紫式部日記 第16章
中宮方の気風
大人になった中宮は、中宮方が殿上人に「面白みがない」と思われていることを知り、もう少し打ちとけてほしいと望むが、女房たちの習いは改まらない。作者は、引きこもるのでも出しゃばるのでもなく、折に従って応対する難しさを説き、人をそしるのはたやすいが自分を律するのは難しいと、斎院方の中将の君を批判して結ぶ。
- 1今今いまはははやうやうやうやうようようおとなびおとなびおとなびさせさせさせ給給たまふふうまゝまゝままににに、、、世世よのののあべきあべきあべきさまさまさま、、、人人ひとののの心心こころのののよきよきよきもももあしきあしきあしきももも、、、過過すぎぎぎたるたるたるもももおくれおくれおくれたるたるたるももも皆皆みな御御ご覽覽らんじじじ知知しりりりててて、、、
- 2このこのこの宮宮みやわたりわたりわたりののの事事ことををを殿殿てん上上じょう人人びともももなになになにももも目目めなれなれなれててて、、、ことことことにににをかしきをかしきおかしき事事ことなしなしなしととと思思おもひひいいふいふいうべかべかべかめりめりめりととと、、、みなみなみなしろしめいしろしめいしろしめいたりたりたり。。。
- 3さりとてさりとてさりとて心心こころにくゝにくゝにくくもももありありありはてはてはてずずず、、、とりとりとりはづせはづせはずせばばば、、、いといといとあはつけいあはつけいあわつけい事事こともももいでいでいでくるくるくるものものものからからから、、、なさけなさけなさけなくなくなくひきひきひき入入いれれれたるたるたる、、、かうかうこうしししてててもももあらあらあらなむなむなんとととおぼしおぼしおぼしのたまはすれのたまはすれのたまわすれどどど、、、
- 4そのそのそのならひならひならいなほりなほりなおりがたくがたくがたく、、、又又また今今いまやうやうようののの公公きん達達だちととといふいふいうものものもの倒倒たおるゝるゝるるかたかたかたにてにてにて、、、あるあるあるかぎりかぎりかぎりみなみなみなまめまめまめ人人びとなりなりなり。。。
- 5齋齋さい院院いんなどなどなどやうやうようののの所所ところにてにてにて月月つきをををももも見見み花花はなをををもももめづるめづるめずるひたぶるひたぶるひたぶるのののえんえんえんなるなるなることことことははは、、、おのづからおのづからおのずから求求もとめめめ思思おもひひいてててもももいふいふいうらむらむらん。。。
- 6朝朝あさ夕夕ゆうたちたちたちまじりまじりまじりゆかしげゆかしげゆかしげなきなきなきわたりわたりわたりににに、、、たゞたゞただごとごとごとをををもももきゝきゝききよせよせよせうちうちうちいひいひいい、、、もしはもしはもしはをかしきをかしきおかしき事事ことをををもももいひいひいいかけかけかけられられられててて、、、いらへいらへいらえはぢはぢはじなからなからなからずずず、、、すすすべきべきべき人人ひとなむなむなん世世よにににかたくかたくかたくなりなりなりにににたるたるたるとととぞぞぞ人人ひと々々びとはははいひいひいい侍侍はべるるるめるめるめる。。。
- 7みづからみづからみずからえええ見見み侍侍はべらららぬぬぬことことことなれなれなればばば、、、えええしらしらしらずずずかしかしかし。。。
- 8かならずかならずかならず人人ひとののの立立たちちちよりよりより、、、はかなきはかなきはかなきいらへいらへいらえをををせせせむむんからからからににに、、、にくいにくいにくいことことことをををひきひきひき出出いでででむむんぞぞぞあやしきあやしきあやしき。。。いといといとようようようさてさてさてもももありありありぬぬぬべきべきべき事事ことなりなりなり。。。これこれこれををを人人ひとののの心心こころありがたしありがたしありがたしとととはははいふいふいうににに侍侍はべるるるめりめりめり。。。
