竹取物語 第12章
迎えに備える
八月十五日、帝は中将高野大国を勅使として、二千人の兵を竹取の家に遣わし、築地と屋根の上を固めさせる。翁と嫗は塗籠の中でかぐや姫を抱いて守り、迎えの者を目をつぶして恥をかかせてやると息巻く。かぐや姫は、月の人には戦っても勝てないと告げ、育ての親を残して去る悲しみを語って泣く。
- 1かのかのかのもちもちもちののの日日ひつかさつかさつかさづかさづかさずかさにににおほせおほせおおせててて、、、勅勅ちょく使使しにににははは中中ちゅう將將じょう高高たか野野のののの大大おおととといふいふいう人人ひとをををさしさしさしててて、、、六六ろく衞衞えののの合合あわせせせててて二二に千千せん人人にんののの人人ひとををを竹竹たけ取取とりががが家家いえにににつかはすつかはすつかわす。。。家家いえににに罷罷まかりりりてててついついついののの上上うえににに千千せん人人にん屋屋やののの上上うえににに千千せん人人にん、、、家家いえののの人人ひと々々びといといといと多多おおかりかりかりけるけるけるににに合合あわせせせててて、、、あけるあけるあけるひまひまひまもももなくなくなく守守まもらららすすす。。。このこのこの守守まもるるる人人ひと々々びとももも弓弓ゆみ矢矢やををを帶帶たいしししててて居居おりりり。。。もやもやもやののの內內うちにににはははをうなをうなおうなどもどもどもををを番番ばんにににすゑすゑすえててて守守まもらららすすす。。。嫗嫗おうな塗塗ぬりののの內內うちにににかぐやかぐやかぐや姫姫ひめをををいだきいだきいだきててて居居おりりり。。。翁翁おきなもももぬりごめぬりごめぬりごめののの戶戶とをををさしさしさしててて戶戶と口口ぐちににに居居おりりり。。。
- 2翁翁おきなのののいはくいはくいわく、、、かばかりかばかりかばかり守守まもるるる所所ところににに、、、天天てんののの人人ひとにににもももまけまけまけむむんややや」」」ととといひいひいいててて屋屋やののの上上うえににに居居おるるる人人ひと々々びとにににいはくいはくいわく「「「露露つゆももも物物もの空空そらにににかけらかけらかけらばばばふとふとふと射射い殺殺ころししし給給たまへへえ」」」。。。守守まもるるる人人ひと々々びとのののいはくいはくいわく「「「かばかりかばかりかばかりしししててて守守まもるるる所所ところににに一一ひとつつつだにだにだにあらあらあらばばば、、、まづまづまず射射い殺殺ころしししてててとととにににさらささらささらさむむんととと思思おもひひい侍侍はべるるる」」」ととといふいふいう。。。翁翁おきなこれこれこれををを聞聞ききききててて、、、たのもしたのもしたのもしがりがりがり居居おりりり。。。
- 3これこれこれををを聞聞ききききてててかぐやかぐやかぐや姫姫ひめははは「「「さしさしさしこめこめこめててて守守まもりりり、、、戰戰たたかふふうべきべきべきしたぐみしたぐみしたぐみをををしししたりたりたりともともとも、、、あのあのあの國國くにののの人人ひとをををえええ戰戰たたかははわぬぬぬなりなりなり。。。弓弓ゆみ矢矢やしししててて射射いららられれれじじじ。。。かくかくかくさしさしさしこめこめこめてててありありありともともとも、、、かのかのかの國國くにののの人人ひとこここばばば皆皆みなあきあきあきなむなむなんとととすすす。。。相相あい戰戰たたかははわむむんとととすすすともともとも、、、かのかのかの國國くにののの人人ひと來來きなななばばば猛猛たけききき心心こころつかふつかふつかう人人ひとよもよもよもあらあらあらじじじ」」」。。。翁翁おきなのののいふいふいうやうやうよう、、、「「「御御おん迎迎むかえにににこここむむん人人ひとをををばばば、、、長長ながききき爪爪つめしししてててまなこまなこまなこをををつかみつかみつかみつぶさつぶさつぶさむむん。。。さささががが髪髪かみをををとりとりとりてててかなぐりかなぐりかなぐり落落おとさささむむん。。。さささががが尻尻しりをををかきかきかき出出いでゝでゝでてこゝらこゝらここらのののおほやけおほやけおおやけ人人びとににに見見みせせせててて耻耻はじ見見みせせせむむん」」」ととと腹腹はらだちだちだちをりをりおり。。。
