古典ライブラリー

おくのほそ道 第18章

宮城野

名取川を渡って仙台に入り、端午の節句の前日、画工加右衛門の案内で宮城野・玉田・横野・つつじが岡・木の下などの歌枕をめぐる。別れぎわ、加右衛門は松島・塩竈の絵図と紺の緒の草鞋を贈り、芭蕉は「あやめ艸足に結ん草鞋の緒」と詠む。

仙台の画工・加右衛門から松島と塩竈の絵図を受け取る芭蕉(AI生成)
仙台の画工・加右衛門から松島と塩竈の絵図を受け取る芭蕉
  1. 1ををを渡わた渡わたわたててて仙臺せんだい仙臺せんだいせんだいににに入い入いい。。。あやめふくあやめふくあやめうく日也ひなり日也ひなりひなり。。。旅宿りよしゆく旅宿りよしゆくりょしゅくをもをもをもとめてとめてとめて四五日逗留しごにちとうりう四五日逗留しごにちとうりうしごにちとうりゅうすすす。。。爰ここ爰ここここにににととと云い云いいものありものありものあり。。。聊いさゝか聊いさゝかいささか心こころ心こころこころあるあるある者もの者ものものととと聞きき聞ききききててて、、、知し知ししるるる人ひと人ひとひとになるになるになる。。。
  2. 2このこのこの者もの者ものもの、、、年比としごろ年比としごろとしごろさだかならぬさだかならぬさだかならぬ名など名などなどどころどころどころををを考置侍かんがへおきはべ考置侍かんがへおきはべかんがえおきはべればとてればとてればとて、、、一日案内ひとひあんない一日案内ひとひあんないひとひあんないすすす。。。ののの萩はぎ萩はぎはぎ茂しげ茂しげしげりあひてりあひてりあいて、、、秋あき秋あきあきののの氣色けしき氣色けしきけしき思おも思おもおもひやらるゝひやらるゝいやらるる。。。、、、よこよこよこ野の野のの、、、岡をか岡をかおかははは咲さ咲ささころころころ也なり也なりなり。。。
  3. 3日影ひかげ日影ひかげひかげももらぬももらぬももらぬ松まつ松まつまつののの林はやし林はやしはやしににに入い入いいててて、、、爰ここ爰ここここをををののの下しも下しもしもととと云い云いいとぞとぞとぞ。。。昔むかし昔むかしむかしもかくもかくもかく露つゆ露つゆつゆふかければこそふかければこそふかければこそ、、、三み三みみかさとかさとかさとはははよみたれよみたれよみたれ。。。、、、天神てんじん天神てんじんてんじんののの御社みやしろ御社みやしろみやしろなどなどなど拜をが拜をがおがててて、、、其そ其そそ日ひ日ひひはははくれぬくれぬくれぬ。。。
  4. 4猶松嶋塩なほまつしましほ猶松嶋塩なほまつしましほなおまつしましおがまのがまのがまの所々畫ところどころゑ所々畫ところどころゑところどころえににに書か書かかててて送おく送おくおくるるる。。。且かつ且かつかつ、、、紺こん紺こんこんののの染緒そめを染緒そめをそめおつけたるつけたるつけたる草鞋二足餞わらぢにそくはなむけ草鞋二足餞わらぢにそくはなむけわらじにそくはなむけすすす。。。さればこそさればこそさればこそ風流ふりう風流ふりうふりゅう、、、爰ここ爰ここここににに至いた至いたいたりてりてりて其實そのじつ其實そのじつそのじつををを顯あらは顯あらはあらわすすす。。。
  5. 5艸くさ艸くさくさ足あし足あしあしににに結むす結むすむすんんん草鞋わらぢ草鞋わらぢわらじののの緒を緒をを