- 9などなどなどかかか必必かならずずずしもしもしもおもにくゝおもにくゝおもにくくひきひきひき入入いりりりたらたらたらむむんがががかしこからかしこからかしこからむむん。。。又又またなどてなどてなどてひたゝけひたゝけひたたけてててさまよひさまよひさまよいさしさしさしいづいづいずべきべきべきぞぞぞ。。。よきよきよき程程ほどにににをりをりをりをりおりおりのののありさまありさまありさまににに從從したがひひいててて用用もちゐゐいむむむことことことのののいといといとかたきかたきかたきなるなるなるべしべしべし。。。
- 10まづまづまずははは宮宮みやののの大大だい夫夫ぶ參參まいりりり給給たまひひいててて啓啓けいせせせさせさせさせ給給たまふふうべきべきべき事事ことありありありけるけるけるをりをりおりににに、、、いといといとあえかあえかあえかにににこめいこめいこめい給給たまふふう上上じょう臈臈ろうたちたちたちははは對對たい面面めんしししたまふたまふたまうことことことかたしかたしかたし。。。又又またあひあひあいてててももも何何なに事事ごとをををかかかはかばかしくはかばかしくはかばかしくのたまふのたまふのたまうべくべくべくももも見見みえええずずず。。。
- 11詞詞ことばののの足足たるるるまじきまじきまじきにににもももあらあらあらずずず、、、心心こころののの及及およぶぶぶまじきまじきまじきにににももも侍侍はべらららねねねどどど、、、つゝましつゝましつつましはづかしはづかしはずかしととと思思おもふふうににに、、、ひがごとひがごとひがごともももせせせらるゝらるゝらるるををを、、、あいなしあいなしあいなしすべてすべてすべてきかきかきかれれれじじじとととほのかほのかほのかなるなるなるけはひけはひけわいをををももも見見みえええじじじ。。。
- 12外外ほかののの人人ひとははは、、、さささぞぞぞ侍侍はべらららざるざるざるかかか。。。かゝるかゝるかかるまじらひまじらひまじらいなりなりなりぬれぬれぬればばば、、、こよなきこよなきこよなきあてあてあて人人びとももも皆皆みな世世よににに從從したがふふうなるなるなるををを、、、唯唯ただ姫姫ひめ君君ぎみながらながらながらのののもてなしもてなしもてなしにににぞぞぞ皆皆みなものしものしものしたまふたまふたまう。。。
- 13下下げ臈臈ろうのののいでいでいであふあふあうををを、、、大大だい納納な言言ごん心心こころよからよからよからずずずととと思思おもひひいたまふたまふたまうなれなれなればばば、、、さるべきさるべきさるべき人人ひと々々びとさとさとさとにににまかでまかでまかで、、、局局つぼねなるなるなるもももわりなきわりなきわりなきいとまいとまいとまににに障障さわるるるをりをりをりをりおりおりははは、、、對對たい面面めんするするする人人ひとなくなくなくてててまかでまかでまかで給給たまふふうときときときももも侍侍はべるるるなりなりなり。。。
- 14そのそのその外外ほかののの上達部上達部かんだちめ、、、宮宮みやののの御御おおん方方かたにににまゐりまゐりまいりなれなれなれ、、、物物ものをををももも啓啓けいせせせさせさせさせ給給たまふふうははは、、、おのおのおのおのおのおの心心こころよせよせよせののの人人ひと、、、おのづからおのづからおのずからとりどりとりどりとりどりにににほのほのほのしりしりしりつゝつゝつつ、、、
- 15そのそのその人人ひとないないないをりをりおりはははすさまじげすさまじげすさまじげににに思思おもひひいててて立立たちちちいづるいづるいずる人人ひと々々びとののの、、、事事ことにににふれふれふれつゝつゝつつ「「「このこのこの宮宮みやわたりわたりわたりのののことことことうもれうもれうもれたりたりたり」」」などなどなどいふいふいうべかべかべかめるめるめるもももことわりことわりことわりににに侍侍はべるるる。。。
- 16齋齋さい院院いんわたりわたりわたりののの人人ひともももこれこれこれをををおとしめおとしめおとしめ思思おもふふうなるなるなるべしべしべし。。。さりとてさりとてさりとて我我わががが方方かたののの見見みどころどころどころありありあり、、、ほかほかほかののの人人ひとははは目目めももも見見みしらしらしらじじじ、、、ものものものをををももも聞聞ききききとゞめとゞめとどめじじじととと思思おもひひいあなづらあなづらあなずらむむんぞぞぞまたまたまたわりなきわりなきわりなき。。。