- 4かぐやかぐやかぐや姫姫ひめいはくいはくいわく「「「こわこわこわだかだかだかににになななのたまひのたまひのたまいそそそ。。。屋屋やののの上上うえにににをるをるおる人人ひとどもどもどもののの聞聞きくくくににに、、、いといといとまさなしまさなしまさなし。。。いますかりいますかりいますかりつるつるつる志志こころざしどもどもどもををを、、、思思おもひひいももも知知しらららででで罷罷まかりりりなむなむなんずるずるずることことことののの口口くちをしうをしうおしゅう侍侍はべりりりけりけりけり。。。長長ながききき契契ちぎりのののなかりなかりなかりけれけれければばば、、、程程ほどなくなくなく罷罷まかりりりぬぬぬべきべきべきなめりなめりなめりととと思思おもふふうががが悲悲かなしくしくしく侍侍はべるるるなりなりなり。。。親親おやたちたちたちのののかへりみかへりみかえりみをををいさゝかいさゝかいささかだにだにだに仕仕つこうううまつらまつらまつらででで、、、まからまからまからむむん道道みちももも安安やすくくくもももあるあるあるまじきまじきまじきににに、、、月月つきごろごろごろもももいでいでいで居居いててて、、、今今こ年年としばかりばかりばかりののの暇暇いとまををを申申もうしししつれつれつれどどど、、、更更さらににに許許ゆるささされれれぬぬぬににによりよりよりてててなむなむなんかくかくかく思思おもひひいなげきなげきなげき侍侍はべるるる。。。御御み心心こころをををのみのみのみ惑惑まどはしはしわしててて去去さりりりなむなむなんことことことののの、、、悲悲かなしくしくしく堪堪たへへえがたくがたくがたく侍侍はべるるるなりなりなり。。。かのかのかの都都みやこののの人人ひとはははいといといとけうらけうらきょうらにににててて、、、老老おいいいもももせせせずずずなむなむなん、、、思思おもふふうことことこともももなくなくなく侍侍はべるるるなりなりなり。。。さるさるさる所所ところへへへまからまからまからむむんずるずるずるもももいみじくいみじくいみじくももも侍侍はべらららずずず。。。老老おいいい衰衰おとろへへえ給給たまへへえるるるさまさまさまををを見見み奉奉たてまつらららざらざらざらむむんこそこそこそ戀戀こいしからしからしからめめめ」」」ととといひいひいいててて泣泣なくくく。。。翁翁おきな「「「胸胸むね痛痛いたきききことことことなななしししたまひたまひたまいそそそ。。。麗麗うるはしきはしきわしき姿姿すがたしししたるたるたる使使つかいにににもももさはらさはらさわらじじじ」」」とととねたみねたみねたみをりをりおり。。。
現代語訳
十五日のその日、帝はそれぞれの役所に命じて、勅使として中将高野大国という人を指名して、六衛府の役人を合わせて二千人の人を竹取の家にお遣わしになる。家に到着して、築地の上に千人、建物の屋根の上に千人、家の使用人たちもたいそう多かったのと合わせて、空いているすき間もなく守らせる。この守る家の人々も弓矢を身につけている。母屋の中では女たちを番に当たらせて守らせる。嫗は塗籠の中でかぐや姫を抱きかかえている。翁も塗籠の戸を閉ざして戸口に座っている。
翁が言うには、「これほど守っている所に、天の人にも負けるものか」と言って、屋根の上にいる人々に言うには、「少しでも何かが空を飛んだら、すぐに射殺してください」。守る人々が言うには、「これほどまでして守っている所に、こうもり一匹でもいたら、まず射殺して外にさらしてやろうと思っております」と言う。翁はこれを聞いて、頼もしく思っている。
これを聞いて、かぐや姫は「閉じこめて守り、戦う準備をしていても、あの国の人とは戦うことができないのです。弓矢で射ることもできないでしょう。このように閉じこめていても、あの国の人が来たら、みな開いてしまうでしょう。戦い合おうとしても、あの国の人が来たら、勇猛な心を奮い起こす人もまさかいないでしょう」と言う。翁が言うには、「迎えに来る人を、長い爪で目の玉をつかみつぶしてやろう。そいつの髪をつかんで引き落としてやろう。そいつの尻をまくり出して、ここにいる大勢の役人たちに見せて恥をかかせてやろう」と腹を立てている。
