紫式部日記 第14章
女房たちの容姿
ここから日付のない消息文となる。作者は同僚の女房たちの容姿と気立てを一人ずつ語る。宰相の君、しだれ柳のような小少将の君、宮の内侍とその妹の式部のおもと、若い小大輔・源式部・宮木の侍従・五節の弁・こまと続け、容姿も心ばえもすべてそろった人はめったにいないと結ぶ。
- 1このこのこの次次つぎににに人人ひとのののかたちかたちかたちををを語語かたりりり聞聞きこえええさせさせさせばばば、、、物物ものいひいひいいさがなくさがなくさがなくややや侍侍はべるるるべきべきべき。。。たゞたゞただいまいまいまをををややや。。。さしあたりさしあたりさしあたりたるたるたる人人ひとののの事事ことはははわづらはしわづらはしわずらわし。。。いかにぞやいかにぞやいかにぞやなどなどなど、、、すこしすこしすこしもももかたほかたほかたほなるなるなるはははいひいひいい侍侍はべらららじじじ。。。
- 2宰宰さい相相しょうののの君君きみはははきたきたきたののの三三さんのののよよよ。。。ふくらかふくらかふくらかにににいといといとやうだいやうだいようだいこまめかしうこまめかしうこまめかしゅう、、、かどかどしきかどかどしきかどかどしきかたちかたちかたちしししたるたるたる人人ひとののの、、、うちうちうちゐゐいたるたるたるよりよりよりももも見見みもてもてもてゆくゆくゆくににに、、、こよなくこよなくこよなくうちうちうちまさりまさりまさりらうらうしくらうらうしくろうろうしくててて、、、口口くちつきつきつきににに、、、はづかしげさはづかしげさはずかしげさももも匂匂におひやかひやかいやかなるなるなることことこともももそひそひそいたりたりたり。。。
- 3もてなしもてなしもてなしなどなどなど、、、いといといと美美び々々びしくしくしくはなやかはなやかはなやかにににぞぞぞ見見みえええたまへたまへたまえるるる。。。心心こころざまざまざまもももいといといとめやすくめやすくめやすく心心こころうつくしきうつくしきうつくしきものものものからからから、、、まだまだまだいといといとはづかしきはづかしきはずかしき所所ところそひそひそいたりたりたり。。。
- 4小小こ少少しょう將將しょうののの君君きみははは、、、そこはかとなくそこはかとなくそこはかとなくあてあてあてににになまめかしうなまめかしうなまめかしゅう、、、二二きさら月月ぎばかりばかりばかりのののしだりしだりしだり柳柳やなぎのののさまさまさましししたりたりたり。。。
- 5やうだいやうだいようだいいといといと美美うつくくしげくしげくしげににに、、、もてなしもてなしもてなし心心こころにくゝにくゝにくく、、、心心こころばへばへばえなどなどなどももも我我わががが心心こころとととははは思思おもひひいとるとるとる方方かたもももなきなきなきやうやうようににに、、、ものものものつゝみつゝみつつみをををししし、、、いといといと世世よをををはぢらひはぢらひはじらい、、、あまりあまりあまり見見みぐるしきぐるしきぐるしきまでまでまでこめいこめいこめい給給たまへへえりりり。。。
- 6はらはらはらきたなききたなききたなき人人ひと、、、あしざまあしざまあしざまにににもてなしもてなしもてなしいひいひいいつくるつくるつくる人人ひとあらあらあらばばば、、、やがてやがてやがてそれそれそれににに思思おもひひい入入いりりりててて身身みをををもももうしなひうしなひうしないつつつべくべくべく、、、あえかあえかあえかにににわりなきわりなきわりなきところところところついついつい給給たまへへえるるるぞぞぞ、、、あまりあまりあまりうしろめたげうしろめたげうしろめたげなるなるなる。。。
- 7宮宮みやののの內內ない侍侍しぞぞぞまたまたまたいといといと淸淸きよげげげなるなるなる人人ひと、、、たけたけたけたちたちたちいといといとよきよきよきほどほどほどなるなるなるががが、、、ゐゐいたるたるたるさまさまさますがたすがたすがたつきつきつきいといといとものものしくものものしくものものしく、、、今今いまめいめいめいたるたるたるやうだいやうだいようだいにてにてにて、、、