- 17すべてすべてすべて人人ひとをををもどくもどくもどくかたかたかたはははやすくやすくやすく、、、我我わががが心心こころをををもちゐもちゐもちいむむんことことことははは難難かたかべいかべいかべいわざわざわざををを、、、さささはははおもはおもはおもわでででまづまづまずわれわれわれさかしさかしさかしににに人人ひとをををなきなきなきににになしなしなし世世よををを謗謗そしるるるほどほどほどににに、、、心心こころのののきはみきはみきわみこそこそこそ見見みえええあらはるあらはるあらわるめれめれめれ。。。
- 18いといといと御御ご覽覽らんせせぜさせさせさせまほしうまほしうまほしゅう侍侍はべりりりしししふみふみふみかきかきかきかなかなかな。。。人人ひとののの隱隱かくしししおきおきおきたりたりたりけるけるけるををを盗盗ぬすみみみててて、、、みそかみそかみそかににに見見みせせせてててとりとりとりかへしかへしかえし侍侍はべりりりにににしかしかしかばばば、、、ねたうねたうねとうこそこそこそ。。。
現代語訳
今では(中宮さまも)しだいに大人びていらっしゃるにつれて、世の中のあるべきようすや、人の心のよい点も悪い点も、度を越したのも足りないのも、すべてご存じになって、
この中宮方のことを、殿上人も何もかも見慣れてしまって、特に趣深いこともないと思って言っているらしいと、すべてご存じでいらっしゃる。
だからといって奥ゆかしいばかりでもいられず、うっかりすると、たいそう軽薄なことも起こるものだが、無愛想に引きこもっているのも、(もう少し)こうしていてほしいと思い、そうおっしゃってもいるのだが、
その習いは直りにくく、また当世の公達というものは、(女房の)なびく方へなびくもので、いる限りの者はみなまじめ人ぶっている。
斎院などのような所で、月を見たり花を愛でたりするひたむきな風流は、自然と自分から求め思って言うのだろう。
朝夕顔を合わせて、見たいと思うような目新しさもない宮中で、ふつうの言葉を聞きつけて口をはさんだり、あるいは趣深いことを言いかけられたりして、恥ずかしくない返事のできる人が、世の中に少なくなったと、人々は言っているようです。
自分では見ていないことなので、わかりませんけれど。
かならずしも、人が立ち寄ってちょっとした返事をしようとしたとたんに、憎らしいことを言い出すとは限らないでしょうに、不思議なことだ。ほどよく応対してもよいことなのだ。これを人の心がめったにないものだとは言うのでございましょう。
どうしてかならずしも、つんとして引きこもっているのが賢いことになるのだろう。また、どうしてだらしなくふらふらと出しゃばってよいものか。ほどよく、その折々のようすに従って心を用いることが、たいそう難しいのだろう。
まず、中宮の大夫が参上なさって、中宮さまに申し上げなさることがあったときに、たいそうか弱く子どもっぽくていらっしゃる上臈の女房たちは、お会いになることもめったにない。また会っても、何をはきはきとおっしゃるとも見えない。
言葉が足りないわけでも、心が及ばないわけでもないのだが、気後れして恥ずかしいと思うので、間違ったことを言ってしまうのを、つまらない、すべて聞かれまいと、かすかな気配さえも見せまいとする。
ほかの所の人は、そうではないのでしょうか。こうした宮仕えの身になれば、この上なく高貴な人もみな世の習いに従うものなのに、(ここでは)ただ姫君のままのふるまいで、みな過ごしていらっしゃる。
下臈の女房が応対に出るのを、大納言(中宮大夫)は快く思っていらっしゃらないので、しかるべき女房が里に下がったり、局にいる者もやむをえない用事に差しさわったりする折々には、応対する人がいないまま退出なさることもあるのです。
そのほかの上達部で、中宮さまの御方に参り慣れ、物を申し上げなさる人は、それぞれ心を寄せる女房がいて、自然とそれぞれ(その人の局を)知っているので、
その人がいないときには興ざめに思って帰ってゆく人々が、何かにつけて「この中宮方はぱっとしない」などと言うらしいのも、もっともなことでございます。
斎院あたりの人も、これを見下して思っているのでしょう。だからといって、自分の方だけが見どころがあって、ほかの人は目も利かないだろう、物も聞きとめないだろうと思って侮るのは、また筋の通らないことだ。
