竹取物語 第5章
蓬萊の玉の枝(二)
皇子と翁が歌を詠み交わしているところへ、玉の枝を作った工匠たちが現れ、まだ報酬をもらっていないと訴え出る。偽物と知ったかぐや姫は喜んで玉の枝を返し、工匠たちに褒美を与える。恥をかいた皇子は工匠たちを血の出るまで打たせ、自らは深い山に姿を消した。
- 1かゝるかゝるかかるほどほどほどににに、、、男男おとこどもどもども六六ろく人人にん連連つらねねねててて庭庭にわにににいでいでいできききたりたりたり、、、一一ひと人人りののの男男おとこふみふみふみににに文文ふみをををはさみはさみはさみてててまうすまうすもうす、、、「「「つくもつくもつくものののつかさつかさつかさのののたくみたくみたくみあやべあやべあやべののの內內うち麿麿まろまうさくまうさくもうさく、、、玉玉たまののの木木きををを作作つくりりりててて仕仕つこうううまつりまつりまつりしししことことこと、、、心心こころををを碎碎くだきききててて、、、千千せん餘餘よ日日にちににに力力ちからををを盡盡つくしししたるたるたることことこと少少すくなからからからずずず。。。しかるにしかるにしかるにいまだいまだいまだ賜賜たまははわらららずずず。。。これこれこれををを賜賜たまはりはりわりててて分分わかちちちててて、、、ににに賜賜たまははわせせせむむん」」」ととといひいひいいてててさゝげさゝげささげたりたりたり。。。
- 2竹竹たけ取取とりののの翁翁おきな「「「このこのこのたくみたくみたくみ等等らががが申申もうすすすことことことははは何何なに事事ごとぞぞぞ」」」とととかたぶきかたぶきかたぶきをりをりおり。。。みこみこみこははは我我われにににもももあらあらあらぬぬぬけしきけしきけしきにににててて、、、肝肝きも消消きえええぬぬぬべきべきべき心心ここちちちしししててて居居い給給たまへへえりりり。。。これこれこれをををかぐやかぐやかぐや姫姫ひめ聞聞ききききててて「「「このこのこの奉奉たてまつるるる文文ふみをををとれとれとれ」」」ととといひいひいいててて見見みれれればばば、、、文文ふみににに申申もうしししけるけるけるやうやうよう「「「みこみこみこののの君君きみ千千せん餘餘よ日日にち賤賤いやしきしきしきたくみたくみたくみ等等らととと諸諸もろ共共ともににに同同おなじじじ所所ところににに隱隱かくれれれ居居いたまひたまひたまいててて、、、かしこきかしこきかしこき玉玉たまののの枝枝えををを作作つくらららせせせ給給たまひひいててて、、、つかさつかさつかさももも賜賜たまははわむむんととと仰仰おおせせせ賜賜たまひひいききき。。。これこれこれをををこのこのこの頃頃ごろ案案あんずるずるずるににに、、、御御おつかひつかひつかいとととおはしますおはしますおわしますべきべきべきかぐやかぐやかぐや姫姫ひめののの給給たまふふうべきべきべきなりなりなりけりけりけりととと承承うけたまわりりりててて、、、このこのこの宮宮みやよりよりより賜賜たまはらはらわらむむんとととまうしまうしもうしててて給給たまはるはるわるべきべきべきなりなりなり」」」ととといふいふいうををを聞聞ききききててて、、、
- 3かぐやかぐやかぐや姫姫ひめ、、、くるゝくるゝくるるまゝまゝままににに思思おもひひいわびわびわびつるつるつる心心ここちちちゑみゑみえみ榮榮さかえええててて、、、翁翁おきなををを呼呼よびびびとりとりとりててていふいふいうやうやうよう「「「誠誠まことににに蓬蓬ほう萊萊らいののの木木きかかかとととこそこそこそ思思おもひひいつれつれつれ。。。かくかくかくあさましきあさましきあさましきそらそらそらごとごとごとにににてててありありありけれけれければばば、、、はやはやはや疾疾とくくくかへしかへしかへし給給たまへへえ」」」ととといへいへいえばばば、、、翁翁おきなこたふこたふこたう「「「さだかさだかさだかにににつくらつくらつくらせせせたるたるたるものものものととと聞聞ききききつれつれつればばば、、、かへさかへさかえさむむんことことこといといといと易易やすししし」」」とととうなづきうなづきうなずきをりをりおり。。。かぐやかぐやかぐや姫姫ひめののの心心こころゆきゆきゆきはてゝはてゝはてて、、、ありつるありつるありつる歌歌うたのののかへしかへしかへし、、、
- 4「「「まことまことまことかかかととと聞聞ききききててて見見みつれつれつればばばことことことののの葉葉はををを飾飾かざれれれるるる玉玉たまののの枝枝えにににぞぞぞありありありけるけるける」」」