- 8こまかこまかこまかにににとりたてとりたてとりたてをかしげをかしげおかしげとととももも見見みえええぬぬぬものものものからからから、、、いといといと物物もの淸淸きよげげげにににうひうひしくうひうひしくういういしく、、、なかなかなか高高だかききき顏顏かおしししててて、、、色色いろのののあはひあはひあわい白白しろきききなどなどなど、、、人人ひとにににすぐれすぐれすぐれたりたりたり。。。
- 9頭頭かしらつきつきつきかんざしかんざしかんざし額額ひたいつきつきつきなどなどなどぞぞぞ、、、あなあなあなものものものきよげきよげきよげととと見見みえええててて、、、はなやかはなやかはなやかにににあいきやうあいきやうあいきょうづきづきづきたるたるたる。。。
- 10たゞたゞただありありありにににもてなしもてなしもてなしててて、、、心心こころざまざまざまなどなどなどもももめやすくめやすくめやすく、、、露露つゆばかりばかりばかりいづかたいづかたいずかたざまざまざまにににももも後後うしろめたいめたいめたいかたかたかたなくなくなく、、、すべてすべてすべてさささこそこそこそあらあらあらめめめととと人人ひとのののためしためしためしにににしししつつつべきべきべき人人ひとがらがらがらなりなりなり。。。えんえんえんがりがりがりよしよしよしめくめくめく方方かたはははなしなしなし。。。
- 11式式しき部部ぶのののおもとおもとおもとははは弟弟おとうとなりなりなり。。。いといといとふくらけふくらけふくらけさささすぎすぎすぎててて肥肥こえええたるたるたる人人ひとののの色色いろいといといと白白しろくくくにほひにほひにおいててて、、、顏顏かおぞぞぞいといといとこまかこまかこまかににによしばめよしばめよしばめるるる髪髪かみもももいみじくいみじくいみじくうるはしくうるはしくうるわしくててて長長ながくくくはははあらあらあらざるざるざるべしべしべし。。。
- 12つくろひつくろひつくろいたるたるたるわざわざわざしししててて宮宮みやにににはははまゐるまゐるまいる。。。ふとりふとりふとりたるたるたるやうだいやうだいようだいののの、、、いといといとをかしげをかしげおかしげにににももも侍侍はべりりりしかしかしかななな。。。まみまみまみひたひひたひひたいつきつきつきなどなどなど、、、まことにまことにまことにきよげきよげきよげなりなりなり。。。うちうちうちゑみゑみえみたるたるたるあいきやうあいきやうあいきょうもももおほかりおほかりおおかり。。。
- 13わかわかわかうどうどうどののの中中なかにににかたちかたちかたちよしよしよしととと思思おもへへえるるるははは小小こ大大たい夫夫ふ、、、源源げん式式しき部部ぶ。。。
- 14小小こ大大たい夫夫ふはははさゝやかさゝやかささやかなるなるなる人人ひとのののやうだいやうだいようだい、、、いといといと今今いまめかしきめかしきめかしきさまさまさましししててて、、、髪髪かみうるはしくうるはしくうるわしく、、、もともともとはははいといといとこちたくこちたくこちたくててて、、、たけたけたけににに一一ひと尺尺さかにににあまりあまりあまりたりたりたりけるけるけるををを、、、おちおちおちはそりはそりはそりてててはべりはべりはべり。。。顔顔かおもももかどかどしうかどかどしうかどかどしゅう、、、あなあなあなをかしをかしおかしののの人人ひとやややとととぞぞぞ見見みえええててて侍侍はべるるるかたちかたちかたちはははなほすなほすなおすべきべきべき所所ところなしなしなし。。。
- 15源源げん式式しき部部ぶはははたけたけたけよきよきよきほどほどほどにににそびやかそびやかそびやかなるなるなるほどほどほどにてにてにて、、、顏顏かおこまやかこまやかこまやかににに見見みるるるまゝまゝままににに、、、いといといとをかしくをかしくおかしくらうたげらうたげろうたげなるなるなるけはひけはひけわい、、、ものものものきよくきよくきよくかはらかかはらかかわらかににに、、、人人ひとのののむすめむすめむすめとととおぼゆるおぼゆるおぼゆるさまさまさましししたりたりたり。。。