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

名取川を渡って仙台に入る。ちょうど軒にあやめをふく日である。宿を求めて四、五日滞在する。ここに画工の加右衛門という者がいる。いくらか風流の心がある者と聞いて、知り合いになる。この者は、「長年、場所のはっきりしなくなった名所を調べておきましたので」と言って、一日案内してくれる。宮城野の萩が茂りあっていて、秋の景色が思いやられる。玉田・横野、つつじが岡は、あせびの咲くころである。日の光も漏れない松林に入って、ここを木の下というのだそうだ。昔もこのように露が深かったからこそ、「みさぶらひ御笠と申せ」と詠んだのだろう。薬師堂・天神の御社などを拝んで、その日は暮れた。そのうえ加右衛門は、松島や塩竈のあちこちを絵に描いて贈ってくれた。また、紺色に染めた緒をつけた草鞋を二足、餞別にくれた。そうであればこそ、風流の変わり者である彼は、ここに至ってその本領を発揮したのである。

あやめ艸足に結ん草鞋の緒(端午の節句には軒にあやめをふくが、私は旅人として、このあやめを草鞋の紺の緒に結んで、旅の無事を祈ろう)

意訳

仙台では、加右衛門という土地の風流人が、案内役をつとめてくれる。宮城野・玉田・横野・つつじが岡・木の下――いずれも古歌に詠まれた歌枕で、場所がわからなくなっていたものを加右衛門が調べておいたのである。

木の下の露深い松林で、芭蕉は古今集の東歌「みさぶらひ御笠と申せ宮城野の木の下露は雨にまされり」を思い出す。露が深いから傘をさしなさい、と従者に言う歌の情景が、今も変わらずにある。

別れぎわに贈られた紺の緒の草鞋は、端午の節句のあやめの色を思わせる。芭蕉は、軒にふくはずのあやめを足もとに結ぼうと詠み、加右衛門の心づくしに感謝した。

語釈・文法注

名取川
宮城県の名取市と仙台市の境を流れる川。歌枕。
あやめふく日
五月四日。端午の節句の前日に、軒にあやめ(菖蒲)をふいて邪気を払った。
畫工加右衞門
北野屋加右衛門。仙台の画工で、俳号は和風軒加之。
宮城野
仙台市の東部の原野。萩の名所として歌に詠まれた。
玉田、よこ野
玉田・横野。宮城野の一部の歌枕。
つゝじが岡
躑躅岡。仙台市宮城野区の天満宮のあたり。
あせび
馬酔木。春に白い壺形の花を房状につける。
木の下
仙台市若林区の陸奥国分寺のあたり。歌枕。
みさふらひ三かさ
古今集・東歌「みさぶらひ御笠と申せ宮城野の木の下露は雨にまされり」による。底本は「みさふらひ三かさ」と刷る。
藥師堂
陸奥国分寺の薬師堂。伊達政宗が再建した。
風流のしれもの
風流に打ち込む変わり者。ほめ言葉。

文法

考置侍ればとて
「とて」は、〜と言って。調べておきましたからと言って。
思ひやらるゝ
「るゝ」は自発の助動詞「る」の連体形。自然と思いやられる。
よみたれ
「たれ」は完了の助動詞「たり」の已然形で、上の「こそ」の結び。
さればこそ
そうであればこそ。思ったとおり。

発句・和歌

あやめ艸足に結ん草鞋の緒

作者
松尾芭蕉
状況
仙台の画工加右衛門から、紺の染緒をつけた草鞋を餞別に贈られたときの句。端午の節句に軒にあやめをふく風習を、旅人として足もとに結ぶことに転じる。季語は「あやめ艸」で夏。

修辞

季語
あやめ艸(菖蒲草)。夏(端午)。
見立て
草鞋の紺の緒を、あやめ(花菖蒲)の色に見立てる。

解説

曾良の『随行日記』によれば、五月四日に仙台に入り、八日まで滞在している。加右衛門は、仙台の俳人大淀三千風の門人で、名所の考証にくわしかった。

仙台は伊達家六十二万石の城下町であるが、本文には城や町の繁栄は一切書かれていない。芭蕉の関心は、あくまでも古歌の名所と、そこで出会った人の風流にあった。

関連

出典

底本
藤村作編『奥の細道』 至文堂、昭和5年(1930)、12〜13頁(コマ15)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日