- 5ととといひいひいいててて、、、玉玉たまののの枝枝えもももかへしかへしかへしつつつ。。。竹竹たけ取取とりののの翁翁おきなさばかりさばかりさばかりかたらひかたらひかたらいつるつるつるががが、、、さすがさすがさすがににに覺覺おぼえええててて眠眠ねぶりりりをりをりおり。。。皇皇み子子こはははたつたつたつもももはしたはしたはした居居いるるるもももはしたはしたはしたにににててて居居い給給たまへへえりりり。。。日日ひののの暮暮くれれれぬれぬれぬればばばすべりすべりすべり出出いででで給給たまひひいぬぬぬ。。。
- 6かのかのかのうれへうれへうれえせせせしししたくみたくみたくみ等等らをををばばば、、、かぐやかぐやかぐや姫姫ひめ呼呼よびびびすゑすゑすえててて、、、嬉嬉うれしきしきしき人人ひとどもどもどもなりなりなりととといひいひいいててて、、、祿祿ろくいといといと多多おおくくくとらとらとらせせせ給給たまふふう。。。たくみたくみたくみ等等らいみじくいみじくいみじく喜喜よろこびびびててて「「「思思おもひひいつるつるつるやうやうようにににもももあるあるあるかなかなかな」」」ととといひいひいいてててかへるかへるかえる道道みちにににててて、、、車車くら持持もちのののみこみこみこ血血ちののの流流ながるゝるゝるるまでまでまでさせさせさせ給給たまふふう。。。祿祿ろく得得えしししかひかひかいもももなくなくなく皆皆みなとりとりとり捨捨すてててさせさせさせ給給たまひひいてててけれけれければばば逃逃にげげげうせうせうせにににけりけりけり、、、
- 7かくてかくてかくてこのこのこのみこみこみこ、、、「「「一一いつ生生しょうののの恥恥はじこれこれこれににに過過すぐるぐるぐるはははあらあらあらじじじ。。。女女おんなをををえええずずずなるなるなるのみのみのみにににあらあらあらずずず、、、天天あめののの下下したののの人人ひとののの見見み思思おもははわむむん事事ことののの耻耻はずかしきかしきかしき事事こと」」」とととのたまひのたまひのたまいてててたゞたゞただ一一ひと所所ところ深深ふかききき山山やまへへへ入入いりりり給給たまひひいぬぬぬ。。。みやみやみやつかさつかさつかささぶらふさぶらふさぶらう人人ひと々々びと、、、皆皆みな手手てををを分分わかちちちててて求求もとめめめ奉奉たてまつれれれどもどもども、、、みまかりみまかりみまかりもももやややしししたまひたまひたまいけむけむけん、、、得得え見見みつけつけつけ奉奉たてまつらららずずずなりなりなりぬぬぬ。。。みこみこみこののの御御おん供供ともににに隱隱かくししし給給たまははわむむんとてとてとて、、、年年とし頃頃ごろ見見みえええ給給たまははわざりざりざりけるけるけるなりなりなり。。。是是これをををなむなむなんたまさかたまさかたまさかとととはははいひいひいい始始はじめめめけるけるける。。。
現代語訳
こうしているうちに、男たちが六人連れだって庭に現れた。一人の男が文挟みに手紙をはさんで申し上げる。「作物所の工匠、漢部内麻呂が申し上げます。玉の木を作ってお仕えしましたこと、心を砕いて千日余りも力を尽くしましたことは並たいていではありません。それなのに、ご褒美をまだいただいておりません。これをいただいて、弟子たちに分けてやりたいのです」と言って、手紙を差し上げた。
竹取の翁は「この工匠たちが申すことは何事だ」と首をかしげている。皇子は茫然自失の様子で、肝もつぶれそうな心地で座っていらっしゃる。これをかぐや姫が聞いて、「その差し出している手紙を受け取りなさい」と言って見ると、手紙に申し上げていることには、「皇子の君は、千日余りも卑しい工匠たちと一緒に同じ所に隠れていらっしゃって、すばらしい玉の枝を作らせなさって、官職も与えようとおっしゃいました。このことを近ごろ考えてみますと、この玉の枝は、ご側室となられるはずのかぐや姫がご所望なさるはずの物だったのだと承りましたので、このお屋敷からいただこうと参ったのです」と言うのを聞いて、
かぐや姫は、日が暮れるにつれて思い悩んでいた気持ちが晴れて、にこにこと笑い出し、翁を呼び寄せて言うには、「本当に蓬萊の木かと思っておりました。このようにあきれた嘘であったのですから、早くお返しください」と言うと、翁は答えて「たしかに作らせたものだと聞いたからには、お返しするのはたやすいことだ」とうなずいている。かぐや姫はすっかり気が晴れて、さきほどの歌の返歌、