- 16小小こ兵兵ひょう衞衞えののの丞丞じょうなどなどなどもももいといといときよげきよげきよげににに侍侍はべりりり。。。それらそれらそれらははは殿殿てん上上じょう人人びとののの見見みのこすのこすのこすすくなかりすくなかりすくなかり。。。たれたれたれもももとりとりとりはづしはづしはずしてててはははかくれかくれかくれなけれなけれなけれどどど、、、人人ひとぐまぐまぐまをををもももようようよういいいするするするににに、、、かくれかくれかくれてててぞぞぞはべるはべるはべるかしかしかし。。。
- 17宮宮みや木木ぎののの侍侍じ從從じゅうこそこそこそ、、、いといといとこまかこまかこまかにににをかしげをかしげおかしげなりなりなりししし人人ひと。。。いといといとちひさくちひさくちいさくほそくほそくほそくなほなほなおわらはわらはわらわにてにてにてあらあらあらせせせまほしきまほしきまほしきさまさまさまををを、、、心心こころとととおひおひおいつきつきつきやつしやつしやつしてててやみやみやみ侍侍はべりりりにににししし。。。
- 18かみかみかみののの袿袿うちきににに少少すこしししあまりあまりあまりててて、、、末末すえをををいといといとはなやかはなやかはなやかにににそぎそぎそぎてててまゐりまゐりまいり侍侍はべりりりしししぞぞぞはてはてはてのののたびたびたびなりなりなりけるけるける。。。顏顏かおもももいといといとよかりよかりよかりききき。。。
- 19五五ご節節せちののの辨辨べんととといふいふいう人人ひとはべりはべりはべり。。。平平へい中中ちゅう納納な言言ごんのののむすめむすめむすめにてにてにてかしづくかしづくかしずくととと聞聞きこえええしししががが、、、繪繪えにににかいかいかいたるたるたるかほかほかおしししててて、、、額額ひたいいたういたういとうはれはれはれたるたるたる人人ひとののの、、、まじりまじりまじりいたういたういとうひきくひきくひきく顏顏かおもももこゝこゝここはははととと見見みゆるゆるゆる所所ところなくなくなくいといといとしろうしろうしろう、、、手手てつきつきつきかひなかひなかいなつきつきつきいといといとをかしげをかしげおかしげににに、、、
- 20髪髪かみははは見見みはじめはじめはじめ侍侍はべりりりししし春春はるははは、、、たけたけたけににに一一ひと尺尺さかばかりばかりばかりあまりあまりあまりてててこちたくこちたくこちたく多多おおかりかりかりげげげなりなりなりしししががが、、、あさましうあさましうあさましゅう分分わけけけたるたるたるやうやうようにににおちおちおちててて、、、すそすそすそもももさすがさすがさすがににに細細ほそらららずずず、、、長長ながさささははは少少すこしししあまりあまりあまりててて侍侍はべるるるめりめりめり。。。
- 21こまこまこまととといふいふいう人人ひと、、、髪髪かみいといといと長長ながくくくはべりはべりはべりししし。。。むかしむかしむかしはははよきよきよき若若わか人人うど、、、今今いまはははことぢことぢことじにににかはかはかはさすさすさすやうやうようにてにてにてこそこそこそさとさとさとゐゐいしししててて侍侍はべるるるなれなれなれ。。。
- 22かうかうこういひいひいいいひいひいいててて、、、心心こころばせばせばせぞぞぞかたうかたうかとう侍侍はべるるるかしかしかし。。。それそれそれもももとりどりとりどりとりどりにににいといといとわろきわろきわろきもももなしなしなし。。。又又またすぐれすぐれすぐれてててをかしうをかしうおかしゅう心心こころ重重おもくくく、、、かどかどかどゆゑゆゑゆえもももよしよしよしもももうしろやすさうしろやすさうしろやすさももも、、、みなみなみな具具ぐするするすることことことはははかたしかたしかたし。。。
- 23さまざまさまざまさまざまいづれいづれいずれをををかかかとるとるとるべきべきべきととと覺覺おぼゆるゆるゆるぞぞぞ多多おおくくく侍侍はべるるる。。。さもさもさもけしからけしからけしからずずずももも侍侍はべるるることことことゞゞどもももかなかなかな。。。
現代語訳
