竹取物語 第6章
火鼠の皮衣
右大臣阿倍御主人は、唐の商人王卿に大金を払って火鼠の皮衣を手に入れる。紺青色に輝く美しい皮衣を持ってかぐや姫の家を訪れるが、姫が火にくべて確かめると、皮衣はめらめらと燃えてしまう。このことから、張り合いのないことを「あへなし」と言うようになった。
- 1右右う大大だい臣臣じん阿阿あ倍倍べのののみうしみうしみうしははは、、、たからたからたから豊豊ゆたかかかににに家家いえ廣廣ひろききき人人ひとにににぞぞぞ坐坐おわしししけるけるける。。。そのそのその年年としわたりわたりわたりけるけるけるもろこしもろこしもろこし船船ぶねののの王王おうととといふいふいうものものものゝゝの許許もとににに、、、文文ふみををを書書かきききててて「「「火火ひ鼠鼠ねずみのののかはごろもかはごろもかわごろもととといふいふいうなるなるなるものものもの買買かひひいててておこせおこせおこせよよよ」」」とてとてとて、、、仕仕つこうううまつるまつるまつる人人ひとののの中中なかににに心心こころたしかたしかたしかなるなるなるををを選選えらびびびててて小小を野野のののの房房ふさ守守もりととといふいふいう人人ひとをををつけつけつけててて遣遣つかははわすすす。。。もてもてもていたりいたりいたりててて、、、かのかのかの浦浦うらにににをるをるおる王王おう卿卿けいにににこがねこがねこがねをををとらとらとらすすす。。。
- 2王王おう卿卿けい文文ふみをををひろげひろげひろげててて見見みててて返返かえり事事ごとかくかくかく、、、「「「火火ひ鼠鼠ねずみのののかはごろもかはごろもかわごろも我我わががが國國くにににになきなきなき物物ものなりなりなり。。。おとおとおとにににははは聞聞きけけけどもどもどもいまだいまだいまだ見見みぬぬぬものものものなりなりなり。。。世世よにににあるあるある物物ものならならならばばば、、、このこのこの國國くににににももももてもてもてまうでまうでもうで來來きなななましましまし。。。いといといと難難かたきききあきなひあきなひあきないなりなりなり。。。しかれどもしかれどもしかれどももしもしもし天天てん竺竺じくにににたまさかたまさかたまさかにににもてもてもて渡渡わたりりりなななばばば、、、もしもしもし長長ちょう者者じゃのののあたりあたりあたりにににとぶらひとぶらひとぶらい求求もとめめめむむんににに、、、なきなきなきものものものならならならばばば、、、使使つかいににに添添そへへえてててこがねこがねこがね返返かへししし奉奉たてまつらららむむん」」」ととといへいへいえりりり。。。
- 3かのかのかのもろこしもろこしもろこし船船ぶね來來きけりけりけり。。。小小を野野のののの房房ふさ守守もりまうでまうでもうで來來きてててまうまうもうのぼるのぼるのぼるととといふいふいうことことことををを聞聞ききききててて、、、あゆみあゆみあゆみとうとうとうするするする馬馬うまをををもちもちもちててて走走はしらららせせせ迎迎むかへへえさせさせさせ給給たまふふう。。。時時ときににに馬馬うまににに乘乘のりりりててて、、、筑筑つく紫紫しよりよりよりたゞたゞただ七七なの日日かににに上上のぼりりりまうでまうでもうできききたりたりたり。。。文文ふみををを見見みるるるにににいはくいはくいわく「「「火火ひ鼠鼠ねずみのののかはごろもかはごろもかわごろもからうじてからうじてかろうじて、、、人人ひとををを出出いだしししててて求求もとめめめまつるまつるまつる。。。今今いまののの世世よにににももも昔昔むかしののの世世よにににもももこのこのこの皮皮かわはははたはたはたわ易易やすくくくなきなきなきものものものなりなりなりけりけりけり。。。むかしむかしむかしかしこきかしこきかしこき天天てん竺竺じくのののひじりひじりひじりこのこのこの國國くににににもてもてもて渡渡わたりりりててて侍侍はべりりりけるけるける、、、西西にしののの山山やま寺寺でらにににありありありととと聞聞きききき及及およびびびててて、、、おほやけおほやけおおやけににに申申もうしししててて、、、からうじてからうじてかろうじて買買かひひいとりとりとりててて奉奉たてまつるるる。。。