「本当かと思って聞き、よく見てみると、言葉で飾り立てただけの玉の枝であったことよ」
と言って、玉の枝も返してしまった。竹取の翁は、あれほど皇子と親しげに語り合っていたのに、さすがにばつが悪く思われて、眠ったふりをしている。皇子は立つのも中途半端、座っているのも中途半端で、きまり悪そうに座っていらっしゃる。日が暮れたので、こっそり抜け出しなさった。
あの訴え出た工匠たちを、かぐや姫は呼び寄せて座らせ、「うれしい人たちです」と言って、褒美をたくさん与えなさる。工匠たちはたいそう喜んで、「思っていたとおりだ」と言って帰る途中で、車持の皇子が、血が流れるまで打ちすえさせなさる。褒美をもらったかいもなく、すべて取り上げて捨てさせなさったので、工匠たちは逃げ去ってしまった。
こうしてこの皇子は、「一生の恥としてこれ以上のものはないだろう。女を得られなくなっただけでなく、世間の人が見てどう思うかと思うと恥ずかしい」とおっしゃって、ただ一人で深い山へ入ってしまわれた。宮家の役人やお仕えする人々が、みな手分けしてお捜し申し上げたけれども、お亡くなりになったのだろうか、見つけ申し上げることができずに終わった。皇子は、家来たちから身を隠そうとして、何年もお姿をお見せにならなかったのである。このことから、「たまさかなる」(玉離る、めったにない)と言うようになった。
意訳
皇子の巧妙な嘘は、思いもよらない方面から崩れる。報酬を払ってもらえなかった工匠たちが、よりによって求婚の席に訴え出たのである。手紙には、千日余りも隠れて玉の枝を作らせていた皇子の行状がそのまま書かれていた。追いつめられていたかぐや姫は一転して笑顔になり、皇子の歌に「言葉で飾った玉の枝だった」と痛烈な返歌をする。さっきまで婿扱いしていた翁は狸寝入りを決めこみ、皇子は身の置き所もなく帰っていく。皇子が工匠たちを打ちすえて褒美を奪い、自分は山に姿を消すという結末まで、偽りを重ねた者の転落が容赦なく描かれている。
語釈・文法注
- ふみばさみ
- 「文挟み」。身分の高い人に文書を差し出すときに用いる、先に文書をはさむ仕掛けのある白木の杖。
- つくも所
- 「作物所(つくもどころ)」。宮中の調度品などを作る役所。
- 祿
- 褒美。仕事や功労に対して与えられる品物。
- けこ
- 「家子」で弟子や家来の意とする説、「家子(けご)」で家の者とする説などがある。
- えうし
- 「要じ」。必要とすること、所望すること。
- ちやうぜ
- 「打(ちやう)ず」の未然形。打ちすえる、こらしめる。
- たまさかなる
- 「たまさか」(めったにない、まれである)を、「玉離(たまさか)る」(玉の枝のために魂が離れる、玉が離れる)に結びつけた語源説話。
文法
- 「我にもあらぬけしき」
- 茫然自失のさま。正気を失ったような様子。
- 「くるゝまゝに」
- 日が暮れるにつれて。結婚の夜が近づくにつれて沈んでいた心が、の意を含む。
- 「みまかりもやしたまひけむ」
- 「や」は疑問の係助詞、「けむ」は過去推量の助動詞の連体形(係り結び)。亡くなりでもなさったのだろうか。
和歌
まことかと聞きて見つればことの葉を飾れる玉の枝にぞありける
- 詠者
- かぐや姫
- 状況
- 玉の枝が偽物とわかり、皇子の歌に返した歌。
修辞
- 縁語
- 「葉」「枝」は玉の枝の縁語。「言の葉を飾れる」は、言葉で飾り立てた、の意。
解説
偽の玉の枝の話は、工匠たちの訴えによって偽りが暴かれるという、劇的な展開で幕を閉じる。成功まであと一歩だった皇子が、払うべき報酬を惜しんだために破滅するところに、人間の欲深さと小ささへの風刺がある。
翁が寝たふりをし、皇子が「立つもはした、居るもはした」の状態で座りこむ場面は、物語中でも屈指の滑稽な描写として知られる。最後の「たまさかなる」の語源譚は、他の章に比べるとこじつけの度合いが強く、むしろ言葉遊びを楽しむ語りになっている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部三 雑上(竹取物語) 板倉屋書房、明治36年(1903)、8–10頁(コマ8–9)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日