このついでに人の容貌をお話し申し上げたら、口さがないことになりましょうか。ただ今のことは(やめておきましょう)。さしあたって身近な人のことはさしさわりがあります。どうかしらなどと、少しでも欠点のある人のことは申しますまい。
宰相の君は、北野の三位(藤原遠度)の娘です。ふっくらとして、姿かたちがたいそうこまやかで美しく、才気のある顔立ちの人で、ちょっと会ったときよりも、見なれてゆくにつれて、ずっとまさって洗練されていて、口もとには気品も、つややかな美しさもそなわっている。
身のこなしなども、たいそう見事で華やかにお見えになる。気立てもたいそう感じがよく素直なものの、まだこちらが気後れするようなところもある。
小少将の君は、どことなく上品で優美で、二月ごろのしだれ柳のような姿をしている。
姿かたちはたいそうかわいらしく、身のこなしも奥ゆかしくて、気立てなども自分で物事を判断するところもないかのように、引っ込み思案で、たいそう人目を恥ずかしがって、見ていられないほど子どもっぽくていらっしゃる。
意地の悪い人や、悪いように扱って言いふらす人がいたら、すぐにそれを思いつめて死んでしまいそうなほど、か弱くどうしようもないところがおありなのが、あまりにも心配なことです。
宮の内侍は、またたいそうきれいな人で、背丈はちょうどよいくらいで、座っている姿や体つきはたいそう堂々としていて、当世風の姿で、
細かく取りたてて美しいというふうにも見えないものの、たいそうさっぱりと清らかで初々しく、鼻筋の通った顔をして、色の白さなどが人よりすぐれている。
頭の形や髪の生えぎわ、額のあたりなどは、ああなんときれいなのだろうと見えて、華やかで愛嬌がある。
ただ自然にふるまっていて、気立てなども感じがよく、少しもどの方面にも不安なところがなく、すべてこうありたいものだと人の手本にしてもよい人柄である。気どったり風流ぶったりするところはない。
式部のおもとは(宮の内侍の)妹です。たいそうふっくらしすぎるほど太った人で、色がたいそう白くつややかで、顔はたいそうこまやかで品がよく、髪もたいそう美しくて、長くはないのでしょう。
つけ毛をして中宮さまの御前には参上する。太った姿がたいそうかわいらしゅうございました。目もとや額のあたりなどは、本当にきれいだ。にっこり笑った愛嬌もたっぷりある。
若い女房の中で容貌がよいと思うのは、小大輔と源式部である。
小大輔は小柄な人で、姿はたいそう当世風なようすで、髪が美しく、もとはたいそう豊かで、身の丈より一尺も長かったのを、抜け落ちて細くなってしまいました。顔も才気があって、ああ美しい人だと見えていて、容貌は直すところがない。
源式部は背丈はほどよく、すらりとしたほうで、顔がこまやかで、見れば見るほどたいそう美しくかわいらしい雰囲気で、さっぱりと清潔な感じで、良家の娘らしいようすをしている。
小兵衛や少弐なども、たいそうきれいでございます。その人たちは、殿上人が見逃すことは少なかった。だれでもうっかりすれば人目に隠れようもないが、人目のない所にも気をつけているので、隠れているのでございますよ。
宮木の侍従こそ、たいそうこまやかで美しかった人です。たいそう小さくて細く、まだ童女のままでいさせたいようすだったのを、自分から年寄りじみた姿にして、宮仕えをやめてしまいました。
髪は袿の裾より少し長いくらいで、末をたいそう華やかに切りそろえて参上しましたのが最後でした。顔もたいそうよかった。
五節の弁という人がいます。平中納言(惟仲)の娘として大切にされていると評判だった人で、絵に描いたような顔をして、額がたいそう広く、目じりがたいそう下がって、顔もここがと目立つところはなく、たいそう色白で、手つきや腕つきがたいそう美しく、
髪は、初めて会った春には、身の丈に一尺ほど余るほどたっぷりと多かったのが、あきれるほど分けたように抜け落ちて、裾もさすがに細くはならず、長さは(身の丈より)少し長いくらいでございます。
こまという人は、髪がたいそう長うございました。昔はよい若女房でしたが、今は琴柱に膠をさしたように(動かず)、里にこもっているそうです。