價價あたいののの金金かね少少すくなしししととと、、、國國こく司司し使使つかいにににまうしゝまうしゝもうししかかかばばば、、、王王おう卿卿けいががが物物もの加加くわへへえててて買買かひひいたりたりたり。。。今今いま金金かね五五ご十十じゅう兩兩りょうたまはるたまはるたまわるべしべしべし。。。船船ふねののの歸歸かえらららむむんににに附附つけけけてててたびたびたび送送おくれれれ。。。もしもしもし金金かね賜賜たまははわぬぬぬものものものならならならばばば、、、かはごろもかはごろもかわごろもののの質質しちかへしかへしかへしたべたべたべ」」」ととといへいへいえるるることことことををを見見みててて
- 4「「「何何なにおほすおほすおおす。。。今今いま金金かね少少すこしししのののことことことにににこそこそこそあああなれなれなれ。。。必必かならずずずおくるおくるおくるべきべきべき物物ものにににこそこそこそあああなれなれなれ。。。嬉嬉うれしくしくしくしししててておこせおこせおこせたるたるたるかなかなかな」」」とてとてとてもろこしもろこしもろこしののの方方かたににに向向むかひひいててて伏伏ふししし拜拜おがみみみ給給たまふふう。。。このこのこのかはごろもかはごろもかわごろも入入いれれれたるたるたる箱箱はこををを見見みれれればばば、、、くさぐさくさぐさくさぐさのののうるはしきうるはしきうるわしき瑠瑠る璃璃りをををいろへいろへいろえててて作作つくれれれりりり。。。かはごろもかはごろもかわごろもををを見見みれれればばばののの色色いろなりなりなり。。。毛毛けののの末末すえにににははは金金こがねののの光光ひかり輝輝かがやきききたりたりたり。。。げにげにげに寳寳たからととと見見みえええ、、、うるはしきうるはしきうるわしきことことこと比比くらぶぶぶべきべきべきものものものなしなしなし。。。火火ひににに燒燒やけけけぬぬぬことことことよりよりよりももも、、、けうらけうらきょうらなるなるなることことことならびならびならびなしなしなし。。。「「「うべうべうべかぐやかぐやかぐや姫姫ひめのののこのもしがりこのもしがりこのもしがり給給たまふふうにににこそこそこそありありありけれけれけれ」」」とととののの給給たまひひいててて、、、あなあなあなかしこかしこかしことてとてとて、、、箱箱はこににに入入いれれれ給給たまひひいててて、、、物物ものののの枝枝えだにににつけつけつけててて。。。御御おん身身みのののいといといといたくいたくいたくしししててて、、、やがてやがてやがてとまりとまりとまりなむなむなんものものものぞぞぞとととおぼしおぼしおぼしててて、、、歌歌うたよみよみよみ加加くわへへえててて持持もちちちててていましいましいましたりたりたり。。。そのそのその歌歌うたははは、、、
- 5「「「かぎりかぎりかぎりなきなきなきおもひおもひおもいににに燒燒やけけけぬぬぬかはごろもかはごろもかわごろも袂袂たもとかわきかわきかわきててて今日今日きょうこそこそこそはははきめきめきめ」」」
- 6ととといへいへいえりりり。。。家家いえののの門門かどにににもてもてもて至至いたりりりててて立立たてててりりり。。。竹竹たけ取取とりいでいでいで來來きてててとりとりとり入入いれれれててて、、、かぐやかぐやかぐや姫姫ひめににに見見みすすす。。。かぐやかぐやかぐや姫姫ひめかのかのかの裘裘かわごろもををを見見みててていはくいはくいわく「「「うるはしきうるはしきうるわしき皮皮かわなめりなめりなめり。。。わきてわきてわきてまことまことまことののの皮皮かわならならならむむんとととももも知知しらららずずず」」」。。。竹竹たけ取取とり答答こたへへえててていはくいはくいわく「「「とまれとまれとまれかくまれかくまれかくまれまづまづまず入入いれれれ奉奉たてまつらららむむん。。。世世よののの中中なかににに見見みえええぬぬぬかはごろもかはごろもかわごろものののさまさまさまなれなれなればばば、、、是是これをををまことまことまことゝゝと思思おもひひい給給たまひひいねねね。。。人人ひとななないたくいたくいたくわびわびわびさせさせさせ奉奉たてまつらららせせせ給給たまひひいそそそ」」」ととといひいひいいててて、、、呼呼よびびびすゑすゑすえたてまつれたてまつれたてまつれりりり。。。