すべて、人を非難するのはたやすいが、自分の心をうまく用いることは難しいものなのに、そうは思わないで、まず自分を賢いことにして人を無視し、世の中をそしるうちに、かえって心の程度が見えてしまうものです。
たいそうお目にかけたかった手紙の書きぶりですこと。人が隠しておいたのを盗んで、こっそり見せてくれて取り返してしまいましたので、残念なことです。
意訳
中宮も大人になって、世の中や人の心がわかるようになった。
中宮は、自分の女房たちが殿上人から面白みがないと思われていることを知っている。
中宮は、軽薄になるのは困るが、引きこもりすぎるのもよくない、もう少しどうにかならないかと望んでいる。
しかし女房たちの習いはなかなか直らない。公達のほうも女房に合わせて、みなまじめぶっている。
斎院のような所では、風流は自然と求められるものだ。
日常の宮中で、気のきいた応対ができる女房が少なくなったと人々は言う。
作者は、自分では見ていないので、とことわる。
人と話せばかならず憎らしいことを言ってしまうわけではないのだから、ほどよく応対すればよい。それができる人はめったにいない。
引きこもるのも出しゃばるのも良くない。その場に応じてほどよくふるまうのがいちばん難しい。作者の処世観がよく表れた一節である。
中宮大夫が用事で来ても、上臈の女房たちは応対に出ない。
能力がないわけではなく、恥ずかしさから失敗を恐れて、気配さえ見せないのである。
宮仕えに出れば高貴な人も世の習いに従うのに、ここの女房たちは姫君のままでいる。
大夫は下臈の女房が応対するのを嫌うので、応対する人がいないまま帰ることもある。
ほかの上達部は、それぞれ心を寄せる女房を訪ねてくる。
その女房がいないと、興ざめして帰り、中宮方はぱっとしないと言う。それももっともだ。
斎院方もこれを見下しているのだろう。だが、自分の方だけが優れていると思うのは筋違いだ。
人を非難するのはたやすいが、自分を律するのは難しい。人をそしるうちに、かえって自分の程度が知れる。中将の君への批判は、作者自身への戒めでもある。
作者は、例の手紙を読み手に見せたかったと言う。人から盗み見たものだったので返してしまったと、いたずらっぽく結ぶ。
語釈・文法注
文法
- 「あべきさま」
- 「あるべきさま」の撥音便の表記されない形。
- 「倒るゝかたにて」
- 倒れる方へ倒れる、つまり(女房の)なびく方へ合わせるということと解した。
- 「ひたゝけて」
- 「ひたたく」は、だらしなくする、締まりなくふるまう。
- 「大納言心よからず」
- 底本は「大納言」の脇に小字の注記がある。中宮大夫の藤原斉信を指すと解した。
- 「難かべいわざ」
- 「難かるべきわざ」の音便。
- 「御覽せさせまほしう」
- 底本は「御覽せさせ」と書く。お目にかけたい、の意。
解説
前章に続き、中宮方の女房の気風が論じられる。中宮自身は女房たちがもう少し打ちとけることを望んでいるが、長年の習いは改まらない。作者は、引きこもるのでも出しゃばるのでもなく、その場に応じてほどよくふるまうことの難しさを説く。
作者は、上臈の女房たちが恥ずかしさから応対に出ないことを批判しながらも、能力が劣るのではないと擁護している。宮仕えの現場を知る者ならではの、具体的で公平な見方である。
最後の「人をもどくかたはやすく、我が心をもちゐむことは難かべいわざ」という一文は、斎院方の中将の君への批判であると同時に、作者自身を含めた人間一般への戒めともなっている。この後、作者は同時代の女流文学者たちへの評へと筆を進める。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(紫式部日記) 板倉屋書房、明治36年(1903)、406–408頁(コマ215–216)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
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