かぐや姫が言うには、「大きな声でおっしゃいますな。屋根の上にいる人たちが聞いたら、たいそうみっともない。これまでいただいたご愛情を思い知ることもなく去っていくのが残念でございます。この世での長い縁がなかったので、まもなく去らねばならないのだと思うと悲しいのです。親たちのお世話を少しもしてさしあげないで去っていく道も、安らかではないでしょうから、ここ数か月も縁先に出て座り、せめて今年いっぱいの猶予をと願い出たのですが、まったく許されないので、このように嘆いているのです。お心を乱すばかりで去っていくことが、悲しく耐えがたいのです。あの月の都の人は、たいそう清らかで美しく、年もとらないのです。思い悩むこともないのです。そのような所へ行くのも、うれしくはありません。お二人が年老い衰えていかれるご様子を見てさしあげられないことが、恋しく思われることでしょう」と言って泣く。翁は「胸の痛くなるようなことをおっしゃいますな。どんなに立派な姿をした使いが来ても、邪魔されはしない」と憎らしがっている。
意訳
帝の命令で二千人の兵が竹取の家を取り囲み、翁と嫗は塗籠の奥でかぐや姫を抱きしめて守る。翁は「目玉をつかみつぶし、尻をまくって恥をかかせてやる」と、老人らしからぬ激しい言葉で迎えの者を罵る。その姿は滑稽でありながら、娘を奪われまいとする親の必死さがにじむ。かぐや姫はそれをたしなめ、月の人には武力では勝てないことを知りつつ、育ての親に恩返しもできずに去ることを嘆く。不老で悩みのない月の都よりも、老いていく親のそばにいたいという姫の言葉には、人間の世の情けを知った者の悲しみがこめられている。
語釈・文法注
- 中將高野の大國
- 勅使として遣わされた近衛中将の高野大国。架空の人物とみられる。
- 六衞のつかさ
- 宮中の警護にあたった六衛府(左右の近衛府・衛門府・兵衛府)の役人。
- ついぢ
- 「築地」。土を突き固めて造り、上に屋根を葺いた塀。
- 塗籠
- 寝殿造の母屋の中に設けた、周囲を壁で塗りこめた部屋。寝室や納戸として使われた。
- かはほり
- 「蝙蝠(こうもり)」。
文法
- 「翁のいはく、かばかり守る所に」
- 底本では開きの「「」がなく、閉じの「」」だけがある。そのまま翻刻した。
- 「え戰はぬなり」
- 「え〜ず(ぬ)」で不可能を表す。戦うことができないのです。
- 「よもあらじ」
- 「よも〜じ」で強い否定の推量を表す。まさかいないでしょう。
- 「こわだかになのたまひそ」
- 禁止の「な〜そ」。大声でおっしゃいますな。
解説
帝が二千人もの兵を遣わして守らせるのは、地上の権力を総動員して天上の力に抗おうとする試みである。しかし、かぐや姫がはっきり言うように、それは初めから無力であることがわかっている。この緊迫した場面の後に訪れる天人の降臨は、地上の力の限界を鮮やかに示すことになる。
翁の罵りの言葉は、物語の中でも特に生々しく、庶民的な表現として注目される。悲劇的な場面の中に滑稽さを交える語り口は、『竹取物語』全体に通じる特徴である。
月の都の人は「老いもせず、思ふこともなし」とされ、不老・無憂の理想郷として描かれる。しかし、かぐや姫はそこへ帰ることを喜ばず、老いや悲しみのある地上の人間関係に心を残す。ここに、人間の生の価値を見つめる物語の主題を読みとることができる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部三 雑上(竹取物語) 板倉屋書房、明治36年(1903)、24–25頁(コマ16)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
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