かくかくかく呼呼よびびびすゑすゑすえててて、、、このこのこの度度たびははは必必かならずずずあはあはあわむむんととと、、、おうなおうなおうなののの心心こころにににももも思思おもひひいをりをりおり。。。このこのこの翁翁おきなははは、、、かぐやかぐやかぐや姫姫ひめのののやもめやもめやもめなるなるなるををを歎歎なげかしけれかしけれかしければばば、、、よきよきよき人人ひとにににあはせあはせあわせむむんととと思思おもひひいはかれはかれはかれどもどもども、、、せちせちせちににに否否いなととといふいふいうことことことなれなれなればばば、、、えええしひしひしいぬぬぬはははことわりことわりことわりなりなりなり。。。
- 7かぐやかぐやかぐや姫姫ひめ翁翁おきなにににいはくいはくいわく「「「このこのこのかはごろもかはごろもかわごろもははは火火ひににに燒燒やかかかむむんににに、、、燒燒やけけけずずずばばばこそこそこそまことまことまことならならならむむんととと思思おもひひいててて、、、人人ひとのののいふいふいうことことことにににもももまけまけまけめめめ。。。世世よににになきなきなきものものものなれなれなればばば、、、それそれそれをををまことまことまことゝゝと疑疑うたがひひいなくなくなく思思おもははわむむんとととののの給給たまへへえ。。。なほなほなおこれこれこれををを燒燒やきききててて見見みむむむ」」」ととといふいふいう。。。翁翁おきな「「「それそれそれさもさもさもいはいはいわれれれたりたりたり」」」ととといひいひいいててておとゞおとゞおとどににに「「「かくかくかくなむなむなん申申もうすすす」」」ととといふいふいう。。。おとゞおとゞおとど答答こたへへえててていはくいはくいわく「「「このこのこの皮皮かわははは唐唐もろ土土こしにににもももなかりなかりなかりけるけるけるをををからうじてからうじてかろうじて求求もとめめめ尋尋たずねねね得得えたるたるたるなりなりなり。。。何何なにののの疑疑うたがいかかかあらあらあらむむん。。。さささははは申申もうすすすともともともはやはやはや燒燒やきききててて見見み給給たまへへえ」」」ととといへいへいえばばば、、、火火ひののの中中なかにににうちうちうちくべくべくべててて燒燒やかかかせせせ給給たまふふうにににめらめらめらめらめらめらととと燒燒やけけけぬぬぬ。。。「「「されされさればばばこそこそこそ。。。ことことことものものものゝゝの皮皮かわなりなりなりけりけりけり」」」ととといふいふいう。。。おとゞおとゞおとどこれこれこれををを見見み給給たまひひいててて御御お顏顏かおははは草草くさののの葉葉はののの色色いろしししててて居居い給給たまへへえりりり。。。かぐやかぐやかぐや姫姫ひめはははあなあなあなうれしうれしうれしととと喜喜よろこびびびててて居居いたりたりたり。。。かのかのかのよみよみよみ給給たまへへえるるる歌歌うたのののかへしかへしかへし、、、箱箱はこににに入入いれれれてててかへすかへすかえす。。。
- 8「「「なごりなごりなごりなくなくなくもゆもゆもゆととと知知しりりりせせせばばばかはかはかわ衣衣ぎぬおもひおもひおもいののの外外ほかにににおきおきおきててて見見みましましましををを」」」
- 9とととぞぞぞありありありけるけるける。。。されされさればばば歸歸かえりりりいましいましいましにににけりけりけり。。。世世よののの人人ひと々々びと「「「安安あ倍倍べのののおとゞおとゞおとどははは火火ひ鼠鼠ねずみのののかはごろもかはごろもかわごろもをををもてもてもていましいましいましてててかぐやかぐやかぐや姫姫ひめににに給給たまふふうとととななな。。。こゝこゝここにににやややいますいますいます」」」などなどなど問問とふふう。。。或或ある人人ひとのののいはくいはくいわく「「「かはごろもかはごろもかわごろもははは火火ひにににくべくべくべててて燒燒やきききたりたりたりしかしかしかばばば、、、めらめらめらめらめらめらととと燒燒やけけけにににしかしかしかばばば、、、かぐやかぐやかぐや姫姫ひめ逢逢あひひい給給たまははわずずず」」」ととといひいひいいけれけれければばば、、、これこれこれををを聞聞ききききてててぞぞぞ、、、とげとげとげなきなきなきものものものをををばばばとととはははいひいひいいけるけるける。。。
