢を入れて背負う道具。
をとめ塚
乙女塚(処女塚)。今の神戸市東灘区に処女塚古墳があり、その東西に求女塚古墳がある。
御はかし
御佩刀。太刀の尊敬語。

文法

志のまさらむにこそはあはめ
「む」は婉曲。「こそ」の結びで「め」(意志)。志のまさっている人と結婚しよう。
見えけれはしわびぬ
底本は「けれは」と刷る。「ければ」の意。「しわぶ」は困りはてる。
あひなば
「な」は完了「ぬ」の未然形。結婚したならば。
いかにまれ
「いかにもあれ」の縮まった形。何としてでも。
定めてむ
「て」は強意、「む」は意志。決めてしまおう。
なげてむ
「て」は強意、「む」は意志。
臨みてしたりければ
平張を川に臨んで張っていたので。
つぶりと
水に落ちる音を表す擬音語。
同じ所にはせめ
「こそ」の結びで「め」。
いかでかこの國の土をば犯すべき
「いかでか」は反語。
あなる
「あるなる」の撥音便の無表記。あるということだ。
見えむものかは
「ものかは」は反語。
なくてやはてむ
「や」は疑問、結びは「む」。
なからましかば
「ましかば」は反実仮想の条件。下に「よからまし」などを略す。
おろかなる親にやありけむ
「にやありけむ」は語り手の推測の挿入句。
人の言ひけるまゝなり
語り手の言葉。聞いたとおりに書いた、と伝承であることを示す。

和歌

住みわびぬ わが身なげてむ 津の國の 生田の川は 名のみなりけり

詠者
摂津の国の娘
状況
二人の求婚者のどちらも選べず、生田川に身を投げるにあたって。

修辞

掛詞
「生田」に「生く」を掛ける。

影とのみ 水のしたにて あひ見れど 魂なきからは かひなかりけり

詠者
伊勢(伊勢の御息所)
状況
生田川の話を描いた絵を見て。

修辞

掛詞
「から」に「骸(から)」、「かひ」に「甲斐」と「貝」を響かせる。

かぎりなく 深くしづめる 我が魂は 浮きたる人に 見えむものかは

詠者
女一の宮(娘になりかわって)
状況
同じく絵を見て。

修辞

対照
「深く沈める」と「浮きたる」を対にする。

いづこにか たまをもとめむ わたつみの こゝかしことも おもほえなくに

詠者
宮
状況
同じく。

修辞

掛詞
「たま」に「魂」と「玉」を響かせる。

つかのまも もろともにとぞ 契りける 逢ふとは人に 見えぬものから

詠者
兵衛の命婦
状況
同じく。

修辞

掛詞
「つか」に「束(の間)」と「塚」を掛ける。

かちまけも なくてやはてむ 君により 思ひくらぶの 山は越ゆとも

詠者
糸所の別当
状況
同じく。

修辞

掛詞
「くらぶ」に「比ぶ」と「暗部(山)」を掛ける。

あふことの かたみに植うる なよ竹の たちわづらふと 聞くぞかなしき

詠者
(娘の生前になりかわって)
状況
同じく。

修辞

掛詞
「かたみ」に「形見」と「互(かた)み」、「よ」に竹の「節」を響かせる。

身をなげて 逢はむと人に 契らねど うき身は水に かげをならべつ

詠者
ある人
状況
同じく。

修辞

掛詞
「うき」に「憂き」と「浮き」を掛ける。

おなじえに 住むはうれしき 中なれど など我とのみ 契らざりけむ

詠者
(一人の男になりかわって)
状況
同じく。

修辞

掛詞
「え」に「江」と「縁」を掛ける。

うかりける 我がみなそこを 大かたは かゝる契の なからましかば

詠者
(娘になりかわって)
状況
前の歌への返し。

修辞

反実仮想
「ましかば」。

我とのみ 契らずながら 同じ江に すむは嬉しき みぎはとぞ思ふ

詠者
(もう一人の男になりかわって)
状況
同じく。

修辞

掛詞
「すむ」に「住む」と「澄む」を響かせる。

解説

第147段は、『万葉集』巻九の高橋虫麻呂の「菟原処女(うないおとめ)の墓を見る歌」、巻十九の大伴家持の追和歌などに見える古い伝説を、物語として語り直したものである。二人の男に求婚された娘が身を投げ、男たちもあとを追うという話の骨組みは同じだが、『大和物語』では、水鳥を射るという求婚の試練、塚をめぐる親たちの争い、塚の主の亡霊の話など、新しい要素が加えられている。

この段の中ほどには、この話を描いた絵が中宮穏子に献上され、伊勢をはじめとする宮廷の女性たちが、娘や男たちになりかわって歌をよんだという場面がある。古い伝説が、絵物語として宮廷で楽しまれ、歌を通して新しく味わわれていたことを示すもので、『大和物語』後半の伝説的な章段が、宮廷の文芸の場とつながっていたことがよく分かる。

処女塚の伝説は、のちに謡曲「求塚」の題材となり、近代では森鷗外の戯曲『生田川』にも取り上げられた。神戸市東灘区には処女塚古墳と、その東西に東求女塚古墳・西求女塚古墳があり、伝説の三つの塚に見立てられている。

関連

出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部四 雑下(大和物語) 板倉屋書房、明治36年(1903)、51〜54頁(コマ29–31)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日