こうして容貌のことを言ってきましたが、気立てとなると難しいものです。それもそれぞれで、たいそう悪い人もいない。また、すぐれて趣があり、思慮深く、才気も風情も信頼のおける点も、すべてそなえていることは難しい。
さまざまで、いったいどの点を取るべきかと思われることが多うございます。それにしても、けしからぬことを申しましたね。
意訳
ここから、日付のない手紙の形の文章(消息文)となる。作者は「口さがない」と言われるのを気にしながら、人の容貌を語り始める。
最初は親友の宰相の君。見なれるほどに美しさが増す人だという。
気立てもよいが、まだ打ち解けきれない気品がある。
小少将の君は、春のしだれ柳のようにしなやかで上品である。
小少将の君は内気で、人目を恥ずかしがる子どものような人である。
意地悪な人がいたら思いつめて死んでしまいそうなほど弱々しい。作者の心配と愛情がこもった評である。
宮の内侍は堂々として当世風の人。
細かく見ると特別な美人ではないが、清らかで色白である。
髪や額のあたりが美しく、愛嬌がある。
自然体で気立てもよく、人の手本となる人柄である。作者の評価は高い。
宮の内侍の妹の式部のおもとは、ふっくらと太った人。
髪はつけ毛をしているが、太った姿がかわいらしく、笑顔に愛嬌がある。
若い女房の中では、小大輔と源式部が美しい。
小大輔は当世風で、もとは髪が豊かだったが今は細くなった。容貌は申し分ない。
源式部は良家の娘らしい清潔な美しさがある。
小兵衛・少弐も美しい。殿上人の目に留まりやすいが、気をつけているので隠れている、という。
宮木の侍従は、童女のように小さくかわいらしい人だったが、自分から宮仕えをやめてしまった。
最後に参上した日の髪の姿を、作者は覚えている。
五節の弁は、絵に描いたような顔立ちの人。
髪が抜け落ちてしまったことまで書く。作者の観察は細かく、ときに容赦がない。
こまは髪の長い美しい人だったが、今は里に引きこもっている。
容貌に比べて、気立ての判断は難しい。すべてをそなえた人はめったにいない。
作者は、こんなことを書くのはけしからぬことだと自分を戒めて、この部分を結ぶ。
語釈・文法注
- きたの三位
- 北野の三位。藤原遠度(とおのり)とされる。宰相の君の父。
文法
- 「たゞいまをや」
- 底本のまま。今のことは(言うのはやめておこう)、と解した。
- 「きたの三位のよ」
- 「よ」は呼びかけではなく、「の娘よ」の意を含む。北野の三位の娘である。
- 「顏ぞいとこまかによしばめる髪も」
- 底本は句を切らない。顔はこまやかで品がよく、髪も、と解した。
- 「おちはそりて」
- 「はそる(細る)」は、やせ細る。抜け落ちて細くなって。
- 「ことぢにかはさすやうにて」
- 「琴柱に膠さす」は、琴柱を膠で固めて動かせなくすることから、融通がきかないこと、じっとして動かないことのたとえ。
- 「小兵衞の丞」
- 底本のまま。通行本文は「小兵衛、少弐」で、それに従って訳した。
解説
この章から、日付のない「消息文」と呼ばれる部分に入る。消息文は手紙の形をとっていて、「侍り」を多く用いた語りかけの文体で書かれている。だれに宛てたものかはわからないが、娘の賢子に宛てたとする説などがある。
作者は同僚の女房たちの容姿を一人ずつ描き分ける。宰相の君や小少将の君への評には親しみと愛情がこもり、五節の弁の髪の衰えまで書く筆には冷静な観察眼がうかがえる。物語作者らしく、人物の容姿を髪・額・目もと・体つきなどの部分に分けて描写している。
最後に作者は、容姿よりも気立てを判断するのは難しく、すべてをそなえた人はめったにいないと言う。この人物評は、次章以降の、斎院方と中宮方の比較、和泉式部・赤染衛門・清少納言の評へと発展してゆく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(紫式部日記) 板倉屋書房、明治36年(1903)、401–404頁(コマ212–214)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日