現代語訳
右大臣阿倍御主人は、財産が豊かで、一族も栄えている人でいらっしゃった。その年に日本に来ていた唐の貿易船の、王卿という者のもとに手紙を書いて、「火鼠の皮衣というものを買って送ってよこせ」と言って、お仕えする人の中から信頼できる者を選び、小野房守という人をつけて遣わす。房守は手紙を持って行き着き、あの博多の浦にいる王卿に代金の金を渡す。
王卿は手紙を広げて見て、返事を書く。「火鼠の皮衣は、わが国にない物です。噂には聞いていますが、まだ見たことのない物です。この世にある物ならば、この国にも持ってまいっているはずです。たいへん難しい商いです。しかしながら、もし天竺にたまたま持ち渡っているならば、長者のあたりを訪ねて探してみましょう。もし無い物であれば、使いの者に添えて代金の金はお返しいたします」と書いてあった。
その唐の船がやって来た。小野房守が帰って来て都へ上るということを聞いて、大臣は足の速い馬を走らせて迎えにやらせなさる。房守はそのときその馬に乗って、筑紫からわずか七日で都に上ってきた。王卿の手紙を見ると、「火鼠の皮衣は、やっとのことで人を出して探し求めました。今の世にも昔の世にも、この皮はたやすくはない物でした。昔、尊い天竺の聖がこの国に持ってきていましたのが、西の山寺にあると聞きつけて、朝廷に申し上げて、やっと買い取って差し上げます。代金が少ないと国司が使いの者に申しましたので、王卿の金を加えて買いました。あと金五十両をいただかねばなりません。船が帰るときに託して送ってください。もし金をくださらないのなら、皮衣を代金のかたとしてお返しください」と書いてあるのを見て、
「何を言うのか。あと少しの金のことではないか。必ず送るべき物だ。うれしくも送ってよこしたものだ」と言って、唐土の方角に向かってひれ伏して拝みなさる。この皮衣を入れてある箱を見ると、さまざまの美しい瑠璃で彩って作ってある。皮衣を見ると紺青の色である。毛の先には金色の光が輝いている。いかにも宝物と見え、その美しさは比べるものがない。火に焼けないことよりも、その清らかな美しさが並ぶものもない。「なるほど、かぐや姫が欲しがりなさるのももっともだ」とおっしゃって、「ああ、もったいない」と言って箱に入れなさり、木の枝につけて、ご自身の化粧も念入りにして、そのまま姫の家に泊まることになるだろうとお思いになって、歌を詠み添えて持っていらっしゃった。その歌は、
「限りない恋の思いの火にも焼けない皮衣を手に入れて、涙に濡れていた袂も乾き、今日こそはこれを着て、あなたと会えることだ」
と書いてあった。家の門に持って行って立っている。竹取の翁が出てきて受け取って、かぐや姫に見せる。かぐや姫がその皮衣を見て言うには、「美しい皮のようです。でも、とりわけ本物の皮かどうかはわかりません」。竹取の翁が答えて言うには、「ともかく、まずはお招き入れいたしましょう。世の中には見られない皮衣の様子なので、これを本物とお思いなさい。人をあまりひどく困らせ申し上げなさるな」と言って、大臣を招き入れて座らせ申し上げた。こうして招き入れて、今度はきっと結婚するだろうと、嫗も心の中で思っている。この翁は、かぐや姫が独り身でいるのを嘆かわしく思っていたので、りっぱな人と結婚させようと思いめぐらしていたけれども、姫がひたすら嫌だと言うので、無理強いできないのも当然のことである。
かぐや姫が翁に言うには、「この皮衣は、火で焼いてみて焼けなければ本物だろうと思って、あの方の言うことにも従いましょう。あなたは、世にない物だからそれを本物と疑いなく思おうとおっしゃいます。それでもやはり、これを焼いてみましょう」と言う。翁は「それはもっともだ」と言って、大臣に「このように申しております」と言う。大臣は答えて言うには、「この皮は唐土にもなかったのを、やっとのことで探し求めて手に入れたのです。何の疑いがありましょう」。「そうは申しましても、早く焼いてごらんなさい」と言うので、火の中にくべて焼かせなさると、めらめらと焼けてしまった。「やはりそうだった。別の獣の皮だったのだ」と言う。大臣はこれをご覧になって、お顔は草の葉の色のように青ざめて座っていらっしゃる。かぐや姫は「ああ、うれしい」と喜んで座っていた。あの大臣がお詠みになった歌の返歌を、箱に入れて返す。
「跡形もなく燃えると知っていたら、この皮衣を、火の外に置いて見ていたでしょうに(思い悩むこともなかったでしょうに)」
と書いてあった。そういうわけで、大臣はお帰りになってしまった。世間の人々が、「阿倍の大臣は火鼠の皮衣を持っていらして、かぐや姫と結婚なさったそうだね。ここにいらっしゃるのか」などと尋ねる。ある人が言うには、「皮衣は火にくべて焼いたら、めらめらと焼けてしまったので、かぐや姫は結婚なさらなかった」と言ったので、これを聞いて、やりとげられないことを「あへなし」と言うようになった。
意訳
三人目の阿倍御主人は、前の二人と違って自分で偽物を作ろうとはしない。財力にものを言わせて唐の商人から買い取り、追加の代金も惜しまず払う。届いた皮衣は紺青に金色の光を放つみごとな品で、大臣は本物と信じきって身支度を整え、今夜こそ結婚できると意気込んで姫の家を訪れる。ところが、火に焼けないはずの皮衣は、姫が試しに火にくべるとあっけなく燃えてしまう。大臣自身は商人にだまされた被害者でもあり、真剣だった分だけ、青ざめた顔の滑稽さと哀れさが際立つ。
語釈・文法注
- 王卿
- 唐の商人の名。「王」は姓、「卿」は敬称とも。当時、博多などに唐の商船が来航して交易を行っていた。
- こんじやう
- 「紺青」。鮮やかな濃い青色。
- けさう
- 「化粧(けさう)」。身なりを整え、装いを凝らすこと。
- しやうじ
- 「請(しやう)ず」の連用形。招き入れる、招待する。
- すみ
- 「住む」。男が女のもとに通って夫婦として暮らすこと。結婚する。
- あへなし
- 「敢へ無し」。張り合いがない、あっけない。ここでは「阿倍無し」(阿倍の大臣はかいもない)と、皮衣が火で「あへ(燃え尽き)なし」をかけた語源説話。
文法
- 「もてまうで來なまし」
- 「な」は完了(強意)の助動詞「ぬ」の未然形、「まし」は反実仮想。持ってまいっているでしょうに。
- 「人のいふことにもまけめ」
- 係助詞「こそ」を受けて、推量の助動詞「む」が已然形「め」で結ばれている(係り結び)。従いもしましょう。
- 「知りせば〜見ましを」
- 「せば〜まし」で反実仮想を表す。知っていたなら〜見ていただろうに。
和歌
かぎりなきおもひに燒けぬかはごろも袂かわきて今日こそはきめ
- 詠者
- 阿倍御主人
- 状況
- 火鼠の皮衣に添えて、結婚を確信して詠んだ歌。
修辞
- 掛詞
- 「おもひ」に「思ひ」と「火」、「きめ」に「着め」と「来め」をかける。
なごりなくもゆと知りせばかは衣おもひの外におきて見ましを
- 詠者
- かぐや姫
- 状況
- 皮衣が燃えてしまったあと、大臣の歌に返した歌。
修辞
- 掛詞
- 「おもひ」に「思ひ」と「火」をかけ、「思ひの外」に「火の外」と「思いのほか」を重ねる。
解説
火鼠は、中国の伝説で南方の火山に住むとされる鼠で、その毛で織った布は火に焼けず、汚れても火に入れると白くなるという(「火浣布」)。実際には石綿(アスベスト)の布がこれに当たるともいわれる。
阿倍御主人は実在の右大臣で、阿倍氏は大陸との交流にゆかりの深い氏族であった。物語でも唐の商人との取引という国際的な手段をとらせているのは、そうした背景をふまえたものとも考えられる。
大臣は偽物と知らずに大金を投じたのであり、ずる賢い車持皇子とは対照的に、財力はあるが人のよい人物として描かれている。「草の葉の色して」という表現は、怒りや恥で顔色を失ったさまを鮮やかに伝えている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部三 雑上(竹取物語) 板倉屋書房、明治36年(1903)、10–12頁(コマ9–10)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日